ようこそ!コネ入学者の教室へ! 作:四天王最弱
皆さんこんにちは!2話目です!今回の話では小根斗がとある人物と仲良くなろうと頑張ったり、バスにビビったりします!3話目ではさらに様々な人が出る予定ですので、ぜひお楽しみに!現在執筆中です!
え?
なんだこれ?マジで俺、この車に乗るの?
目の前に止まったのは、なんか見慣れない銀色の箱。中に人がぎゅうぎゅう詰まってるんだけど、これが、もしかして…⋯路線バスってやつか?
今まで専属ドライバーさんの送迎かタクシー、もしくは父さんの運転でしか移動したことがない俺にとって、これは未開の乗り物だ。
そういえば、兄貴も弟も自分でバスに乗って移動しているって言ってたっけ。いや、でも俺がバスに乗る日が来るとはな。驚きだよ。
家族との別れの挨拶の前、「これから、お前を送っていくからすぐに荷物を持って外に出なさい」って言われたんだ!こうきたら、父さんのことだし、どうせ送迎車で学校まで送ってくれるのだとばかり、勝手に楽観的に考えていたんだ。
「送ってくれるって、駅前のバスターミナルまでか⋯⋯」
なのに!マジかよ⋯⋯人生初の路線バス。え、怖。これどうしたら良いの?えっと、このカードをかざせば良いのか⋯⋯?
運転手のおじさんから「早く乗れ」と鋭い視線を向けられ、汗をダラダラと垂らしながら、どうにか乗車完了。
車内は独特の匂いがして、なんか色々な人の生活の匂いがする。ああ、これが公共交通機関の匂いなのか⋯⋯なんか、ちょっと苦手かも。
扉が開いて、ドキドキしながら足を一歩踏み出す。なんか、みんな無表情で怖い。
あ、一番後ろの窓際に空席がある!よかった!まるで救命ボートを見つけたかのように、俺は空席目掛けてダッシュした。いや、さすがに走りはしなかったけど、心の中では猛ダッシュだった。
どうにかこうにか、お尻を席に滑り込ませたんだけど、俺の隣に座ってたのは、これまた無表情な男の子。
赤茶色の髪に、何の感情も読み取れない瞳。まるで深海の底を泳ぐ深海魚のような、恐ろしくも神秘的なな雰囲気を醸し出している。
あ、もしかしてこのバスの中って、そういう無感情な人たちの集まりなのかな?なんか、映画で見たことあるぞ⋯⋯ちょっと、いや、かなりビビった。もしかして、みんなロボットなんじゃねぇか?
緊張で心臓がバクバク言ってるけど、ここは俺の得意な社交術で乗り切らなきゃ!俺はこう見えて、コミュニケーション能力だけは天才な兄貴と弟に褒められるくらいには高いんだぞ!
このまま無言だと、なんか気まずいじゃん?それに、せっかく新しい友達になれるかもしれないんだし!
何より、このまま無言でいると、この無表情な彼が、俺の心臓を止めてしまいそうな気がしたんだ。
「えっと、あの、えっと⋯⋯君もこれから、高度育成高等学校に行くんですか?」
声、ちょっと上ずっちゃったかな?てか、同じ制服着てるんだから当たり前か!俺ってやっぱり馬鹿だなぁ⋯⋯ちょっと恥ずかしくなってきたぜ。
でも、なんとか勇気を出して話しかけてみた。相手は俺の方をチラッと見たかと思うと、またすぐに前を向いてしまった。
え、無視?もしかして、怒らせちゃったのかな?いや、俺、何か失礼なこと言った?この無表情な彼に、俺のコミュニケーション能力は通用しないのか⋯⋯?
「あ、ご、ごめん!なんか、変なこと聞いちゃったよね!えっと、俺は宇良口小根斗です!よろしくね!」
俺はいつもより穏やかな笑みと声の明るさになるよう調整し、はにかんだ。
はぁ、なんかよく分かんないけどワクワクしてきた!この無表情な彼と、どんな会話ができるんだろう?友達になれるかな?
こんな無表情な人と話すのは初めてだ。普段なら、話しかけても「あはは」と適当に笑ってくれるか、「何それ、面白いね!」と乗ってきてくれるかのどちらかだ。
しかし、この彼は⋯⋯まるで壁だ。どんなボールを投げたら、彼に届くんだろう?とりあえず、今は変化球よりもストレートに行こう!さあ、もう一度チャレンジだ!
そう思って、もう一度自己紹介をしてみたんだけど、相手はやっぱり無表情のまま、小さな声で「綾小路清隆だ」とだけ答えた。
あ、よかった、ちゃんと返事してくれた!俺は心の中でガッツポーズをした。よし、まずは第一関門突破だ!
「綾小路くんっていうんだね!俺、こういうバスに乗るの初めてでさ、超緊張したんだよ!でも、同じ学校の生徒さんも結構いるみたいで安心したよー!これも何かの縁だし、良かったら仲良くしてくれると嬉しいな!」
俺は、少しでも会話を続けようと、必死に話題を探した。同じ学校の制服を着た生徒さんを何人か見かけたし、この話題なら、彼も何か話してくれるかもしれない!
俺が一方的に喋り続けると、綾小路くんはふと俺に顔を向けた。そして、俺の顔をじーっと見つめてくる。
な、なんだ?俺の顔に何かついてるのかな?
もしかして、俺の顔に「コネ入学」って書いてあるのか?いやいや、そんなはずないよな⋯⋯?まさか、俺が緊張で汗をかきすぎているのがバレた⋯⋯?
「⋯⋯えーっと、宇良口は趣味とかあるのか?」
え、趣味?なんで急にそんなことを?てか、なんか絶妙に俺の目から視線逸らしたよね?え、俺実はやっぱり何か顔に着いてるのか?もう訳が分からないぜ!
⋯⋯俺たちはお見合いでもしてるのか?!もしかして、このバスって、そういうお見合いみたいな謎のイベントでもあるのかな?
いや、でも、質問してくれたってことは、少しは俺に興味を持ってくれたってことだよね?
よし!ここは俺の得意な、うん、特技と言っていいのかわからないけど、まぁ、あれだ!俺のコミュニケーション能力の集大成、見せてやるぜ!
「趣味かぁ。うーん、あんまりこれっていうのはないんだけどさ、最近は友達とカラオケに行ったり、ゲームしたり、あとは買い物とか、ミュージカル鑑賞とか⋯⋯」
俺がちょっと考えながら答えていると、綾小路くんは再び顔を前に向けた。そして、小さな声で、でもハッキリと聞こえるように言ったんだ。
「俺は、特にない」
⋯⋯えっ?
ない?趣味が、ない⋯⋯?「え、マジで?ゲームとかしないの?カラオケとかは?」って聞き返したかったけど、俺の口からは何も出てこなかった。
俺の頭の中は、「趣味がない」という、まるで宇宙人が地球に来たような衝撃的な事実に、フリーズしてしまった。
その言葉を聞いて、俺の心はドーンと沈んでしまった。
まさか、綾小路くんは、俺の何百倍も孤独な環境で育ってきたんだろうか?俺は家族に愛されて、友達にも恵まれて、ぬるま湯みたいな生活を送ってきた。
でも、彼は⋯⋯彼のこの無表情は、もしかしたら、感情を表に出すことを知らないからなんじゃ⋯⋯?
その瞬間、俺の中に、ある決意が芽生えたんだ。
「そっか⋯⋯趣味、ないんだね。じゃあさ、俺が教えてあげるよ!」
俺が少し声を震わせながらそう言うと、綾小路くんはチラリと俺を見てきた。
「ゲームとか、カラオケとか、ラーメン屋さんととか!俺、そういうの詳しいんだ!だから、綾小路くんにも、もっと楽しいこと、いっぱい教えてあげるからね!」
俺は、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。絶対に、彼を一人にはさせない。
彼に、俺が感じてきた「楽しい」を、全部教えてあげるんだ!
俺は、彼の無表情の奥に隠された、少し寂しそうな心を見つけたような気がした。
絶対に、彼を一人にはさせない。この高度育成高等学校で、俺が綾小路くんの楽しいことを見つけてあげるんだ!
綾小路くんは俺の言葉を聞いてから数秒固まった。まるでロボットみたいに。
しかし、すぐに俺の目をじっと見つめ僅かに口元を緩め、口角を上げた。
あっ、今笑った、よね?
人とのコミュニケーションを大切にする俺だからこそ、見つけられた彼の感情の変化。少しだけ浮かれているような、新しい玩具を見つけた子供のようでいて、反応はほぼ0に等しいほんの僅かなものだったが、その変化が俺は嬉しかった。
「⋯⋯そうか。これからよろしくな、宇良口」
「うん!よろしくね!綾小路君!」
俺と綾小路くんは握手を交わし、高度育成高等学校に関する話題を面白おかしく話しながら、まだ見ぬ未来へと向かうバスに揺られ続けた。