推しのため、ダンジョンへ赴く   作:ケケフカ

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早くダンジョンに潜りたい(切実な思い)

 2025/8/15 ルネカの台詞及び藤沢の呼称修正


2話 武器工房

 

 

「ダンジョンの稼ぎ方を教えて下さい」

 

「えぇ……マジですか。ルネカ氏」

 

「大マジです」

 

 後日、メガネくんの家へと訪れたアタシ。その家の主人である彼へ土下座をしていた。

 

 十七年という人生の中で類を見ない綺麗なポーズ。この時の為にアタシは恥を捨てていなかった。

 

「まずは顔を上げて下され。私はそこまで高尚な人間ではありませぬ」

 

「メガネくん……」

 

「せめて、“ 藤沢 ”か“ 赤雷呼びのエルモジーク ”とお呼びくだされ」

 

「メガネくん⁉︎」

 

「……藤沢ですぞ」

 

「ふ、藤沢……」

 

 赤雷呼びのエルモジークってなに。二つ名とかあったのアンタ。てか、この世界に二つ名のシステムあったんだ。

 

「改めて……本当にダンジョンに挑戦するつもりですかな」

 

「じゃなきゃ、土下座してない」

 

「なら、まずはギルドに申請するといいですぞ」

 

 ギルド……ギルドとは……?

 

 名前だけなら理解はできる。けど、そんな組み合いって存在していたんだ。

 

「……ギルドってなに?」

 

「え、ギルドですぞ。キリン殿から初日に教えて貰ったでしょう」

 

「あ……あ〜、そんなこと言ってたような言ってないような……」

 

「ルネカ氏の悪い癖ですな……ならば、この藤沢と共にギルドへ向かうとしましょう」

 

 メガネくんもとい藤沢と共にギルドへ歩いていくこととなってしまった。まるで買い物をしたことがない子供。まあ、その通りなんですけど。

 

 その道中、武器屋に寄ると言い出したので着いて行くことにした。

 

「しかし、ダンジョン稼ぎに興味が湧くとは……ルネカ氏も急な心変わりですな」

 

「ま、まあ……応援したい推しが出来たから……」

 

「おお! この世界で推しが出来たのですか‼︎」

 

「そう、スタリオンちゃん。眩い程の笑顔なのに、その目には純粋であることを疑いもなく。また、ファンへの対応も純粋故の想いの詰まった────」

 

「おっと、秘めたる心はあまり出さない方がいいですぞ」

 

 ハッと周りを見ると、道端の人々から冷たい視線を感じた。最近、まるで推し活していなかったことが裏目に出てしまった。

 

「と、とりあえず、今のアルバイトだとグッズとか投げ銭用のお金が足りない。そのための資金が欲しくて……」

 

「なるほど。であれば、オタク仲間としてダンジョン内のノウハウもお教えしましょう」

 

「ありがと、藤沢」

 

 藤沢が止まり、指を差す。

 

 指の先は巨大な建物。

 

 ファンタジーでよく見るような家のようなものではなく、十八世紀のゴシック調の建物であった。

 

「武器屋もとい、武器工房。名は“ 竜の肺【ドラッヘルンゲ】 ”。恐らく、この街の中でダンジョンに潜る者であれば、切っても離せない存在ですぞ」

 

「へ、へぇ……知らなかったなぁ」

 

「ちなみにこの話も初日に言ってましたぞ」

 

「……シッテタヨ」

 

「声が小さいですぞ、ルネカ氏」

 

 藤沢に睨まれつつ、竜の肺に入り、武器や防具を見繕うことにした。中に入るとショッピングモールの如く、様々な職人の店舗が所狭しと入っている。

 

 煌びやかに点灯され、しまいには真ん中に謎の噴水がある。武器ショップとは思えない清潔感。

 

 イオンモールなのでは?

 

 けれど、アタシはアリオ派だと頭の隅っこで考えながら、達筆で表札の書いてある店に入っていく藤沢を追いかける。

 

 様々な武器が並ぶ店内。

 

 むしろ全体的に変な武器しか並んでいないアンティークな西洋式の店内。なのに何故か床は畳という、日本開花でも始めたのか。

 

 そして、床には変質者が寝そべっていた。

 

「フウライ氏。フウライ・コデュテロス九世氏、客ですぞ」

 

「お待ち下さい。今、お忙しいのです」

 

 藤沢が変質者に呼びかけるも、明らかに寝そべってるだけである。忙しさの欠片も感じられない。

 

 というか、ここの従業員なんだ、この人。着てるの明らかにメイド服だけど、そんなことあるんだ。

 

 持っていた武器屋ってゴツいおじさんが寡黙に打ってる世界って、イメージだったんだけど……多様性に溢れてるね。

 

「床に寝そべって、接客しないと知れた日にはお婆様は泣きますぞ」

 

「あんなHENTAIと一緒にされるのは、恥です。ですが、今はそれどころじゃありません」

 

「新しい顧客ですぞ」

 

「いいでしょう。そこに直りなさい、お客様」

 

 素早く立ち上がり、腕を組むフウライさん。若干前に掛けられた赤髪をファサッと後ろへ払っている。

 

 明らかに従業員とは思えない態度。アタシよりも接客が下手そう。なんだか……自信がついた気がする。

 

「フウライ氏。こちらは猫歩 ルネカ氏。冒険者になる予定の方ですぞ」

 

「猫歩 ルネカ……日本人。一年経ってからの冒険者なんて珍しい」

 

 そう言うとフウライさんはアタシの周りを歩きながら、唸り始める。

 

「この方、冒険者に向いてないですね」

 

「は?」

 

「胸に綺麗な脂肪があります。これを削ぎ落とさない限り、冒険者にはなれません」

 

「……脂肪」

 

「あと、チャラチャラし過ぎです。以前ここに来たアホ面の雌豚共に似ています」

 

 急にディスり始めたんだけど、この人。

 

 目を少しだけ据わってる気がする。ゴミを見るような目で、めちゃくちゃ睨んでくるし……なんだこの人。

 

「フウライ氏は極度の美乳嫌いかつギャル嫌いの無表情捻くれ陰キャなのですぞ」

 

「ブロッキング頭の着崩し美乳ギャルは、私に優しくないです」

 

「これこれ、フウライ氏。今ディスったのは私ですぞ」

 

 とんでもないキャラ付けの人だ。

 

 巨乳なのに美乳が嫌いな理由は一切分からないし、突然ギャルが嫌いとか言われても……いや、というかなんでアタシに全部当てはまってるのそれ。

 

「めんどくさ、この人……」

 

「おい、クソメガネ。このギャル、私に優しくないので接客したくありません」

 

「……新しい常連になるかもしれませんぞ」

 

「陰キャに優しいギャルなら許しましょう」

 

 切り替え早。

 

 一体、この人の過去でギャルが何をしたのか。というか、見た目は美人なのにキモさが藤沢を天元突破してる。

 

 キモさ第二の彼がめちゃくちゃウィンクしてくる。推しにもウィンクされたのことないのに……。

 

 だがしかし、陰キャに優しいギャルとして、仕方なく乗るしかなさそうだ。

 

「ゴホンッ‼︎ アタシハ、インキャニヤサシイギャルダヨ−」

 

「……では、貴方の好きなものは」

 

「え?」

 

 アタシの演技にビクともしない。

 

 陰キャを相手にしている気がしないっていうか────納得してない‼︎

 

 目の前まで歩き、アタシを壁に追い詰めて壁ドンしてくるフウライさん。目が血走っているし、息が荒い。なのに無表情なの怖すぎ。前世は殺し屋かなにかですか?

 

「貴方の、好きな食べ物と好きなモノは‼︎」

 

「ハンバーグとスタリオンちゃん」

 

「……同類型ギャルですね。許しましょう」

 

 壁ドンを解除し、クルリと振り返って足早に奥へと消えていった。

 

 なんだか分からないけど、許されたぽい。なんなんだ、あの人……。

 

 肩にポンと手を乗せ、サムズアップする藤沢。アタシもぎこちなく、サムズアップを返すしかなかった。

 

 それからレジらしき場所に歩いていく。見た事があると思ったら、駄菓子屋のレジだこれ……。

 

 すると、奥から二つの物を肩に抱えたフウライさんが歩いてくる。ゆっくりと肩から下ろし、レジへと並べた。

 

 ……どうみても銃器です。

 

「初心者にお勧めできるのは、この二丁です」

 

「ディファンネ製“ ジュペヒト ”と織田機構製“ 指照 ”ですかな」

 

「よく分かりましたね。単発式なので、弾薬管理など要りませんからお勧めです」

 

 二種のライフル。

 

 茶色か黒かの色調ぐらいしか分からない。カタチ的にはライフルというのは分かるけれど、詳しい内部構造とか見ても何も理解できない。

 

 そもそも銃器がお勧めって……普通のショートソードとかブロードソードとか、もっとファンタジーみたいなの想像してたんだけど。

 

「近接武器はお勧めできません。ステータスもレベルも上限に行かない限り、武器に踊らされるのが目に見えます」

 

「同意見ですぞ。ささっ、ルネカ氏」

 

「あの、あんまり銃器のこと分からないんだけど……」

 

「ならば、持っては如何ですかな。手触りと感触は大事ですぞ」

 

 とりあえず、一丁ずつ持ってみた。

 

 それっぽく構えたのを藤沢に修正されながら、どうにか見た目だけ整える。柄って肩に乗っけるわけじゃないんだ……。

 

 黒い方────指照の方がしっくりくる。全体的な重さもトリガーも問題なさそう。

 

「指照はブレークアクション。俗言われる中折れ式と言われるものですぞ」

 

「中折れ?」

 

「そこのヒンジ近くのボタンを押してくだされ」

 

 言われるがまま、ボタンを押すと上部分が下に折れる。

 

「その筒の中に薬莢を込めると装填完了ですぞ」

 

「あれ?これ一発しか撃てないけど」

 

「連装式または連射性のある銃は金持ちの武器です。値段は高く、それにある程度の技量も必要になってきます」

 

「マシンガンとかは、今は使えないってこと?」

 

「そうなりますな。経験は勿論のこと、ステータスの上昇によって使える物は増えるので、そこは頑張り次第というところですな」

 

 人生イージーモードには行かない訳だ。

 

 思えば、銃器を見るのも触るのも今日が初めて。こんな古臭い銃を見た上でマシンガンがあるかどうかを聞くなんて、少々アホが過ぎた気がする。

 

 銃器等装備類は藤沢が買ってくれることとなった。彼曰く、「同志に力を貸すことこそ、オタクの本能ですぞ‼︎」とのこと。

 

 否定したかったが、否定はできなかった。

 

「では、フウライ氏。ダンジョンに行く時にまた来ますぞ」

 

「次来た時は、お金いっぱい持ってこーい」

 

 相変わらず無表情。それなのに帰れコールを店前でやってる。なんであれで営業出来てるんだろうあの人……。

 

 なんだが、かなり疲れた気がする。

 店で接客してた方が何十倍も楽だったと思う日が来るとは思わなんだ。

 

 それから必要な装備類を装備用ケースに入れて、竜の肺から離れた。

 

 次に向かうのは、ギルドだ。張り切っていこう……。

 

 

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