グラモスの鉄騎よ、青空を舞え   作:仮面の愚者

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みんな、スタレ始めよう!


明日は今日の希望

 

 

──────空が、燃えていた

どこまでも深い闇が空を蠢くように覆い、星ひとつも見えないそんな深淵とも呼べる中に私たちは戦友と共にこの終わらない悪夢の中をただ一心不乱に駆け抜けていた

 

《支援要請》《進め!進めぇ!!》《支援要請》《第三強襲部隊より───》《支援要請》《女皇陛下のために…!》《支援要請》《進め!進め…!》《第七強襲部隊、準》《支援要請》《支援要請》

 

頭の中で一斉に鳴り叫ぶその全ての声を無視して、私たちはただひとつの目標を目指してただ走る。暗闇の中を、私たちを喰らわんとする蟲の軍勢…スウォームを破壊しながらただひたすらに走る。

 

スウォーム。或いは私たちグラモスの鉄騎の忌仇。

人間大の大きさの蟲で、その一体から無限にそして永遠に増殖し続け死に際には爆散して私たちが身に纏う鉄騎としての名前に恥じない全身装甲である『戦略強襲装甲ファイアフライ』…通称サムにさえも少なくないダメージを与える最低最悪の敵。

 

『……はぁ、はぁ』「はぁ……はぁ、っくはぁ…」

 

そんなスウォームの大群が襲う前線区を私たち、【第五強襲部隊】は駆け抜ける。

私たちに下された命令はひとつ。ビーコンをスウォームの敵陣の一番大きな敵に置き、そして『焦土作戦』を実行する事。…そう、全ては女皇陛下のために。

 

私たちはただの捨て駒だ。強襲部隊の誰かひとりでもこの夜の闇と勘違いしてしまいそうになるほどの蟲の大群を走り抜けてそして敵に近づくためだけの道具。それでも私たちはグラモスの鉄騎であるが故に、この後焦土で死ぬと分かっていてもただ駆け抜ける他ない。

 

『何をしている。立て』「……立たないと、死ぬよ」

 

目の前で、少し先を行っていた同胞が崩れ落ちる。幾ら疲れ知らずの私たちの躯といえどここまでおよそ100時間近く戦闘を続けている。この子は髪が短い(まだ培養槽を出て間もない)が故に戦闘で掛かる負担も体力の分配もまだ不十分なのだろう。

 

だがそれでも私たちは立て、立って戦えとしか言えない。

そうでもしないとすぐに死ぬからだ。今も鳴き叫ぶその声は今もこの戦場のどこかで力尽き、啄まれ死んでいった同胞の亡骸の海が広がる。そして私たちも時期にそのひとつになり得る。……そう、もう終わりなんだ。

 

『はっ!』「は、はい…!」

 

透き通った白のような銀髪に、紫のグラデーションが入った青目が私たち鉄騎の共通する容姿。それ故に私たちは見分けを各自で付けた装飾品や髪の長さで見極めた。…私はあまりそういうのは好きじゃないから、362の同胞に髪を編んで貰ったっけ。

 

ほんの少しでもこの同胞の体力が回復する時間を稼ぐように私はここまで温存していたサムの兵装を起動する。装甲の内部から爆発的に炎が噴出する。火の帯がまるで羽根のように腰から出て、周囲のスウォームを一掃する。

 

『先へ進むぞ』「………行こう。急ごう」

 

『はっ!』「はいっ!」

 

でもそれは一瞬だ。すぐにまた四方八方からスウォームは襲いかかり、炎の翅だけでは対処できなくなる。けどこの一瞬でこの同胞はどうにか立て直せたらしい。情報によるのならば私たちの目的地…いや死地はすぐそこだった。

 

『無事でしたか』「大丈夫?」

 

『問題ありません。進みます』「ありがと」

 

そうして駆け抜けていると、先に進んでいた同じ部隊の同胞たちと合流できる。やはり進めば進むほど蟲の数は増え、今の場所で私たちの強化された五感であってもおよそ10m先の光景でさえ見えない。

 

サムの兵装を次は拳にだけ載せて、炎を噴出する。その威力は先ほどの炎の翅よりも凄まじく、そして一瞬でスウォーム数十体を焼き尽くす。経験上、ここまで焼き尽くしたらスウォームも増殖するまでもなく、爆散して死ぬ。そしてその爆散の時の損傷も炎によって軽微だ。

 

『流石ですね』「さすがだね」

 

『急ぎましょう。』「進むよ。早く」

 

同胞たちは私を褒めるけど、それも当たり前だと駆け抜ける。

なぜなら私の髪の長さはおよそ腰まで行くぐらいには死に損ないだからだ。ここまで生き残っていた鉄騎が少ないが故に強く見えるだけ。きっと私と同じ様に生き残ってる型番のあの子なら同じことができても不思議じゃない。

 

そんなことを考えながら、私たちはこの蟲の嵐の中をただ疾走する。

踏みつける。スウォームの翅だった一部をグシャリと、いい気味だと思った。私たちが産まれた理由が“これ”と戦う理由だとしても、“これ”が私たちの全てを奪っていったから。

 

『……ぐっ』「ぅあ……ぁ……ぁ……」

 

目の前で同じ部隊の同胞が力尽きる。

先ほど心配してくれた同胞。サムの中でも火力特化の遠距離型を操る同胞が弾が切れたと同時に無数の蟲に突撃され、啄まれてそして地に伏した。……ああ、死んだなと思った。ここではよく見る光景だと誰も気にしてない風にしてまた疾走する。

 

踏みつける。今度はスウォームとは違う人工物の様な何かを踏みつけた感覚。先ほど感じたスウォームの死骸とは似ている様で違うどこか水気を帯びた肉を踏みつけた様な感覚。

 

『あとは……』「……あとは頼んだよ」

 

『女皇陛下のために……!』「女皇陛下のために…!」

 

次々と同胞が力尽きていく。

先ほど少しコミュニケーションを取った同胞も、全く関わりのない別動隊の同胞もただ蟲に啄まれ蹂躙されただけの肉片になっていく。亡骸は残らない。鉄騎として己の命も、死さえも女皇陛下に捧げるのがグラモスの使命。

 

誰かの銀色の髪が、地面の血を吸って赤く染まりながら今もこの地を埋めていく。

誰かの鉄騎が、地面に堕ちて今もこの地を埋める様にバラバラに砕け散っていく。

 

そうして私たちは、目標の前まで辿り着いた。

私たちの部隊で生き残っている同胞は、私と最初に崩れ落ちていた同胞だけ。周囲を見渡せばまだ多くの同胞が残っているが、それでも最初にこの作戦に投入された同胞の数を考えれば…生き残っているのは数%に過ぎない。

 

『なっ……!』「ひっ……!」

 

『慌てるな。いくぞ』「怖がらないで、行くよ」

 

目標は、なんというべきだろうか。

その蟲は山より大きく、その翅音は今まで聞いたどのスウォームの音よりも底冷えする恐怖すら覚える。同胞が怯えるのは当たり前だ、こんなのどう足掻いても勝てる敵ではない。

 

目標の赤い無機質な眼差しがこちらに向けられる気がした。

……どう足掻いても、ここが死地だ。目の前から襲いかかる蟲の大群も今まで以上に、そして見たことがないほど大量に襲いかかる。次々と同胞が狩られ堕ちていく中でその一瞬の油断が不味かった。

 

『……!』「っあ……!」

 

私の背中を貫くスウォームの一撃。辛うじて内部のカプセルまでは無事だったが、それでもこの一瞬が命取りだった。追撃しようとこちらに牙を向けるスウォーム。一瞬の走馬灯に走る過去。その全てを置いて私はもう終わりかとだけ思った。

 

瞳を閉じた。

せめて…死ぬ瞬間だけは私だけのものであって欲しかった。

 

『危ない!!』「危ない!」

 

………そう、覚悟していた。その時だった。

いつまでも啄まれて嬲り殺しにされる気配がない。どうしてだろうと薄く目を開けたその時だった。目の前で、私を庇う様に一騎のサムが覆い被さっているのが。

 

『な、ぜ?』「……どうして!?なんで!?」

 

『……無事ですか?』「無事?…よかったぁ……」

 

そのサムは、あの同胞だった。

あの時、私が彼女を庇ったようにまるでその借りを返すかのようにその子は胸にスウォームの牙が貫くのもお構いなしに私を庇い続けた。どうして、なんでと騒ぐわたしの声もサムによって落ち着いた響きがこだまする。

 

どうして、だろうか。

目の前のサムが微笑んだ気がした。私よりずっとずっと、産まれて間もないはずなのに。どうしてそうも命を投げ出したのだ。どうしてそんな安らかな顔で、私を庇ったのだ──────!!!

 

『そうか、それがお前の選択なのだな』「どうして…なんで……私なんかを」

 

今まで、何人が死んだ。

 

『お前の献身に報いよう。AR-67293』「ねぇ、なんで、そんな顔で笑ってるの…」

 

この戦いのために、どれほどの私たちが費やされた

ただ無駄に、価値なき命のように。ただ消費物のように

 

『焦土作戦を実行する』「………行かないと」

 

今まで、どれほど私たちを見殺しにした?

 

『戦闘を継続。武装顕現』「戦わないと、行かないと」

 

 

何故、なぜ。なぜなぜなぜなぜなぜ……どうして

 

 

 

『………全て、灰燼に帰せ』「………全部、燃やして」

 

 

 

私たちという道具に、心なんてものを与えた!!

 

 

 

 

その直後だった。サムが噴出した炎よりも早く、空から一筋の光が落ちてきた。

それこそ焦土作戦の要。誰かがその身を犠牲にビーコンをあの一番大きなスウォームに落とし、その直後に起動する。空から落ちてくる炎。スウォームを、そして私たち鉄騎さえも全てを消し飛ばすその一撃が今放たれた。

 

 

「……ああ、そっか。」

 

もう、おわりなんだ

 

 

光と、今まで感じたことのない熱風に煽られて。

それでも私を庇ったこの子だけは決して離さないと、目を閉じた

 

 

 

 

「………こ、こは」

 

きっと次に目を覚ましたあの世だろうとは思っていた。

だけど想像したあの世はあまりにも現実的過ぎて、灰のように白く濁った大地に私は倒れていた。サムは限界値以上にまで損壊しており、しばらくは展開できない。だけど妙だ。あの焦土作戦でサムは、私は耐えられないはず。そう少し首を横に向けた。

 

そこにあったのは、丸焦げのサム。

あの子のサムだと一眼見てわかった。サムなんてどの形も大体同じなのにそのおかしさにどこか笑い声が漏れてしまう。

 

「……また、助けられちゃったんだね」

 

その中から力尽きて眠っているあの子が転げ落ちてくる。全く、体力配分を間違えて疲れ果てるなんて私たちの死因の中では多い方だけどこの子はできるだけ死んでほしく無い。そういうところも教えないと、

 

「少し、疲れちゃったね」

 

ふと空を見上げる。

恐ろしいほど夜を覆っていたあの蟲の姿はどこにもいなくて、まるで悪夢のようだったと空の星を眺めながらあの子の短い髪を編む。

 

きっとこれから短くとも輝かしい未来が待っているのだろう。女皇陛下のために戦うグラモスの誇りなんてもう、無くなった。或いは私にとって最初から存在しないものだったのかも

 

「ねぇ、知ってる?この星の向こうには────────」

 

誰かが口にした星の向こうの話。

揺らぐことのない星を目指して旅立った子供たちの話。どこに向かうのも気にしないで、ただ飛び立つそんな御伽話。

 

ふと、あの子の髪に四葉のクローバーの髪ゴムが付いているのに気がついた。確か四葉のクローバーは幸運の象徴。だけど私たちに幸運が微笑んだことは無かった。

 

「どうして……死ぬの」

 

そんなことをふとぼーっと考えていたその時だった。後ろから聞こえた小さな掠れ声。まさか自分たち以外に生き残りがいるとは思わなかったと私は振り返る。

 

やはり、いや分かっていたが私と同じ顔。そしてそれ以上に酷く歪んだ顔。或いは同族嫌悪だろうか、自分もその顔以上にきっと酷い顔をしているだろうから。

 

「私たちは道具だから」

 

そんな声に答えるように私は口にする。

私たちは機械。心なき消耗品であり道具。グラモスの鉄騎として造られた生体兵器。人間未満の存在が私たちなのだと

 

「どうして、生きるの?」

 

女皇陛下のために。それだけが私たちグラモスの鉄騎の誓い。女皇陛下のために己の命も死さえも投げ出すことだけが誇りだと、信じていた。

 

「女皇陛下のために命を棄てるために」

 

私の言葉に目の前の私は顔をさらに歪ませる。その時、初めて目の前の私の顔をよく見る。その髪に掛かるカチューシャがようやく気がついた。そのカチューシャはずっと生き残り続けたあの子、AR-26710だった。

 

「……グラモスは、もう存在しないのに?」

 

きっとあの子も、私がAR-26711と気がついたのだろう。型番26700番代で生き残っているのは私たちだけだったが、まさか焦土作戦が終わった後でも生き残っているのが私達だけとは皮肉なものだ。

 

「……………………」

 

もうグラモスも何も無い。鉄騎兵団の中で生き残っているのは私たち2人だけ。

この星に、私たち2人だけが死に損なった。

 

「ここからどうするの?AR-26711」

 

「私はこの子が起きるまで、ここにいるよ」

 

ふとポツリと私の背中に座ったあの子がつぶやいた。けど私の答えは最初から決まっていたもので、今も私の膝で小さく寝息を立てるこの子を放ってはおけなかった。

 

「そっか。」

 

そんなAR-26711が両手に抱く()()()()()()()()を前に少女は小さく理解した。私はもう心が死んでいる。と。けどきっとその幻想には長くは浸かれないだろうとも分かる。あたしたちは鉄騎である以上、現実を認識する能力は極めて高いのだから。

 

「………行くんでしょう?」

 

「うん。……一緒にいかない?」

 

彼女の誘いに、私は首を横に振る。

サムも動かない。それに私もそう長くはない。きっとあの子ほど私は長くは生きられない。ならせめて、最期は自分のために使いたい。

 

最後の最後まで、あの子は私の方を心配しながらも、空を飛び立った。

特に同じ、近しい私だから分かる。

あの日見た蛍のように、生きるために死ぬ。のだと

 

 

 

「……あぁ、綺麗だなぁ」

 

 

 

虚無に、落ちる。

意識も、声も、記憶さえも。

 

 

──────けど、あのホタルの火花だけが網膜に強く焼き付いて

 

 

 

 


 

 

 

 

ここは、学園都市キヴォトス。

多くの学区が連なってできたこの都市は、子どもたちの国だと言っても過言ではない。天使のような天輪を頭に浮かべて、少女たちは今日も銃を握る。

 

そんなキヴォトスの辺境。アビドスの、いつもの1日だった。アビドスに残された莫大な借金を返済するため、少女5人は今日も忙しなく動いていた。

 

「うへぇ、こんなに暑いとおちおち昼寝もできないよ〜」

 

「ホシノ先輩動いて!」

 

そんな少女たちの借金返済方法は、基本的に不良たちにかけられた賞金狙いである。ただでさえ少女たちの拠点であるアビドス高校にも不良が攻め入ってくるのに、こうしてわざわざ熱砂の中に駆り出されて賞金を狩るのだからと疲れ目を擦るように一際小さな少女、が先輩と言われた少女が銃をリロードする。

 

「アビドスの奴らだ!やっちまえ!」

 

「生きがいいですね〜♣︎」

 

「ん、金になる」

 

不良たちもようやく相手がアビドス高校の生徒だと気がついたのだろう。その手に持った銃を意気揚々と担ぎ、走り出す。ここキヴォトスでは日常茶飯事である銃撃戦に、アビドス生たちが応戦するようにミニガンを担ぎ、ライフルを構える。

 

『弾を無駄遣いしないようにしてくださいね』

 

「分かってるわよ!」

 

そんな背後からアビドス生を援護するように支援物資がドローン越しに届けられる。それは今もアビドス高校内で私たちを支援している大切な仲間だと、物資を受け取り少女が駆け抜ける。

 

銃声が鳴り響き少しずつ、少しずつだがアビドス高校の少女たちが優勢に傾いていく。装備や数だけでは覆しようがない1人1人の練度の差がここで浮き彫りになる。

 

「くっ!やばっ!」

 

「ばたんきゅ〜」

 

1人また1人と不良たちは気絶するかのように頭の天輪が消えていく。これ以降の追撃はキヴォトスではやってはいけない事であるため、アビドスの少女たちも手を緩める。

 

『お疲れ様です』

 

「おじさんの出る幕なかったかなぁ〜?」

 

「ひとまず終わったわね」

 

一応警戒しながらも気絶していない不良がいないかどうか確認して、ようやく銃を下ろす。それでは手荒くなるが縛って賞金として連れて行こうと縄を取り出していたその時だった。

 

いつもなら率先して動くはずの活発な少女が、空を見上げたまま動かない。特別奇妙なことではないが何か面白いものでも見つけたのだろうか。と1人の少女が近づく。

 

「どうかしましたか?シロコちゃん」

 

「あれ、」

 

「?」

 

空を見上げたままの少女が空に指を刺す。一体何があるのだろうか。その少女の指に釣られるように全員が空を見上げたそこには

 

 

─────ひとつの流星が空を走っていた

 

 

「わぁ〜!流星ですね」

 

流星。或いはほうき星の名前の通りに、この青空を走る一筋の流星。夜に見る流星とはまた違った格別さがあると空を見上げてスマホを取り出す。

 

「でもあの流星変じゃない?」

 

写真を撮ろうと構えた横で、別の少女が首をかしげる。流星と言うにはあまりにもはっきりとしすぎているような、次第に大きくなってきているような……うん。まるでというか確実にアビドスに向かって落ちかけている。

 

「ん、こっちに近づいてきてる?……人?」

 

あれ、これヤバくね?という雰囲気の中で最初に流星を見つけた少女は特に目がいいのか段々と大きくなる流星の先に、誰かの人影が見えることに気がつく。意識があるようには見えない。脱力したままの人、それも少女が流星となって落ちてくる。

 

「……これ、ヤバくない?」

 

「シロコ先輩急いで!あの子墜落しちゃう!」

 

「こういう時、親方ぁ空から女の子が〜っていうのかな?」

 

笹食ってる場合じゃねぇ!とばかりの爆走。珍しい昼間の流星にさらに星になっているのは女の子と来た。流石に奇想天外過ぎて一瞬思考が止まってしまったが、あの子を見つけた私たちがあの子を受け止めてあげないとと、ケモ耳が生えた2人が真っ先に急いで落ちてくる流星の先を急ぐ。

 

『先輩!あの流星の着弾地点を送ります!』

 

「ありがとアヤネ。グッジョブ」

 

そんな2人を真っ先に追いかけるのは遠くから支援していた少女だった。流星を確認できた時点から、おおよその流星が落ちる位置を計算して今2人にその情報を送った。あの流星が落ちるまでもうそんな時間はない。

 

ヤバい…間に合わないか……!

そんな一瞬の覚悟をしたその時だった。

 

確かに少女たちは見た。流星の中から、少女を守るように大きな()()()()()()()()()()が少女の体を抱えたのを。お姫様抱っこをするように、その黒い…もはや丸焦げと言っても過言ではないその壊れたロボットが少女を守るように。

 

「……あ、れは」

 

「なに、あれ」

 

そうして目の前に予定調和の如く、そのロボットと少女が着地というにはあまりにもロボットが身を張っているかのような着地で地面に崩れ落ちる。その時、ようやく気がつくだろう。ロボットに見えたそれがまるで装甲兵のようだと

 

だがしかしその装甲もロボットも、ここキヴォトスでは一度も見たことのない姿形をしている。…果たしてこれが敵なのか味方なのか。最悪さえも想像して、この中で一番最高学年の少女が密かに銃に力を込めたその時だった。

 

『どうか……』「どうか……」

 

ロボットが喋る。なんというか想像していたよりも重く低い口調で、どこから声が出ているのかわからないが確かに目の前のロボットは喋ったと少女たちは驚く。だがそんな驚きに目もくれず、そのロボットは破損した装甲の内部からスパークが飛び散り、今もスクラップになりかけでありながら言葉を紡ぐ。

 

まるで最期、伝えたいことが、任せたいことがあるように。

 

 

「わたしの、お姉ちゃんを……よろしくお願いします」

 

 

その声はロボットの低い声…だというのに、何故か少女たちの耳には幼い少女の声のように聞こえた。きっとこのロボットの中にいたのはこの声の持ち主だろうと直感的に信じてしまうような、そんな少女たちに向けた今際の遺言に

 

「うん………任せて」

 

応えた。お姉ちゃんと呼ぶほど親しい人を見知らぬ私たちに任せるほどの覚悟を無為にはしないと、この中で誰よりも離別の苦しみを味わう少女が覚悟を決めて答える。そんな返事に満足したのだろうか。

 

「ああ……良かった」

 

表情もないはずのロボットの顔がまるで破顔するかのように満面の笑みを浮かべて、音なき声を一言だけ呟いてまるでそれが正しい在り方だと言わんばかりに白く灰のようにボトリ…ボトリ…と粒子になって崩れ落ちる。

 

「……ぁ」

 

少女たちが止めるよりも先に、そのロボットは最初から存在しなかったように跡形もなく消えてそこには1人の少女が意識をなくして、倒れているのだった。

 

 

 

 

────── グラモスの鉄騎よ、青空を舞え

 

 

 

 

 






《キャラクター紹介》


AR-26711

本作の主人公。グラモスの鉄騎のひとつ。
髪が腰ほどの長さになるほど生きていた歴戦の兵士であった。
が、彼女はそれをただ死にぞこなっただけだと卑下している。

彼女自身も気がついていなかったが、実は意外と姉御肌だった。
それ故に、彼女に惹かれたモノから先に死んでいく。



AR-26710

みなさまお馴染みのホタルと呼ばれる少女である。
主人公と製造ロットが1つ差ということで仲は悪くなかった
主人公の心を優先して、星ごと介錯した選択をこの子はきっと未来永劫後悔するだろう

だがもしも、主人公の手を奪って2人とも星核ハンターになっていたらズブズブの共依存となり原作以上に殻にこもったまま2人でいずれ来る“おわり”を待つだけの結末が待ち受けていた。



AR-67293

名もなき少女。或いは一瞬の火花に惹かれて墜落した羽虫
主人公やホタルの3回りぐらいの小柄な子。初陣を終えたばかりの子だった。
本来ならあの時、崩れ落ちた時に彼女の運命は終わるはずだった。……だがそれを覆したのは信仰よりも確かな、今ここにある光。

だから少女はその命を光のために使うのだと決めた。
そして、少女は《幸運》な事に確かに光のためにその命を使えた
私のために泣いてくれた。私を想ってくれた。それだけでこの世界に生まれた意味はあったのだと満足して生命活動を終えた。



残骸で有ろうとも、飛びましょう。
身体は動きを止めて、魂と呼べるモノが私たちにあるかは分からない。
けど確かにこの空に浮かぶ光が私のやるべきことを覚えている。
飛べ。飛べ、飛んでいけ。虚無の果てを、虚空の彼方を越えて。
青い空の下で、あなたが笑ってくれるのなら

───────生まれ変わりがあるなら、お姉ちゃんと呼べたら



続きはアッハが持っていったらしいよ

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