なんか、この東京で犯罪王みたいな奴のムスコに生まれた。シモの話じゃないヨ?
コワモテの幹部連中から王子とか声をかけられるくらいの上流階級富裕層。
なに? アメコミかなんかの世界だったりするの? 破滅の未来しか見えなくね? 助けてスパイダーマン。
今日も俺はスカジャンを着て、下っ端ムーヴで街に繰り出す。超能力の練習をしながら。

いずれグミ撃ちが持ち技になる青年の話。威力はベジータに準拠するものとする。


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スパイダーマンやドラゴンボールのキャラは出てきません。用語や話題として出てくるだけです。


鉄面ヒーロー

 

 

 

 

 

 渋井晴陽(しぶいはるあきら)を知ってるか?

 

 たまにテレビにも映るゆーめーじん。

 

 4万坪を有する大型商業施設、新しい複合都市『ダウンタウン・トーキョー』のドン。

 

 裕福な実業家。

 

 心優しい慈善家、貧困家庭の救世主。

 

 190cmの恵まれた体格に筋肉の鎧をまとい、まるで昔のアニメのスーパーマン。

 

 支持者(ファン)からの愛称(ニックネーム)は〝パルパル〟。

 

 ここまでが大体みんなが知ってる情報だ。

 

 

 

 こっからがちょっとしたウラ話。

 

 

 幼少期、父親の暴力の()()を受けて成長した。

 

 父親の暴力の薫陶が母親に及ぶに至り、指導の通りに父親を排除した。

 

 母親と遺体をノコギリで解体。母親は手を洗いながらどこかに電話をかけていた。

 

 10以上、20未満のブロックを川に不法投棄。

 

 すぐにバレるだろうと思っていたがそうはならなかった。

 

 母親にしばらくアメリカで遊んでこいと放り出された後、三流ギャング『ミョウオウ』のリーダーとして街に暴力と恐怖をばら撒いた。

 

 やがて犯罪組織ベンジャミン一家のボスに気に入られ、ボディガードから右腕へとのし上がる。敵対組織との戦争を演出し、その流れでボスを排除、ファミリーを掌握して敵対組織を捻り潰し、地下社会で最も強力な人物の一人として駆け上がった。

 

 敵対者(ファン)からの異名(ニックネーム)は〝暴君(タイラント)〟。

 

 現在は日本に戻り企業のトップとして、慈善家として、アメリカ人、ロシア人、中国人、日本人と手を組み、人身売買から麻薬の流通、議会、弁護士、メディア、警察の買収・掌握にと忙しく立ち回っている働き者。

 

 

 それが、オレの親父だ。

 

 …………やべーだろ?

 

 

 

 

 

 オーケー。そろそろオレ自身についても話しておこう。

 

 オレの名前は渋井晴天(しぶいはるちか)。高校生。

 

 みんなからは大抵〝ハル〟って呼ばれるけど、親父だけはオレを〝テンセー〟って呼ぶ。

 

 どこのコミックから飛び出してきたんだよって感じの親父が、リアルに巨悪過ぎてツライのが今の悩み。

 

 ヒーローなんかいない世の中、なんだかんだで悪が蔓延ってて、なんだかんだ悪が勝ってしまったりする。

 

 昔から忙しい親父だったから、オレは親父がいない時、映画やドラマをずっと見て育った。オレの世話を押し付けられた親父の部下が、特にヒーローものの映像を見せておけばオレが黙っておとなしいと発見したからだ。

 

 こんなにもヒーローものの映像作品が溢れてるのは、実際のこの世の中にヒーローが現れてくれないかと大人は願ってたりするのかも。子ども? 子供は当然、ヒーローになるのは自分自身だって、そう思うだろ?

 

 周りの大人たちはみんなやさしい。でもたくさんの人たちを食いものにしていて、そしてその上にオレの生活が成り立ってる。

 

 親父を止めなきゃいけない。でもひょろガキ一人に何ができるって言うんだろう。親父は別にオレに甘かったりしない。

 

 ちなみに母ちゃんはいない。交通事故で亡くなった。当時オレも車に乗っていたそうだが、オレは奇跡的に助かった。仕事しろシートベルト。ありがとうベビーシート。

 

 とにかく、スーパーヒーロー……どこぉ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日もオレは街を歩く。

 

 スカジャンを着て下っ端ムーヴで風を切る。

 

 オレの素性を明かしたり明かさなかったりしながら、〝暴君(タイラント)〟が広げる傘の下を見て回る。

 

 何ができるってわけじゃない。

 

 自己満足でしかないかもしれない、あるいはオレは行動してるっていう言い訳が欲しいだけかもしれない。または、不幸になってる人たちからキレーに目を反らせるだけの『大人』になるまでの時間稼ぎか。

 

 大きく息を吸って、吐く息と共に言葉が溢れた。

 

「あー……いやだいやだ」

「何が嫌なんだ?」

「うおぅっ⁉︎」

 

 いつの間にか横に高級スーツをビシッと決めたイケメン(あん)ちゃんがいた。

 

「いつの間に。さては忍びの者だな?」

「違うな。組の者だよ。というか、なんなら一回声かけてっからな?」

「そりゃ失礼。久しぶりだね、エビさん。2週間ぶり?」

 

 彼は伊勢京介(いせきょうすけ)。お察しの通り、伊勢海老を食べに連れてってくれたことがあってエビさんだ。

 

「久しぶりだな。2ヶ月ぶりの」

「そりゃ失礼。こんなとこでどうしたの?」

 

 今いるのは下町の商店街。コロッケうまいよな。食卓に並んだことなんかなかったから、昔は食べ歩きするファストフードの類いかと思ってた。

 

「アイサツ回りだ」

「集金?」

「も、含めたアイサツ回り。乗ってけよ。昼メシ奢ってやるからよ」

 

 エビさんが指さす先に黒塗りの新型高級セダン。

 

「あざーす」

 

 後部座席に乗り込むと、「お疲れさまっす! アニキ!」と運転席の若いやつが笑顔で振り向いた。若いってもオレより年上だけど。その若いのはオレを見て片眉を上げた。

 

「アニキ、誰っすかそいつ。新しい舎弟っすか? おれの下に付けてくれるんすか⁉︎」

「違う」

 

 エビさんは一言で切って捨てオレに顔を向けた。

 

「こいつは大郷チカシ。覚えなくていい」

「そう?」

「ああ。チカシ、こっちは俺の友ダチだ。当然、立場はお前の遥か上だ。わかったな?」

「あ、はいッ! おなしゃーっす!」

 

 昼まで1時間。一件集金していくってんで車を降りる。オレも降りる。

 

「チカシ、お前は来なくていい、車を見てろ」

「あ、はいッ!」

 

 

 

 

 

 30代夫婦、子供はなし。

 

 オレは出されたお茶を一口飲んでイスから立ち上がる。

 

 イスにどんっと左足を乗せた。イスに乗せた脚の膝に右肘を引っ掛けて、スカジャンの背中の龍を見せつける。

 

「こっるるるるるるるぁあああ! 借りたもんは返さなきゃあっ! ねえッ⁉︎」

 

 

 

 

 

 アパートの階段を下りながらエビさんが言う。

 

「下っ端が板につき過ぎじゃないか?」

「でへへ」

「……褒めてないぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自宅のビルのワンフロア。

 

 道場の真ん中で目隠しをして立たされてる。

 

「無理でしょ、これー。なんも見えんて。なぁ、じいさ──あ痛ぁッ⁉︎」

 

 背後からケツをぶっ叩かれた。

 

「老師と呼べ。目に頼るな。気を探れ。自ずと見えてくるものがある」

「なに言ってんだじじ──いっでえッなぁ⁉︎」

「老師と呼べ。いや、武天老師と呼べ」

「ドラゴンボールかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 ある日の夜。

 

 まだ街が眠りにつくには早い時間。

 

 東京で謎の破壊現象が発生した。

 

 ある商業区画を中心に、放射状に半径10kmに渡って次々と停電。

 

 すぐに極彩色の派手な光と共に衝撃波が迸った。

 

 人が数メートル吹っ飛んで、街は歪んで、ガラスが砕けた。

 

 そして、誰も知らない建造物がいくつも、斜めに逆さにフツーに生えて、ビルに融合したりした。

 

 いろんな所が奇妙なオブジェに置き換わり、建物も植物も曲がりくねって生い繁った。

 

 地下は拡張され掻き回された。

 

 何かを告げるかのように、重く金属質な不協和音が街に響き渡った。映画で見た異星人の宇宙船の登場シーンで使われるようなやつ。バ──ッて。

 

 

 

 それから街は復興作業で大わらわ。

 

 1週間経っても原因の解明には至らなかった。

 

 なにしろ街のあちこちに謎建造物やら謎金属やらの謎オブジェが生えていて、順の調査に時間がかかっていた。

 

 2週間経ってようやくいくつかの建造物の解体の許可が降りたらしく、あちらこちらで巨大なクレーンが林立し始めた。

 

 謎建造物が融合したビルの所有者なんかは、安全に問題なければ残す方針でいることを発表するとこなんかもある。

 

 特に話題になったのは、まるで豪快に沈む直前の戦艦のようにも見える斜めに突き出た金属のオブジェ。

 宇宙船なんじゃないか、爆心地と思われる商業区画からはズレているが、アレが原因なんじゃないか、と世間をざわつかせている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 その日オレはグミを食べていた。

 

 椅子にふんぞり返って空中に放ったグミを口でキャッチする。

 

 まあ、ヒマだったんだ。

 

 何度目かのキャッチの後、オレは放ったグミを見つめ、口を開けたまま呆けていた。

 

 グミが、空中遊泳してる。

 

「はあ?」

 

 落ちてきた。

 

 

 

 翌日、朝起きて部屋から出る時、扉の取手が取れた。

 

「あ?」

 

 階段を降りる時、手摺りに掴まると、固定部から破壊的音がした。

 

「あぇ?」

 

 洗面台の陶器が割れ「あ」水道の蛇口がパキン「あ」ハンドルがポロッ「あー」壁がピシッ「あ?」鏡がパリン「あ」ガラスがパリンパリン「あ」。

 

「いや、スパイダーマンかよ」

 

 サム・ライミ監督のピーター・パーカーみたいにいきなりマッチョにはなってなかったので、鏡の前でポーズを決めることなくそそくさと服を着た。

 

 慎重に(物理的に)SNSを確認すると「私がスパイダーマンかもしれない」がトレンド入りしていた。なんでだよ。

 

 

 

 まだ信じられないが、不可思議なスーパーパワーというものが世に現れた。

 

 もしかしてこの世界にはこれからスーパーヒーローが現れるのでは?

 

 そうなってくると話がだいぶ違ってくる。

 

 途端に目の前に浮かび上がってくるのは〝破滅〟の二文字。

 

 悪の世もやべーけど、スーパーヒーローの世もやべー。

 

 なにがやべーって破滅する未来しか見えないのにオレその筆頭格の息子。

 

 親父を止めるためなら自分自身の破滅も受け入れるなんてオレは献身的な人間じゃない。

 

 どうしよう。

 

 大きく息を吸ってー……吐いたー。吸ってー……吐いたー。吸ってー……。

 

 いや、まだだ。まだ焦る時じゃない。大丈夫。オーケー、オレは冷静だ。

 

 ほどなく、空を飛ぶ人影を見たとか、その画像とか、ビルの間をスイングする謎の人物とかの噂が広まり始めた。

 

「……」

 

 吐いた。

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

「キモっ」

 

 いや、今のはグロいとかそう言う意味じゃないんだ。あまりの見慣れなさに、違和感がひど過ぎて思わず出た一言だった。

 

 今オレの瞳は黒から灰色っぽい薄い水色に変化している。はっきり見える虹彩に虹色の光が揺蕩う。

 

 まあ、赤だか白だかピンクだかに発光してビームが出るだとか、宇宙人(リトルグレイ)みたいに黒一色だとか、虫の複眼だとか、爬虫類的な縦に割れた瞳孔だとかじゃないだけよかったかもしれない。

 

 いや爬虫類的なのはかっこいいか。いや、実際見たらどうだろう。色が変わっただけでキモってなったくらいだし。

 

 鏡を見つめて深呼吸を繰り返し心を落ち着けると、瞳の色が黒へと戻ってきた。

 

 どうも、グミを浮かせる力を身につけたかもしれない男、渋井晴天(しぶいはるちか)です。

 

 ちなみに今のところ自分の意思で成功したことはないです。

 

 

 

 瞳の色に関しては、数日前のこと──。

 

 自宅のビルのワンフロア。

 

 道場の真ん中で目隠しをして立たされてる。

 

 この間みたいに気? 気配を探ろうと集中しているとなんか心? 頭? がざわざわした。

 

「じじい、いや老師! やべー! なんも見えない!」

「そりゃ目隠ししとるんだから」

「そうじゃないんだよ!」

 

 目を瞑った時の闇じゃない、言うなれば真っ白い闇だった。

 

 オレは目隠しを外し、目を開いた。そのはずだ、なのに白い闇は変わらない。

 

「見えねえ!」

「バカもん! 落ち着け! ワシを見ろ」

「おおぅ……」

「ふむ……わからんな」

「うおい」

「落ち着け。ここは嫌というほど見慣れた道場、そしてワシがいる。さあ、目の前のワシに集中しろ。心配いらん。目が見えなくなったわけじゃない。光が強すぎて白く染まっているだけじゃ。心を落ち着け、明度を下げろ。さあ、浮かび上がってくるはずのワシのシルエットを描き出せ。見えてきたか?」

 

 頷く。

 

「よーし。さあもっとだ。明るさを抑えろ。一つ一つの明るさを調節しろ。人、物。空気の中の光が邪魔をしてるかもしれんぞ。大気の明るさはゼロにしろ」

「おおおっマッジ⁉︎ 見えてきたー!」

「ほう! 本当に見えるようになるとは、単純でよかったな」

「おいっじじいこのやろう! テキトーかよ!」

「自分の目を鏡で見てみろ」

 

 姿勢や型のチェックを自分でするための大きな鏡に張り付いて、自分の目を覗き込む。

 

「なんじゃこりやあ……」

 

 瞳の色が変わってる。けど、今はそんなことより気になることがあった。

 

 オーラみたいなのが見える。

 

 人にも物にも。

 

 この不思議現象を起こしてる大元のエネルギーというかなんというか。

 

 それを知覚することによってとんでもない範囲の視界を今オレは得ていた。

 

「まさかこれが〝気〟……⁉︎」

「そうじゃ」

「今絶対テキトー言ったろ」

 

 気でもオーラでもエネルギーでもなんでもいい。知覚できるようになったこれで何ができるのか。

 

 やべー、楽しくなってきたー。

 

 

 

 

 

 ▼

 

 扉とか窓とか簡単にパリンパリンしちゃうあの日常生活に支障出まくり身体能力は今はない。

 

 どうやらあの日あの時の一時的なものだったらしい。どうりでマッチョになってないわけだ。

 

 あの瞬間に老師の言うところの〝気〟に目覚めたんじゃないかと思うがどうだろ。

 

 そんな気の扱いを練習するため、今日も今日とて道場にいる。

 

「フフフ、私の戦闘力は53万ですよ」

「なんだゴミか」

「くらっ! じじい! 53万をゴミ扱いするな! キエッ!」

 

 オレの指先がビッと光り、目にも留まらぬ速さの光線が……出ないー。光っただけー。どうやったら出んだー。

 

「ゴクウよ、見ておれ」

「誰がゴクウだ。その武天老師ムーヴやめろ」

「いいから見ておれ。……か……めー……」

「いや、じじいが歳考えろよ。なにをやってん──」

「──波ぁ!」

 

 ドン!

 

「ぅえええ────ッ⁉︎ なんでぇえええっ⁉︎」

 

 初期の初期に漫画で登場したのよりさらに威力は低いだろうが、たしかに出た。立派な大根くらいの太さの光線が。

 

「どぉうやってんの──⁉︎ 教えてくれえええ! お願い! 武天老師さまっ」

「お調子のいいやつじゃのぅ」

 

 

 

 

 

 いつの間にか道場の入り口に親父の執事が立っていた。

 

「ワタベ」

「老師。(あるじ)が食事を共にしませんか、とのことです」

「ふむ……わかった」

 

 そこにメイドが入ってきた。綺麗な所作で一礼するとオレに言った。

 

「ぼっちゃま。昼食の用意が整いました」

「わかったー」

「ふむ、では行こうかの」

 

 

 

 

 食器の立てる微かな音だけが時おり響く。

 

 その内に、老師が呆れたようにオレと親父を見やってため息をついた。

 

「おんしら、少しはなにか喋ったらどうだ?」

「なにを?」

「なにを?」

 

 オレと親父の声が重なった。

 

「やれやれじゃ」

 

 オレはさっさと飯を食って立ち上がる。

 

「それじゃ、じいさん、また」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

「老師、なにか不自由なことや困ったことなどありますか?」

「なんじゃ」

「はい?」

「それはわしを通じて息子の悩みを聞こうとか、そういう話か?」

「いいえ? 単純に、老師がここでの生活に不自由しておられないかと」

 

 正面から晴陽(はるあきら)の顔を覗き込むように見据えた。

 

「おんし、父親と……暴力を振るっていたという父親と同じことをしてしまうことを恐れておるのか?」

「……はっははは。そんなこと考えたこともありませんよ」

 

 なんらかの嘘や欺瞞を感じ取ることは出来なかった。

 

「今度は酒でも飲みに行きましょう、老師」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

『ダウンタウン・トーキョー』周辺地域は今、好景気に沸いていた。

 

 謎の建造物の解体作業を始め、高額報酬の仕事がポンポン生まれてきている。

 

 この範囲でのみ成功する新素材や新薬の開発。

 

 その辺に生えていた見慣れない雑草が高値で買い取ってもらえたなんて話もある。

 

 今、全世界から熱い注目を集め始めている。

 

 なんて話が午後の情報番組で特集されているのを、ソファに寝っ転がって眺める。

 

 手を使わずに、袋から取り出したグミがふにふにしながら不安定に宙を横切り、オレの口の中に飛び込んだ。

 

 どうも、グミを浮かせる男(確定)渋井晴天(しぶいはるちか)です。

 

 情報番組ではいいように言っていたが、不平不満が各所で噴出してるらしい。

 

 なんでも海外企業がこの地域への進出にこぞって列を作り、国内外問わず人が日々流れ込んできているそうだが、肝心の場所がない。

 

 すべてを国の主導で動かしたい政府に対して、都が反発し、そこにまた区が反発し。

 

 能力を得た者に強制的な健康診断実施の必要性が政府関係筋の話としてメディアに載れば、すぐさま人権団体や市民団体が反対を掲げ噛み付いてデモ行進。

 

 混乱が徐々に顕在化してきてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 伊勢京介(いせきょうすけ)、愛称エビさんにメシに誘われほいほい出かけてきた。

 

 またもや一件集金を済ませてから、ということで。

 

 30代夫婦、子供はなし。

 

 またおまいらかヨ。

 

 オレは出されたお茶を一口飲んでイスから立ち上がると、イスにどんっと足を乗せた。

 

「こっるるるるるるるぁあああ! 借りたもんは返さなきゃあっ! ねえッ⁉︎」

「と、言われましても……私どもも生活が苦しい中、なんとかやりくりしている状況でして」

「後ろのブランド品の山を片してから言えや」

「ええっ⁉︎」

 

 妻の方が驚きの声をあげた。夫がなぜか勝ち誇ったように妻に言う。

 

「だから言ったろ?」

「いや表のお前の高級車もだよ」

「ええっ⁉︎」

 

 業者を呼んで全部売り払う。

 

「「そんなっ⁉︎」」

 

 

 

 

 

 中華屋の無駄に広い個室でエビさんとエビチリ食べる。

 

「今、この辺は()()()()がいくらでもあるからな。あの夫婦みたいなのは少なくない。バカだけどウチとしちゃいい客だ。バカだけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 おかしな力を持った者たちが話題になっている。

 

 その筆頭はなんと言っても『トリガール』だった。

 

 空を飛ぶ少女。

 

 SNS等で拡散された映像からは当初、フェイクだろうという声も多かったが、彼女が小さな人助けをしているという話から、徐々に話題が広まりつつあった。

 

 一応、身バレを気にしてなのか時と場所を選んでいる様子ではあったが、近い内に素性は知れ渡ることだろう。

 

 そう思っていたそんな矢先に、トリガールが火事の現場から住人の思い出の品を救助し、大人から危ないだろうと怒られている姿がセットとして映り、彼女はブレイクした。

 

 そして数日後──。

 

『ダウンタウン・トーキョー』でウチの親父とトリガールが笑顔で握手してる姿が新聞の一面を飾った。

 

「…………はあ?」

 

 

 

 

 

 なんでも、聞き取り調査を都からお願いされたトリガールが都庁を訪れ、その帰りに突然横付けされた車に引き摺り込まれそうになったところを、偶然同じく都庁を訪問した親父が自ら誘拐を防いだんだとか。

 

 事態を重く受け止めた都や警察が、逮捕した実行犯を締め上げゲロゲーロ吐かせたところ、政府関係者の名が上がったことから、また一つ国民の不満が芽吹いたのを横目に、親父はトリガールを『ダウンタウン・トーキョー』のアンバサダーにスカウトした。そんで家族ごと高級ホテル並みのサービスが受けられる『ダウンタウン・トーキョー・レジデンシズ』に入居させた。

 

 インタビューではトリガールの安全も考慮したと国をチクリと刺しつつ、世界一安全な都市を謳い、新しいセキュリティシステムを導入した警備体制を大いに宣伝していた。

 

 この日以降、『ダウンタウン・トーキョー』にある吹き抜けの複合商業施設内では、元気に舞うトリガールの姿が見られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 自宅ビルの和室にて、畳の上をごろごろしながらグミを浮かせていた。

 

 グミを浮かせるにはグミの気(笑)とオレの気を繋げる必要がある。

 

 グミに線を繋ぐイメージ。糸のように細い線。ただし糸のようにやわらかいと、引き寄せる際に地面に落ちて引き摺られてしまう。

 

 線はハリガネのように硬く。

 

 ぷすっと刺したら空中に持ち上げる。

 

 線を短くしていき、手繰り寄せる。

 

 線には強度が必要なのだ。

 

 強度を上げればそれだけ多くの気を使う。2つの意味でね。けど、強度を上げ、数メートル伸ばしたくらいでは消費される気は無視できる量だ。1か2。5秒か10秒で自然回復。

 

 あまり伸ばし過ぎると伸ばした先から空気中に散っていってしまうけど。

 

 繋いだ線を途中で切っても、その分の気が減る。接続を切ってするする戻せば消費はない。

 

 あれ? 触手かな?

 

 いや違う。オレの能力がそんなキモいわけがない。

 

 大の字に寝転がり、天井を見上げてた目線を和室の上座へと向ける。

 

 掛け軸とアンティークの地球儀の横に武者鎧が鎮座してる。

 

 立ち上がって兜をかぶる。また寝転がろうとしたらあちこち痛いので兜を放る。

 

 代わりに兜の下のあれ。あの武者のマスクみたいなの。鼻と口を覆うあれ。あれをつけた。憤怒の口元。牙が下から上にグーンてなってるので鬼かなんかだろう。

 

 寝転がり、気を剣みたく伸ばしてみる。

 

 消費はない。が、こいつでぶっ叩くと、火花のように散った分だけ消費することになる。

 

 ただし、消費がないのはやり慣れた形であればの話。何度も繰り返してコツのような感覚が身についたからこその話。

 

 初めてやるようなことなら、やはり無駄が出るため激しく消費する。

 

 それに、やり慣れて気を消費しないからといって、チョーシくれて繰り返していると、気力は減らないが気疲れを起こす。なんか頭が重く感じたり、首の付け根が痛くなったり、眼の奥の刺すような痛みと吐き気に襲われて、便器とねんごろの仲になったりする。めためたきついから気をつけて。

 

 さあ、まあでも、……そろそろいいかもな。

 

 動き始めても。

 

 

 

 廊下を歩いてると親父の部下に行き合った。ウチに入って来れるということは、それなりの信用と地位がある証拠。

 

「やあ王子」

 

 だからオレに対しても気安い。

 

「めんぼおなんかして、コスプレか?」

「……綿棒?」

「〝面頬〟」

 

 おっさんは自分の口の周りを指し示す。

 

「ああ、このマスク、面頬っていうんだ。コスプレじゃないよ。忘れてただけ」

「さすがにそれはないだろ?」

「そうだね。鉄で重いしね。忘れてたってのはないね」

「相変わらずだなぁ、王子。それ和室に飾ってあるボスのだろ? 怒られるぞ大丈夫か?」

「だいじょーぶ。怒らんよ親父は。よっぽど鎧兜が大事ってんじゃなければね。基本オレに興味ねーから」

「そんなことはないだろう」

「そう? ま、どっちでもいいかな」

「淡白だなぁ。その辺もボスに似てるよ。さすがだ」

「悪の大幹部にほめられてもね」

「はっはっは!」

 

 ほんとうに、ほめられてもね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 親父のグループ直参の、古賀組傘下の半グレ組織。

 

 なんか小さなビニールに粉末を袋詰めしてる。え? ベビーパウダー?

 

「最近、治安の悪化が問題になってんだってさ。知ってた?」

「なんだてめえ⁉︎」

「どっから入ってきやがったっ!」

 

 古賀ってのはウチの廊下で会ったあのおっさんの、叔父が、仕切ってる組だ。

 

 たまたま会ったのもなにかの縁ということで、古賀のシマを荒らしまあす!

 

 バックパックにスカジャンと面頬を詰め込んで、直前にいそいそと着替えてやってきました半グレ拠点。

 

 憤怒の面頬の下で笑う。

 

「でもさ、治安なんてさ、ここはきっと元から最悪だった。そうでしょ?」

 

 ライターオイルを振り撒きながら、彼らの拳を躱しながら、彼らを引き連れ部屋の中を練り歩く。

 

 カーテンを閉め切った薄暗い室内。

 

 オレの青灰色に変わった両目は、彼らの動きの全てを捉えていた。

 

 彼らの黒い瞳の中に、オレの不気味に光る二つの眼が写り込んでいた。

 

 シュボッと。

 

 射的の屋台で取って溜め込んでいたライダーのオイルライターに火をつける。

 

「キミらにベビーパウダーは必要ない」

 

「待てっ!」

「やめろぉおおお────ッ‼︎」

 

 手から滑り落ちたライターが、熱狂を生んだ。

 

 さてオレもさっさと姿をくらまそう。

 

 スカジャンの背中でクリリンと天津飯とセルが太陽拳してくれてることだしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

「なんかボヤ騒ぎがあったらしいぜ」

「へー、小火(ぼや)……ね」

 

 エビさんと海老天重を食いながら話す。

 

「なんでも、その雑居ビルに充満した煙を吸った奴が、次々ラリって全員マッパで街中に拡散してったって話だ」

「へ、へー」

 

 燃やしたのはマズかったか。やべー。

 

「古賀組は血まなこだ。笑える」

「そう……?」

「ああ。しかし、人が流入してきていろんな組織の人間もまた入ってきた。治安の悪化や小競り合いの頻発で、これまで〝目立つな〟を徹底してきたグループ内のタガもまた外れてきてる。俺んとこに迷惑かからないなら好きにしろってなもんだが……。もしかしたら尻拭いを手伝わなきゃならんかもしれんね。こっちからしたらクソの役にも立たんバカどもなんて勝手に潰れてろって言いてぇが」

 

 食後の茶を飲みながら話していると、つけっぱなしにしていた壁のテレビがダウンタウン・トーキョーを映した。

 

「周辺地域の治安悪化の中にあって、ダウンタウン・トーキョーでは全国を見ても最高水準の安全が保たれています」

 

 統計データが示されつつ、レポーターがダウンタウン・トーキョー内を歩く。

 

「その安全神話を築き上げているのが最新のセキュリティシステムと、景観を壊さないよう私服で配置された警備員です。彼らには全世界に先駆けて、非致死性兵器『光制銃(レイ-スタンガン)』が配備されており、まるでSF映画の光線銃のように電撃を飛ばし、対象を麻痺させることができます。今回特別に、実際に触らせていただけると──」

 

「いや銃じゃん。フツーにやべー飛び道具じゃん」

「まぁ……なぁ、や、ほら、非致死性だから」

「ぜったいウソじゃん。ぜったい出力上げられるじゃん。なに認可してんだよ」

 

 訓練場で光の線をピュインピュイン飛ばしながらキャッキャと喜んでるレポーターにひいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 鈍い音が連続し、吹っ飛ばされた大の男数人が、壁に、棚にと激突する。

 

「ガキひとりにいいようにやられやがってクソどもがァッ!」

 

 事務所内には20人あまりの人間がいたが、その割には静かなものだった。

 

「ほら。お前らさっさと立て。なに社長の前で座り込んでんだ」

 

 痩せぎすの幹部に促され、立ち上がった構成員の前に再び古賀組組長が立った。体格のいい構成員を下から睨みつけ、言葉を区切りながらペチペチと頬を叩く。

 

「損失が、いくらに、なると、思ってんだ? アア゛⁉︎」

 

 叩く強さがどんどん増していく。

 

「てめえらのっ、命のっ、1000万倍の価値がっ、あるんだよ!」

「あ、ちなみにお前らの命は10円計算ね」

「それが文字通り煙と消えたわボケナスがっ‼︎」

 

 最後には思いっきり拳を振り抜いた。構成員の顎が砕け、今度は棚も破壊された。

 

 怒りのおさまらない組長は、顔が腫れ始めてる隣の男に容赦なく拳を入れた。くぐもった声が何度か響き、やがて意識を失ってその場に倒れ込んだ。

 

 その隣の男を組長が睨め付けると、男は短く悲鳴を上げた。組長は舌打ちすると踵を返し、デスクに浅く腰掛ける。

 

 にやにやと笑って見ていた側近が、組長の破れた拳にそっと布を当てた。

 

「それで。どこのどいつだ」

「は、はい! あ、いえ、わかりません……」

「ああ⁉︎」

「まァまァ。ソイツ、能力者だったりした?」

「……いえ、両眼とも薄い青だったので、違うかと」

 

 能力者は異能を使う際、片目の色が変わることがすでに一般にも知れ始めている。さらにグループ内においては、これから能力者とのトラブルが増すことを見越していち早く周知させていた。

 

「能力者だとしても色が変わるほど強い異能ではない、か」

 

 メガネの側近が尖ったアゴを撫でる。

 

「外人の若造……だと?」

「それが単独で、となると心当たりはないですね。むしろ異能持ちでいてくれた方が見つけやすかったかもしれねえ。あの衝撃波の前からこの地域に住んでる外国人に絞ればその内に追い詰めることができたはず。しかし異能なしとなると、現状流れ込んできてるよそ者の数を考えたら、見つけるのは無理がありやす」

「チィ……だが、これで終いにはできねえぞ。おそらく向こうもこれっきりってこともあんめえ」

「ですね」

「必ず見つけ出せ。いいなおめえら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 あの破壊現象から半年が過ぎていた。

 

 なんらかの力を得た者たちもチラホラと増え、そんな話が海外でも広がり、日本へ行きたいという声もより高まった。

 

 さらにある海外掲示板の投稿が、爆発的な話題を呼ぶ。

 

「僕は実際にその現象には立ち会っていないけど、破壊現象があったすぐ後に日本に飛んだんだ。僕の目的は突如現れた謎のオブジェの取材だった。でもここで過ごすうち、どうやら僕も小さな能力を得たらしい。これから大切に育てていきたいね」

 

 この投稿は、これまで企業や研究者の間の静かな熱狂を、一般人にまで一気に押し広げた。

 

 やがてその熱は一大ムーヴメントにまで発展していく。

 

 

 

 能力、異能、超能力、スキル、チカラ、オーラ、マナ、魔法、気。

 

 いろいろな呼び方が世に溢れてる。

 

 まあ残念ながら〝気〟という呼称はマイナーもマイナーだ。ほとんど聞かない。

 

 最近では掲示板からテレビにと〝オド〟の呼称が使われ始めた。

 

 チカラの源をオド。

 

 異能力をオッド・アビリティ。

 

 なんかヨーロッパだかの研究者が仮称したものを逆輸入したんだとか。『オド』とは『魔術の神(オーディン)』に由来するらしい。片目の色が変わるってとこにもかかってるんだと。

 

 まー日本ではオドはともかく、オッド・アビリティはあまり使われてない。異能の方がラクだしね。

 

 それで異能力者たちのことを海外ではよく『オズ』と呼んだりしてるらしい。ただし『オズの魔法使い』というと詐欺師を言うんだとか。なるほどねー。

 

 あとはそう、戦争の引き鉄になり得るという警告から『トリガー』と呼び危険視する者もいる。が、しかし日本では、能力者出現のきっかけになった『トリガール』にあやかり、『能力者(トリガー)』として肯定的に呼ぶ方が圧倒的に多いみたいだ。

 

 ところで。

 

 オレ両目変わるんだけどさ? どういうこと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 破壊された事務所内。

 

 破れた窓から雨が吹き込んでくる。

 

 垂れ下がった蛍光灯が忙しく点滅する。

 

 稲光りが断続的に室内を照らし出す。

 

 床に倒れ込んだ古賀組組長は、デスクに寄りかかることで辛うじて上体を起こしている。

 

 真っ赤な両手はもはや傷口を押さえることもできず、力なく両脇に投げ出されている。

 

 血を吸う余地のなくなったスーツの傷口からは、最後の鼓動に合わせてトプトプと血が、あふれて、こぼれた。

 

 その姿を、暗がりにぼんやり光る薄青い瞳が見つめていた。

 

「そうか、(ぼん)。おめえさんかい……」

「……」

「そ、その程度の、変装と……たかが眼の色が変わったくらいで、ぼ……坊が、わからねえとは、な。────……」

 

 一際大きな稲妻が走り、爆発のようなけたたましい音が轟いた。

 

(でん)おじさん……」

「……さ、さあ、もう行け。坊。ウチの奴らに、見つかる前に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰もいなくなった事務所で、生命の光を失いつつある組長の瞳が虚空を見つめた。

 

「ク、クク……だ、だから言っただろう? 亜嵐人(あらんど)。……ヒーローものなんて、見せんなってよ……くくく…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 あの原色の衝撃波の震源地は『ダウンタウン・トーキョー』だ。

 

 衝撃波によって掻き回された地下奥深くに、原因となった装置がある。

 

 親父は何を企んでいる?

 

 あの都市の厳重な警備システムが潜入を困難にしている。

 

 渋井晴天として堂々といけば入れるかもしれないが……いや、ダメだ。親父は許可しない。

 

 力をつける必要がある。

 

 実戦には困らない。異能犯罪者たちに付き合ってもらおうか。

 

 鉄面(かなめん)を着ける。

 

 製作者が『ノロエ』と名付けたヘッドマウントディスプレイ。

 

 『NO! 漏洩』

 

 マスクで顔を隠せ。誰にも正体を明かすな。とスパイダーマンも言っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 車のテールライトが夜闇に光の軌跡を描くように、高速の軌道をなぞって『根源(オド)』が光の尾を引く。

 

 ビル屋上の欄干に着地。

 

 パトカーのサイレンと赤色灯が、奇妙なオブジェに乱反射。

 

 今日もまた、異能犯罪が起こってる。

 

 のっぺりとした金属の仮面に埋められた、四つの小さなカメラアイの奥からカーチェイスを眺める。

 

 ズームして異能者を観察。

 

 ……手を出すまでもないだろう。

 

 それより今日は、厄介なモノが地下からまた這い出してきている。

 

 視界の隅の小窓にTV中継。

 

 もくもくと土煙が立ち昇る。陥没孔から強靭な緑の鱗に鎧われたグリーンドラゴンと呼ばれる怪物。

 

「テレビクルーが邪魔なんだよなー」

 

 軽く広げた両手から、……──ィィィイインという充填音。両手に輝く気弾が形成される。

 

 それを次々とグリーンドラゴンに向かって投げつけた。

 

「くたばれぇぇぇえええ──っ!」

 

 グリーンドラゴンの上半身が吹っ飛んだのを確認。

 

「見たか。オレのグミ撃ちの威力を。ふぁっふぁっふぁっ。おっと、さっさと離れねば」

 

 高速の軌道にオドのチリが散り散りと。まるでオレの全部が端から世界に解け滲んでいくように。

 

 煙状のオドのパルスが月下の摩天楼に拡散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






おしまい

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