世界を変えるまで...そして変えてから... 作:ペンギンって可愛いですよね
翌日、ハーバードの研究棟に緊迫した空気が流れていた。
一人の若き研究者――アレックス・チェン博士が忽然と姿を消したのだ。
彼は先日の火災で辛くも守られたデータの開発者であり、国際プロジェクトの中核人物。
失踪は一大学の問題では済まされない。
ニュース速報:
「ハーバード大学の若手天才科学者、アレックス・チェン氏が行方不明に。
警察は誘拐の可能性も視野に入れ、捜査を開始――」
コナン:「……やられたな」
灰原:「昨日の脅迫メールの通りよ。次は“頭脳”そのものが狙われた」
服部:「犯人の狙いは技術やない。“知恵”そのものを奪う気や」
現場には争った形跡もなく、部屋には冷却途中だったコーヒーと、パソコンに開きっぱなしのコードだけが残されていた。
コナンは、机の下に落ちていたUSBを拾い上げる。
その表面には、組織のマークに酷似した刻印がうっすらと刻まれていた。
コナン:「これがヒントだな。――行こう、服部」
服部:「おう。もう“探偵ごっこ”じゃ済まへんぞ。今回は命張る覚悟が要るで」
灰原は一瞬だけ目を伏せたが、すぐに顔を上げて言う。
灰原:「……なら私も行くわ。あの組織が動いたってことは、私も関係ある」
コナン:「全員で終わらせよう。今度こそ、“あの影”を消す」
…真相への鍵
USBを解析した結果、ある一つの“数字列”が浮かび上がる。
それは単なるデータコードではなく――日時と場所を示す暗号だった。
灰原:「この座標……ボストン郊外の廃工場。ここがアレックスの監禁場所の可能性が高いわ」
服部:「こっちの準備もせなあかんな。博士、トリック道具はまだあるか?」
阿笠博士(電話越し):「もちろんじゃ!新型のターボエンジン付きスケボーと、電波妨害装置もあるぞい!」
コナン:「行くぞ。今度こそ――あの組織の息の根を止める」
…潜入
夜。
ボストン郊外の霧に包まれた廃工場。そこは今や組織の残党が根城とする“影の実験施設”だった。
コナンたちはFBIと連携し、慎重に工場内へと潜入する。
廃墟に響くのは、風の音と遠くで唸るジェネレーターの低音だけ。
服部(無線):「こっちは東棟の通路に入った。人影は……まだや」
灰原:「気をつけて。熱源反応は三つ。どれも武装してる可能性があるわ」
阿笠博士の新型メガネに搭載された熱源センサーが、警戒すべきポイントを示す。
コナン:「……あの部屋だ。奥の隔離室、そこにアレックス博士がいる」
――バンッ!
突如、銃声。
コナンたちが身を隠す前に、一人の男が通路奥から飛び出す。
黒服の男:「来ると思ったぞ、“名探偵”」
服部:「やかましいわ。そっちが呼んだんやろ!」
コナンはキック力増強シューズで鉄パイプを蹴り飛ばし、男の銃を弾き飛ばす。
瞬間、灰原が投げた閃光弾が爆ぜ、視界が真っ白に。
服部:「今やっ!!」
暗闇の中、コナンが鍵をこじ開けて、拘束されたアレックス博士を発見する。
アレックス:「くっ……君たちは……?」
コナン:「“探偵”です。助けに来ました」
…協力者
脱出目前、廃工場の出口に一人の女が立っていた。
黒のコートに身を包み、銀のピアスが薄明かりに光る――ベルモットだった。
服部:「チッ……よりによってアンタかい!」
コナンがすっと手を上げて服部を止める。
コナン:「待て、服部。――彼女は“こっち側”だ」
服部:「はぁ!? 味方っちゅうことか?」
ベルモットは微笑む。
ベルモット:「ま、全面的に信じてもらえるとは思ってないけど……今回は“あっち”に潜り込んで、情報を流してたのよ。あなたたちが来るってことも、ちゃんと伝えておいた」
灰原:「……あなたが“組織の内通者”として動いてくれたのね」
ベルモット:「ええ。今の組織は、表向きは崩壊したことになってるけど……残党が再編しようとしてる。しかも、過去とは違う形で」
コナン:「“上”が動き出してる、ってことか」
ベルモットは真剣な目で頷いた。
ベルモット:「そう。アレックスを狙ったのは、新しい組織の“指導者層”……おそらく“ナンバーズ”と呼ばれる連中よ」
服部:「名前からしてヤバそうやな……」
ベルモット:「今はこれ以上深入りできない。でも近いうち、また連絡するわ」
そう言って、ベルモットは霧の中に消えていった。
その背中に、灰原は小さく呟く。
灰原:「……ありがとう、シャロン」
コナンは静かにうなずき、前を向いた。
コナン:「まだ戦いは続く。けど、俺たちには“協力者”がいる」
… 静かな夜、そして
キャンパスに戻った夜。
アレックス博士は保護され、研究プロジェクトも無事に再開のめどが立った。
服部:「名探偵、ここまで来たら……そろそろ一休みしてもええんやないか?」
コナン:「ああ、でも……それは全てが終わってからでいい」
灰原:「あなたって本当に不器用よね。でも、そういうところが……嫌いじゃないわ」
一瞬、コナンは照れたように目を逸らし――
コナン:「さあ、戻ろう。未来は、まだ作れる」
ハーバード構内、夜。
コナンは人気のない渡り廊下で、非通知の通話を受け取った。
ベルモット(通話):「時間がないわ、“シルバーブレット”。《No.3》が動いた」
コナン:「コードネームは?」
ベルモット:「“アトラス”。元技術顧問。……そして、シェリーの“かつての同僚”よ」
コナンの表情が硬くなる。
ベルモット:「奴の目的は、灰原哀……じゃない。“シェリー”の脳に残された、APTX4869の記憶そのもの」
コナン:「……直接狙ってくるってことか」
ベルモット:「今夜、奴は動く。場所は、研究棟・第4実験室。
――シェリーを、必ず守って」
通話が切れたあと、コナンは夜空を見上げ、静かに呟く。
コナン:「分かってる。守るさ……彼女も、未来も」
⸻
…襲撃と反撃
深夜、ハーバード研究棟。
実験室にて一人、作業する灰原の背後に、気配なく現れる黒い影――アトラス。
アトラス:「お久しぶりだな、シェリー」
灰原:「……“久しぶり”って言うには、少し前に顔を合わせたばかりじゃなかった?」
アトラス:「フフ……言葉遊びは健在か」
彼が手にしたのは、神経抑制剤の注射器。
だが次の瞬間――
ドンッ!
金属音と共に天井から降ってきたのは、コナン。
キック力増強シューズで足元の台車を弾き、アトラスの手元を狙う。
アトラス:「“名探偵”か。お前ら、いつも邪魔をする」
服部も別ルートから突入。
煙幕と閃光弾が炸裂し、実験室は一時混乱状態に。
灰原:「……私の脳を欲しがるなんて、どうかしてるわ。あなたはもう過去の人よ」
コナン:「灰原、伏せろ!」
服部:「そら終わりや、アトラス!」
拘束用ネットが発動し、アトラスの身動きが封じられる。
アトラス:「……なぜ、組織はこんなガキに……」
コナン:「俺たちはもう“ガキ”じゃない。
守るものがある限り、何度だって立ち向かう」
⸻
…ベルモットの本音
翌朝、キャンパスの噴水前。
事件は極秘裏に収束。アトラスはFBIに引き渡された。
灰原は一人、スマホを見つめていた。
そこに届いたメール。差出人は伏せられているが――誰からかは分かる。
『よくやったわ、シェリー。
あの頃のあなたじゃない。今のあなたは、もう未来を選んでいる。
それが見られて……私は、少しだけ救われた。
——V』
灰原:「……ふふ、また“シェリー”って。こっちはもう“灰原哀”なのに」
コナン:「あの人なりの愛情表現なんだろ」
服部:「なんや、お前らええ雰囲気やないか」
灰原:「からかわないで。……でも、少しだけ、嬉しかった」
風が吹く。
陽射しがハーバードの街路に降り注ぎ、戦いの影を洗い流していく。
コナン:「まだ完全に終わったわけじゃない。
けど……俺たちには、仲間がいる。今はそれで十分だ」
――未来は、選べる。
たとえどんな過去を背負っていても。