世界を変えるまで...そして変えてから...   作:ペンギンって可愛いですよね

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第八話「世界の揺らぎ」

世界規模の余波

 

灰原哀――宮野志保が正体を明かした数日後、世界は激しく揺れていた。

彼女のスピーチは称賛と共感を集める一方で、各国の政府や組織を警戒させた。

 

・ある国の閣僚:「彼女の知識は兵器にも応用可能だ。自由に活動させることは危険」

・ある企業のCEO:「宮野博士の研究成果を独占するために、どれほどの国が動くか分からない」

 

称賛の裏で、政治的駆け引きと利権争いが動き始めていた。

 

 

新たな脅威

 

灰原が研究所に戻ると、机の上に一通の封筒が置かれていた。

差出人不明の手紙。

 

そこには、こう記されていた。

 

「世界を救う科学者か、それとも世界を滅ぼす科学者か。

選ぶのは君じゃない。我々だ」

 

震える指で手紙を握りつぶす。

正体を明かした瞬間から、彼女は「世界の所有物」のように扱われ始めていた。

 

「……やっぱり、私は囚われの身のままなのね」

灰原は小さくつぶやいた。

 

 

江戸川コナン(工藤新一)の視点

 

ニュースやSNSで騒がれる声を見ながら、新一は苛立ちを覚えていた。

「世界を救った天才」ではなく「危険な科学者」として語る声が、あまりに多すぎたからだ。

 

「……世間なんて、勝手なもんだよな」

 

彼女は罪を認め、前を向いた。

それでも、過去ばかりを掘り返す人間は尽きない。

 

「灰原は、もう十分に償ってる。なのに……」

机を叩く拳に力がこもる。

 

そのとき、新一のスマホが震えた。

表示されたのは「安室透」の名前。

 

 

安室透からの警告

 

電話口の声は低く、真剣そのものだった。

 

「工藤君。宮野志保――彼女を狙う動きが、水面下で始まっている」

 

「……!」

 

「公安だけじゃない。各国の諜報機関、軍事産業、そして“残党”だ」

「残党……黒の組織の、か」

 

「彼女はもう、ただの科学者じゃない。世界が奪い合う“象徴”なんだ」

 

新一は奥歯を噛み締めた。

世界を救ったはずの科学が、再び人を傷つける火種になろうとしている。

 

 

控室での志保と新一

 

翌晩、控室にて。

志保は静かにパソコンを閉じ、新一に向き直った。

 

「……どうやら、思ったより面倒なことになりそうね」

 

「わかってる。けど、おまえはもう一人じゃない」

 

新一の瞳は真っ直ぐだった。

「世界が敵になったとしても、俺は――いや、俺たちは、おまえを守る」

 

志保はふっと目を伏せ、わずかに笑った。

「……あなたって、ほんと無茶ばかり言うのね」

 

けれど、その笑みは、確かな決意の色を帯びていた。

 

 

世界の選択

 

灰原志保という存在は、世界に二つの問いを突きつけた。

 

「過去に囚われた科学者を罰するべきか」

「未来を切り開く科学者を信じるべきか」

 

世界は分断され、街頭では彼女を支持するデモと、排斥を訴えるデモが同時に行われていた。

 

そんな中、彼女は新たな研究計画を発表する。

それは――「人類の未来を支える医療技術」。

 

会見で語られた言葉は、再び世界を揺さぶることになる。

 

 

新たな発表

 

国際学会の壇上。

灰原志保――いや、世界中が「宮野博士」と呼ぶ彼女は、静かな声で新たな研究計画を発表した。

 

「私がこれから取り組むのは、“命を救うための遺伝子治療技術”です」

 

会場がどよめく。

彼女の研究は、ガンや難病の根治治療に繋がる可能性を秘めていた。

 

「私は過去に、人を壊す薬を作りました。

 だからこそ今度は、人を救う薬を作りたい。

 それが――私の贖罪です」

 

沈黙のあと、割れんばかりの拍手が会場を包んだ。

 

 

世界の反応

 

・マスコミ:「かつて“死”を生んだ科学者が、今は“生”を選んだ」

・SNS:「#贖罪の科学」「#ShihosFuture」がトレンド入り。

・若い研究者たちは「彼女に続きたい」と声を上げる一方、政治家の中には「技術流出の危険」を叫ぶ者もいた。

 

灰原は新たな希望の象徴となると同時に、さらなる警戒の対象となった。

 

 

襲い来る影

 

その夜。

研究所の裏口に、不審な影が忍び寄る。

 

黒ずくめの男たち――かつての「黒の組織」の残党。

彼らはすでに新しい旗印を掲げ、「科学の独占」を掲げる秘密組織を形成していた。

 

「宮野志保は我々のものだ。必ず取り戻せ」

 

銃声が夜を裂いた。

研究所の警備員が倒れる。

 

志保の研究と命を狙う“第二の組織”の動きが、ついに表面化した。

 

 

江戸川コナン(工藤新一)の決断

 

研究所の緊急警報が鳴り響き、新一は灰原の部屋へ駆け込む。

「灰原、急げ! ここはもう安全じゃない!」

 

志保は落ち着いた表情で、ノートPCとUSBを手にしていた。

「これは渡せない……私が生きてきた意味だから」

 

「……だからって、おまえまで危険にさらすことはねぇだろ!」

 

短い言い合いの後、新一は彼女の腕を強く掴んだ。

「いいか。科学は奪われても、また作り直せる。でも、おまえの命は代わりがきかないんだ!」

 

その瞳に宿る決意に、志保は小さく息を呑んだ。

「……ほんと、あなたってずるいわね」

 

 

赤井秀一と安室透の介入

 

研究所の屋上。

スナイパーライフルの銃口が、闇に潜む敵の一人を仕留める。

 

「……悪いが、彼女は渡さない」

赤井秀一の冷静な声が夜に響く。

 

同時に、研究所正面では黒塗りの車が急停車。

安室透が公安の部隊を率いて突入する。

 

「ここはもう戦場だ。工藤君、宮野志保を必ず守れ!」

 

新一は頷き、灰原を背に庇いながら走り出した。

 

 

志保の決意

 

逃走の途中。

志保はふと立ち止まり、新一に言った。

 

「ねぇ、工藤くん……もし私が捕まったら」

 

「縁起でもねぇこと言うな!」

 

「……それでも、私の研究を守って。たとえ私じゃなくても、未来に残してほしいの」

 

その瞳は迷いがなく、ただまっすぐ未来を見据えていた。

 

新一は一瞬言葉を失い――そして、強く答えた。

「守るさ。おまえも、研究も、未来も。全部だ」

 

 

銃声、爆発音、警報。

世界を変える少女は、再び“闇”に狙われた。

 

だが今度は、一人ではない。

彼女を守る仲間たちと共に、“贖罪の科学”を未来へと繋げるために戦うのだ。

 

闇に包まれた森

 

銃声が木々を裂いた。

火薬の匂いと緊張が空気を満たす。

 

新一は灰原を背中に庇い、拳銃を構える敵に鋭い視線を投げた。

「数は……五、いや六人か」

 

灰原は冷静に周囲を見渡す。

「正面だけじゃない、右の茂みにもいる……足音が二つ」

 

「……さすがだな」

新一は短く笑う。

「だったら、背中合わせでいくぞ」

 

志保は驚いたように目を見開いた。

だがすぐに、彼の背中に自分の背中を合わせる。

 

「……わかったわ。逃げるためじゃなく、生き残るためにね、工藤くん」

 

 

背中合わせの戦い

 

敵が一斉に突撃してくる。

新一は咄嗟に拾った棒を手にし、迫る影を叩き伏せた。

 

その瞬間、志保が後ろから声を上げる。

「工藤くん、後ろ!」

 

新一が振り返る間もなく、志保の投げた小石が敵の額を直撃。

わずかな隙をついて、新一が蹴りを叩き込む。

 

「ナイスだ、灰原!」

「……言ったでしょ。私も守るって」

 

二人は背中を預け合い、互いの死角を補い続けた。

呼吸も、動きも、不思議と噛み合っていた。

 

 

心の声

 

敵を倒しながら、新一は心の中で呟く。

 

(怖いはずなのに……今は妙に落ち着いてる。

 背中に感じるぬくもりが、俺に力をくれる)

 

一方、灰原もまた思っていた。

 

(守られてるはずなのに……私も工藤くんを支えてる。

 ずっと一人で生きるしかないと思ってたのに。

 ――こんなに、誰かを信じられるなんて)

 

 

窮地の瞬間

 

銃声。

一発が新一の頬をかすめ、木の幹に弾痕を刻む。

 

志保が反射的に新一の腕を引いた。

「危ない!」

 

二人は倒れ込むように地面に転がり、そのまま互いの手を強く握り合った。

 

息が乱れる中、新一は苦笑する。

「助かった……。やっぱり俺だけじゃ無理だな」

 

志保は肩で息をしながらも、微かに微笑んだ。

「だから言ったでしょ、工藤くん。互いに守り合うって」

 

 

決意の抱擁

 

再び敵が押し寄せる。

新一は志保を抱き寄せ、耳元で囁いた。

 

「絶対におまえを渡さない」

 

志保はその腕の強さを感じながら、小さく答える。

「私も……工藤くんを一人にはしない。

 もし工藤くんが倒れそうになったら、今度は私が支える」

 

背中合わせで戦っていた二人が、今度は同じ方向を見据えて立ち上がる。

 

「さあ、行こう。未来のために」

 

 

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