四国沖及び九州南端の海域の制海権確保と本土防衛に成功した自衛隊は、損傷を受けた各艦隊の整備と次への攻撃の準備に取りかかっていた。マリアナ諸島攻略に於いては輸送艦しもきたを洋上拠点として行うため、輸送量の関係で少数精鋭による攻略となった。マリアナ諸島攻略に参加しない各鎮守府の有力艦隊は引き続き九州周辺の制海権の確保を行い、佐世保にいる在日米軍残存艦の1隻である揚陸艦ニューオーリンズを外洋進出できるようにする事を当面の目標とした。これまで沿岸防衛のために分散配置していた横須賀と呉の艦隊を集中運用すれば海域奪還は十分可能と判断していた。そして自衛隊による海域奪還成功を受けてアメリカ大使館が在日米軍の一部を臨時に自衛隊指揮下に組み込むとともに、日本にいるアメリカ人の艦娘適性者の一時的な自衛隊編入を許可したのだった。
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「ところで提督?私達の艦隊にもアメリカの人が来るのかしら?」
執務室で食後のお茶を淹れている雲龍がふと尋ねてきた。大島鎮守府でもアメリカ人が来るのではないかと話題になっており、どんな人がどの艦隊に配属されるのかの予想で盛り上がっていた。
「残念ながら暫くの間は来ない事になっているよ。まぁ、当面の間は後方の艦隊に配置されるんじゃないかな?」
「そう。」
「大規模作戦も近いし、流石にここみたいな最前線にいきなり配置はされないだろう。」
「そう。ところで、来週から第3艦隊全員で本土に行く予定みたいだけど何しに行く予定なの?」
「ああ、習志野に行くんだ。ちょっと思いついたことがあってね。」
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大島鎮守府第3艦隊の面々は横須賀基地に上陸後、自衛隊のマイクロバスに乗り陸上自衛隊習志野駐屯地へと向かった。鎮守府出発時から顔色の悪い提督を気にしつつ雲龍は久々の本土の街並みを車窓から眺めていると、いつの間にか眠ってしまった比叡が肩にもたれかかってきた。バスの中に意識を向けると、断続して響くシャッター音と鉛筆の擦れる音、そして規則的な寝息が車内を支配していた。暫くの間比叡をそのままにしていたが、抱きつくように腕を回してきた辺りでふと魔が差して頬をツンツンしていると比叡の意識が徐々に浮上してきた。
「んうぇ…?」
「おはよう比叡。」
寝惚け気味の比叡は、至近距離にある雲龍の顔を暫く眺めていたが雲龍に抱きついているような体勢を認識すると飛び上がるように離れた。
「ひぇー!?雲龍さんすみません!!変な体勢でもたれかかっちゃって!!」
「ふふ、大丈夫よ。まだ着くまで時間あるからもう少し休んでてもいいのよ?」
\パシャパシャ/\サッサッサッサッ/
「青葉、見ちゃいました。」
「うっひょ〜!比叡さんもう少しだけさっきの体勢とってくれません!?」
「ヒェーッ!?」
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習志野駐屯地に到着した第3艦隊は(主に雲龍が)いろいろと注目を浴びつつ割り当てられた部屋で待機をしていた。これから行われる訓練の事前教育のためであり、現在は担当教官が到着するのを待っている形だった。そして担当教官が到着すると挨拶も程々に事前教育が始まるといったところで、もう一人の受講者の入室が促された。扉の磨り硝子越しにシルエットが見えているため、予めスタンバイしていたのだろう。チラッと提督を見ると何やら胃をおさえていた。
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3852:名無しの転生者
はぇ~ここが習志野駐屯地ですか
記憶の中とあまり変わらないな(元第1空挺団並感)
3853:名無しの転生者
これが21世紀の空挺部隊ですか、大したものですね(元日本海軍空挺部隊)
3854:名無しの転生者
お、やべぇ方達が集まってるな
3855:名無しの転生者
習志野に教育に来たってことは、空挺降下でもするのかな
3856:名無しの転生者
案外特殊部隊の訓練だったりして
3857:雲龍
なんか事前教育の前に一緒に受講する人もいるみたいですね
3858:名無しの転生者
ああ、扉の窓から影が見えるな
3859:名無しの転生者
…頭に見覚えがある棒がついてるように見えるんだが、気のせいかな?
3860:名無しの転生者
あの孤独なSilhouetteは…!?
3861:名無しの転生者
アイオワじゃねぇか!?
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第3艦隊の雲龍を除く全員がアイオワから苦手な英語で話しかけられると身構えていたが、飛び出してきたのは日本語の文章の一部を英語にした、日本訛りの英語だったため拍子抜けした。というのもアイオワはアメリカ人永住者の娘であるらしく生まれも育ちも日本なのだそうで、アメリカには小さい頃に1回行ったきりらしい。対するアイオワも元来の内気な性格故に緊張していたが、雲龍を見たときの衝撃で緊張が吹き飛んだのかかなり早く艦隊に馴染んでいった。
「2週間だけだけど、よろしく。」
「What?Meは今日からAdmiral高杉のFleet所属よ?」
「え、そうだったの?」
雲龍が提督をチラッと見ると「実は…」と切り出した。
「急遽第3艦隊に配属されてね、次の攻略作戦から参加させるようにと命令を受けてね。」
なるほど、具合が悪そうだったのはこれが原因だったのか。
時は進んで2週間後、アイオワを加えた第3艦隊は入間基地にいた。マリアナ諸島攻略部隊を乗せた輸送艦しもきたは、日米の残存艦である護衛艦ゆうぎりとミサイル駆逐艦ラルフ・ジョンソンを引き連れて先発艦隊として既に横須賀を出発していた。第3艦隊は入間基地から硫黄島航空基地へ移動した後に現地にて攻略部隊に合流する予定である。
「ちょっと待ってください!?提督も一緒に来るんですか!?」
「流石に危ないと、思いますけど。」
「君たちがいるところが世界一安全な場所だと確信している。それに、雲龍のエアカバーもあることだしな。」
先発艦隊は途中深海棲艦による攻撃をうけたものの難なく撃退し攻略の為の洋上拠点の設営に成功した。輸送艦しもきたには12人の艦娘が乗艦しており、戦艦大和や空母赤城をはじめ錚々たる顔ぶれが揃っていた。予定通り艦隊は攻撃を開始し戦闘海域で第3艦隊と合流する事にした。
「先発艦隊が予定通り攻撃を開始したが、飛行場目前で足止めされているらしい。主な敵は戦艦水鬼1、戦艦棲姫2、空母棲姫2、こちらは大破艦こそいないが損傷艦多数とのことだ。」
硫黄島から戦闘海域までの移動中に無線機からの情報を提督が纏めているときだった。寝ていた川内が突如飛び起きた。尚現在昼である。
「敵の匂いだ。敵の匂いがする。」
「おそらく敵の飛行場姫ね。提督、パイロットの方に後ろの貨物扉を開いてくれるようにお願いできる?」
「わかった。みんなも減圧に備えてくれ。」
貨物室の減圧準備を終え、後部貨物扉が開くと同時に雲龍から震電改8機が発艦した。飛行場姫から発進した戦闘機隊は悠長に飛んでくる人類の四発機に襲いかかろうとしたところで直上より奇襲攻撃を受けた。24機の戦闘機のうち半数以上が突如爆散し、混乱した隙を突いて震電改がその機動力で蹂躙し飛行場姫へ報告する間もなく編隊は全滅した。
「敵の迎撃が予想より早いな。よし、予定変更だ。川内、早霜、秋雲、少し早いがそろそろ降下準備をしよう。」
輸送機が戦闘海域に接近しつつあるのを空母棲姫が視認すると指揮下の艦艇に対空射撃を命じた。対空弾幕が輸送機を襲うがパイロットは臆することなく突っ込んで行き後部貨物扉を開き降下準備態勢に入った。
「大和!輸送機が狙われている!」
大和としてもなんとか援護させたいところではあったが、敵の戦力に対して現状戦力に余裕がないためどうするか迷っていると、輸送機から飛んできた8機の爆戦が対空射撃をしている艦艇を次々と制圧していった。すかさず対空弾幕が薄くなったところで3つの影が輸送機から分離し低空で落下傘を開いた。敵艦隊のど真ん中に勢いそのままに着水した川内、早霜、秋雲の3人は、落下傘を切り離すと同時に手に持っていた数珠繋ぎにした爆雷を腕を振り払いながらばら撒き、取り囲んでいた深海棲艦を纏めて薙ぎ払った。3人が無事に着水したのを見届けた空自C-130Hは超重爆飛行場姫に向けて進撃を続行した。