欧州派遣艦隊はその任務を完了し、日本への帰路についた。途中の寄港地で歓待を受けるなどあったが無事に日本に到着し、編成解除式が行われた後に各艦隊はそれぞれの配属場所に戻った。
7月、雲龍は実家に帰省していた。派遣任務が終了した後に、派遣人員全員に休養の為(派遣中に溜まった代休消化も兼ねて)の長期休暇を命じられていた。
雲龍が家のインターホンを押すと間髪入れずにドアが開き、父の厚いハグと母の労いを受けた。両親は娘の無事を自身で直接確認できて大号泣していた。
それから数日後、雲龍はラフな私服に身を包んでいた。
「お母さん、ちょっと出かけてくるね」
「あら、急ね。何かあった?送ってくわよ?」
「友達(龍鳳)に会いに行くだけだから大丈夫だよ。ありがとう」
「気をつけてらっしゃい」
それから数日後、雲龍はお洒落な夏服とネックレスを身につけていた。
「お母さん、ちょっと出かけてくるね」
「あら、あらあらまあまあ。…今日は泊まりでも全然大丈夫だから。お父さんにはお母さんから言っておくわね」
「ありがとう。行ってきます」
「気をつけてね、いってらっしゃい」
雲龍が駅に着くと、これまたお洒落な格好をした高杉提督が日陰に佇んでいた。
「高杉さんお待たせ。少し待たせすぎたかしら」
「いやいや、ちょうど着いたばかりさ。じゃ、行こっか」
「ネックレス、今日の君に凄く似合ってるよ」
「ふふ、ありがとう。…本当にありがとう、買ってくれて」
2人はそのまま東京方面行きの電車に乗っていった。
幸い電車はそれ程混んではなく、2人は隣同士で座席に座ることができた。
車内冷房の程よい涼しさと窓から射し込む日光の程よい暖かさで雲龍がウトウトし始めた。
「着いたら起こしてあげるよ」
「ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうわ」
そう言うと雲龍は高杉に体重をかけてきた。
高杉にとっての幸せな約1時間は一瞬で過ぎてしまい、東京駅に着いてしまった。
「千鶴(雲龍の本名)さん、もう着いたよ」
「う〜ん」
雲龍はなんだかんだ有名人なので、情報保全も兼ねて公共の場では本名を使うようにしていた。
戦前よりも駅利用者が減ったとはいえ、流石は東京駅で本当に減ったのか疑問になる程の混み具合だった。
実は、インド洋を解放してからは止まっていた海外と国内の物流も少しずつ動き始めており、東京をはじめとした各主要都市では電車の他にバス等の公共交通機関も徐々に復活し、人と物の動きが少しずつ活発になり始めていた。
高杉は寝ぼけ気味の雲龍に少しドキリとしつつも逸れないよう手を繋いで歩いていた。
今日は1日東京観光の予定で、高杉と雲龍は観光地を練り歩いた。
この間も逸れないようずっと手を繋いでおり、雲龍も気を利かせて腕に抱き着くような形で歩いていた。
雲龍は持っていた扇子をパタパタ仰ぎ、時折高杉にもバタバタ仰いだりして夏を楽しんでいた。
高杉は幸せが倍増し時間を忘れて観光を楽しみ、雲龍も高杉との時間が楽しく時間を忘れて楽しんでいた。
日も暮れて暫くして、そろそろ帰らないとと時間を確認すると、もう21時を過ぎていた。電車に関しては既に終電は逃していた。尚、エネルギー資源節約のためダイヤは縮小改正されていた。
やってしまったと高杉が内心慌てていると、雲龍が察したかのように言った。
「終電逃しちゃった?」
「ああ、すまない千鶴さん。今からご両親に連絡するよ」
「大丈夫よ高杉さん。今日は、明日まで大丈夫よ」
「え」
「だから、まだ、一緒にいましょう?」
「…わかった。じゃあ、まずは泊まれる所を確保しよう」
2人は近くのビジネスホテルに泊まる事にした。
「お部屋はどうしますか?」
「ふt「1部屋でお願いします」…」
「畏まりました。ベッドなのですが…」
「シングル!シングルでお願いします!」
「申し訳ございません。ただいまシングルのお部屋が満室でして、ダブルのみご利用できる状態でして」
「…」
「ダブルの部屋でお願いします」
「畏まりました。…こちらルームキーとなります」
「ありがとうございます」
「ごゆっくり」
ウォークインを済ませた2人は一先ず部屋に向かうが、移動間高杉はガチガチに固まっていた。
「?高杉さんどうかしたの?」
「千鶴さんはいいのかい?私と同部屋で」
「?ええ。何か問題でもあったかしら?」
さも当然でしょう、という表情でそう言う雲龍だった。
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6915:名無しの転生者
うおおお!盛り上がって参りました!
6916:名無しの転生者
いいぞ〜これ
6917:名無しの転生者
ホテルの部屋はどうするんです?2部屋とりますか?
6918:名無しの転生者
いや、2部屋はお金がかかるからここは1部屋でだな
6919:名無しの転生者
そうだな、それがいい!なんならベッドもシングルよりダブルだな
6920:名無しの転生者
ダブルなら寝坊も防げるしな
6921:雲龍
なるほど、確かに1日観光分のお金しか持ってきてなかったからそうします
6922:名無しの転生者
いいぞ〜これ
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部屋に着いて一息ついた2人だったが、時刻は22時程でまだ眠気は襲ってこなかった。
緊張でガチガチに固まっている高杉をみて雲龍が切り出した。
「高杉さん。少し散歩しましょう?」
ホテルを出た2人は水辺の舗装路を散歩していた。
今でも節電の為に必要最小限の電力使用に抑えている東京は、雲一つない夜空に輝く星々に照らされて白く映し出されていた。
「大島とは見え具合が違うけど、今日は月も星も綺麗ね」
「…そうだね」
「…」
「…」
暫く沈黙が続き、高杉も何か言おうとしたが、今は2人でゆっくり散歩するこの時間を楽しもうと思った。
夜は街行く人はほぼいないが、昼と同様に手を繋いで歩いていた。昼との違いは、今回は雲龍から高杉の手を繋いだことだった。
高杉の緊張もある程度解れたところでホテルに戻って来た。
「千鶴さん、シャワーどっちから入る?」
「うーん。じゃあ、私から入るね」
ザーッとシャワー室から響く音に、あまり意識しない様にする程にドギマギしていると不意に音が消え、続いて布が擦れる音が聞こえてきた。
「次どうぞ」
そう言って雲龍が出てきた。
「ッ!?あ、ありがとう」
雲龍は普段の長い三つ編みを下ろした足首まで届きそうなストレートで、ホテルが用意した寝間着を着ていた。高杉は普段とのギャップと寝間着姿、そして火照った姿にドキリとした。
理性を保ってシャワー室に入ると同時に雲龍は髪の手入れを始めた。
シャワーを浴び終えて出てみると、雲龍は髪の手入れに苦戦しているようだった。
「う〜ん…」
コームで髪の絡まりをほぐしているがなかなか上手くいってないようで、途中で動きが止まってしまった。
「よければ手伝おうか?」
「いいの高杉さん?手伝ってくれたら嬉しいな」
コームを受け取ると雲龍の長い髪の絡まりを優しくほどき始めた。続いてミスト、ミルク、オイルを馴染ませ、ドライヤーの温風と冷風を使い分けて髪を乾かした。
「ありがとう高杉さん」
暫くして2人は同じベッドに横になっていた。最初は高杉がやっぱり備え付けの椅子か床で寝ると言ったが、雲龍の「寝ないの?一緒に寝るよね」という反応に負けて一緒に横になることになった。
高杉は隣から感じる息遣い、存在感と布の擦れる音等の要因からなかなか寝付けないでいた。
「高杉さん、今日はありがとう」
「こっちこそ、私の誘いに応えてくれてありがとうと思ってるよ」
「ふふ、今日の観光は久しぶりに戦いを忘れて過ごせたの。高杉さんと一緒にいると時間を忘れて、目一杯日常を楽しむ事ができたわ」
「私も千鶴さんと一緒に過ごすと、この時間がずっと続けば良いのにって何度も思うよ」
「ねぇ、高杉さん」
不意に雲龍がこちらに体ごと向いてきた。
「なんだい?」
「下の名前で呼んでも良いかしら?」
「ああ!全然いいとも、千鶴さん」
「”さん“は無しで、英作さん」
「…千鶴」
「はい、英作さん」
2人は向き合ってお互いの名前を呼び合った。
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一方その頃、大島鎮守府では基地航空隊が出撃準備を整えていた。
突如、硫黄島のレーダーサイトと大島鎮守府基地航空隊のAWACSが本土に向かう有力な深海棲艦の空母機動部隊を捉えたのだった。
硫黄島に配置されていた1個飛行隊がスクランブル発進したが敵新型機の前に容易く撃破されてしまった。硫黄島には目もくれず、敵機動部隊は真っすぐに大島方向に前進を続けていた。
「(提督と雲龍の邪魔を)やらせはせぬ。やらせはせぬぞ!」
雲龍航空隊と基地航空隊の雲龍の艤装から出てきた妖精達はそう意気込んで其々の機体に乗り込んでいった。
敵機動部隊が最初の1機を発艦させた所で、飛行場から迎撃部隊が飛び上がった。
速度差から先に接敵するのは雲龍航空隊48機ではなく基地航空隊56機となった。
基地航空隊の機体は妖精技術部が送り出す双発新型ジェット戦闘機だった。兵装の機内搭載等による高いステルス性能と超音速巡航能力を持つ。また、レーダー波吸収材だけでなくレーダー波吸収構造も採用している。そして、3枚の推力偏向パドルを搭載する事で非常に高い機動性を有する。肝心の兵装は胴体兵装倉に短距離対空ミサイル2発と中距離対空ミサイル4発、固定武装で20mmガトリング砲を装備している。名称は「心神」。
続く雲龍航空隊の機体も妖精技術部が送り出す双発新型ジェット戦闘機だった。こちらは本格的なマルチロール機で速度性能はあまり重視しないステルス機であった。エリアルールを適用した2枚の垂直尾翼と後退角の小さい主翼と大きなLERXの組み合わせが特徴の機体で、固定武装の20mmガトリング砲の他多数の武装を搭載可能。今回は対艦ミサイルとクイックシンクの混用となっている。名称は「ライノ」と珍しく横文字。
超音速巡航によっていち早く戦域に到着した心神は搭載するレーダーで敵編隊を捉え、兵装倉の扉を開き中距離対空ミサイルを次々と発射した。敵新型機は第一世代ジェット戦闘機に手が届くかどうかレベルの機体ではあったが、ミサイルを検知する能力は無く、次々と大空に黒い花を咲かせていった。
続いて両者は近接戦に移行した。敵護衛機は何とか心神に対し有利な位置につこうとしたが、高い機動性能に翻弄されていた。続け様に短距離対空ミサイルとガトリング砲を叩き込まれて次々と撃墜され、近接戦に移行してからものの3分も経たずに敵は空から姿を消した。
「ゼ、全滅!?300機以上ノ編隊ガ全滅!?3分モ経タズニカ!?タッタ数機ノ敵二、300機以上モ!バケモノカ…」
旗艦のヲ級改Flagshipは恐れ慄いた。僚艦のヲ級改Flagship3隻も同様だったようで、動揺しているのが見て取れた。尚、敵が数機と誤認したのは高いステルス性能と有視界で確認できたのが10機未満だったからだった。
これ以上の攻撃は艦隊を危険に晒すと考えた旗艦は撤退を決断した。
「反転180度!全艦離脱!」
しかし、その判断は些か遅かった。
ライノ48機の内、対艦ミサイルを装備した44機が翼下から対艦ミサイルを次々と発射していた。
発射されたミサイルは亜音速から超音速へと加速し、真っ直ぐ目標へと進んでいき、まず艦体外周の駆逐艦が被弾した。
各艦が必死に対空砲火を撃ち上げるが、この超音速対艦ミサイルはステルス性を持つためレーダーでは簡単には捉えられず、また海面スレスレを飛行してくるため撃墜が困難だった。
次々と被弾していき最終的に空母4隻とその盾になっていたズダボロの戦艦棲姫4隻が残った。
攻撃が止んだと思った瞬間足元付近の海面に何かが高速で降ってきたと思った瞬間、海面直下で爆発が発生しバブルパルスによって艦底部を破壊され8隻は瞬く間に撃沈された。