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想像以上の激闘となったファイナルトーナメント1回戦、カブさんとの戦いが終わりホテルに帰った私は今日戦ったポケモンたちを回復させていた。特に酷使することになったグライオンとドオーを念入りにマッサージしていると、ハピナスの元気がない。
どうやら、コータスの”ボディプレス”を受けたことで体力が無くなり、ドオーやポリゴン2だけで特殊技を受ける事になったのを申し訳なく思っているようだった。どう考えても油断していた私が悪いのだが、もっと耐久力があればと悔やんでいるようだった。
思えばガラルに帰って来て以来、ハピナスが大ダメージを受けることすら稀だった。どうやら、受け止めて当然だという認識になっているみたいだ。かわいいやつだ。いつもは私の方が撫でられているが、たまにはこっちから撫でてやろう。
ただ、実際問題として私の手持ちは圧倒的にタイプも戦い方も被ってしまっている。タイプでいえば、じめんタイプが3体、ノーマル単タイプが2体という偏り方のせいで、グライオンやドオーの弱点であるみずタイプやこおりタイプを半減できるポケモンはいない。生態的にも似たポケモンのほうが育てやすいこともあって、ヌオーとドオーというあまりにひどいキャラ被りを起こしている。
可能な限り対策はしているものの、ゲーム本編ならよく使われる典型的な受け対策、ちょうはつ・アンコール使いや積み技エース、もしくは状態異常無効みたいなポケモンに文字通り何もできない可能性すらある。
ここがゲームだったら、削りを入れた後での全抜きアタッカー、相性を覆す一撃技、数値と特性で圧倒するいわゆる準伝説ポケモンなんかを育て上げるだろう。
しかし、彼らと心を通わせ、我慢を強いるような戦術を実行させるのにどれだけの力が必要だろうか。これが勝利につながると分からなければ、ひたすらに相手の技に耐え続けるというのはあまりの苦行だろう。
今の私のポケモンたちは、その行動がバトル全体にどう影響するかを時間を掛けて教え込んだポケモンたちだ。だからこそ、反撃もせずにただ耐えるような時間をバトルの一部であるとしてキチンと指示を聞いてくれる。しかし、例えばクレセリア、例えばディンルー、例えばサンダー、そういった伝説に近いポケモンにそれをしてもらえるまでの信頼関係を作り上げられるのだろうか。
まあ、それができるならアタッカーの育成もできるかもしれないが.....。
そんなことを考えながらも私の視線は画面からは離れない。
そこには、私とカブさんとのバトルの後に行われた第二試合、マクワさんとサイトウさんの戦いが映されていた。いわタイプとかくとうタイプ、相性関係の明確な両タイプの激突は大方の予想通りにかくとうタイプ使いのサイトウさんの勝利に終わっていた。
マクワさんもツボツボの”ねばねばネット”のような搦手で相性関係を覆そうとしたものの、かくとうタイプによる正面からの突破によって残念ながらの一回戦敗退ということになったのだった。
かくとうタイプのポケモンは物理攻撃が得意なポケモンが多い。その分、カブさんの時のような迷いは少なくなるものの、特定のポケモンに負担が集中しかねないのも確かだった。
一通りの想定とポケモンたちのチェックを終えた私は、今度は私自身の疲れを取るためにホテルの周りを散歩することにした。
ローズ委員長が大きく発展させたというこの都市は、街に横たわる川を中心として整然と建物が並ぶ巨大都市だ。中心街には高層ビルが立ち並ぶ近代都市であるが、川沿いの地域はすこし古風な街並みを再現していて散歩に丁度いい。
しばらく道を歩いていると、ふと視線の先に見覚えのあるシルエットが飛び込んできた。
あの、特徴的なオレンジ色のふわふわサイドテールにサングラス、それに足元で尻尾を振るワンパチ。あの組み合わせなら、間違いようがない。
カフェのテラス席。向かい合って座るのは、これまたすぐ分かる水タイプのジムリーダーだ。そういえば、この二人は昔から親友同士だったっけ……そんなことを今さら思い出す。
ソニアさんと最初に出会ったのは、彼女が研究のためにカロス地方を訪れていた頃のことだった。そのときはゲームのキャラだなんてピンと来なかったのも当然だ。
なにせ、あのときの彼女はトレードマークの髪型もサングラスもなく、まるでバトルシャトレーヌのような派手なドレスを着ていたのだから。
そして、忘れられないのが彼女の“もふり癖”。小さいものを見かけると、とにかく徹底的にもふるのだ。見つかると、前のときみたいに構い倒される。ここは、こっそり退散するしかない。
二人を邪魔しちゃ悪いし、挨拶はまた今度にしよう。
『ファイナルトーナメントもいよいよ 2回戦、残った選手のうち勝ち残るのは誰だ!! 第一試合はかくとう使い、サイトウとジムチャレンジャー、レジェーナの激突だ!!』
二回戦の相手、サイトウ。ラテラルタウンのジムリーダーである彼女は、向かい合ってみるとイメージに反して大柄だった。具体的には私と比べて頭二つか三つ分くらい大きい。
格闘家らしい鋭い動きから放たれたハイパーボール。そこから繰り出されたのはルチャブル。かくとうタイプに加えてひこうタイプを持つポケモンだ。専用技のフライングプレスをはじめとして、高威力技で攻めてくる攻撃的なポケモンだ。
対するこちらが繰り出したのはアーマーガア、ルチャブルとは対照的に防御に優れたポケモンだ。そこまで不利ではないが、完全に有利とも言い難い。
『両者、ひこうタイプのポケモンを繰り出したーー!これは高速の空中戦になるのか!?!』
警戒すべきはこちらの弱点をついてくる"炎のパンチ"だが、ルチャブルは"アンコール"や"挑発"のような器用な技も覚えることができる。これらの技が比較的珍しく、相手は正攻法を好むとはいえ、まずは様子見から入るのが良さそうだ。
「アーマーガア、"鉄壁"!!!」
まずはこちらのアーマーガアの防御力を上げて攻撃に備える。たとえ交代してきても相手はかくとうタイプの使い手。基本的には特殊ではなく物理攻撃が主体になるはずだ。
「ルチャブル、"剣の舞"!!」
対するルチャブルへの指示は"剣の舞"。こちらとは逆に攻撃力を強化する技だ。
『おーっと、両者攻撃力と防御力を上げている?攻撃はしません!!』
お互い能力を上げたので戦況は五分と考えたいところだけど、ルチャブルには"バトンタッチ"という技がある。これをやられるとアーマーガアに有利なポケモンを出されれば上昇させた攻撃力を残したまま、有利をとられてしまう。
「ルチャブル、さらに"剣の舞"!!!!!」
「アーマーガア、"挑発"!」
幸いにして、相手はさらにルチャブルの攻撃力を上げるという判断をしたようだ。だからこそ、こちらの"挑発"が有効に働く。
アーマーガアが挑発的な動きを見せると、ルチャブルは剣の舞を中断し、感情を揺さぶられたように目を光らせる。
元々血の気の多いポケモンだけに、静かに能力を上げ続けるタイプではない。
戦いたい本能が刺激されれば、すぐにでも飛びかかってくる。
『なんと、アーマーガアはなかなか攻撃してこないルチャブルを"挑発"したぞ!!レジェーナ選手、攻撃力の高まったルチャブルの攻撃を誘うのは果たして正しい選択なのか!?!』
「ルチャブル、もう! 一気に潰しましょう。"フライングプレス"!!」
高ぶるルチャブルをしっかりと制御し、サイトウさんが渾身の攻撃を選択する。
上がった攻撃力を無駄にせず、強引に押し切る構えだ。
「アーマーガア、"鉄壁"で受け止めて!!!」
だが、アーマーガアの防御力を考えれば正面から受けても問題ない。もう一度、"鉄壁"によって防御力を高めて迎え撃つ。
ガキィィィイイン!!!
鋭い突進の音と、金属がぶつかり合うような重低音。
ルチャブルの "フライングプレス" がアーマーガアに直撃し、激しい衝撃音がフィールドに鳴り響く。
「まだまだ、もう一度"フライングプレス"からの"跳び膝蹴り"!!!」
息を合わせた指示でルチャブルが追撃に移る。
アーマーガアの鋼の翼がきしむほどに揺れる。だが倒れない。確かに強烈な一撃だったが、こちらはすでに鉄壁を二度積んでいる。
「アーマーガア、"はねやすめ"!!」
さあ、持久戦へようこそ。
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