TS受けポケ使いが崩されるまで   作:ヤキブタアゴニスト

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他者視点回です。
次回からまたバトルに戻る予定です。




サイトウ視点/ソニア視点

 

 

「戦いにくい」

 

 

サイトウがその戦いで感じた最も大きなものはまさにその一言に集約されていた。

 

サイトウが普段相手するトレーナーは誰もが一流のトレーナーだ。それはパーティ全体での勝ち方という戦略レベルから、個々の技の威力や精度という技術レベルにいたるまで全てが高水準に纏め上げられたトレーナーであるということだ。

 

しかし、今目の前にいる少女、レジェーナの繰り出すポケモンはそうであってそうでない。攻撃技の精度や威力、これについてはサイトウが知る限りジムチャレンジャーとして常識的なものであった。むしろ、ジムリーダークラスと比較すると粗削りであるというべきだろう。そもそも撃つ機会が少ないとはいえ、ファイナルトーナメントを勝ち抜くトレーナーという感触はない。唯一、トレーナーの指示の状況づくりは超一流といえるが、単純なポケモン個々の技量としてはそういう評価に落ち着いた。

 

一方、”自己再生”や”はねやすめ”といった回復技については桁というより次元が違う。そうサイトウは確信していた。回復技というのは本来、かなり優先度の低い技だ。ポケモンバトルは相手の手持ちを全て倒すことで初めて勝利する。その前提がある以上、可能な限り攻撃性能を高めて相手を先に倒してしまうことが優先される。もちろん、交代の隙や相手の大技の反動の隙をついて回復するということは無くはない。だが、目の前の少女がやっているのは全くもって違う使い方だった。

 

レジェーナの戦略。それは、技を受けたうえでダメージを上回る回復量で攻撃を事実上無力化するというものだ。その前提がある以上、こちらの放つ大技であろうと正面から受け止めて回復してくる。例えばヌオーが平然とやってみせたような、”インファイト”を受けながら”自己再生”するというのは正気の沙汰ではない。殴り飛ばされながら回復しろ、なんていうことをポケモンに指示するのにはどれだけの信頼関係が必要なのだろうか。それをレジェーナのポケモンたちは皆あたりまえのようにこなす。それが勝利につながることを信じているから、おそらくそれがポケモンたちの根底にあるものなのだろう。

 

それが可能にしたのが、回復と受けを主軸に置いたレジェーナの戦略だ。

 

こちらが攻撃してもその分回復され、毒に”ステルスロック”、反撃の攻撃でじりじりと削られる。突破できないポケモンでは何をしても意味をなさないので、自ずとサイトウは交代を選ばざるを得ない。

 

「選択肢が潰されている......?」

 

サイトウは小さく呟いて再度映像を早送りで確認する。そう、戦いにくいというのはサイトウのとれる手段が限定されるということに近い。そしてそれは状況の固まったバトルの後半で顕著になる。

 

ネギガナイトがグライオンを攻略できない以上、ゴロンダやルチャブルに交代せざるを得ない。サイトウの取るべき選択肢はせいぜいどちらに交代するかだけだ。そして、交代のたびに毒のダメージが蓄積する。

 

目の前の課題に一個一個対応していた結果が、いつの間にか現れた詰みの状況。こちらもあちらも最善手が決まっているのなら、それを選んでいった結果は一つだ。それが自分の敗北だろうと、選択できる余地はない。

 

普通のバトルでもこういう状況がないわけではない。それがここまで綺麗に戦略として実行できないのは、それがダメージレースにおける相手の状況が変数として入ってくるからだ。

しかし、レジェーナは自分のポケモンの状態だけを把握すればよい。相手はいつか倒れるのだから、自分のポケモンが倒されないようにしながら相手にダメージを与えさえすればよいのだ。いくら自分のポケモンとはいえ、サイトウは自身がポケモンのダメージの大きさを精確に測る自信はない。だからこそ、彼女の模倣者が現れてこないのだろう。

 

では、それを上回るにはどうすればよいか。簡単に言えば、レジェーナに安定な選択肢を作らせないこと。一番簡単なのはダイマックスや普段は使わない技による奇襲。受け止めきれないほどの高い攻撃力。候補はあれども、それらを有機的に動くパーティ同士の戦いで発揮しなければ意味がない。

 

「今更ですが、ポケモンバトルは奥が深いですね.......」

 

サイトウは一人呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「えーー、レジェーナちゃんと知り合いなんですか?」

 

「ソニアとどこで知り合ったんだ?」

 

ルリナの応援も終わり、ダンデのバトルを現地で見たいという2人の保護者役のためにハロンタウンを訪れてみれば、ユウリに加えてホップまでもがレジェーナちゃんのファンと化していた。どちらかというとバトルオタクで細かい技術まで知りたがるユウリがそうなるのはある意味予想の範疇だったが、ダンデ一筋のホップまでレジェーナちゃんのことを認めるとは思わなかった。

 

「うん、そうだけど。カロスに研究の用事で行ったときにね」

 

私は昔を思い出して少し誤魔化して答える。一応はガラルにおけるダイマックス現象とカロスで知られているメガシンカ現象の比較調査という体だったけど、あの時の私を心配したおばあさまの計らいだったのは明らかだった。

 

「レジェーナちゃんって、カロスではバトルハウスって場所にいたんですよね。ソニアさんもバトルハウスに挑戦したんですか?」

 

キラキラした目で見てくるユウリに迫られて私はすこし気恥ずかしくなる。なぜなら、レジェーナちゃんと最初に会ったのはミアレシティ、それもはっちゃけていたころだ。若かった私は派手なミアレに当てられていたのだ。

 

「ええ、最初に出会ったのは研究所のあったミアレシティだけど、バトルハウスにも行ったことがあるのよ。バトルハウスの取りまとめの4姉妹がレジェーナちゃんの親戚だってことで、預けられていたみたいね」

 

プラターヌ博士の計らいでメガシンカを用いたバトルの盛んなバトルハウスを紹介されたとき、ガラル出身でちょうどいいからと案内につけられたのが前日に会った幼い少女だったときは顔から火が出る思いだった。そのとき既に、”リベロ”のエースバーンと”変幻自在”のゲッコウガ、両者のメカニズムやバトルでの活かし方についてプラターヌ博士と議論していたのだから恐ろしい。

 

一方の私は……

 

 

「その時のレジェーナちゃんってどんな感じだったんですか?やっぱり、今みたいに攻撃を受け止めてたんですか?」

 

私自身について言い淀む私と何かを思い出そうとしているホップを気にせずにユウリがさらに突っ込んでくる。そう、私もそれについては驚いているのだ。

 

「うーん、私が見た時はむしろ真逆だったのよ。一番印象に残ったのはエースバーンとかジャローダだったかな。どちらかと言ったら素早いポケモンに的確に指示をだして戦うって感じだった。ポケモンと阿吽の呼吸で相手の技を躱し続けて、隙を見つけたら攻撃するって感じでね」

 

レジェーナちゃんの戦い方はあの頃に既に完成されていたというほどの域に達していた。少なくともジムチャレンジで困ることは無いと思う。それはダンデやルリナのことをみてきた私が自信を持って言えることだった。

 

そういって褒めた私にレジェーナちゃんは決して嬉しそうにはしなかった。むしろ、それ以上でないことについてもがいていたのかもしれない。その姿が可愛らしくて小さい子にやるような可愛がり方をしたのが懐かしい。

 

あの頃の私にはあまりにも強烈にすぎたなぁと思い出す。

 

と、回想にふける私を前に急に黙って考え出すユウリとホップ。しかし、すぐにその様子を聞きたがる二人に、私は電車の中の時間全てを使うことになったのだった。

 

 

 

 

 





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