情報社会、ガラルの地にもそれが押し寄せてきて久しい今の時代、あらゆる人があらゆる人に向けて情報の発信受信が可能になっている。ポケモンの公式戦についても、インターネットで検索すればポケモンリーグの出した公式の情報から個人の感想、果ては掲示板やSNSでの呟きまでがヒットするだろう。ましてや、ガラル全土が注目するチャンピオンカップのファイナルトーナメント、その決勝戦ともあればその情報量はまさしく桁違いだ。
キバナVSレジェーナのバトルについては、感想から分析まであらゆる分野の記事が量産され、至る所で議論が交わされていた。
そんな中、一際注目されるブログがあった。
ブログの書き手が有名人というわけではない。記事数が多いとか昔から有名とかではない。むしろ、記事数は10を少し超える程度であり、文章もお世辞にも読みやすいとは言えないものだった。
注目のきっかけは一つの記事、そのタイトルというのが
『レジェーナ対キバナでの役割受け戦術』
というものだった。
そこに記された分析が広まったのは、単にそれがレジェーナのバトルスタイルを語るための言葉を提供し、言語化を可能にしたからに他ならない。
レジェーナが勝ち進むにつれ、多くのバトル分析が公開され、多くの議論がなされてきた。それらは決して間違っているわけではない。勿論、中には的外れなものもあったが、そうでないものも当然多い。
しかし、それを読んだ人々は言いようもないモヤモヤを抱えることになる。確かに、それぞれのポケモンの技の精度やトレーナーとの連携、個々の素早い判断はレジェーナが一流のトレーナーたる資質を持つことを示していた。だが、それはキバナも、サイトウもカブもそうなのだ。
それらに欠けていたもの、それはそうした技術の集大成がどうやってレジェーナに勝ちを掴み取らせたかというものである。それがどこにもないが故に、いつの間にか有利になってレジェーナが勝っていたという以上の分析が出来ないのだ。
だが、それで3回勝てるのはあり得ない。ジムリーダークラスのトレーナーに連勝した根本の何かがあるはずなのだ。
それを言語化し、全体戦略として書き出したのがこのブログだった。
特に目を引くのがダイマックスについての一節だった。
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この戦術はダイマックスとは相性がよくない。ダイマックスは長くは続けられないし、一回しか使えない。だから、苦手なだれかの相手をするときは毎回ダイマックスをするというふうには使えない。そして、もともと攻撃力が低いから、ダイマックス技で倒し切るのは出来ないし、ダイマックスでは回復技を使えない。
だけど、攻めと守りで使うことができる。
守りというのは二つ。
一つは、相手のダイマックスを耐えるため。威力の高いダイマックスを耐えるために使う。これは相手のダイマックスも一時的だから、役割相手が無理に倒しにきたときに有効。
もう一つは、未知の相手の情報を探るとき。この戦術では、相手のポケモンに対して、こちらのポケモンの中でそれぞれ担当をきめて受ける必要がある。だけど、未知の相手だと誰を出せばいいかわからない。そのときは、ダイマックスで無理矢理耐えることで、一撃で倒されることを避けることができる。
次に、攻撃に使うとき。キバナさんとの戦いで使ったのがこの使い方。
これも二つ。一つはサイクルを崩されかけて無理矢理に倒す必要がある時。例えば、龍の舞で攻撃力の上がったカイリューを仕留めない限り、誰も受け止められない。みたいなことがあった時に、ダイマックスで強引に倒す。
もう一つが攻撃的で、相手の特定のポケモンを狙い撃ってダイマックスで倒してしまう方法。今回はかなりこれに近い。あの状態でジュラルドンを失ったらキバナさんの他のポケモンにはレジェーナのポケモンで役割を割り振って交代すればいい。
ただ、これは相手のポケモンをよく観察して、本当にダイマックスが要らないことを確信して勝ちに行く使い方。使い方は難しい。
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まるで、バトルを実際に行っていたかのような分析は多くのバトルマニアを唸らせ、議論の的になる。レジェーナが勝利のために何をしていたのか。今や、それは一部の界隈では理解されつつあった。
「うーん、ダイマックスの使い方としては、相手のダイマックスを強制することで不意にダイマックスされるのを回避するっていうのもあると思うんだけど、これも書くべきかなぁ。私の脳内のレジェーナちゃんはあそこでキバナさんにキョダイマックスさせるのも狙ってたって言ってるんだよね。ねえ、ホップ!!どう思う?!」
ホテルに篭ってスマホと睨めっこしている少女、ユウリがフリック入力の手を止めて幼馴染のホップに話しかける。ここ最近ハマっている日課のブログの更新を終えて少し疲れていたのだ。
「ユウリ、凄いぞ、脳内でバトルのシミュレーションを出来るようになったんだな」
と戯けながらホップは返す。しかし、その顔は段々と真剣になっていく。
「うーん、でもジュラルドン以外でダイマックスしても勝てるのか?ジュラルドンを失うことには変わりないだろ?」
「あそこはバクガメスに交代して、バクガメスが倒れた後にジュラルドンでダイマックスすれば撃ち合いで勝てないかな?そしたら、あとは"金属音"で頑張るみたいな」
「なるほど、でもドオーは"ド忘れ"で元に戻されちゃうし、難しいんじゃないか?」
二人はしばらく考え込む。
口を開いたのはホップだった。
「なあ、ユウリ。アニキは負けると思うか?」
ユウリはスマホをおいて暫く考える。チャンピオンダンデと挑戦者レジェーナ。その二人のどちらが勝つのかという問いはネットからテレビまで広く行われている。しかし、その中で最も真理に近いのはユウリかもしれないとホップは思っていた。
「ダンデさんはいつもと同じポケモンを使う気だよね、そしたら、レジェーナちゃんは手の内を知って戦うことになる。いくらダンデさんでももしかしたら……」
ユウリは脳内でのバトルシミュレーターからの結論を口に出す。
「主導権を握るのは難しいかもしれない」
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