現実のポケモンバトルとゲームのポケモンバトル、その一番の差はどこだろうか?
ポケモンたちの迫力ある躍動?肌身で感じる技の威力?
実際に体験したらこれらも確かに素晴らしい違いだ。ある意味数値計算の結果であったゲームと違い、ポケモンたちが渾身の力で技を放ち、またそれを受け止める応酬はポケモンのファンとしてこれ以上ない喜びだろう。
しかし、転生してから何度も考えてきた私の答えは「技の当たりにくさ」だった。
ゲームの世界、そこでは技がポケモンに当たるかどうかは命中率と回避率に従って計算されていた。例えば命中率100の”シャドーボール”は普通の状態では必ず命中するし、命中率80の”ストーンエッジ”は(諸説あるが)おおよそ8割で命中する。命中率の低い技でもそのほとんどが5割を超えており、一撃必殺技ですら30%で命中する。
しかし、私の目の前で繰り広げられるバトルではそんなことは起こらない。”冷凍ビーム”も”はたきおとす”も簡単には命中しないし、ポケモン自身の能力や習熟度によっても変化する。例えば同じエアスラッシュでも、ガラル地方が誇るダンデのリザードンと虫取り少年の捕まえたばかりのバタフリー。ゲーム上では後者は特性”ふくがん”で命中率が上がっているが、こちらではリザードンの放つエアスラッシュのほうが遥かに命中するだろう。
そう、技の習得にしてもその威力や命中率にしても、ゲームのように覚えたばかりで使えるようになるわけではない。そして、大抵の場合、たとえ一流のポケモンであってもその命中率はゲームでのものより低い。そんな一流のポケモンを育て上げるのには長年の経験と天賦の才が必要で、だからこそジムリーダーやチャンピオンのエースポケモンというのはゲーム以上に圧倒的に強い。それこそ、生半可なポケモンでは一撃あてるのすら困難なほどに。
そう、技を当てるのにすらトレーナーの才能が必要なのだ。ただし、一部の例外を除いて。
私は主人公ではない。圧倒的な才能も圧倒的な訓練も私には耐えられなかった。だから、私はこの戦い方にいきついたのだ。
「ポリゴン2、”自己再生”!!」
やや機械的なそのポケモンが相手の技で受けたダメージを回復する。驚異的な耐久力と併せて単純ながら強力なコンボだ。
対戦相手の端整な顔が歪むとともに、スタジアムの歓声も少し盛り下がる。ガラル名物ともいえる大歓声、ファンの多いこの男のお膝元でここまで出来るのは私くらいに違いない。
そう、相手のポケモンへの攻撃はたしかに外れやすい。しかし、それが自分へなら、自分自身が対象の技ならば、それは確実に実行される。
耐久力と回復で粘り、焦れた相手が攻撃に逸ったところを咎める。それも威力重視ではなく状態異常を絡めての持久戦。それが私の、弱者としての戦略だった。
交代際を狙ったポリゴン2の”電磁波”によって動きが鈍くなったヌメルゴン。その技の精度が落ちた隙を狙ってダメージを回復させる。ここは”冷凍ビーム”で追撃を掛ける。
「流石だな。オレさまにここまで何もさせないとはな」
しかし、当然ながらそう単純には進まなかった。
「だが、オレさまは天候を操るジムリーダーだ。この最後の関門をそう簡単には通過させるわけには行かない。ヌメルゴン、”あまごい”だ!!!」
ヌメルゴンが行ったのは”あまごい”。スタジアム上空の雨雲から雨が降り始める。
これは想定外だった。これでヌメルゴンが使う”かみなり”の命中率は上がり、”波乗り”の威力も上がる。それに何より、ヌメルゴンの特性は”うるおいボディ”だ。雨によってせっかく撒いた麻痺が回復してしまう。
幸いヌメルゴンの技は全て割れた。ここは無理に突っ張る必要もない。
「ポリゴン2、戻れ!!行け!!ハピナス!!」
ノーマル高耐久からノーマル高耐久へ。代わりに出すのは特殊技にはポリゴン2を遥かにしのぐ耐久力を発揮するハピナスだ。6vs6のフルバトル故の贅沢な交換によってピンクの悪魔が降臨する。
バリバリッバチッッッッツ
ヌメルゴンから放たれた”かみなり”が交代してきたハピナスに突き刺さるが、流石の高耐久で全くもって効いている様子がない。食べ残しと合わせればおそらく10回くらいは耐えてしまいそうな要塞具合だ。
「ハピナス、”瞑想”」
そして、さらに特殊耐久を上昇させる。相手のキバナのヌメルゴンは特殊攻撃しか持っていないために、これでさらに突破を不可能にすることができる。
「ヌメルゴン!!”波乗り”!!」
ヌメルゴンはなおも雨を利用した”なみのり”でハピナスに攻撃するが、”めいそう”と”タマゴうみ”で受け止めた上にステルスロックまで撒くことに成功した。
「ハピナス!!”トライアタック”をばら撒いて!!」
こうなったら反撃開始だ。”瞑想”によって上がった特攻によって特殊耐久に優れるヌメルゴンにすら有効打を与えることが可能だ。なかなか当たらなくてもトライアタックの追加効果と相まって、交代先に状態異常が入るのを警戒させることができる。
『ヌメルゴン戦闘不能』
しばらくの間躱し続けていたヌメルゴンだが数発目の”トライアタック”が命中するとついに力尽きる。横たわる巨体をボールに収めたキバナは残り二つとなったボールからどちらを出すのか。
「くっ、まだまだ!!荒れくるえよ!フライゴン!!」
しかし、どちらを出してもやることは変わらない。残りの二体は物理攻撃が主体のポケモンだ。だからこそ、
「ゆけっ!アーマーガア!!」
巨大な鋼鉄の鳥が現れる。ハピナスを狙って放たれたフライゴンからの”地震”はこのポケモンには無効である。
「フライゴン!!”嚙み砕く”で羽を狙え!」
「”鉄壁”で守りを固めて!!」
結局、フライゴンとジュラルドンをアーマーガアで完封した私は、無事にジムチャレンジ最後の難関を乗り越えた。バトルそのものよりも、キョダイマックスになったジュラルドンが"ボディプレス"一撃で倒れた時の気まずさのほうが精神に来るものがあった。
エースの登場とキョダイマックスによって最高潮にまで高まった観客の歓声が数秒であそこまで鎮火するとは。ここまで極端な例はなかなかないけど、技を当てやすいという点ではダイマックスはありがたい。
「ジムチャレンジ 突破 おめでとう!次は チャンピオンカップでオマエの強さを示すんだ!」
そう言って自撮りしながら差し出してくる手に私は恐る恐る握手を返すのだった。
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サブタイミスってたのを直しました