さあ、これで盤面がリセットされた。
グライオンのお陰で万全の状態でハピナスを出すことが出来る。
「ハピナス、お願い!!」
「チャンピオンタイムはまだまだこれからだ!!!リザードン!!」
私が信頼する相棒のボールを投げる反対で、ダンデさんもボールを投げる。
ダンデさんが出してきたのはリザードン。ここでエースの登場だ。迎え撃つのは万全の状態のハピナス。
「リザードンの本気を 見せよう! キョダイマックスタイム!!」
『リザードンの登場だ!!!そしてそのままキョダイマックス!!!!』
大丈夫なはずだ。相手はガラル最大最強、しかし、ハピナスがそれを上回れないという理屈はない。ダンデさんの熱さがフィールドとバトルを通して伝わってくる。
「リザードンよ!! “キョダイゴクエン”だ!!」
「”タマゴうみ”で回復!!!」
万が一の場合を考えてハピナスは回復から入り、そこに”キョダイゴクエン”が直撃する。流石はチャンピオンのエースだけあり、溢れ出た炎がハピナスを取り囲む。凄まじい迫力の攻撃だが、果たしてハピナスは余裕で耐え切ってみせた。
炎に包まれたハピナスの状態をダンデさんの位置から確認することは難しいだろう。だけど、私とハピナスの距離、そして常日頃から見ているのだ。ここからでもその状態は手に取るようにわかる。
ならば、回復に徹する必要はない。
「ハピナス、”瞑想”!!」
「もっとだ、リザードン、”キョダイゴクエン”!!」
再びの激突。猛火に包まれる中、リザードンの攻撃を受け切った怪物が”瞑想”を始める。会場とフィールドに渦巻く熱気、その中心にいるハピナスだけが涼しい顔をしていた。
『直撃!!!果たしてハピナスは耐えられるのかーー!!!』
「”タマゴうみ”で回復!!!」
無理はさせない。反撃の機会は必ず来るのだから。
そして、ハピナスは三度飛んでくる”キョダイゴクエン”を受け切る。
並のポケモンなら一度でも耐えれば合格点、二度受けて立っているポケモンはいない。そう言われるような大技を受けてなお倒れないハピナス。しかし、キョダイゴクエンによって発生した炎によって、ダンデさんからはハピナスの状況は分かりにくい。もう倒れそうなのか、まだまだ余裕なのか、それは私だけが把握できることだ。
ダイマックスが解除されたリザードンはそのハピナスに更なる攻撃を加える。
「リザードン、さらに”だいもんじ”で攻撃!!!!」
「ハピナス、”瞑想”」
私はハピナスだけ聞こえるように、小さく声を出す。大丈夫だ。ハピナスはまだ耐えられる。ダンデさんからどう見えているかは分からないが、ここまでくればこっちのものだ。
「もっとだ。リザードン!!!!追撃の”だいもんじ”だ!!!!……まさかっ!!!!」
“キョダイゴクエン”の炎の勢いが弱まり、そのなかからピンクのかわいらしいポケモンが姿を現す。ダイマックスリザードンからの大技を三度受けてなお、そのポケモンは盤石そのもの。余裕の表情を浮かべて佇んでいた。
『なんと、ハピナス、リザードンの攻撃を耐えきっていた!!』
「今だ!!!!”トライアタック”!!!」
そして、リザードンが追撃の”だいもんじ”を放とうと接近したこの瞬間、”瞑想”によって威力の上昇した”トライアタック”がリザードンに突き刺さる。
「リザードン!!」
近距離からの不意打ち。そして威力の上がったトライアタック。しかしそれは、リザードンを屠るまでには到らない。
「ハピナス、さらに追撃のトライアタック!!」
「リザードン戻れ!!ドラパルト、頼んだ!!」
追撃を掛けるも、ワンテンポ遅れたためにリザードンを倒しきることはできない。そして、交代で出てきたゴーストタイプのドラパルトはハピナスの攻撃を無効化する。
結果として、先ほどまでとは一転、盤面は完全に膠着した。
そこからはひたすら不毛な戦いに移る。ハピナスはさらなる”瞑想”によって特防が上昇している。そのため、特殊しかないドラパルトの攻撃も簡単に受け切れる。一方で、こちらからの攻撃はノーマルタイプの”トライアタック”のみ。ゴーストタイプのドラパルトには効果がない。ドラパルトが攻撃のペースを落とせば、食べ残しだけで回復できてしまう。かと言って、ペースを上げても受けきられる。そうなれば無駄撃ちを避けるためにドラパルトは攻撃を控えることになる。結局、両者は睨み合いになるしかない。
交代することを考えると、ダンデさんからすれば特攻の上がったハピナスの前に他のポケモンを繰り出すのは自殺行為のようなものだ。私の方も、アーマーガアとヌオーは特防には優れていない。そして、ドラパルトが”ハイドロポンプ”を使える以上、ドオーにも不安が残る。
牽制に次ぐ牽制。殆ど動きがないままに時間だけが過ぎていく。
「ドオー、交代!!!」
先に動いたのは私だった。最大の原因は”十万ボルト”によって生じた麻痺だ。
もちろんその程度でハピナスは揺らがないものの、麻痺して動きにくい中で強力な技を受け止め続けることはハピナスにとって大きな負担となる。自然回復によって交代すれば麻痺が回復するので、一度交代しておきたいところだ。
『うっ、動いた!!レジェーナ選手が動いた!!!登場したのはドオーだ!!』
「ドラパルト!!!”ハイドロポンプ”!!!」
「ドオー、”自己再生”!!!」
不意の交代に、ダンデさんの攻撃が遅れる。それでも正確無比の”ハイドロポンプ”がドオーを貫く……。
が、ドオーは倒れない。そして、受けたダメージを見る見るうちに回復する。
「ドオー、”ド忘れ”!!」
「もう一度だ!!ドラパルト!!」
再びの”ハイドロポンプ”をドオーは耐えると、”ド忘れ”でさらに特防を上げる。これでドラパルトに打てる手はないだろう。
そう思っていたら、ダンデさんは案の定、バリコオルを繰り出した。フィールドにはハピナスのバラまいた”ステルスロック”が存在する以上、リザードンを出すわけにはいかないのだろう。
「ハピナス、交代!!」
そして私は安全策のハピナス交代だ。バリコオルはトリッキーなポケモンだが、ハピナスならちょっとやそっとの事では倒されない。しかし、ダンデさんの指示は意外な技だった。
「バリコオル、”通せんぼう”!!ハピナスを逃がすな!!」
なんと、バリコオルの技は”通せんぼう”。ハピナスの交代を封じる技だ。何を仕掛けてくるかは分からないが、まずい事だけは分かる。
「ハピナス、よく狙って!!”トライアタック”!!」
引けない以上は攻撃して倒すしかない。私はハピナスに”トライアタック”でバリコオルを攻撃させる。それがいけなかった。
「バリコオル、”催眠術”!!」
トライアタックを放つためにバリコオルに狙いを定めていたハピナスに催眠術が掛けられる。大技の応酬のような激しい盤面では使いにくい技だが、決まったら強烈だ。”トライアタック”の着弾と同時にハピナスが眠りに伏す。
『なんと催眠術だ!ハピナスは眠ってしまった!!』
ハピナスは交代することでねむり状態を解除可能だが、ここに至っては不可能だ。さらに”嫌な音”によって防御が下げられたハピナスに高速スピンが突き刺さる。
二度攻撃を受けたところで目を覚ましたハピナスは辛うじて”トライアタック”を命中させるも、さらなる”高速スピン”は耐えられない。
「ハピナス、お疲れ様!!」
一瞬思考が止まった私だが、直ぐに次のポケモンを繰り出さなくてはならない。
「よろしく、アーマーガア!!」
選んだポケモンはアーマーガア。”挑発”を覚えているので搦手には滅法強い。そして、それはダンデさんも理解しているはず。
「まだまだ終わらない! 終わらせないッ!!リザードン!!!」
「アーマーガア!!”光の壁”!!」
出てきたのはリザードン。こちらはドラパルトに対して安全にドオーを出すための”光の壁”だ。鉄壁の代わりに急遽訓練したものだが、アーマーガアは無事にやり遂げてくれた。
であるならば相性から見て普通ならアーマーガアが交代するこの状況、私が狙うのはただ一つ。
「リザードン、”だいもんじ”!!」
「アーマーガア、耐えきって”ボディプレス”!!」
リザードンの口から炎の壁が放たれ、一直線にアーマーガアへと迫る。”光の壁”に守られているとはいえ、リザードンの炎はアーマーガアの鋼の体を焼き尽くす。
次の瞬間、炎の壁を突き破ったアーマーガアの”ボディプレス”がリザードンに命中する。
“ボディプレス”は決して強力な攻撃とは言えない。だが、ハピナスの強烈な一撃を受けてギリギリだったリザードンはこれに耐えきれない。
『リザードン戦闘不能』
会場に一瞬の沈黙が訪れ、次いで拍手が送られる。その中心で、アーマーガアだけが楽しそうにオボンの実を貪っていた。
そこから先のバトルはアーマーガアでバリコオルを、ドラパルトをドオーで受けるという単調なサイクルに復帰した。一度バリコオルの催眠術によってアーマーガアが眠らされることになったが、アーマーガアのミラーアーマーによってバリコオルは”嫌な音”を使えない。ノーマルタイプの”高速スピン”によって高い防御力を誇るアーマーガアを倒すことは不可能だ。
ドオーの交代際に放った”ストーンエッジ”がバリコオルにとどめを刺し、最後はやはり”ストーンエッジ”によってドラパルトの体力を削り取る。
長い長いバトルだったが、ついに私はダンデさんを倒しきることに成功したのだった。
感想・評価よろしくおねがいします。
区切りが難しい。他者視点などを挟んで、バトル直後からは後に回します。
Xで小説用アカウント作りました。それ関連を呟くと思います。
https://x.com/yakibutaagonist