そろそろスロースタートで再開していきます……
ネモ戦の続きです。
「アーマーガア!!”鉄壁”!!」
「ジュナイパー!!”影縫い”!!」
案の定、ネモとのバトルは膠着状態に陥っていた。
ジュナイパーの技にアーマーガアに有効打になるようなものはない。そして、アーマーガアの攻撃技はかくとうタイプの”ボディプレス”のみで、ゴーストタイプのジュナイパー相手に攻撃ができない。
そして、アーマーガアは影縫いの効果で交代できず、鉄壁で防御力を上げたアーマーガア相手の”ボディプレス”をゴーストタイプ以外で受けるのも難しい。お互い交代の選択肢が無い以上、多少でもダメージを与えられるジュナイパーに分がある状態だ。
そして、初めはアーマーガアの飛行技を警戒していたネモも、アーマーガアの攻撃技が”ボディプレス”以外ないことを察すると苛烈な攻めを展開する。
ジュナイパーは特性”遠隔”によって、本来は接近して放つ物理技を距離を保ったまま繰り出すことができる。そのためネモは距離を維持したまま、”影縫い”や”リーフブレード”を次々と飛ばしてくる。
接近戦をいなすことに特化したアーマーガアにとって、これはじわじわと効いてくる厄介な攻撃だった。とりわけ技の出が早く、防御態勢を整えるまでの猶予がほとんどない。
「アーマーガア、"はねやすめ"で回復!!」
「ジュナイパー、"リーフブレード"で回復を妨害!!」
「立て直して、受け止めて!!」
いくらアーマーガアが持ち前の耐久力と”鉄壁”による防御上昇で硬くとも、技を受け続ければいずれは限界がくる。
時には攻撃の合間を縫って”はねやすめ”で体勢を立て直さなければならない。
しかしネモは、その隙を決して与えてくれなかった。
素早い”リーフブレード”が、アーマーガアの動きを縛る。
もちろん草タイプの”リーフブレード”自体は、通常のアーマーガアにとって決定的な脅威ではない。
しかし”はねやすめ”を使うと一時的に飛行タイプを失い、くさ技が通りやすくなる。さらに急所にでも当たれば、せっかく積み上げた”鉄壁”による防御上昇も無意味になりかねない。
ネモはその一点を見逃さず、回復の隙を狙うように次々と”リーフブレード”を飛ばし、アーマーガアの選択肢を奪い続けていた。
無理に回復しようとすれば一瞬で決定打を撃ち込まれる。そんな圧をかけられたままでは、回復すら一苦労だ。
「もっともっと!!”影縫い”!!」
それでも、ジュナイパー側も楽ではない。
技を連続で繰り出せば疲労は確実に溜まり、集中力の維持も難しくなる。ネモの指示は的確だが、連続して攻め続けることには当然リスクも伴う。
そうして少しずつではあるが、アーマーガアが”はねやすめ”を挟めるわずかな余地が生まれ始めていた。
とはいえ、アーマーガアの攻撃面は相変わらず乏しい。
唯一といえる搦め手だった”どくびし”による猛毒も、すでにジュナイパーのラムのみであっさりと回復され、以降は慎重な立ち回りで完全に無力化されている。
鉄壁で守りを固め、持久戦に持ち込むことはできても、相手を追い詰める手段はほとんどないのだ。
しかし、長期戦となれば話は別だ。
アーマーガアは数え切れないほどの耐久戦を経験してきた。序盤から攻撃を受け止め続けたことで、呼吸が整い、状況を冷静に読む余裕が戻ってくる。
ネモのジュナイパーは依然として強力だが、連続攻撃の中にわずかな隙や苛立ちの兆しが見え始めていた。
「アーマーガア、”挑発”!」
「落ち着いて、”リーフブレード”!」
待ってましたとばかりに、アーマーガアが全身の羽を大きく広げ、敵を挑発するように鋭い鳴き声を響かせた。
ネモは即座に指示を飛ばし、ジュナイパーは冷静に”リーフブレード”を放って反応する。
「もう一度、”挑発”!」
飛んできた”リーフブレード”を鋭い金属音を立てて受け止めたアーマーガアは、翼を大きくはためかせ、まるで相手を嘲笑うかのように空気を切り裂いた。
ネモの笑顔は相変わらずだが、ジュナイパーの目には一瞬の苛立ちが走る。
鉄壁のように冷静だったジュナイパーが、初めて感情を見せた瞬間だった。
ネモもその変化を見逃さない。「落ち着いて!」とジュナイパーに声を飛ばす。
だが三度目の挑発が決定的だった。
ついにジュナイパーの表情が怒りに染まり、これまで距離を保っていた戦いを捨てて一気に接近。
両翼を広げ、アーマーガアに向けて”ダブルウイング”を繰り出してきた。
そして、接近戦になればアーマーガアの右に出るものはいない。
重厚な鎧のような羽根で攻撃を受け流し、ときおり挑発を混ぜながらジュナイパーの動きを封じていく。致命傷を避けながら防御の固いところで荒々しい攻撃を受け流し、攻撃してきたジュナイパーの体勢を崩しに行く。
空中でバランスを崩し始めたジュナイパーに、アーマーガアはさらに圧をかけた。
「ジュナイパー、後ろに!!」
ネモが気づいて叫ぶより早く、アーマーガアは大きな翼でジュナイパーの体勢を崩し、無理やり地面へと押し込む。
そこは序盤から仕込んでおいた”どくびし”がまだ残っている場所。
踏んだ瞬間、紫の毒が舞い上がり、ジュナイパーの脚元を覆う。
「よし!! アーマーガア、”はねやすめ”!!」
ネモのジュナイパーを地上に落とし、毒を踏ませたアーマーガアはすかさず態勢を整える。大きな翼を畳んで地面に着地し、傷んだ体を癒やしていく。
さあ、第二幕だ。
「ジュナイパー、”リーフブレード”で休ませない! 飛び上がったところに”影縫い”!」
毒を浴びたジュナイパーだが、まだ戦意を失ってはいなかった。ネモの鋭い指示に応じ、距離を詰めて斬撃を浴びせ、影の矢を次々と射出してアーマーガアの動きを封じにかかる。
さっきまでの冷静さは消え、今は攻めに出ざるを得ない。だがその分、攻撃は激しく鋭く、見応えのある猛攻となっていた。
「すこし前へ! アーマーガア、そのまま”ボディプレス”の構え!!」
アーマーガアは斬撃を受け流しながら、じりじりと前に出る。巨大な影をジュナイパーに落とし、いつでも圧し潰せると示すことで交代の隙を与えない。
ジュナイパーは回避と攻撃を繰り返すが、動くたびに体を蝕む毒がじわじわと広がっていく。
アーマーガアの体力も決して安全圏ではない。だが、ネモの指示に応じて攻め続けるジュナイパーの呼吸が次第に荒くなる。毒が血管を巡るたびに、その羽ばたきがわずかに鈍り、"影縫い"の軌道がわずかに逸れはじめる。
しかし、アーマーガアも体力管理をするほどの余裕はない。
そして、ついにジュナイパーの体がふらついた。
「……ッ!」
ネモの瞳が一瞬だけ大きく開かれる。
次の瞬間、ジュナイパーは膝をつき、苦しげに鳴き声を上げた。体を蝕んでいた毒が決定打となり、そのまま力尽きて地面へと倒れ込む。
ネモはわずかに口元を引き結んだが、すぐにいつもの笑みを取り戻す。
「強い! でも、私もまだ負けない!」
ネモは素早く次のモンスターボールを投げる。
その光の中から現れたのは、鱗をまとった強そうなドラゴン。
「いくよ、ジャラランガ!!!」
それを聞いて即座にアーマーガアに指示を出す。
「アーマーガア、”はねやすめ”!」
アーマーガアは疲労を癒すためにすぐさま翼をたたもうとする。
「ジャラランガ、”雷パンチ”!」
しかし、ジャラランガのほうが一瞬早かった。ドラゴンの拳が電光をまとって一直線に突き出される。巨体の割に素早い動き。
回復のために地面に戻ろうと姿勢を崩していたアーマーガアは、避けきれずに直撃を受けた。
バチィン!!
雷光と金属音が同時に轟き、衝撃が伝わる。しかも拳は偶然にもアーマーガアの急所をとらえていた。
「……ッ!」
先ほどまで堂々と立っていた鋼の巨体が、一瞬ののちに崩れ落ちる。
ネモの表情に一瞬の驚きが浮かび、すぐに自信の笑みへと変わった。
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次回くらいでネモ戦が終わる……はず