TS受けポケ使いが崩されるまで   作:ヤキブタアゴニスト

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第21話

ボウルタウン。

 

この街は、アカデミーを旅立ったトレーナーが最初に訪れる、大きな町だ。

生活圏としての規模も、トレーナー向けの設備も整っていて、当然のようにポケモンジムもここに置かれている。

 

ガラルにたとえるなら、ターフタウンか、あるいはバウタウンに近い。

 

ポケモントレーナーとしての資質の試金石としてはちょうどよく、ここで躓くかどうかが、その後の方針を決めることも多い。

 

街はスタジアムの周辺を始めとして緑が多く、どこか余裕がある。 石畳の合間から草花が顔を出し、所々に彫刻というか謎のオブジェが配置されている。

 

なるほど。これは、ジムリーダーの趣味がそのまま街に染み出しているタイプだ。

 

この街のジムリーダーを務めるのは、コルサという芸術家だ。

 

これはあくまで私の持論だけど、芸術家には大きく分けて二種類いる。周囲に迷惑をかけるタイプと、かけないタイプ。

 

そして、今私の目の前にいる人物は……どう見ても後者だった。

 

 

芸術家と聞いて、もっと浮世離れした人物を想像していたのだけれど、実際は違う。

立ち居振る舞いは大仰でも、距離の取り方はきちんとしている。

 

こちらが背後から入ったせいか、最初は一般のチャレンジャーだと思われたらしい。そのままジムチャレンジの導線に案内されかけた。

 

振り返って、軽く名乗る。それだけで、彼の目の色が変わった。

 

「ああ……なるほど。なるほどなるほど!」

 

両手を広げ、舞台役者のように一歩踏み出す。

 

「あの戦い方……実にアヴァンギャルド!!あれはもう、芸術だ!」

 

押し付けがましい威圧感はない。だが、自己主張は強い。褒められているようで悪い気はしないが、少々暑苦しさを感じる。

 

こちらの返事を待たず、言葉が次々と積み上がっていくあたり、いかにも芸術家だ。

 

「ぜひ、芸術の扉をひらこうではないか?私のウソッキーと、ひとつ。ひとつだけ、作品を仕上げてみたくてね」

 

芸術家らしい理由だと思う。

勝敗そのものよりも、過程と配置、そして間。どこで止まり、どこで受け、どこまで耐えるか。

 

それを見たいのだろう。

 

なら、こちらもそれに付き合えばいい。

 

もっとも、先の予定もある。全力での消耗は、正直、避けたい。私は少し考えてから、条件を口にした。

 

 

「……えっと。一対一なら、いいですよ」

 

一瞬の静寂。それから、彼は満足そうに頷いた。

 

「いいね。制限があるからこそ、芸術は際立つ。さあキャンバスは整った」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハピナス、お願いできる?」

 

準備のためにスタジアムの控室を一つ借り、ハピナスと向き合う。 この時間は、単なる最終確認ではない。

 

ハピナスにとっては技構成を変えてから、初めての実戦になる。

 

ダンデさんやネモとの戦いを経て、反省点ははっきりしていた。ゴーストタイプへの耐性が、あまりにも脆い。

 

受けとして成立させる以上、そこを放置するわけにはいかない。

だから、トライアタックを外した。代わりに選んだのは、より割り切った“アシストパワー”。

 

さらに、"ステルスロック"を忘れさせ、その代償として"のろい"を覚えさせる。ハピナスに求める役割としては、かなり無茶だ。 それでも、この先を見据えるなら、必要な変更だった。

 

深呼吸して、今度は相手のことを考える。

 

ウソッキー。

 

草タイプのジムリーダーが使っているせいで勘違いされがちだが、れっきとしたいわタイプだ。そして何より、ウソッキーといえば"カウンター"。それに、"不意打ち"。

 

こちらのテラスタルはゴーストなので"カウンター"は問題ない。

だが、"不意打ち"は素直に痛い。

 

もっとも、それも織り込み済みだ。 "不意打ち"を逆手に取って弱点保険を発動させられれば、返しの一撃で一気に形勢を崩せる。

 

耐えて、受けて、まとめてひっくり返す。

 

 

もっとも、私のハピナスは、"アシストパワー"のワンウェポン構成。だから、もし相手が"不意打ち"の威力強化のために悪テラスタルを切ってきた場合、そのまま殴り合っても効果はない。

その時は、こちらもゴーストテラスタルで"のろい"を使えばいい。

 

 

 

 

 

そんな私の考えは、いきなり初手から打ち砕かれた。

 

「題して、『ウソから出た実』、ウソッキー、テラスタル!!」

 

ウソッキーは、コルサさんの草テラスタルによって、草タイプへと変容した。

なるほど……これは、一本取られた。たしかに、そうだったような気もしてきた。

 

岩タイプか悪タイプ前提で組み立てていたこちらの読みを、ずらしてくる。というか、こっちがずれていた。

 

それでもやることは変わらない。

 

ハピナスの防御は、正直心もとない。けれど、だからこそだ。

 

一度強化してしまえば、物理も特殊も関係なくなる。受けきれる形に持ち込めば、あとは時間の問題だ。

 

「えっと、ハピナス、"のろい"」

 

「やらせるな、"けたぐり"!!」

 

テラスタルの発光に一瞬、判断が遅れた。ウソッキーの"けたぐり"が、真正面からハピナスに叩き込まれる。

 

威力自体は高くない。だが、格闘タイプ……弱点だ。

 

それでも、ハピナスは倒れない。体力は、まだ半分も削れていない。

 

そして、弱点技を受けた、ということは。

 

弱点保険。

 

その効果が、確実に発動する。攻撃と特攻が、一気に引き上げられる。

 

「……おや?」

 

コルサさんが、目を細めた。

 

「これはこれは… 偶然か、必然か……実に、刺激的だ。ウソッキー!臆せず"けたぐり"!!」

 

 

ウソッキーが、さらに間合いを詰めてくる。

 

 

その瞬間。私は、迷わず、次の手を選んだ。

 

リングが輝き、ハピナスの周囲にエネルギーが収束する。 光が弾けるように広がり、そして……その中から現れたハピナスは、ゴーストタイプへと姿を変えていた。

 

「ハピナス、瞑想!」

 

ウソッキーの"けたぐり"は、空を切る。ゴーストタイプ相手には、意味をなさない。

その一瞬の空白で、ハピナスは静かに意識を集中させる。特攻がさらに高まり、次の一撃へと精神を研ぎ澄ます。

「ウソッキー! 諸刃の頭突き!!」

 

「ハピナス!! アシストパワー!!」

 

正面からぶつかる二つの動き。だが、結果は一瞬だった。

 

積み上げた力が、そのまま形になって放たれる。

 

一撃!!

 

ウソッキーの体力が、まとめて刈り取られた。

 







感想・評価よろしくお願いいたします。





パルデア遠征が長くなりすぎるのでさらっと流しました。コルサファンの人すみません。
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