TS受けポケ使いが崩されるまで   作:ヤキブタアゴニスト

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第22話

アヴァンギャルドさん……もとい、コルサさんとの別れは、あっけなかった。

 

「新作に取り掛かるゆえ、これにて失礼する、さらばだ!」

 

バトルが終わると、彼は本当に風のように去っていった。

未練も説明もない。

だが、あれは逃避ではなく、次の制作への移行なのだろう。

 

……芸術家らしい、と言えばいいのか。それともそれは偏見だろうか?

 

私はハピナスと顔を見合わせた。

 

 

 

 

 

 

ボウルタウンからは、鉄路で一路ハッコウシティへ向かう。

 

車窓の景色が、目に見えて変わっていく。石と緑の街から、金属と光の街へ。随分と近代的な都市だ。

 

電気装飾が当たり前のように街を覆い、昼でも夜でも境目が曖昧になる。

 

駅を出たところで、思わず写真を撮った。

 

ラニュイ姉さんに送ると、すぐに返信が来る。

短い文面なのに、羨ましさが滲んでいて少し笑ってしまった。

 

今回の目的は、この街のジムリーダー。今をときめく配信者にして電気タイプ使い、ナンジャモさんだ。

 

めざといというのか、私がアカデミーに来るまえから連絡がきていたのだ。

それはコラボの誘い、というか、バトルの誘いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

指定された場所に着くと、遠くからでもすぐに分かった。派手な配色、動きの多い身振り、そして周囲に漂う独特の賑やかさ。そして、周りに人が寄ってきている。

 

ああ、なるほど。これは配信者だ。

 

そう思ったのは最初の一瞬だけだった。

 

近づいて声をかけると、彼女は一拍だけ間を置いてから、きちんとこちらに向き直った。 勢いで押し切るタイプかと思っていたけれど、そういう雑さはない。

 

そのまま流れるようにジムの中へ案内され、改めて挨拶する。姿勢も、視線も、思っていたよりずっと丁寧だ。

 

ただし、言葉の量はやっぱり多い。

 

「来てくれてありがとー!……こほん!」

 

わざとらしく咳払いをしてから、胸を張る。

 

「ボクはナンジャモ!ここハッコウシティのジムリーダーで、インフルエンサー!せっかくパルデアに来たんだし、なかよくしよーよ!」

 

テンションは高い。声も大きい。でも、視線はちゃんとこちらを見ている。

うなずくと、すぐに次の話題が飛んできた。

 

「ガラルってさ、バトル動画めっちゃ人気あるよね?うちの視聴者も多いんだよねー。ガラル。コメントにも新チャンピオンがすごいって」

 

軽い口調だけれど、ただの雑談じゃない。

どんな層が見ていて、何を面白がっているのか。そこまで把握したうえで話しているのが分かる。

 

「だからさ、こうしてバトルできるの、正直うれしいんだ」

 

その一言だけ、ほんの少しだけトーンが落ちた。配信者としてじゃなく、ジムリーダーとしての声だった。

 

無理に話を広げることはせず、こちらの事情もきちんと聞いてくれる。だから、バトルは私やポケモンの疲労を考えて、二日後ということになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

時間をもらったので、リフレッシュも兼ねて街の周囲を散策する。

街の外れへ向かい、ハッコウシティ周辺を歩いて回り、途中からモトトカゲにライドして進む。

 

都市の光が届かなくなると、空気が少し変わる。電気の唸りが遠のき、代わりに風と土の匂いが前に出てくる。パルデアの大地を、素直に感じられる風景だ。

ということで、やってみたかったパルデア式のピクニック。ハッコウシティで買ってきた道具を取り出す。

 

シートを広げて、簡単なサンドイッチを作る。包みを開く音や、具材の匂いに反応して、ホゲータがそわそわと落ち着かない。じっとしていられず、私の足元を行ったり来たりしながら、ときどき背伸びをして、具材をのぞき込もうとする。

 

対称的にコジオはというと怖がっているのか、固まったままだ。

 

ハピナスは、慣れた手つきで自然に手伝ってくれる。包丁代わりの道具を受け取り、無駄のない動きで具材を整える。 ホゲータが手を伸ばしかけるたびに、やんわりと制するのも忘れない。

 

「はいはい、順番ね」

 

その言葉に、ホゲータは一瞬だけ動きを止める。

意味は分かっているらしく、少し不満そうに鳴きながらも、ちゃんとシートの端に座り直した。

 

出来上がったサンドイッチを、順に配る。私が手を伸ばすより先に、ホゲータがこちらを見上げた。視線が合うと、期待と我慢が混ざったような表情をしている。

目の前に置くと、その大きな口で一気にかぶりついた。

 

 

 

サンドイッチを楽しんだ後、なおも走り回っていると妙な光を見つけた。

なにごとかと奥へとすすみ、岩陰を抜けた先でふと足を止めると、地面から突き出すように、巨大な結晶が露出している。

 

淡く光を放射して、存在を隠す気はまるでない。……ガラルでいう、巣穴みたいなものか。

 

 

少し近づいて、様子を見る。エネルギーの濃さは、今すぐ触るには重い。そして、その中からはポケモンの気配がしていた。

 

ハピナスもグライオンも、無意識に一歩引いていた。

 

「今じゃないね」

 

そう言って、位置だけを頭に刻む。ナンジャモさんとのバトルが終わればもう一回来てみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたの目玉をエレキネット!何者なんじゃ? ナンジャモです! ジムリーダーだよ!おはこんハロチャオー!!」

 

眩しい照明と同時に、派手なエフェクト音が鳴り響く。複数のカメラが一斉にこちらを向き、視界の端で赤いランプが点灯するのが分かった。

 

「おっ……おはこんハロチャオ……」

 

返事をした瞬間、自分でも少し遅れたな、と分かる。

事前に聞いてはいた。聞いてはいたが……実際に始まってみると、想像以上に情報量が多い。

 

ガラルでも、取材や中継に囲まれることは珍しくなかった。だが、これは少し勝手が違う。

 

画面の向こうには、確実に人がいて、しかも反応が即座に返ってくる。

コメント欄が、横目に流れていく。文字、絵文字、色とりどりのアイコン。

 

「ナンジャモ語、使いこなしてんジャン!意外と場慣れしてるー!?」

 

ナンジャモさん,は、こちらの戸惑いなど気にも留めず、軽快に話しかけてくる。テンポが早い。考える間を与えないタイプだ。

焦った拍子に、口が回らなくなる。

 

それにしてもコメント欄が活発なようだ。

ナンジャモさんは、画面越しの反応も拾いながら、こちらをフォローするように笑う。

 

「そらそっか。なにしろ、今日のゲストはトクベツだからね。ボクに会うため、ハッコウジムに来てくれてアリガト!忙しい合間に来てくれるなんて、ホントにうれしー!」

 

そう言って、大げさなくらいに手を振る。スタジオのモニターには、拍手のエフェクトが重なる。

 

「……こちらこそ。お招きいただいてうれしいです」

 

少しだけ、呼吸を整える。

 

 

「皆の者ー!こんな機会、そうそうないからねー!」

 

ナンジャモさんが、急にカメラ目線になる。 声のトーンが、明らかに配信用に切り替わった。

 

「題してガラルの新チャンピオンと、ポケモンバトルしてみた!!」

 

派手なタイトルロゴが画面に躍る。コメント欄が、一気に加速した。

内心、少しだけ肩に力が入る。

 

 

「……だいぶ、盛り上げますね」

 

思わず、正直な感想が口に出た。

 

「でしょでしょ!だってさ、せっかくなんだもん。盛り上げないと!」

 

ナンジャモさんは、くるりとこちらを向いて、にやりと笑う。

 

「んじゃ、今日のバトル企画、始めちゃうよ!」

 

フィールドの準備が終わり、コメントを表示していたディスプレイが脇に遠ざけられる。

さあ、バトル開始だ。

 

 

 

 

 

 






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次回からナンジャモ戦です。

ナンジャモの口調難しい…
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