「皆の者ー!準備は いーいー?」
「ほいじゃ そろそろ いってみよう!ガラルチャンピオンの実力は どんなもんじゃ~!?目を コイルにして 視聴せよー!」
派手なSEとともに、バトルフィールドが照らされる。
一瞬だけ意識がそちらに向きそうになるのを、無理やり切り替える。ガラルと同じ。配信でも、ショーでもあるがそれ以前に、バトルだ。
「タイカイデン、行ってきて!!」
「ハピナス、よろしく!!」
ナンジャモさんが繰り出してきたのはタイカイデン。高い素早さで飛び回って攪乱するのが得意なでんき・ひこうタイプのポケモンだ。対して私が繰り出したのはハピナス。大抵の特殊攻撃を軽々と受け止めることが出来る。
「ハピナス、瞑想!!」
「タイカイデン、怪電波だ~!」
攻撃なら受け止められると思って、ハピナスには瞑想で力を蓄える。が、意外なことにタイカイデンの技は怪電波。ハピナスの特殊攻撃を下げる技だ。
おそらく後続のポケモンを安全に繰り出して、積み技の起点にしようというのだろう。
となればタイカイデンの特性ふうりょくでんき、自身の追い風によって電気技を強化してからのボルトチェンジ。エースの降臨には十分だ。
「タイカイデン、追い風いくぞ〜!」
そう考えている間にも、ナンジャモさんは追い風を起動してタイカイデンが充電状態になっていく。
ただでさえ素早いタイカイデンが風に乗ってその速さをさらに上げる。
「ハピナス、交代!ドオー!!」
だけど、電気技も、交代で出てくるであろうエースの積み技もドオーならば通じない。
「むっ、タイカイデン、やめてフェザーダンス!!」
ただ、そこはナンジャモさんもジムリーダーだ。ボルトチェンジを纏って突っ込んで来たのを急停止してフェザーダンスでドオーの攻撃を下げてくる。
恐ろしい速さの判断力だ。
「ドオー!ストーンエッジ!!」
フェザーダンスで接近したタイカイデンにストーンエッジで狙いを定める。
素早くタイカイデンは躱すが、おそらくは電気技しかないタイカイデンはドオーに手出しすることは出来ない。
「タイカイデン、良くやったぞ!ムウマージ、よっろしっくねーー!」
「ドオー!あくび!」
タイカイデンに代わって出てきたのはムウマージ。そこにあくびが突き刺さり、ムウマージは少し眠そうにしている。
「ムウマージ、瞑想だ!!」
「ドオー戻って!!ハピナス、任せた!!」
私は交代かタイプ一致のゴースト技かとハピナスを繰り出した。風に乗って飛び回るムウマージは瞑想によって特殊攻撃と特殊防御を上昇させる。
「出でよ、エレキブル!!撮れ高きにしてる余裕がない~!」
「ハピナス、こっちも瞑想!!」
代わりに出てきたのはエレキブル、その前でハピナスが瞑想で強化される。エレキブルはおそらくは物理攻撃が主体。このまま居座るのは具合が良くない。
そして、エレキブルの特性が電気エンジンだとすれば、私には最適な交換先がある。
「ハピナス、いったん戻って、よろしく、ポリゴン2!!」
そう、それはポリゴン2、その特性トレースは相手の特性と同じ特性になるというもの。エレキブルの電気エンジンを模倣したポリゴン2にはでんきタイプの技は無効化される。
けれど、相手のナンジャモさんも素早い。
「エレキブル、ちょうは……じゃなくてビルドアップ!!」
挑発、そう思わせておいての切り替え。
攻撃と防御を同時に引き上げるビルドアップは、放置すると厄介な積み技だ。
普段ならヌオーに任せる場面。だが、ここではそのプランを捨てる。
こちらの意志を、押し通す。
「もっともっと、ビルドアップ!!」
「ポリゴン2、トリック!!」
力を溜め続けていたエレキブルの隙を突き、ポリゴン2が滑り込む。
次の瞬間、持ち物が入れ替わった。
こだわりメガネと、エレキブルのオボンのみ。
技を縛られたエレキブルは、もはや攻撃することすらできない。ひたすら自己強化を繰り返すだけの、無害な置物に成り下がった。
「ゲゲッ!なにそれ!! じゃあ、ムウマージ、いっちゃおう!!」
繰り出されたのは、眠ったままのムウマージ。
それに対して、私が出していた指示はテラスタルなしのテラバースト。
当然、ノーマルタイプの攻撃はゴーストに通らない。だが、それでいい。
タイプ不明の攻撃が飛んでくるかもしれない。その警戒を一度意識させるだけで、テラスタルの切りどころは縛れる。
「アーマーガア、任せた!!」
有効打が乏しい相手に、自由に積ませるわけにはいかない。ナンジャモさんの得意なでんきタイプ相手では役割の少ないアーマーガアだが、この場面では、切りやすい札だった。
「ムウマージ、いくぞ瞑想!!」
交代の隙に目を覚ましたムウマージが、静かに集中を始める。
「挑発で止めて!!」
即座にアーマーガアが割り込み、言葉で、圧で、動きを縛る。再度の瞑想は許さない。
「アーマーガア戻って、ドオー!!」
「いっちゃえ!!アシストパワー!!」
ムウマージの身体が淡く光り、念動の奔流が放たれる。エスパータイプの攻撃。
ドオーにとっては効果抜群だが、能力上昇はてんねんで相殺されている。
アシストパワーの威力も、まだ低い。
重たい衝撃が体表をなぞるだけで、ドオーは踏みとどまった。
問題ない。この程度なら、ドオーの特防の厚みで受け切れる。
「ドオー、どくどくで攻めて!!」
反撃に転じる。
毒液が弧を描き、ムウマージへと飛ぶ。
その瞬間だった。
「サイコショック!!!」
猛毒液を浴びせられながらも、ムウマージは怯まない。
一気に距離を詰め、放たれたのはサイコショック。
精神を直接叩きつける衝撃波。特殊技でありながら、ダメージ計算は防御依存。
ドオーは特防こそ高いが、防御は並。しかもエスパーは弱点。条件は最悪に近い。
鈍い衝撃が全身を貫き、ドオーの身体が大きく揺れる。
「えっ、耐えるの!!」
踏みとどまり、息を荒げながらも耐え続ける。これが、ドオーの底力だった。
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