TS受けポケ使いが崩されるまで   作:ヤキブタアゴニスト

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第25話

気を取り直し、次の一手を組み直す。

 

レントラーの残りの技。 一つは、確実にでんきタイプ。もう一つは……分からない。

 

なら、分からないものは考えない。分かっている技を、撃たせる。

 

それが、受けという選択だ。

 

 

「アーマーガア、お願い!!」

 

私が繰り出したのは、アーマーガア。

はがね・ひこう。このタイプを前にすれば、レントラーが選ぶ行動はほぼ一つに絞られる。

 

でんきタイプの技。

 

しかも、レントラーは猛毒状態。ヌオーのゴツゴツメットのダメージもある。悠長に技を選んでいる余裕は、相手にはない。

 

「ドオー、交代!!」

 

電撃が来るなら、話は早い。ドオーに変えてじめんタイプで無効化すればいい。

 

 

が、ナンジャモもレントラーを引いた。代わりに姿を現したのは、ハラバリー。

攻め駒を温存する判断。ジムリーダーらしい、冷静な切り替えだ。

 

"ひやみず"

 

冷たい水流がドオーの身体を打ち、ぬかるんだ地面に水音が広がる。筋肉の動きが鈍り、攻撃力が下がったのがはっきり分かる。

 

だが、その程度なら構わない。ドオーは、自己再生。削れた体力を、確実に回復していく。盤面は、再び落ち着いた。

 

「もう一度!!レントラー!いくよ~」

 

ナンジャモの声とともに、再び雷をまとった巨体がフィールドに姿を現す。

毒は回っている。だが、まだ十分に動けるだろう。

 

「ドオー、"ストーンエッジ"!」

 

鋭い岩が地面から突き出し、レントラーを捉えにいくが、空を切った。

 

外れ。

 

一瞬、心臓が跳ねる。だが、これは想定内だ。無理に居座る理由はない。

 

「アーマーガア!」

 

即座に交代。鋼の翼が影を落とし、ドオーと入れ替わる。

 

その瞬間。レントラーが踏み込み、口元に冷気を集める。

 

"氷の牙"

 

白い牙が、一直線に突き立てられる。鋼の装甲に氷がぶつかり、鈍い音を立てて砕け散った。

 

深手にはならない。だが、確実に削られる。

 

息をつく間もなく、私は次の指示を飛ばす。

 

「アーマーガア、"はねやすめ"!!」

 

「レントラー、"サンダーダイブ"!!」

 

レントラーが電気を纏ってアーマーガアに接近する。しかし、衝突より一瞬早く、アーマーガアは地面に降りていた。

 

バチンっ

 

火花が弾けるが、その攻撃をアーマーガアは見事に耐えきっていた。

 

そして、毒が回ったレントラーもついに力尽きる。これで残りは互いに4体。しかし、この状態はこちらが有利だろう。物理攻撃はムウマージの"サイコショック"程度で、その他は特殊攻撃が主力。それならばハピナスとドオーの耐久を抜くのは生半可ではない。

 

「ぬう!?皆の者! ボクへの応援してしてー!」

 

そう話しながらタイカイデンが出てくる。

 

「ハピナス、よろしく!!」

 

こちらが不利なら相手が交代読みで"怪電波"をしてくる読みで居座って、ミラーアーマーによる能力低下を狙うかもしれない。だけど、ここは安定択を選べばいいだけだ。

アーマーガアは流石に不利なので、ハピナスに交代する。

 

「"ボルトチェンジ"!!」

 

そこにタイカイデンの"ボルトチェンジ"が命中、交代で出てきたのはムウマージ。

 

さあ、積みあいの始まりだ。

 

「ハピナス、"のろい"!!」

 

「ムウマージ、"いたみわけ"!!」

 

ハピナスは"のろい"を使って防御力を向上させる。これでそう簡単には"サイコショック"が効かなくなるだろう。

 

けれど、そこで飛んできたのが"いたみわけ"。二体の体力を分かち合うという技だが、体力の高いハピナスには特に有効だ。

 

とはいえ、まだ体力には余裕がある。

 

「ハピナス、"瞑想"!!」

 

「こっちも"瞑想"!!」

 

激しい攻防が続いていたはずのフィールドが、ふっと静まり返る。

あるのは、二体のポケモンが向かい合い、目を閉じる光景だけだ。

 

奇妙な沈黙。だが、この静けさこそが、最も危険だった。

ハピナスはゆっくりと呼吸を整え、精神を内側へと沈めていく。一方のムウマージも、揺らめく身体を静止させ、念を研ぎ澄ませる。

……先に動いたのは、ムウマージだった。

 

「"サイコショック"!!」

 

圧縮された精神の刃が、一直線にハピナスへ突き刺さる。だが、ハピナスは崩れない。

 

「"タマゴうみ"!!」

 

柔らかな光とともに、体力が戻っていく。

痛みを受け止め、受け止めきり、立ち続ける。

それからは、長い時間だった。

 

"瞑想"

"のろい"

"いたみわけ"

"タマゴうみ"

 

積み、削り、均し合う。

 

一手ごとに、互いの体力と精神が削れていく。

どちらが先に仕掛けるか。どちらが、欲を出すか。

 

そして、ついに。

 

「ハピナス……!」

 

呼吸が、一瞬だけ重なる。

 

「全力で……"アシストパワー"!!!!」

 

溜め込まれた力が、一気に解き放たれる。積み重ねた精神、耐え続けた時間、そのすべてが一つの奔流となって前へ出る。

 

「ナンジャモの底力、見せちゃるぞっ!!"アシストパワー"!!!」

 

ムウマージも応える。紫の念動が渦を巻き、真正面から激突する。

 

衝突。

 

空気が震え、光が弾ける。二つの力が、フィールドの中央で押し合い、拮抗し……

ハピナスの光が、前へ出た。

 

念動が押し込まれ、ムウマージの身体が大きく揺らぐ。耐えようとするが、もう、力は残っていない。

 

光が、飲み込む。

 

ムウマージは、その場に崩れ落ちた。

 

長かった戦いがようやく終わる。ここまでくれば、ハピナスの独壇場だ。

 

繰り出されてきたハラバリーに一撃でも当たれば、凄まじい威力の"アシストパワー"が盤面ごと吹き飛ばすだろう。そう、思った。

 

 

「"タマゴうみ"!!」

 

私は、あえて攻めない。勝ちが見えた瞬間こそ、落とし穴がある。

まずは回復。ハピナスの体力を万全にし、次の一手に備える。

 

「いっくよーっ!!ここで……テラスタル!!悪に染めてぇ……ハラバリー!!"アシッドボムッ"!!」

 

 

ハラバリーの周囲に、異質なエネルギーが集まっていく。それは眩い光ではなく、色を奪うような重さを帯びていた。

色が変わる。空気が沈む。

 

悪テラスタル。

 

"アシストパワー"の通らない悪タイプ。このタイミングまでテラスタルを牽制してきたのが却って悪手になったのかもしれない。

 

"アシッドボム"が命中した瞬間、ハピナスの身体が粘つく酸に包まれた。

痛みとともに確かなほころびが生まれて特防が下がる。

 

 

 

それでも。こちらにも、切り返しの一手がある。

 

 

 

 

「ハピナス、行くよ!!テラスタル!!!」

 

白い光が弾け、ハピナスの輪郭がぼやける。

確かにそこにいたはずの身体が、次の瞬間には現実との境界を失ったように揺らいだ。

 

光が収まる。

 

残ったのは、質量を保ちながらも、どこか掴みどころのない存在。ゴーストテラスタル。

 

「そして、"のろい"!!!」

 

ゴーストタイプに変わったことで、"のろい"という技の効果も変化する。自分の体力を削って、相手の体力を継続的に削り続ける。まさに鈍いではなく呪い。ゴーストタイプにふさわしい効果だ。

 

「なっ、なんじゃそりゃ!!えーっと、"どくどく"!!」

 

一瞬だけ、ナンジャモの反応が遅れた。ゴーストテラスという想定外の切り返しに、言葉が詰まる。

 

だが、迷いは長く続かない。ジムリーダーは、即座に次善手を選ぶ。

 

ハラバリーが身体を震わせ、黒い毒が噴き上がる。

"どくどく"。重たい毒液が、確かにハピナスへと降り注いだ。

 

時間制限をかける。受けを成立させないための、正しい判断だ。

 

 

「ハピナス、"タマゴうみ"」

 

だが、こちらも慌てない。

のろいと毒で削られた体力を、淡々と回復する。

 

「ハラバリー、"パラボラチャージ"!!」

 

電撃が輪を描き、ハピナスに絡みつく。与えたダメージを、自身の回復へと変える技。

 

しかし、その火力は、こころもとない。

 

特防を下げたとはいえ、瞑想による上昇分となにより元の数値が違いすぎる。ハピナスの特殊耐久は、依然として圧倒的だった。

 

電撃は弾かれ、ハラバリーが得られた回復量も、わずか。

 

結論は、一つしかない。ハラバリーは、引くしかなかった。

盤面に残ったのは、悠然と立つハピナスと、静かに傾き始めた勝負の流れ。終わりは、もう見えていた。

 

そこから先は、淡々と詰めるための戦いが、終幕まで続いた。

 

ドオーとハピナスを入れ替えながら場に出し、 "あくび"で動きを縛り、"どくどく"で時間を刻み、"呪い"で逃げ場を削る。

 

一体、また一体。相手のポケモンは、抗う術を失い、静かに倒れていく。

無理に急がない。崩さない。勝ち筋から、一歩も外れない。

 

やがて、元気のなくなったナンジャモが、最後に倒れたハラバリーをボールへと戻した。

フィールドに残るのは、こちらのポケモンだけ。

 

こうして、長く張りつめていた戦いは、静かに、確実に終わりを迎えたのだった。

 

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