TS受けポケ使いが崩されるまで   作:ヤキブタアゴニスト

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第30話

『おっと、両者ここで交代してきます!ルリナ選手はここでカジリガメ投入です!!』

実況の声が、明らかに一段高くなる。

 

フィールドに姿を現したのは、カジリガメとカマスジョー。どちらも、降り続く雨を最大限に活かすために用意されたアタッカーだ。

 

水を蹴るたび、速度と圧が増していくのが、見ているだけでも分かる。

ここからが、本命だろう。

 

「スタジアムを、海に変えましょう!カジリガメ、キョダイマックスなさい!」

 

宣言と同時に、カジリガメが一度ボールへと戻される。解放されたボールからは地鳴りのような音とともに、巨大な影が現れる。

 

キョダイマックス・カジリガメ。

甲羅は要塞のように広がり、雨を受けて鈍い光を放つ。

 

「ハピナス、のろい!!受けきって!!」

 

私は即座に判断する。正面から削る相手じゃない。耐えるしかない。

 

「ポリゴン2は、放電で牽制!!」

 

同時に、後方のポリゴン2にも指示を飛ばす。広範囲に圧をかけ、少しでも相手の動きを鈍らせる狙いだ。

 

ポリゴン2の体から、電気が弾ける。

 

放電。

フィールド全体を走る電流が、巨大なカジリガメとカマスジョーを包み込む。

確かにダメージは入る。だが……

 

『しかし、一撃で倒すほどではありません!!』

 

耐えられる。想定の範囲内だ。

問題は、そこじゃなかった。電撃は、容赦なく味方にも及ぶ。

 

『ああっと!!ポリゴン2の放電が、ハピナスにも命中!!その上、痺れて動けていない!!』

 

嫌な音が、はっきりと響いた。

 

ハピナスの体が一瞬、強張る。動こうとしたその動作が、途中で止まる。

 

麻痺。

 

よりによって、ここで……防御を固めるはずだった準備が、無に帰した。

 

 

見逃されるはずがない。

 

「今!!カマスジョー、"インファイト"!!カジリガメ、"キョダイガンジン"!!押し流して!!」

 

ルリナさんの声が、一気に加速する。

 

カマスジョーが低く地面を蹴り、一直線に踏み込む。迷いのない突進。拳に込められた闘気が、そのまま衝撃となってハピナスを打ち抜いた。

 

効果抜群。

その一撃だけでも、決して軽くはない。

 

そして本当の脅威は、そこじゃなかった。

巨大化したカジリガメが、ゆっくりと身を沈める。次の瞬間、フィールド全体が震えた。

 

キョダイガンジン。

 

圧倒的な水量が、一気に解放される。壁も、地形も、設置されたステルスロックすらも意味を失う。押し流された岩がこちら側のフィールドに散らばる。

 

すべてが、水に呑まれる。

巨大な水流が、ハピナスを正面から飲み込んだ。

 

『キョダイガンジン!!ハピナス、耐えきれない!!!なんと、ここでハピナス戦闘不能!!!』

 

実況の叫びと同時に、ハピナスの体が力を失う。白い体がゆっくりと傾き、そのまま倒れ込んだ。

 

観客席が、いっせいに湧く。

 

歓声とどよめきが重なり、スタジアム全体が震えた。

それでも。こちらは、冷静でいなくてはならない。

 

一体失っただけだ。盤面は崩れたが、試合は終わっていない。

 

 

「アーマーガア!!!」

 

叫びと同時に、黒鉄の翼が大きく広がる。物理攻撃に対して、これ以上信頼できる盾はない。

 

そして。ここが、仕掛けどころだ。

 

「ポリゴン2、ソーラービーム!!!」

 

『おおっと!ポリゴン2はソーラービーム!!しかし現在は雨! チャージに時間がかかり、威力も落ちる!!これは一体、どうしたのでしょうか!?』

 

実況の声には、明確な困惑が混じる。

 

確かに、理屈だけ見れば悪手だ。雨下でのソーラービームは遅く、威力も抑えられる。

とはいえくさタイプの技。威力が落ちようと、カジリガメにとっては無視できない弱点だ。

 

「カジリガメ!!ポリゴン2に、"ダイワーム"!!カマスジョーは、アーマーガアに"インファイト"!!」

 

ルリナさんの返しは、的確だった。

 

巨大なカジリガメが身を起こし、空間を歪める。放たれるのは、ダイワーム。直接倒すのではない。特攻を下げ、ポリゴン2を置物にするための一撃。

 

同時に、カマスジョーが一直線に踏み込む。狙いは、前に出てきたアーマーガア。

 

「アーマーガア、"とんぼがえり"!!」

 

私は、即座に動く。

 

本来なら、ここで"リフレクター"を張り直したい。だが、それを許す相手じゃない。

 

アーマーガアは、攻撃を受ける直前に翼を翻す。"インファイト"を受けつつも、返しで鋭い一撃を叩き込み、その反動を利用して後方へと離脱する。

 

"インファイト"で体勢を崩したカマスジョーは、もはや踏みとどまれない。行きがけの一撃が決定打となり、勢いを失って崩れ落ちる。

 

「出番だ!!!ヘイラッシャ!!!!」

 

アーマーガアをボールに入れた私は、迷わず次のボールを投げる。

地面が、揺れた。

 

姿を現したのは、巨大なナマズ、ヘイラッシャ。

 

ただ存在するだけで圧がある。技巧も、搦め手もいらない。数値の暴力。それを体現するポケモンだ。

 

パルデア帰りの切り札だが、調整には苦労した。だからこそ、戦わせ方は単純に決めている。

 

それだけでいい。

 

「っ……アズマオウ!!」

 

ルリナさんの声が、わずかに遅れる。完全に想定外だったのか。それとも、この巨体が何を意味するのかを、一瞬で理解してしまったのか。

 

いずれにせよ、思考の空白があった。アズマオウが飛び出し、水を蹴って構える。

 

「カジリガメ、"ダイウォール"!!!アズマオウ、"クイックターン"!!」

 

 

即座に立て直す判断。雨での機動力を活かし、アズマオウは"クイックターン"で場をかき乱す。

 

同時に、巨大なカジリガメは殻を固める。狙いは明白だ。

 

……ポリゴン2の"ソーラービーム"。

 

弱点を突く技を防御に徹し、やり過ごすつもりだ。

 

けれど。もう、止まらない。

 

「ヘイラッシャ!!ダイマックス!!!」

 

宣言と同時にヘイラッシャを一旦ボールに戻し、再度展開する。

 

ただでさえ巨大な体躯が、さらに膨れ上がる。視界を埋め尽くすほどの質量。スタジアムが、明確に狭くなった。

 

そして、その瞬間。ポリゴン2のチャージが、完了する。

緑の光が、静かに収束した。放たれる。

 

 

 

 

 

『な、なんと――!!ポリゴン2のソーラービームが、ダイマックスしたヘイラッシャに命中!!』

 

 

場内が、ざわつく。

 

当然だ……当たった先は。

 

ヘイラッシャ。

 

雨下。ダイワームで特攻が下がった状態。威力の落ちた"ソーラービーム"、すなわち弱点技が、巨大なヘイラッシャの体に突き刺さる。

 

緑の光が、その腹部を直撃し、エネルギーが弾ける。だが、その巨体は揺るがない。

この一撃は、受けるための一撃だった。

 

そして弱点保険が、発動する。

 

見えない歯車が一気に噛み合う感覚。ヘイラッシャの内側で、攻撃能力が跳ね上がる。

 

「ペリッパー!!!」

 

ルリナさんが、即座に動く。クイックターンで戻ったアズマオウと入れ替わるように、ペリッパーが再び舞い降りる。

同時に。

 

「ヘイラッシャ!!!ダイアース!!!」

 

巨体が、動いた。

地面が唸り、圧縮された力が解放される。だがペリッパーの着地と、技の発動は、ほぼ同時。間一髪で無効化される。

 

雨が、再び強まる。空気が湿り、視界が滲む。

 

そして、巨大なカジリガメもまた、ダイマックスの終焉を迎える。要塞のようだった姿が縮み、元のサイズへと戻っていく。

 

ダイアースは、無効化された。

 

確かに、これは痛い。

痛いが、盤面は、もう出来上がっている。

 

こちらの切り札は完成し、ルリナさんの切り札はダイマックスを終えた。

 





あと一話でなんとかルリナ戦を終えたい……
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