TS受けポケ使いが崩されるまで   作:ヤキブタアゴニスト

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第31話

 

「ペリッパー、ワイドガード!!カジリガメ、ポリゴン2に諸刃の頭突き!!」

 

ルリナさんの判断は、冷静だった。

 

ワイドガードで放電を警戒。カジリガメは、効率を取ってポリゴン2を狙う。

諸刃の頭突き。反動はあるが、威力を優先した一手だ。

 

確かにヘイラッシャは鈍重で、ペリッパーに対しては有効打が少ないように見える。雨下ですいすいが発動したカジリガメも、捕まえるのは簡単じゃない。

 

理屈だけ見れば、正解かもしれない。

 

だけど、圧倒的なパワーはその理屈を踏み越える。

 

それは、受けを相手にし続けたからこそ生まれた感覚。「耐えられる」「いなされる」ことに意識が寄った、その裏を突く一撃。

 

「ヘイラッシャ。ペリッパーに……ダイストリーム!!!ポリゴン2は、自己再生!!」

 

ほぼ同時に、動きが交錯する。

カジリガメの諸刃の頭突きが、ポリゴン2に突き刺さる。衝撃が走るが、即座に修復が始まる。

 

そしてヘイラッシャの巨体が、完全に動き切った。

 

圧縮された水をまとった攻撃が、正面からペリッパーを飲み込む。 タイプ相性だけ見れば、いまひとつ。

 

だが。

 

弱点保険で跳ね上がった攻撃力。ダイマックス技の質量。すべてが、その一撃に集約される。

 

ペリッパーは、抗う間もなく吹き飛ばされた。

 

『ペリッパー、戦闘不能!!!』

 

場内が、再びどよめく。

軽やかに盤面を操っていた支点が、たった一撃で消し飛んだ。

 

「まだまだ、これから!!!アズマオウ!!」

 

その声に、迷いはない。この程度で闘志が折れるほど、ルリナさんは甘くない。

どんなに細くても、勝ち筋が残っているならそれを掴みにいく。一流のトレーナーが、そう簡単に諦めるはずがなかった。

 

「アズマオウ、ツボをつく!!」

 

一瞬、場の空気が張り詰める。

ツボをつく。ポケモンの潜在能力を刺激し、能力を上昇させる技。だが、何が上がるかは分からない。

 

完全なギャンブル。なのに、一流は運すらも実力で引き寄せる。

攻撃が、上がった。

 

ただでさえ、雨ですいすいが発動し高速化しているカジリガメ。そこに、攻撃力上昇が重なる。

 

「ポリゴン2、自己再生!!ヘイラッシャ、ダイアース!!」

 

私は、即座に切り替える。ポリゴン2は、先ほど受けた諸刃の頭突きのダメージを修復中。耐久を取り戻し、盤面を支え直すつもりだった。

 

「押しつぶせ!!カジリガメ、馬鹿力!!!」

 

咆哮のような指示。

 

カジリガメが、一直線に踏み込む。全身の力を叩きつける、捨て身の一撃。

 

"馬鹿力"

 

攻撃力上昇が乗った、その一撃は重かった。あまりにも、重すぎた。

衝撃が直撃し、ポリゴン2の体が大きく弾かれる。修復は、間に合わない。

不沈艦のように盤面を支えてきた存在が、ついに、その役目を終える。

ポリゴン2は、力尽きて崩れ落ちた。

 

致命の一撃。

 

しかし、同時にヘイラッシャのダイアースが、カジリガメを捉えていた。

大地が隆起し、逃げ場を奪う。キョダイマックスを終え、等身大に戻ったカジリガメに、その一撃を受け止める余力は残っていない。

カジリガメが倒れる。

 

ポリゴン2が受けたのは完全に思わぬ一撃ではあった。ダイマックスは終わった。それでも状況はすこぶる良い。

 

ヘイラッシャの体力は十分。そこに弱点保険で引き上げられた攻撃力。ダイアースによって上昇した特防。

おまけに、特性は天然。安易な積み技は、すべて無効化される。残るのは、純粋な力勝負。

終盤において、この存在は詰みに近い。

 

ルリナさんの残りは、アズマオウとグソクムシャのみ。 こちらは、ヘイラッシャ、グライオン、ドオー、アーマーガア。

 

数だけ見れば、圧倒的だった。 耐久も、展開力も、詰めの手段も揃っている。どう考えても、ここから勝利が揺らぐとは思えない…………はずだった。

 

そう。 それは、グライオンとグソクムシャがフィールドに降り立ち、こちらが攻勢に出ようとした、まさにその瞬間。

 

「"つのドリル"!!!当てなさい!!」

 

叫び声が、鋭く突き刺さる。

 

攻めに転じた一瞬。どうしても、守りへの反応は遅れる。

……気づいた時には、もう遅かった。

 

アズマオウの角が、一直線に突き出される。回転し、えぐるように、無慈悲に。

ヘイラッシャの巨体に、白いドリルが、深々と突き刺さっていた。

 

一撃必殺。

 

『決まったーーー!!アズマオウの"つのドリル"が、ヘイラッシャを突き破ったーー!!』

 

スタジアムが、爆発したように沸き上がる。

 

そんな。ここで?

 

思考が、ほんの一瞬だけ止まる。

 

「グソクムシャ、追撃の"アクアブレイク"!!」

 

その隙を、ルリナさんは見逃さない。呆然とする私を置き去りにして、攻撃は畳みかけられる。

 

まずい。

 

一瞬、胸の奥が冷える。

 

……とはいえ。冷静に考える。状況そのものは、依然としてこちらが有利だ。

流れに呑まれる必要はない。ここは、固め直せばいい。

 

「"にほんばれ"!!」

 

短く、はっきりと告げる。

 

グライオンが力を解き放ち、空が割れる。湿り気を帯びていた空気が一掃され、降り続いていた雨が、急速に勢いを失っていく。

 

雨が上がり、晴れ上がったことでグソクムシャのアクアブレイクは、威力を削がれ、有効打にはならない。

 

同時に、私は盤面を整え直す。グライオンの隣に、アーマーガア。黒鉄の翼が広がり、再び防御の形が完成する。

 

ここからは、いつも通りに受け切るだけだ。

 

「もう一度、"つのドリル"!!!」

 

なおも、ルリナさんは攻めの姿勢を崩さない。声には気迫がある。

 

 

でも、"すいすい"を失ったアズマオウの動きは、先ほどほど鋭くない。必死さは伝わるが、迫力はもうない。

 

「アーマーガア、"守る"!!」

 

アーマーガアが即座に身を固める。白く回転する角が、正面から突き出されるが……金属音を立てて、弾かれる。

 

そう来るのは想定内だった。備えていた以上、簡単に通るはずがない。

 

「グライオン、"投げつける"!!」

 

間髪入れず、こちらが動く。

グライオンが体をひねり、持っていた道具を投擲する。空を切って飛ぶのはどくどく玉。

 

「グソクムシャ、"不意打ち"!!」

 

同時に、グソクムシャが飛び込んでくる。先制の一撃が、グライオンを捉える。

 

しかし、その衝撃を受けながらも、投げられた球は軌道を変えない。どくどく玉は、アーマーガアの前で動きを止めていたアズマオウに直撃する。

 

猛毒。

アズマオウの体が、はっきりと揺れる。アズマオウはこれで、猶予を失った。時間はこちらに味方する。

 

「グライオン、"守る"!!アーマーガア、"リフレクター"!!」

 

グライオンの前に再び光の膜が張られ、アーマーガアは翼を大きく広げ、フィールド全体を覆う防壁を完成させる。

盤面は、完全に固まった。

 

「グソクムシャ、"インファイト"!!アズマオウ、続けて!!!」

 

それでも、ルリナさんは攻める。

グソクムシャが踏み込み、全力の"インファイト"を叩きつける。 同時に、アズマオウが角を構え、最後の賭けに出る。

 

"つのドリル"。

アズマオウの角は、再びグライオンの守るに阻まれる。金属音が響き、白い回転が空を切る。

 

その一撃はもう通らない。

 

一方、アーマーガアは"リフレクター"越しにインファイトを受け止める。装甲がきしむが、倒れない。必要十分。想定どおりだ。

 

そして猛毒が、確実に効いてくる。

 

アズマオウの体が、目に見えて重くなる。一拍ごとに、削られていく体力。

 

『アズマオウ、毒のダメージかっ!!これは厳しい!!』

 

実況の声が、状況を言語化する。

 

攻めれば削れ、守れば時間が奪われる。

完全に、袋小路だ。

 

そこからは淡々とした遅延戦術だ。

 

守る。回復する。位置をずらす。一つ一つは派手じゃない。だが、確実に、勝ちへ向かう手順。

 

やがて。

 

『アズマオウ、戦闘不能!!』

 

最後の体力を猛毒に削られ、アズマオウが崩れ落ちる。スタジアムが、大きくどよめいた。

 

残るはグソクムシャ、ただ一体。

 

「……ドオー、よろしく!!」

 

私は最後のカードを前に出す。ステルスロックが当たりつつも、重たい足取りで現れたドオーがどっしりと構える。逃げ場は、もうない。

 

「グソクムシャ、アクアブレイク!!」

 

最後の抵抗。だが、その一撃はドオーを刈り取るまでは届かない。

 

「ドオー、あくび」

 

低く、静かな指示。

 

グソクムシャの動きが、次第に鈍る。瞼が重くなり、意識が揺らぐ。

 

『グソクムシャ、眠ってしまったーー!!』

 

実況が叫ぶ。完全に、止まった。

ここで、終わりだ。

 

「ドオー。"ストーンエッジ"」

 

地面が鳴り、鋭い岩が突き出される。眠ったままのグソクムシャに、逃げ場はない。

一撃。

 

『決まったーー!!グソクムシャ、戦闘不能!!』

 

歓声が、スタジアムを包む。

私は、深く息を吐いた。

 

 

 

 

 





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しばらく更新がとまりそうですが、またそのうち進めるのでよろしくお願いします。

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