『エンニュート耐えられない!!!』
実況を聞きながら、私は自分の幸運を悟った。ハピナスが大きく削られた今、特殊技をメインで使うポケモンの相手はどうしてもドオーに頼らざるを得ない。ここで消耗しすぎるのは避けたいところだった。
さあ、次のポケモンはと身構えると
「ウインディ!燃えて燃えて駆け抜けろ!!」
仕切り直しに出てきたのはウインディだ。広い技範囲と高い攻撃を併せ持つ強力なアタッカー。特性の"威嚇"によってドオーの攻撃は下がっているのもあって、こちらからの有効な一撃を加えるのは難しい。
しかし、交代することを考えれば"ステルスロック"が適度に"だいもんじ"で散らされた今ならグライオンが仕事をしやすくなっている。
「グライオン!受け止めて!」
「"しんそく"で近づけ、そして"フレアドライブ"!!」
カブさんの適切な指示によって近距離から"フレアドライブ"がグライオンに命中する。グライオンが吹き飛ばされた反動を上手く使って逃れなければ追撃によってもう一発撃たれていただろう。
距離をとれたのはいいが、グライオンには"はねやすめ"のような高速回復技は覚えさせていない。決定的な攻撃を放たせずに"ポイズンヒール"で回復しながら戦う必要があった。
だが、それを行う場所は整っていた。
「"ステルスロック"に隠れながら"みがわり"!!」
幸いなことに熱気によって蒸発した"ヘドロウェーブ"の霧、"ステルスロック"と"ストーンエッジ"の岩がグライオンに身を隠す絶好の場所を与えてくれた。
「引き寄せてから"守る"」
グライオンは飛び回りながら"身代わり"と"守る"で時間を稼ぎ、体力を回復する。私は細かい指示を与えながらグライオンの自己判断とこちらからの指示のバランスを調整し、徐々にウインディに疲労を溜めさせながらグライオンを回復させる。
同時に私にも疲れが溜まっていく。これを受け止めるには繊細かつ忍耐力を長時間消費するのだ。
『グライオン、上手く身を隠してウインディの攻撃から逃れる!!なかなかウインディは思うようにはさせてもらえません!!』
しかし、ジムリーダーをその程度で止められるわけがない。ここで交代して隙を晒すよりも攻めに出た方がいいと判断したのか、カブさんはもはや邪魔になった"ステルスロック"を除きにかかる。
「"インファイト"で岩を打ち砕け!!」
そう、格闘タイプの"インファイト"であればあっという間に岩を粉々にできるだろう。しかし、そうは好きにやらせない。"インファイト"の弱点は防御が下がること、それがこちらの待っていたタイミングだ。
ハンドサインとともに、グライオンに大声で指示を出す。
「グライオン、思いっきり"地震"!!」
"インファイト"で防御力の落ちたウィンディを狙った"地震"。岩陰の土埃から飛び出した至近距離での攻撃にウインディは即座に"しんそく"で攻撃する。
「"身代わり"かっ!!じゃあどこに?!」
しかし、それはグライオンの"身代わり"だ。あらかじめ決めていた合図、グライオンはそれに従って"地震"の指示を無視したのだ。
技を透かされたウインディに今度こそ背後からグライオンが襲い掛かる。
「いけ!! "どくどく"!」
無防備なウインディの後ろから毒液が振りかけられ、即座にグライオンが離脱する。このウインディはアタッカー。おそらく回復手段はないだろう。これでこちらが一気に有利になる。
その後もグライオンでウインディの攻撃を逸らしていくと、徐々にウインディに毒のダメージが蓄積する。カブさんは流石に何もできないことを察したのか、こちらが攻撃しにくいタイミングで交代してくる。
ただ、こちらは"身代わり"で攪乱できたので、あながち不利であるとはいえない。さあ誰が出てくるか、そう身構えた私の前に繰り出されたのは
「シャンデラ!!焼き尽くせ!!」
シャンデラだった。
シャンデラ、このポケモンはゴースト・ほのおタイプを持ち、非常に高い特攻を誇る強力なアタッカーだ。そして、おそらくは特性"すりぬけ"によって、こちらの"身代わり"を見抜いて無力化するという腹積もりだろう。
「戻って、ドオー、受け止めて!!!」
相性の悪い相手には交代するに限る。
「シャンデラ、"炎の渦"で閉じ込めろ!!」
慌てて交代したドオーにシャンデラが放ったのは、しばらく炎の中に閉じ込める"炎の渦"だった。"身代わり"で逃れることができるとはいえ、グライオンが捕まっていたらと思うと恐ろしい技だ。
「ドオー、"ど忘れ"!」
「シャンデラ、"シャドーボール"!!」
逃げ場をなくしたドオーに"シャドーボール"が命中するが、持ち前の特防が受け止める。さらに"ど忘れ"と"自己再生"で粘るドオーに、シャンデラは強烈な"オーバーヒート"を連発する。
そこからは熾烈な交代合戦が幕を開けた。
カブさんはこちらの防御に優れたグライオンやヌオーを戦闘不能にして、エースであるマルヤクデをキョダイマックスさせれば勝ちに近づく。だからこそ、グライオンやヌオーを倒すために、カブさんは特攻の高いシャンデラや悪巧みで強化できるキュウコンを繰り出してくる。
逆に、私はそれを受け止めるために特防に優れたドオーやポリゴン2に交代する。今度はウインディやコータスがそれらを倒そうと動き、それを受け止めるために私はグライオンやヌオーに交代する。
この繰り返しで互いに有効打を与えられないままにバトルが進んでいく。
もちろん、カブさんはこれを崩そうと"炎の渦"で交代を封じたり、時にはキュウコンからエスパー技の"神通力"がドオーに飛んでくる。
もちろん、私も負けてはいられない。隙を見て"どくびし"や"電磁波"で行動不能や追加ダメージを狙い、徐々に相手の体力を削り取っていく。
試合展開はゆっくりだが、手の内が分かれば対処していくこちらの方がだんだんと有利になっていく。まるで詰将棋のように、私は少しずつ着実に有利を蓄積させていく。
一度対処法が分かれば、後は隙を晒さないことが全てだ。カブさんが状況を打開するために無理をして攻めてくれば、冷静にそれを咎めていく。
「コータス!!!」
ヌオーの”ゴツゴツメット”によってカブさんのコータスが倒れ、ウインディが毒のダメージで動けなくなってからは早かった。
交換によって有利を確保できなくなったカブさんのポケモンは次々と倒れていく。
「マルヤクデ! 燃えさかれ! キョダイマックスで姿を変えろ!!」
「グライオン、身代わり!!」
冷静にダイマックスをグライオンでいなしていき、
「グライオン、"地震"!!」
『決まったーーー!!マルヤクデもここまでか!』
グライオンの"地震"がマルヤクデの最後の体力を削り取る。
最後はグライオンでキョダイマックスしたカブさんのマルヤクデを受け止めてなんとか勝ち切ることができた。なお、マルヤクデは"ダイソウゲン"というか"パワーウィップ"を覚えていたので、グライオンではなくヌオーを出していたら一撃でやられていたかもしれない。
バトルを終えて息も絶え絶えな私に、カブさんは優しく「強かった、きみたちが勝って当然だよ」と優しく手を差し出してくれた。
そして意外にも、スタジアム全体から万雷の拍手が送られたのだった。
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どこまでジムリーダーの手持ちをいじって良いのか難しいなぁ