凍てつく風が吹きすさぶ、岩山と岩だけが連なる荒れた島――
その名は死の大地。
この不毛の大地の真下、暑い岩盤の奥深くに埋まるようにして築かれているのが、魔王軍総本山。
真の本拠地にして大魔王バーンの居城。
大魔宮、バーンパレス。
玉座の間にて、大魔王バーンが鎮座している__
「ふぇ……ふぇ……ふぇ……!」
………のだが、どうにも体が震えている。
「__ぶぇにっくしょん!!!」
突然、盛大にくしゃみを一発ぶちかます大魔王。
鼻水を垂らすのを手で押さえつつ、不機嫌そうに呟く。
「なんかさぁ……ここ、寒くない?」
傍らにいたキルバーンが、普段と変わらない様子で冷静に答える。
「そりゃあ死の大地ですからねぇ……おまけに、マルノーラ大陸に近いですし。」
そう。
近隣には、極寒のマルノーラ大陸。
死の大地は緯度で言えば、マルノーラ大陸と同じくらいに位置する。
故に、寒いッ!!!
「だ、だめだ!しゃみゅい!寒すぎるッ!!」
大魔王の偉容ある姿に似つかわしく、小刻みにかじかんでいた。
「キルはさぁ、寒くないの!?」
「あぁ、ボク。体質なのか寒さに強いんですよねぇ。」
「なにそれぇ…………」
バーンは鼻をすすりながら、手のひらに小さな炎を生み出す。
「ぬぅ……あ……あったかフェニックス……!!」
カイザーフェニックスを掌サイズに縮小したその存在は、小鳥ほどの大きさで、ピヨピヨと鳴きながら柔らかい熱を放っている。
「なんですか、あったかフェニックスって……」
「こうでもしなきゃいくら余でも凍え死ぬってこの寒さ!!」
バルコニーからやってくる荒涼とした岩の島……冷たい風が、老いた身体の骨身に染み入る。
寒さで言えば、死の大地は大魔王の拠点としてはあまりに過酷な環境だった。
大魔王バーンはあったかフェニックスの炎に両手をかざし、暖をとる。
「ねぇ、ちょっと誰ぇ?ここ、拠点にしようとか言いだした奴ぅ……場合によっては処すよ?」
キルバーンは迷惑そうにため息をつく。
「あなたがですよ。バーン様。」
「え?余?ちょっとぉ、キルぅ~……冗談キツイよぉ。余、大魔王ぞ?」
「いや、本当にあなたですってば。」
『__人間も寄り付かぬというこの魔の地……我が居城を秘匿するのに相応しいではないか。』
「……って言ってたじゃないですかぁ。」
「あ~……うん……覚えてる……確か、数百年前ぐらいにそんな事言ったなぁ……」
バーンはあったかフェニックスを手に、バルコニーから冷えきった死の大地を眺めた。
「はあぁ……地上がこんなに寒いところだったのなら、ちゃんと下調べしてから建てるんだった……」
後悔を口に漏らす大魔王。
外では今日も変わらぬ死の風が、ただなびくばかりであった。
~終~