大魔王は玉座に深く腰かけ、腕を組んだまま難しい表情を浮かべたまま………
「………………」
ただ一言も声を発していないだけだというのに、重々しい威圧感が辺りに満ちている。
そこに、死神キルバーンは気配もなく現れ、大魔王の表情を盗み見る。
「おやおや……見てごらんよ、ピロロ。あのバーン様が沈黙をなさっている。」
「ホントだ!ホントだ!珍しいね。」
キルバーンはおどけながらも、この状況を冷静に俯瞰していた。
「(……次の計画は、それほど険しい……か。あるいは、計画を見直すような、根本的な懸念も……)」
思考を巡らすキルバーン。
すると、大魔王が死神を呼び寄せた。
「……キルはいるか。」
「はぁい。お呼びでしょうか。」
死神は闇より姿を現した。
「さては、ボクに殺して欲しい人物がいるのですね?けど、バーン様がそこまで悩むくらいだから、骨が折れそうだなぁ。」
しかし、次の返答は死神も予想だにしていないモノだった。
「あ、いや…そういうのじゃなくて……」
「……?」
バーンは視線を落とし、声を一段落として語る。
「……スラまん……キルだったらどういうの選ぶのかなって……」
※スラまん=スライム肉まんの略称。スライムの形を模した肉まん。
「……………………」
絶句する死神。
沈黙。
空気が一瞬止まり、場が凍り付くかのような錯覚。
「えぇ…?」
「多種多様だ。肉まん、あんまん、ピザまん。紫芋もあるぞ。」
「む…紫芋…??」
驚くキルバーンを置いていくように、大魔王は話を続ける。
「大きさも選べてな。普通のスライムサイズにキングスライムサイズもある。」
「サイズ別まであるんですか………」
「さらには今だけ期間限定……とろけるチーズのバブルスライム、辛口風味のマグマスライム、肉汁たっぷりドラゴスライム、チョコ入りのぶちスライム………」
「あ、あの…バーン様。キリがないです。」
大魔王はハッと何かに気が付くと、ふと懐を探り始めた。
「……おお、そうだ。これを見て決めるとよい。」
見せてきたのは、スラまんのメニューが載ったパンフレットだった。
通常ニューに期間限定……どの欄もぎっしりと、種類別のスラまんが載ってある。
「こ、こんなにあるんですか。これだけ多いと悩んじゃうなぁ…………えーと…………」
「3つまで良いぞ。スライムタワーセットで頼めるからな。」
再び沈黙。風の音が鳴る。
「スタンダードのスラまん……餡子ぎっしりスライムダーク……ざっくりクッキーのストーンスライム……かなぁ。」
「ふむ……そうか。分かった。では、取り寄せておこう。」
死神の要望をメモにまとめる大魔王。
その様子を見ながら、キルバーンはこう思った。
「(スラまん、好物なのかな………この人。)」
~終わり~