DSAA男子部!(仮   作:tbrh

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なんとか……なんとか投稿……!

魔法の勘違いとか認識違いとか、ないと良いんだけど……。







第十話 拳轟星光

 

激闘の続くミッドチルダ中央区U20クラブ合同魔法戦競技大会。二回戦の戦いも中盤を越え、試合の終わった組も増えてきた。

エイルも一回戦目と同じく危なげない展開で試合を制し、ステージを降りていた。

「お疲れ様、エイル!」

「ああ、ありがとう」

駆け寄ってきたアルカからタオルを受け取り、エイルは息を吐いた。

「ヴィーの方はどうだ?」

「まだ試合中よ。かなり健闘してるし、応援行ってあげたら?」

見ると、確かにヴィトニルとトーヤの試合はまだ続いていた。ヴィトニルは押し込まれているように見えるがそれでも冷静さを失っておらず、必死ながら冷静に攻撃を捌いて反撃の隙を伺っている。

「そうだな……」

アルカの提案に頷き、エイルはヴィトニルの闘うステージの側へと歩を進めた。

(頑張れよ、ヴィー)

 

 

 

ヴィトニルとトーヤの試合は、ヴィトニルの決死の反撃が功を奏した事で新たな局面を迎えていた。

右腕が実質使用不能となったトーヤはそれまでの様な鮮やかな歩法が使えず、また接近しても思うような威力で打撃を放つことが出来ない。ヴィトニルもまた、軽減したとはいえボディに直接打撃を叩き込まれたダメージは無視できず、動きは重い。しかし巧みにチェーンバインドを操作することでトーヤの追撃を効果的に捌いていた。

(くっ、やはりこのままでは厳しいか!)

本数を八本に増やして四方から襲い掛かるチェーンバインドを左腕一本で凌ぎながら、トーヤは歯噛みした。このままではヴィトニルに接近することが出来ない。このまま膠着状態を続ければ、恐らく今ポイントで上回るヴィトニルの勝利となるだろう。

何とか足を止めようとクイックバインドを放つも、今度は拘束完了前にそれを察したヴィトニルが素早く範囲を脱する。やはりバインドの練度ではヴィトニルに分があり、不意打ちでなければ容易に対応されてしまう。今の手札では彼の守りを崩すことはできない。

「本当は決勝準決勝辺りまでは温存するつもりだったが……」

切り札を使う時が来たのだと心を決め、トーヤは新たなプログラムをデバイスに走らせる。

「君に使うならば、惜しくはない!」

トーヤが左腕を掲げる。

「アローンエリア!」

宣言と共に、トーヤの周囲を薄い球状のバリアが取り囲む。彼を拘束しようと迫るバインドがバリアに弾き返され、その間にトーヤは態勢を整え一気に距離を詰めようと駆けだす。

 

「広域バリア!?」

冷静に弾かれたバインドを切り離し、新たなチェーンバインドを手元に生成しながらもヴィトニルは予想外の魔法に困惑を隠せなかった。

『強度はそれほどでもありませんが、範囲が広いですね』

加えて発生が早い。トーヤが前進を開始すると同時にバリア自体は消滅しており持続時間はそう長くはないことが伺えるが、こんなものがあるのでは包囲攻撃の実効性は著しく低下する。

(多分、俺に使うつもりはなかった切り札だ。嬉しいには違いないけど……!)

ヴィトニルはトーヤの前進に合わせて後退しながら、チェーンバインドを正面からぶつけるように四本射出する。今までと同じ要領でバインドを巻き取り、バインドブレイクで相殺するトーヤから更に距離を取ろうとヴィトニルはステップを踏んだ。

「それはダメだよヴィー!」

ジェスターの声が聞こえると同時に、ヴィトニルの背中と後頭部がある筈のない壁にぶつかる。

「がっ!?」

いきなりの事に状況がわからず動揺するヴィトニルの耳に、フローズの冷静な声が響く。

『相手の広域バリアの内側にいます』

見れば、周囲を白色の光が照らしていた。そしてトーヤはバインドを消滅させておらず、その左腕にバインドを巻きつけたままである。

「今度は逃がさん!」

トーヤは巻きつけたままのバインドを全身の力を込めて思い切り手繰り寄せ、その勢いで一気に跳躍。ヴィトニルの前方上空から襲い掛かる。

「不味い……!」

咄嗟にバインドを操ってトーヤの体勢を左に崩すが、トーヤは器用に空中で体勢を捻り、右脚で変則的な回し蹴りをヴィトニルの側頭部めがけて叩き込んだ。これを左腕で受けるヴィトニルだが、片手で受け止められるような威力ではなく、抵抗できずに蹴り飛ばされる。跳躍の威力にデバイスを振り切った重さの乗った一撃は受け止めた骨にヒビを入れる程の威力を持っていた。

「ぐあっ!?」

集中が乱れたことで展開していたチェーンバインドが消滅し、ゼロ距離に詰まった互いの距離が再び開く。

蹴り飛ばされステージの床を転がるヴィトニルだが、彼の動物的な直感は辛うじて平衡感覚を維持した。

(痛い! 苦しい! けど、両方がダウンした今なら……!!)

飛び跳ねるように起き上がると、同じく起き上がったばかりのトーヤに向け、ヴィトニルはチェーンバインドを放つ。それはトーヤの左腕ではなく、動かせない右腕に巻き付く。

「ぐううう!?」

その締め付けに、既に重度の負傷を負っていたトーヤの右腕は耐え難いほどの激痛を発した。流石のトーヤもこれには動きを鈍らせずにはいられない。

「やっと、捕まえましたよ……!」 

(これを離さずダメージを与え続ければ、ここからでも……!)

ヴィトニルの見出していた最大の勝機がこれであった。負傷させた右腕をバインドで更に捕まえ、後は決して離さず距離を保ち続ける。蹴り飛ばされたことで距離も十分に開いており、ここから格闘戦に持ち込ませずに削り続ける。判定勝ちか、よしんばポイントを削り切っての勝利か。この時点で自分の優勢は揺るがない。

この状況に半ば勝利を確信したヴィトニルは、痛みに耐えるトーヤの左腕がこちらに向けられている事に遅れて気が付いた。

「これが俺の切り札だ。心して受け取れ……!」

巨大な手甲の表面に魔力光が走り、デバイスを中心とした魔法陣が形成される。それは平面的なものではなく、バレルを形成するように円形の魔法陣が連なった形をしている。そしてバレルの内側に向け、今までの戦いの残滓として会場に漂っていた残留魔力が流星のように集い、巨大な光球を形成していった。

「し、集束砲撃!?」

驚愕に目を丸くするヴィトニルの前で膨れ上がった光球が急激に収縮し、そして膨大な光の束となって解き放たれた。

 

「スター・バスター!!」

 

ステージを埋め尽くすほどの規模で、集束砲撃が炸裂する。眩いばかりの魔力光が他ステージはおろか観客席までも照らし出し、轟音が大気を揺らす。ステージの安全装置が働いたことで被害が拡散することはなかったが、観客席で他の試合を見守っていた観客たちも一斉にそちらを振り返った。

光と音が収まると、ステージの惨状があらわになる。砲撃を放ったトーヤを頂点として放射状に抉れたステージの端で、ヴィトニルはボロボロの状態で仰向けに倒れていた。自分がどうなったのかもわからない状態で身体を動かそうとするが、力が入らない。その視界の端に、フローズが表示した自分の持ち点が映る。それは0を示しており、そこでようやくヴィトニルは自分が敗北したことを悟った。

 

(ああ、やっぱり強いなぁ)

 

ヴィトニルが小さく笑みを浮かべると同時に、試合終了のブザーが鳴り響く。レイヤー建造物で構成されたステージは破壊された状態から元の姿に戻り始め、クラッシュエミュレートの解除に伴い体中を苛んでいた苦痛が消えていく。心地よい疲労感に身を任せ、仰向けに倒れたまま天を仰ぐヴィトニルの視界に影が差した。

「対戦ありがとう。素晴らしい試合だった」

差し出された手の先を見ると、試合中に負った傷の消えたトーヤの笑顔があった。

「こちらこそ……本当にありがとうございました。悔しいですけど、完敗です」

その手を取ると、身体が浮き上がるのではないかと思う程の力であっという間に直立状態まで引き上げられる。少々面喰いながら、改めてヴィトニルは対戦相手の強さを実感した。

「自分……いや、俺は謝らなければならない。殴り飛ばされるまでは正直、君の事を侮っていた」

並んでステージを降りながら、トーヤが口を開く。

「あのリングアウトで目が覚めた。君は間違いなく強敵だ。そして俺もまだまだ未熟だった」

その呟きは自嘲的ではあるが、清々しさも含んでいた。そして通路を歩く途中でトーヤはヴィトニルの方を向き直り、その目を真っすぐに見据える。

「次は、DSAA公式戦の舞台で決着をつけよう……ヴィトニル・スカイライン選手」

その言葉を聞いたヴィトニルは驚きに目を丸くしたが、すぐに力強い笑みを浮かべて真直ぐに応える。

「……!! はい! 必ず! その時は……今度こそ俺が勝ちますよ! トーヤ・ナカヤマ選手!」

突き出された拳に右拳を合わせて答えとし、トーヤは自分の控えスペースに戻っていった。

「あ、いたいた! おーい!」

拳を突き出した姿勢のまま固まっているヴィトニルに、アルカを先頭にエイルとジェスターが駆け寄ってくる。それに気づいたヴィトニルは、浮かんだ悔し涙を払いながら笑顔で迎える。

「凄い試合だったわよ! あんな反撃、誰も予想してなかったんじゃない?」

「ありがとうございます、アルカ先輩! あれはジェスの作戦が嵌ったのが大きいですけど……」

「お疲れ様―! いやぁ、掴んだ時は勝てると思ったんだけどねぇ。まさかあんな隠し玉があったとは思わなくってさぁ。ごめんねー」

「うわ!? 急に抱き着くなよ! 重いだろ!」

小柄なヴィトニルに覆いかぶさるようにして後ろから抱き着くジェスターに文句を言いながらも、その声には試合前より親しみがこもっているようにも感じられる。その様子に苦笑しながら、最後にエイルが声をかけた。

「最後の方しか見れなかったが、良い試合だった。……頑張ったな」

「……はい!! ありがとうございます!」

信頼する先輩にかけられた労いの言葉に、悔し涙ではないものがヴィトニルの目尻に浮かんだ。

その様子を微笑ましく見守っていたアルカが、ふと気づいたように顔を上げた。

「あ、そういえばもう皆試合終わったわよね? エイルの次の試合って誰だろ」

アルカが見上げた大型モニターには終盤に近付いてきたトーナメント表が表示されている。ヴィトニルの対戦したブロックからはトーヤが勝ち上がり、エイルもまた勝ち上がっている。そしてその隣に表示されている名は。

「アルト・ブレイザード、か」

アルカにつられてモニターに目をやったエイルが呟く。

 









少々気持ちが落ちてしまっているかもしれない。
書くことは決まっている筈なのに、筆がノらない。
もう少し続けたい気持ちはあるのだが……。
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