DSAA男子部!(仮   作:tbrh

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対戦まで書きたいなーと思ってたけど、文量が丁度よかったので分けてしまおうと考えたらしい。


第三話 ミッド第五高魔法戦技部

数学の授業を右から左に聞き流しながら、エイルは登校時にアルカから聞いた今日の練習内容の事を考えていた。物憂げな表情で窓の外に視線を泳がせる長身イケメンの姿は実に絵になる。女子からの人気が実はそれなりに高い彼であるが、当の本人は自己評価の低さもあり無自覚そのものである。

(模擬戦なら場所は中央公園辺りに移動してって事になるか。他の奴らも使ってるところで射撃魔法ばら撒いたら邪魔になるからな。さて、誰が相手になるか……)

心ここにあらずと言った様子のエイルに初老の教師は溜息をつくが、ノートだけはしっかり取られているのを確認すると何も言わず授業に戻った。

そのまま時間が過ぎていき、授業終わりのチャイムが鳴り響く。この日の授業はこれで最後であり、生徒達は各々部活や帰宅に向け動き始める。まだ午前中であるためこのままここで昼食をとる者もいる。エイルはこのまま部室に向かおうと荷物を纏めたが、小腹が空いている事に気が付いた。

(パンでも買っていくかな)

簡単な食事の売っている購買部がある学校なら大体がそうだろうが、このミッド第五高の購買部も昼休み開始直後や午前授業の直後は混み合う。特に急ぐこともなくやってきたエイルは当然出遅れており、最後尾付近からのスタートとなってしまった。長身を生かしてパンの残り数を何とか観察してみるが、このままでは望み薄であろうことが確認できた。やれやれ仕方がないなとその場を離れようとしたエイルの目に、混雑の最前列で手を挙げてこちらにアピールする生徒の姿がちらりと映った。

「ん……?」

目を凝らしてみると、周囲と比べても背の低い生徒が何やらジェスチャーでこちらに意志を伝えようとしている。手の指を動かして数の指定を聞こうとしているような雰囲気を読み取った彼は、苦笑しながら人差し指を立てた手を肩の上に上げて見せた。するとその手は了解というように握り拳を作り、再び見えなくなった。

それを確認したエイルは混雑を離れ、廊下に退散する。学校の規模に相応しく、廊下の横幅もそれなりに広い。

「先輩! お待たせしました!」

適当に時間を潰していると、藍白のショートボブを揺らしながら戦利品の菓子パンを手にした小柄な生徒が彼の元に駆け寄ってきた。

「ああ。ありがとうな、ヴィー」

「いえいえ。お役に立てて何よりです!」

エイルが代金を手渡しながら代わりにパンを受け取ると、ヴィーと呼ばれた少年は嬉しそうににっこり笑った。

ヴィーと呼ばれた彼の本名はヴィトニル・スカイライン。エイルの後輩であり、同じ魔法戦技部に所属している。大会出場歴は今年出場の一回のみだが予選トーナメントでは三回戦までを勝ち上がっており、早くも頭角を現している。

「先輩、チョコチップメロンパンでしたよ! これ好きだって言ってましたよね?」

エイルは感謝の言葉を返しながらも、ヴィーの無邪気な笑顔に少し呆れたような表情を浮かべた。

「確かに好きだが……そんなに気を使わなくていいんだぞ」

「いえいえ! 先輩にはいつもお世話になってますから」

ヴィーは照れたように鼻を擦った。彼の体格は小柄ながらも引き締まっており、普段から自然の中を駆け回っていることが伺える。エイルは何となく、良く懐いた大型犬とはこんな感じなのだろうと思ったが、なぜ愛想の良い方でもない自分がこんなに慕われているのかは出会ってから今まで全く分からずにいた。

部室棟に向かいながら、二人の話題は今日の部活へと移っていく。

「今日の練習内容は聞いてるか?」

「ええ、連絡回ってきましたよ。試合の反省をどこまで適用できてるか、確認しないとですね」

「そうだな……まぁ、敗因は分かってても俺が出来る対処はそんなにないんだが」

「先輩は沢山技が使える訳じゃないですもんね。でもそこが良い所じゃないですか!」

彼自身分かっている事ではあるが、ハッキリ言われると傷つく。この後輩に悪気があるわけではなく、褒めているもしくは慰めているつもりなのだと知っているエイルは引きつった笑顔を浮かべる他なかった。

外に出ると、運動場にはまだ人の姿は疎らだった。運動部の生徒たちは彼らと同じく昼食を取っているか、ブリーフィングを行っているのだろう。それを横目にしつつ、彼らは校庭脇に並んだプレハブ小屋の内、魔法戦技部の看板が掲げられたドアを潜った。

魔法戦技部の部室は二部屋で構成されている。入り口のある手前側にはフォームチェック用の鏡張りの一角と大画面のモニターが設置された一角が大きなスペースを占有しており、モニター前には簡易な折り畳み机とパイプ椅子が並べられている。そしてその奥にある一回り小さい部屋にはウェイトトレーニング用の器具が所狭しと並んでおり、その壁際には沢山の参考資料が収められた本棚が敷き詰められていた。

エイル達が部室に入ると、そこには既にコーチと部員達数名がパイプ椅子に座ってくつろいでいた。

「こんにちは!」

「……ちっす」

元気よく挨拶をするヴィトニルとその後ろから消え入りそうな声と共に現れたエイルに、部員達の視線が集まる。

「あ、きた! エイルもヴィーもお疲れ様ー!」

コーチと共に資料を整理していたアルカの明るい声につられるように、部員たちの挨拶が遅れて続く。その内一人が席を立ち、エイルたちの方に歩み寄ってきた。

「やあ先輩! それにヴィトニルも。少し遅かったんじゃないかい?」

張り付いたような笑顔で明るく声をかけてきた少年の身長は、長身なエイルと比べても遜色ないほどに高い。しかしエイルに比べると幾分線が細く、着崩した制服や無造作に跳ねた金の髪や切れ長の瞳から少々軽い印象を受ける。彼の名はジェスター・ベルン。ヴィトニルと同じ一年生であり、エイルの後輩にあたる。

「購買が込んでてな……」

「別に時間に遅れた訳じゃないだろ! 君が気にする事じゃないよ」

少々申し訳なさそうにするエイルとどこか喧嘩腰なヴィトニルを気にした様子もなく、ジェスターはフフッと小さく笑い声を漏らした。そのどこかこちらを見ていないような様子がヴィトニルは苦手なのだとエイルに漏らしていた事があったが、元々考え事が多く心の機微に疎いエイルは逆にあまり気にしたことがなかった。

「まぁ確かにそうだね。言い方が悪かったよ。ああ、そんな事より今日の活動だね! 今日は久々に皆揃って模擬戦だ、楽しくやろう!」

芝居がかった大仰な調子で手招きしながらジェスターはパイプ椅子に再び戻っていく。その肩に腰掛けた小さな女性が、振り帰り際に二人に舌打ちするような仕草をしていた。ジェスターがハーメルンと呼ぶデバイスであり、ミッドチルダ中を見渡しても相当に珍しい融合機である。今は待機状態なので小さいが、本来は等身大のサイズであり、男子高校生にとっては刺激の強いデザインをしている。

(よくあんな自信満々に振舞えるよなぁ)

心中で少し感心しながらエイルも部室の隅に荷物を置くと後列の方に腰掛け、ヴィトニルもそれに続いた。

「よし、皆集まったな。まずはインターミドル、ご苦労だったな」

コーチの話が始まると、アルカは邪魔にならないよう皆の後ろに回っていった。

「思い通りの結果を残せたかどうかはお前らの感想に任せるが、俺から見れば本当に全員よくやったと思ってる。今日からは心機一転、次に向けて練習始めるぞ!」

(思い通りの結果……とは、行かなかったな)

コーチの言葉にエイルは軽く肩を竦めた。

「よし、それじゃあ具体的な内容だが……」

コーチは手元のプリントに目を落としながら続ける。

「アルカからも連絡があったと思うが、今日は中央公園の体育館を使用しての模擬戦だ。インターミドルでの各々の課題点を明確にし、その改善に繋げる。それが今回のテーマだ」

コーチの言葉に、部員たちは真剣な表情で頷く。

「試合形式はDSAAルール2ラウンド制。持ち点は予選の半分。試合をするのは一組ずつだ。相手の持ち点を削りきるのが目的じゃなく、あくまで内容を見ながら練習してもらうのが目的だからな。デバイスはちゃんとクラッシュエミュレート連動設定にしとけよ」

「はい!」

「よし、開始時刻は今から一時間後。場所は中央公園の体育館だ。遅れるなよ?」

部員達の返事に頷くと、コーチは最後に念を押して部室を後にした。

 

「エイル先輩、ちょっと提案なんですけど」

コーチが部室を出ていくのを見送った所で、ジェスターが首を回してエイルの方に向き直りつつ声をかける。

「今日の模擬戦、俺とやってもらえませんかね?」

「別に構わないが……俺でいいのか?」

「実はなんですけど俺、先輩が負けた相手と本戦で当たったんですよ。いやー先輩が負けただけあって強い選手でした! もう何回もKOされそうになったんですけど、何とか勝てたんですよねぇ! まぁそういう訳なんで、折角いい機会なんだから色々ああいう感じの相手との戦い方とか教えられたらなって」

「おい、ジェス!」

ジェスターの言葉を遮りヴィトニルの怒号が飛んだ。

「お前! 先輩に対してその言い草はないだろ! 自分の方が上だとでも言いたいのかよ!」

「あぁ、いやいや! そんなつもりはないよ~。誤解だって」

「ちょっとあなた達、喧嘩は止めなさいよ!」

掴みかからんばかりの勢いのヴィトニルを見かねたアルカが割って入ろうとするが、それより先にエイルが三人の間に入った。

「俺は気にしてないから心配しないでくれ。それに、ジェスの提案は俺としてもありがたい」

ヴィトニルが怒る理由は何となくエイルにも分かる。がしかし、彼としてはその程度、日々の自虐によって散々自分に投げかけた内容でもある。それに加え今一コミュニケーション能力の高くないエイルとしては、こうして積極的に関わってくれるというだけでありがたい気持ちがあった。

エイルの言葉にジェスターは笑みを深くし、ヴィトニルは納得しかねるという調子で不満げに押し黙った。

「やれやれ……ヴィー君は本当にエイルが好きよね」

一安心と息を吐きながら、ぼそりとアルカが口を滑らせた。

「す!? そ、そんなんじゃないですよ!」

「……嫌いなのか?」

「違いますって!? ちゃんと尊敬してますよ!」

真面目にショックを受けていそうなエイルに顔を赤くして弁解するヴィトニル。

そのやり取りを変わらない笑顔で見やりながら、ジェスターはいつもと何も変わらない調子で荷物を纏め始めた。

『手を出してくれば、返り討ちにしてやったのに』

「ダメだよぉ。部室で問題を起こしたら退部になっちゃうかもしれないし」

物騒な事を言うハーメルンをなだめる声もまた、どこまで本気なのか、感情のこもらないものであった。

 

 

その後は各々食事や準備を済ませ、中央公園に建つ体育館の前に集まった。

ミッド第五高の体育館も人数に応じた大きさだが、区営の体育館であるここはそれに比べても一回り大きい。そして一般的なスポーツを行う場所とは区切られた空間に、魔法戦技を行うためのスペースが用意されている。クラッシュエミュレートを使用するための機材に加え壁や床に高出力の魔力防壁を発生させられる仕組みとなっており、全力の魔法戦を行っても建物を破損させる心配がない。室内ではあるが、部屋の大きさはDSAA公式戦で使用される広さに近い。魔法戦技部で模擬戦を行う際は大体この場所を借りており、彼らにとってはなじみが深い。偶に大きなジムが非公式の大会を開く際会場にされる事もある、信頼性の高い競技場である。

エイル達が到着した時には既にコーチが競技場を借りる手続きを済ませており、競技場内の人間は魔法戦技部の皆だけである。

「全員揃ったな」

部員たちが近くに集まるのを確認してからコーチが話し始める。

「まぁ話すことはもう部室で話したからな。早速始めていくぞ。で、ジェスターとエイルはお前らでやり合いたいんだったな?」

「ええ。先輩の許可も得てるんで大丈夫です!」

コーチの確認の声にジェスターが答える。

「そうか。なら二人が最初の模擬戦で決まりだな。準備は良いか?」

頷く二人にコーチは軽く笑みを返し、エイルとジェスターを除く部員達は観戦スペースへと下がった。

「さて、と。それじゃ、手合わせお願いしますよ!」

「ああ。始めよう」

相変わらず飄々とした調子のジェスターに頷き返し、エイルは開始位置に移動する。

「行くぞ、ファルケ」

腕輪に手を重ね、呟く。エイルの身体が青い魔力光に包まれ、それが晴れるとバリアジャケットを纏い二丁の拳銃を携えた姿となった。

「ふふっ。ハーメルン、出番だよ!」

『お任せを、マスター』

ジェスターが両手を掲げると肩に乗っていた小さな少女が光に包まれ、その姿は古い文献の魔女のような緑色のローブと先端の尖った鍔広帽を纏った、大人の女性の姿となった。これがハーメルンの本来の姿であり、彼女が祈るように両手を合わせるとその姿は再び光に包まれジェスターの身体と一体化する。ジェスターの姿はその過程で黒いマントを纏ったタキシードを模したバリアジャケットに包まれる。更にそのポケットから取り出した金属製のカードを空中に放り投げると、黒いメイスとも杖とも見える姿へと変形し、彼の手に再び収まった。

『準備は出来たな?』

「はい」

「ええ、いつでも!」

外からの音声に二人が頷くと、カウントダウンを告げるブザーが音を鳴らし、そして最後に試合開始を告げるゴングが鳴り響いた。

 






恐らく想定と違うみたいなのはあるだろうなーとは思いつつ、予防線を張ってあるのをいいことに自分の感性に従って書くことにしたらしい。
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