DSAA男子部!(仮   作:tbrh

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戦闘は、筆が進むのが速い。
ちゃんと頂いた想定通りに自分が想像できているかは……わからない……!




第四話 雷氷相打つ

 

中央公園体育館、魔法戦技用競技場。その中央で二人の魔導士が対峙している。

片方は管理局制服の意匠を散りばめたバリアジャケットに身を包んだ長身の少年。二丁の拳銃を静かに構えるその少年の名はエイル・テスラ。

もう片方はマジシャンのような黒のタキシードに身を包んだ、こちらもまた長身の少年。常に笑みを絶やさず、無造作に右手でメイスを構える彼の名はジェスター・ベルン。

束の間の沈黙を破り、先に動いたのはエイル。

「ブリッツシュリット、作動開始……!」

瞬間的に付与された両脚への強力な身体強化がバリアの張り巡らされた床を蹴り破らんばかりの強烈な踏み込みとなり、彼の身体を瞬時に加速させる。一瞬で間合いを離すと共に、その手に握られた彼のデバイス、ファルケが電撃を帯びた半実体の弾丸を連続発射する。

「おおっと!」

おどけた調子でステップを踏みながら、ジェスターはメイス状のデバイス、ヴァナルガンドを振るって直撃弾を叩き落とす。しかしその間に目の前にいたエイルは更にブリッツシュリットによる高速ステップで位置を変え、ヴァナルガンドを下したジェスターの目の前からその姿は消えている。

『右です』

既に融合状態にあるハーメルンが脳内イメージとしてエイルの位置を示し、それに従いジェスターはヴァナルガンドを横薙ぎに振るう。半実体弾特有の乾いた金属音が数発分響き、更に身を捩って続く弾丸を躱す。

「流石エイル先輩、凄い速度だ! じゃあ俺も行きますよ!」

『エクレール展開。身体負荷に気を付けて』

「わかっているとも!」

ジェスターの身体が紫の魔力光を纏い、バリアジャケットの表面を紫電が走る。更に彼が一瞬身を屈め、一気に踏み出すとその身体は驚くべき速さで前進する。電気を纏った身体強化、彼の持つ高速移動魔法である。エイルの射撃は続いているが、ジェスターの速度が急激に増したことで照準は安定していない。

(流石。作動が一瞬の俺と違って常にスピードが落ちない)

感心しつつ、エイルはファルケに適用したブリッツクーゲルへの魔力供給を高め、更に連射速度を上げる。

「俺だけ撃たれてるんじゃ不公平ですよね? お返ししますよ!」

『アイスショット、装填開始。発射タイミングはいつも通りお任せします』

紫電と共に高速で駆けるジェスターが左掌をエイルに向け掲げると、そこに冷気を迸らせるスフィアが展開された。スフィアからは次々に冷気を纏う魔力弾が生成され、エイルに向けて飛翔する。魔法の宣言もなく、また高速移動中にも関わらず連射される魔力弾の雨。エイルは迎撃か回避か一瞬考えたが、その間に迎撃の機を逸していた。

(融合機の方が詠唱を担当している。発動の前兆がない。射撃一つとっても厄介だな……!)

両手のファルケを身を守るように構え、ブリッツシュリットを使った高速ステップでアイスショットの連射をジグザグに避ける。命中すれば命中カ所が凍結して重くなり、動きを鈍らせてしまう。ブリッツシュリットのスタンによって同じような戦い方をするエイルはその脅威を良く知っているため、一発も当たることなく回避しきって見せる。

(流石に速い。伊達に射撃とステップの二つだけで予選を勝ち上がっていないか)

顔には楽しげな笑顔を張り付けながらも、ジェスターの心は氷のような冷静さで相手の戦力を観察していた。アイスショットだけでは命中弾は望めないと判断し、更なるプログラムの展開をハーメルンに命じる。

『承知しました。ヴァナルガンドのシステムを使い、そちらでフリージングスピアーをセットします』

エイルからの反撃がないと見たジェスターは足を止め、左腕から断続的な射撃を行いつつヴァナルガンドをエイルに向ける。ヴァナルガンドの先端から魔法陣が展開され、膨大な冷気が溢れる。それは瞬時に収束し、数本の氷の槍を作り出した。

「さあ、これはどうです!?」

展開されたフリージングスピアーはアイスショットの隙間を埋めるような軌道で散弾の如く射出された。対するエイルは足を止め、身を守るように構えていた両手のファルケを前方に向ける。彼もまた、ただ回避に専念していただけではない。ファルケに展開されていたプログラムはブリッツクーゲルからドンナーシュラークに変更されており、そのチャージも終わっていた。

「照準補正……ドンナーシュラーク、発射!」

ファルケのシステムが一時的にアイスショットの撒き散らす氷の礫と霧を視界から除去し、クリアになった視界の中でエイルは両方のファルケからドンナーシュラークの込められた半実体弾を放った。それは狙い過たず、一発がフリージングスピアーの先端に命中しもう一発は間を縫うようにジェスターの眉間へ向かい飛翔する。

(接近戦用のカウンターとして考えたやり方だが……どうだ!?)

フリージングスピアーに命中したドンナーシュラークは設定通り炸裂しない。先端にドンナーシュラークを埋め込まれたフリージングスピアーはそのまま飛翔し、待ち構えていたエイルの構えているファルケの装甲部分に命中した。するとその瞬間、ドンナーシュラークは電撃を撒き散らしながら炸裂、フリージングスピアーを粉砕した。

「っく!」

ドンナーシュラークの炸裂と同時にもう一発の弾丸はジェスターに到達し、それは難なくヴァナルガンドに弾き返されたが、デバイスで視界を覆った事と二つの魔法の爆発によってジェスターの探査から一時的にエイルの姿が消える。

「っ」

距離を取ろうとエクレールを作動させバックステップを踏んだジェスターだったが、その側面でバリアを踏み込む強烈な衝撃音が響く。咄嗟に目を向けると、左半身に軽い負傷を負ったエイルが近距離にまで迫っていた。中距離から遠距離での戦いを徹底していたエイルの戦い方を部員として良く知っていたジェスターにとって、その動きは予想外だった。

「ブリッツクーゲル、連続発射……!」

両手の銃口がジェスターの胸と眉間を同時に狙い、電撃を纏った半実体弾が連続で放たれる。ジェスターはやむを得ず右手のデバイスで胸を狙った射撃から身を守りつつ、顔を狙う射撃は視界を塞がぬよう左腕そのものを盾にして受け止めた。

彼のバリアジャケットは機動力を重視しており装甲は薄い。電気変換の魔力を利用して身体強化を行うエクレールがスタンの蓄積を軽減するものの、左腕に大量のクラッシュがみるみる積み重なっていく。

『マスター!!』

「ハハハ! これは予想外! だけど、間合いに入ってくれましたね!」

ジェスターはまるで痛みを感じていないとでもいうように笑いながら、逆にエイルに向けて突進を仕掛ける。

「何!?」

ジェスターは連射される弾丸を押し切りながら、振りかぶったヴァナルガンドをエイルに向け叩きつける。エイルは咄嗟に右腕のファルケを掲げその一撃を受け止めた。身体強化の乗った一撃は重く、エイルは何とか踏み止まるもその場に釘付けとなる。

『グラスオスカー展開。よくもやってくれたな……!』

突如、ヴァナルガンドが紫の魔力光に包まれる。

(っ!? 不味い!)

離れようとするエイルだが、遅かった。ヴァナルガンドの打撃部を受け止めていたファルケの装甲が氷に包まれていく。更に紫の魔力光を放つ電撃がデバイス越しにエイルの身体を襲った。

「ぐうう!?」

「グラスオスカー。自分から近づいて使った事はあまりないですけど、簡単には抜けられませんよ!」

グラスオスカー。冷気と電撃、二つの変換資質を持つジェスターの才能を生かした特殊な拘束魔法である。氷で動きを封じつつ、電撃によるスタンダメージを与える。接近戦を行う相手に対する強力なカウンターとなる魔法だった。

(氷が広がったら脱出できなくなる。無理やりにでも……!)

エイルは自身の電気変換した魔力を全身に漲らせてスタンに抗いつつ、左のファルケを自身のデバイスに向ける。しかしその動きを制するようにジェスターの左腕が割り込み、照準を妨げる。

「ならば!」

押し合いの体勢になった所でエイルは全力のブリッツシュリットを両足に漲らせ、ジェスターの身体ごと大きく前方に踏み込んだ。

「おお!?」

それでもジェスターの身体は体勢を崩さない。しかしブリッツシュリットは作動時間が短い分連続使用が可能である。また、純粋な筋力でも体格に勝るエイルの方が上だった。スタンダメージを負いながらもエイルはジェスターの身体をステージの外壁に叩きつける勢いで押し捲る。押し返す事は出来ず、壁際が近い。ジェスターはやむなくデバイスを弾き返し、横向きに距離を取った。

「はあっ、はあ……。上手くやったと思ったんだが……流石だな、ジェス」

「はあぁ、ふう! エイル先輩こそ、右のデバイスくらいはもぎ取れると思ったんですけどね!」

互いに息を整えながら間合いを探り合う。

エイルは左腕の負傷に加え、右腕周りのスタンダメージが流石に大きい。右のファルケには氷が纏わりついている事もあり、今までのような精密な照準は難しくなっている。対するジェスターの方も左腕はボロボロであり、右腕だけでは複数の魔法を同時に使用する事は難しい。

その後は様子見に終始し、第一ラウンドは終了した。敗北の危機にあったのはエイルの方だが、終わってみれば回復不能ダメージはジェスターの方が大きい。

 

 

二人とも大きく息を吐きつつ、互いに反対側の壁にもたれ掛かる。

(危なかった。接近戦に対する心構えが無ければ対処が遅れて終わってたな……。それに、射撃の迎撃に失敗したことでドンナーシュラークを一発も設置できていなかった。反省が多いな……)

呼吸を整えながら、エイルは先の内容を分析する。防御時、ファルケの装甲に発生させるスタンエフェクトを使い接近戦でドンナーシュラークを起爆する奇策は近接戦対策に考えていたものだったが、その応用は思った以上の効果を上げていた。しかし通常の使い方は全くできておらず、加えて直撃弾を浴びせる為に自分から接近したことで手痛い反撃を受けてしまった。

(基本をおろそかにした、とかなんとかコーチに怒られるな、これは)

少々情けないため息をつくエイルを見やりながら、ジェスターも自身の戦いを振り返っていた。

(俺としたことが、先輩を侮ったねぇ。まさか自分から踏み込んで急所を強引に攻撃してくるなんて。それに、どっちかって言うと根性的な力は乏しい方だと思ってたんだけど)

序盤のテンポは確実にジェスターの側が握っていた。しかし視覚的、魔力的な目眩ましと持ち前の瞬発力を生かして、一瞬で流れを手繰り寄せられた。その後の反撃など、ただのゴリ押しに過ぎない。事実エイルの対処は冷静であり、デバイスの一つでももぎ取ってやろうという魂胆であったはずが上手く行かなかった。

『申し訳ありません。あちらの戦力を見誤りました……。それに、一時とはいえあの程度の目眩ましで見失ってしまうとは、痛恨の極みです……』

「しょうがないよ。俺だって気づかなかったんだからさ。それにまだ、本気でやってたわけでもないしね?」

体内から魔力の補填と傷の回復を行いながら意気消沈するハーメルンを慰めながら、やはり何でもない事であるようにジェスターは変わらぬ笑顔で笑った。

 

 

クールタイム終了のブザーが鳴り、二人が所定の位置に戻ったところで第二ラウンドのゴングが鳴り響く。

(さて、左腕は流石に回復しきらないか。どう攻めたものかな)

先の言い合いでヴィトニルが激昂した際に放った台詞は、実際の所ジェスターとしても的外れとは言えなかった。エイルが日々ストイックに努力を重ねている事は知っているが、彼の方が魔法戦技の鍛錬を始めた時期自体は早い。それにその内容も、心身の健康を保ちながらできるような甘い内容でもない。既にある融合機に適合するための魔力量と運用能力を後付けで身に着けるという、極めて強引な訓練である。誇りなど感じる感情は彼にはないが、それでも同年代の人間より自分は強いという自負はあった。

「さて、と。それじゃあもう少しだけ頑張ろうか」

『承知しました。マスター』

ヴァナルガンドを一振りして構える。その先端から最初に作ったより大型のスフィアが生成され、更にそれは二つに分離する。

『アイスショット、サンダーショット、セット完了』

「さあ、行きますよ!」

二つのスフィアから同時に魔力弾が生成され、連続で放たれる。片方は電気を、もう片方は冷気を帯びた弾丸であり、そのどちらもが高い精度でエイルを狙う。

(直射とはいえ二種類同時とは!)

エイルは左のファルケからブリッツクーゲルを連射して直撃コースの弾を叩き落としながら、ステージを駆けて距離を取っていく。時折迎撃に使用していない右のファルケから反撃とばかりにジェスターに向け弾丸を放つが、それは容易く回避される。

エイルが同時に行使できる魔法は二つまでであり、彼が使用する三つの魔法は全てを同時に使用することが出来ない。故にジェスターは、今のエイルはブリッツシュリットを使わない代わりにブリッツクーゲルでの迎撃とドンナーシュラークの設置を行っていると見破った。

「俺が避けた弾丸はどこにあるかな?」

『位置を表示します』

丁度ジェスターの背後の壁に跳ね返った弾丸は、彼のすぐ後ろに転がっていた。状態の良くない右腕にも関わらず、その精密な照準や弾道予測に内心で感心したジェスターだが、冷静にスフィアから生成するサンダーショットの一部を地面のドンナーシュラークに放った。電撃をトリガーに炸裂するドンナーシュラークは予想通り暴発し、役目を果たすことなく消滅する。

「やはりネタが割れていると、やり辛いな……!」

その様子を見たエイルは内心歯噛みしながら、右のファルケにもブリッツクーゲルをセットする。一時的に立ち止まり、両手のファルケからブリッツクーゲルを連射して纏めて魔力弾を叩き落とすと、ブリッツシュリットを使用した高速移動を行いロングレンジに移ろうとしていた間合いを中距離に戻し、再びブリッツシュリットとブリッツクーゲルを併用した高速射撃戦に移行した。ジェスターもそれに応じエクレールを身に纏い、エイルの射撃を躱しながら自身の射撃を撒き散らす。

「さて、もう少し……。先輩は確かに速いけど、ステップ移動は直線的にしか動けないからこうやって追い込んでやれば……?」

ヴァナルガンドで弾丸を防ぎながらアイスショットとサンダーショットの弾幕を撒き散らし、移動方向を制限していく。エイルは弾幕の薄い方向に巧みにステップを繰り返しながら射撃を撃ち返してくるが、徐々にそのポジションはステージの端、部屋の角に近づいていた。

「さて、今度は油断はありませんよ、先輩!」

エクレールを解除したジェスターは飛来する弾丸を防ぎながら、足元に激しい魔力光を放つ魔法陣を展開した。

「っ! 大技が来るか……!」

ジェスターの変化を見たエイルは周囲の状況を確認する。ポジションは部屋の隅に近く、移動可能カ所は少ない。二つのスフィアから放たれる射撃は明らかに逃げ道を塞ぐよう、彼の左右に厚く放たれている。ハーメルンの制御なのであろう射撃は、大技に集中するジェスターをしり目に正確に飛来し続けている。インターミドルで敗因となった接近戦、その状況によく似ていた。

ブリッツクーゲルによる射撃を停止し、両側にドンナーシュラークのチャージを開始する。

(俺に出来る攻撃は多くない。やれることを、やるだけだ……!)

床のバリアを踏み砕かんばかりの勢いで、ブリッツシュリットによる高速の踏み込みを行う。その目標は、真っすぐジェスターの懐である。

「当然、それしかないでしょう! これで終わりにしますよ!」

過度の集中によって鈍化した時間の中で、ジェスターは訓練通りの精密な魔力制御により、高速移動するエイルの頭上と足元に魔法陣を遠隔展開させる。ブリッツシュリットは一度踏み込んでしまえば方向転換が効かない。この状況ならば、攻撃の回避は不可能なのだ。

「トール・ケラノウス!!」

彼自身の詠唱により魔法陣が一際強い光と紫電を発し、上下の魔法陣を繋ぐように巨大な落雷が発生する。巻き込まれたエイルは特大のスタンダメージでKOされる……筈であった。

確かに電撃は発生した。しかし、その内容は落雷ではなく特大の魔力爆発であった。

「!?」

予想外の状況に一瞬動きの止まるジェスターの紫の瞳に、大きく跳躍し、こちらに迫りくるエイルの姿が映った。

 

 

エイルは、考えなしに誘いに乗ったわけではなかった。前回の試合で敗北の原因となった接近戦、その状況に追い込まれた際の打開策を様々に自虐の中から考え出していた。

(この状況でジェスターが止めを刺しに来る為に使う攻撃は、ライトニングスピアー、フリージングスピアー、そしてトール・ケラノウスの三つだろう。スピアー二つは第一ラウンドで対処を見せた。なら、来るのは落雷のトール・ケラノウス。隙も無く、防ぐのも難しい魔法だが……一つだけ確かなのは、発生源が対象の真上以外ありえないという事。そして俺の弱点を突くなら、タイミングはブリッツシュリットでステップを踏んだその時。人読みで悪いが……今回は突破させてもらう!)

彼は踏み出すと同時に自身の頭上にドンナーシュラークの弾丸を放っていた。それは丁度彼の頭上でトール・ケラノウスが発現、落雷を発生するための電気が充填されると同時に魔法陣に達し、その電気をトリガーとして炸裂。魔法陣を破壊し、充填された大量の魔力が暴発して爆発を起こしたのだった。その爆発の衝撃を背に受けながらエイルは跳躍。強化された脚力と衝撃によって加速し、一気にジェスターの眼前にまで迫ったのであった。

「おおおお!!」

この状況でエイルが使える魔法はない。逆手に構えたファルケの装甲部をジェスターに向け叩きつける。技術はなくとも彼自身の体格と筋力、そして跳躍の勢いを乗せた一撃は強烈な威力を持っており、防ぐために掲げられたヴァナルガンドを強引に殴り飛ばした。

「っ!」

守りの要を失ったジェスターの眉間と胸に、再び銃口が付きつけられる。

『マスター!!』

しかしその銃口から弾丸が放たれる寸前、銃口との間にハーメルンの制御するスフィアが割り込んだ。発射された弾丸はスフィアを貫き、込められた魔力が暴発し爆発する。大量の魔力弾を生み出し続けるスフィアの魔力は大きく、比例して爆発の規模も先の魔力爆発に劣らない威力だった。

「うお!?」

「おおっと!」

予想外の衝撃に二人は同時に反対向きに吹き飛ばされ、床に転がった。

同時に試合終了を告げるゴングが鳴り響いた。

『そこまで! 両者共にポイント0、引き分けだ。いい試合だったぞ』

観戦席から見ていたコーチの声が競技場に響き渡り、同時にクラッシュエミュレートも停止されたことで二人が全身に感じていた痛みは消える。試合中に負った負傷はあくまでクラッシュエミュレートが再現した物であり、彼らの身体は傷一つない。ただ、大量に魔力を消費し、身体を酷使した疲労だけが残っている。

二人とも大の字になって床に寝転び、息を整えている。

「お疲れ様! いやあ、やられたやられた! 手合わせありがとうございました、エイル先輩!」

「ああ……。こちらこそ、ありがとうな。ジェス」

先に動けたのはジェスターの方だった。まだ息を整えながらも立ち上がった彼は、未だに仰向けのまま倒れたエイルに右手を伸ばす。魔力を大量に消耗したからだろうか、いつもならジェスター以外に侮蔑のこもった眼差しを向けるハーメルンの姿は見当たらない。

エイルはその手を取りながら、少し苦々しい表情で立ち上がった。

(……勝てると思い上がった。冷静に状況を見れば、ジェスの攻撃方法はまだ残っていた。まだまだ、父さんのようにはいかないな)

その視線の先に誰かがいるかのように、エイルは窓の向こうに続く空を見据えていた。

「ほら先輩! ボーっとしてると次の人が困っちゃいますよ!」

「あ、ああ。そうだな。悪い」

物思いに耽りそうなエイルに笑いかけながら、ジェスターは観戦席の方へ向かっていった。ハッとして我に返ったエイルもその後に続く。

観戦席では如何にも含むところあり、と言った笑顔で待ち構えるコーチの姿。そしてこちらに向かって「お疲れ様でした!!」と手を振るヴィトニル含む部員達。

(やれやれ、何を言われる事やらだな)

 






キャラクターの募集は常に行っています。
作者の理解力や想定する展開によって、恐らく一から十まで頂いた通りのキャラクターデザインとはいかないかもしれませんし、詰まって失踪するまでにちゃんと登場させられるかは分かりませんが……。
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