DSAA男子部!(仮   作:tbrh

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色々と内容の改変が入ってしまいそうな雰囲気は感じつつも、なるべく露骨な修正はせずに済ましたいと思ってはいる……らしい。





第五話 反省の先へ

「二人ともお疲れ! はい、これ」

笑顔と共にアルカが差しだしてきたのは、彼女が日頃から皆の為に用意している蜂蜜レモンである。程よい酸味と甘さが疲れた体に心地よく、提供が始まったその時から皆の好評を受けて部の名物となりつつある。

「ああ、ありがとう」

「いつもありがとうございます先輩!」

エイルは仏頂面を僅かに綻ばせながら、ジェスターはいつも通りの満面の笑みでコップを受け取り、観戦席に腰掛ける。

コーチからの指摘は大方予想していた通りの内容であった。曰く

「ドンナーシュラークを利用したフェイクや奇策は中々見事だったが、序盤に殆ど地雷としてばら撒いておけなかったのはやはり良くなかったな。手の内を知ってる相手とはいえ、あれが足元にあるのはやはりプレッシャーになるからな。で、一番の失策は勝負を焦って自分から接近戦を挑んだ所か。ジェスターは確かに守りが硬いタイプじゃないが、お前も一息に相手を倒せるタイプじゃないんだ。判定勝ち狙いで行くなら付け入る隙は出来るだけ小さくしていくことを意識しておけ。だが、捕まった後のリカバーや後半の奇襲は見事だった。接近戦に打って出る切っ掛けにした迎撃は、正直俺も予想外だったぞ。何度も使えるような手じゃないが、そういう機転を瞬時に効かせられるよう普段からシミュレーションを繰り返しておくと良いな」

(概ねこんな感じだったな。まぁ、予想通りと言えば予想通りだが……評価してもらえるってのは、やはりモチベーションになるな)

そんなことを考えながら、試合場の方に目を向ける。今はヴィトニルと先輩部員の一人が試合を行っている所である。

ヴィトニルはDSAAに参加する選手としては割と珍しい、純粋な結界魔導士である。魔導士ではあるが射撃や砲撃は使わず、各種バリアやシールド、そして拘束魔法を使用して戦う。その為攻撃力という意味では他のタイプの選手に劣り、人気があるとは言えないスタイルである。加えて彼はあまりリンカーコアの出力に秀でているとはいえず、バリアやシールドの強度も強固とは言い難い。

(しかし、よくやっている)

試合場のヴィトニルは小柄な体格と素早い身のこなしを生かして相手の攻撃をやり過ごし、魔法陣二つから合計八本のチェーンバインドを展開して相手の動きを封じにかかる。一本でも命中すれば連鎖的に他のバインドの拘束も加わってしまうためそれを嫌った相手の先輩部員は回避と迎撃に専念するが、的確に動きの隙を突いて操作されるバインドを躱しきる事は難しく、遂に腕の先を捉えたバインドが拘束に成功した。

(よし……だが、油断するなよ?)

後輩の成長を感慨深く見守りながら小さく頷き、エイルはちらりと観戦席を見やる。

室内全面にバリアを展開している競技場内へ入ることはできないが、観戦席の方は一般の利用者も自由に出入りが出来る為幾らかギャラリーが増えていた。魔法戦技は見栄えも良いため、こうして一般の体育館等で練習を行っていると自然に観客が集まるのも珍しくない。無論集まるのは観客だけではなく、彼らと同じく魔法戦技の選手が情報収集の為に訪れる事もある。観客席を見回したエイルはその中に、前回のインターミドルで見かけた人物がいる事に気づいた。

「あれは……」

エイルが目を付けた人物、鮮やかな金のショートが目を引く少し線の細い少年は魔法戦技部の面々から少し距離の離れた席に腰掛けながら、目を逸らすことなく二人の戦いを注視していた。

(確か、俺とは別の予選ブロックで準優勝の選手だったな。名前は確か……)

「お、あれトーヤ選手ですよ。かなりごつい近接型の魔導士。確かヴィーと同じブロックでしたっけ」

ジェスターも彼の姿に気づき、目を細める。

トーヤ・ナカヤマ。今年のインターミドルでは予選準優勝の結果を出している選手である。鉄塊の様な巨大な手甲を得物とし、その打撃力を用いた近接戦闘を得意とする。惜しくも本戦出場はならなかったが、確かな実力を持った選手である。

「敵情視察って所か。こっちの試合も見られたかな」

「かもしれませんねぇ。でもま、今日のを見てわかるようなことはもう知ってるだろうし、なんて事はないと思いますけどね?」

飄々とした調子を崩さないジェスターの様子に少し表情を緩めながら、エイルは視線を試合の方に戻した。

インターバルを挟んで2ラウンド目が始まり、そちらでも大まかな展開は1ラウンド目とあまり変わらない内容だったが、やはり対応され始めると地力に劣るヴィトニルの方が押され気味となっていた。ヴィトニルも善戦はしたがやはり決定力不足は如何ともしがたいと言った内容で、最終的な試合結果はヴィトニルの判定負けという結果であった。エイルとジェスターがそうであったように、彼らも互いの健闘をたたえ合いながら観戦席へと戻ってくる。

「はぁ。やっぱり接近された時にどうにかできる方法が必要かな……」

「確かにヴィー君はそこが課題かもね」

溜息をつきながら席に戻ってきたヴィトニルに、アルカが差し入れを渡しながら笑いかけた。

「でも先輩相手にも結構善戦できてたし、段々上達してるんじゃない?」

「そうなんですかね? 自分ではあんまり実感ないですけど……。エイル先輩みたいに、具体的に欠点を補う方法を即座に使えるようになるとは中々いかないですし」

天を仰ぎながらはぁー、と溜息を漏らすヴィトニルにエイルは苦笑するしかない。その即興の対処とその後が、正にコーチからダメ出しを喰らったところなのだ。

「これじゃ、あまり悪い例は見せられないな……」

コーチとの反省会が始まり、指摘やアドバイスを受ける度に喜んだり肩を落としたりするヴィトニルを見やりながら、エイルは苦笑した。

同時にやはり、何か近接戦闘を想定した武器が自分にも必要なのだろうと考える。しかし彼は、その図体の割に格闘戦のセンスには欠けていた。

(どうも威力を出せる程踏み込めないというかな……守るのは苦手じゃないんだが)

「エイル先輩、どうしたんです? 考え事ですか?」

腕組みをしながら思考に耽っているエイルの隣に、いつの間にかヴィトニルが立っていた。

「ああ。今回の試合と前回の試合の事を少し、な。それよりお疲れ様だな」

「ありがとうございます! うーん、今回も悪くない内容だったとは言われたんですけど……中々勝てる所までは行けないですね」

「君は結界魔導士だからねぇ。せめて守りがもう少し固かったら少し楽になりそうなんだけど」

「苦手なんだから仕方ないだろ! インターミドルで負けた時も簡単に突破されたし、努力はしてるけどさ……」

ジェスターの言葉に文句を言いながら泳がせたヴィトニルの視線が、再び始まった模擬戦を観戦するトーヤを捉えた。

「あ、あの人! あの人に負けたんですよ俺! ちょっと行ってきます!」

「お、おいヴィー」

急に闘志を燃え上がらせたヴィトニルがトーヤの方に向かっていくのを、エイルは慌てて追いかける。

 

 

「あ、あの! ナカヤマ選手ですよね! インターミドルの予選で戦った、ヴィトニル・スカイラインです! あの時はありがとうございました」

駆け寄ってきたヴィトニルの勢いに、トーヤは少し驚いたように目を見開いたが、すぐに柔和な笑みを浮かべた。

「ああ、さっきの試合を見て見覚えのある選手だと思っていたけど、あの時の。こちらこそ、ありがとうございました」

社交辞令とも取れる簡潔な返答だったが、ヴィトニルは気にする素振りも見せず、握り拳を作って前のめりになる。

「はい! あの時は全然相手にならなくて……でも次はもっと頑張ります! 不甲斐ない試合はしないので!」

その言葉に、トーヤは穏やかに頷いただけだった。その視線は既にヴィトニルから離れており、隣に立つエイルの方に向いている。

「そのくらいでいいだろ。そんなにガンガン行ったら向こうも困惑する」

エイルはその態度に少し眉をしかめながら、落ち着かせるように肩に手を置いた。

「あ、すいません。つい」

「いえ、構いません。それより貴方はエイル・テスラ選手ですよね。先ほど試合をされていた」

表情は穏やかなままだが、その瞳はエイルの実力を推し量ろうとするような鋭さがあった。

「ああ。恥ずかしい試合を見せてしまったかな」

「そんな事はありません。正直、今年本戦出場を決めたジェスター選手相手にあの手数で引き分けにまで持って行ったのは予想外でした」

「人読みが偶々上手く行っただけだがな……。まあでも、ありがとう」

エイルとしては純粋に謙遜だったが、トーヤは内心実力を隠すために会話を切られたと考えていた。ならばこれ以上突っ込むのは失礼にあたるだろう。

「いえ、こちらこそ。参考にさせてもらいます」

互いに頭を下げると、ヴィトニルとエイルは部員達の元に戻っていった。

 

 

「戻ってきた! あの人ヴィー君の友達? まさか因縁つけに行ったとかじゃないよね?」

戻ってきたヴィトニルとエイルに、少し心配そうにアルカが訪ねる。

「そ、そんなんじゃないですよ。ただ、今年のインターミドルの対戦相手だった選手だから挨拶しとこうかなって」

「喧嘩しに行ったわけじゃない。心配しなくていい」

「なーんだ。それなら心配いらなかったわね」

エイルのフォローも入ったことで安心したようにアルカは顔をほころばせる。

「あ、そうだ。次の試合終わったらコーチから今後の予定の説明とかあるから、ちゃんと近くにいなさいよ」

そう言ってコーチの所に戻っていくアルカを見送りながら、少し肩を落とした調子のヴィトニルにエイルは声をかける。

「……すまないな。邪魔をしてしまったかもしれない」

「いえ、印象に残るような戦いが出来なかった俺が悪いんです。だからこそ、次対戦する時はぎゃふんと言わせてやりますよ!」

落ち込んだ様子はどこへやら、すぐさま握りこぶしを作って気合を入れるヴィトニル。エイルは安心しつつも、その前向きさを少し羨ましく思った。

競技場で行われている試合はそろそろ終盤と言ったところである。エイルとヴィトニルもアルカに続いてコーチの元へ向かった。

 

 

試合が全て終わり、最後の部員達への指導も終わった後、コーチは全員を集めて話を始める。

「みんな、お疲れ様。今日の結果や内容については各々思う所あるだろうが、よく反省して次につなげて欲しい」

コーチは続けて言う。

「それで、だ。近い目標についてなんだが、一月後幾つかのジムの協賛で開かれるDSAAルールの小規模な大会がある。DSAAの公式戦って訳じゃないが、スポンサーの中には有名なナカジマジムなんかもいるし、出てくる選手もそこらの非公式大会よりはレベルが高い筈だ。インターミドルの反省を試す場としては丁度いいだろう。参加を希望する奴は、俺かアルカに二週間後までに申し出てくれ」

コーチの話も終わり、部員たちはそれぞれ解散を始める。皆口々にコーチの言った大会について話しているが、今すぐに決めようという部員はあまりいない。

「エイル先輩はどうしますか? ちなみに俺は出ようと思ってます! なんてったって、ナカジマジムが関わってるならあの人が出てくるはずですからね!」

「ヴィーはそうだろうな……。俺の方は、どうしたものかな」

正直を言えばエイルも出たい気持ちはあるのだが、彼の場合手の内がバレるリスクが他の選手よりも大きい。しかし、今の実力を更に伸ばす切っ掛けも欲しい。悩ましい所であった。

「俺はパスしようかな。俺の目標はあくまでインターミドルの結果だからねぇ。ヴィーは一戦でも多く試合の経験が欲しい所だろうし、良い選択だと思うよ?」

『お遊びの大会はそちらだけでやっていればいい』

にこやかなジェスターと対照的に辛辣なハーメルンだったが、彼らは出場を見送る予定であった。

(さて、俺としても何かを変える切っ掛けが欲しい所ではあるんだが……。まだ時間はあるし、すぐに決める必要はないか)

束の間腕組みをして考え込んだエイルだったが、とりあえず今は答えを保留して帰宅の途に就く部員達に従う事にした。

 

 







同い年に対して敬語を使わせるか否かは結構迷ったらしい。
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