DSAA男子部!(仮   作:tbrh

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性格なんかの把握具合が実際不安なキャラであったり……。
この作者は読解力に乏しい。






第六話 次の試合へ

 

 

翌日早朝。エイルはいつも通りの時間に家を出た。玄関を開けると、案の定そこには既に準備万端のオルカが待っていた。

「よ、今日も頼むぜエイル」

「ああ」

短い挨拶を交わし、二人は早朝の街を走り始めた。

 

住宅街の静かな道を進み、目的地である中央公園に到着すると公園の歩道に入り、いつも通りのペースを維持したまま駆け続ける。

走行ペースは緩やかだ。息が上がらない程度に、しかし体はしっかりと温まる速度。エイルの長い脚が地面を蹴るリズムに合わせて、隣のオルカも軽快に駆けていく。

風が二人の間を通り抜け、朝露に濡れた木々の香りが鼻腔をくすぐる。無心で走るよう心掛けているエイルだが、今の所それは上手く行ったことがあまりない。今日も次の試合や先日の反省が自然と頭を過ぎ去っていく。

(反省点は色々あるが……今は次の試合か。出るメリットもデメリットもあるが……どうしたものかな)

ジェスターとの練習試合は引き分け。互いに全力ではなかったが、結果だけを見れば実力で上回る相手によくやったと言ったところであろう。しかしそれはその場限りの奇策、相手の想定外を突けた事が大きい。経験に勝る力はないが、しかし大会に出る回数を増やすことでただでさえ対策を取られる事に弱い自分の強みを消してしまう事にならないか、エイルにとっては悩みどころであった。

「また悩み事か?」

不意にオルカが声をかける。ハッとなって現実に意識を戻すと、またペースを上げてしまっていた。考え事をしているエイルの癖である。

「ああ。小規模大会が開催されるんだが、どうしたものかな、と思ってな……」

走りながら答えるエイルに、オルカはなるほどと納得した。DSAA公式戦に出るエイルの戦いは毎回見ている彼だが、やはり手の内がバレるデメリットは大きいように感じられる。

「まぁ、気持ちはわかるな。俺はテニスだけど得手不得手はあるし、やっぱりそこは突かれたくないもんだ」

その言葉に、エイルは神妙に頷いた。しかしオルカは続けて言う。

「けどな、それでも経験に勝るものはないし……何より」

そこで一旦言葉を区切り、エイルからは見えないがニヤリと笑みを浮かべる。

「試合、楽しいだろ?」

少し考え、エイルはポツリと答える。

「……ああ。多分な」

「俺も他校と練習試合とかやる時は色々考える。けど、結局最終的には試合してぇ! ってなっちまうんだ。対策されたらそいつを更に対策すればいいだろって言い訳しながらだけどな」

そう言ってオルカはハハハ、と笑う。釣られてエイルも小さく笑いながら、自分がどうしたいかを自分に問うてみる。

(合理的に答えを出した上でそれに迷ってるなら……まぁ、最初から答えは決まってるようなものか、な)

「……この選択が本番に影響したら、焚きつけたお前に責任取ってもらうか」

「お、それなら試合見に行かないとな。帰ったらアルカに予定聞いとくか」

その日の彼らのロードワークは、いつもより少し騒がしいものとなった。

 

「次の大会、自分も出場しようと思います」

夕陽が差し込む部室には、トレーニング器具から発せられる金属音と汗の匂いが混ざり合っていた。重厚な木製のテーブルには表彰台の写真が飾られ、壁一面に並ぶトロフィーの群れが長年の栄光を物語っている。簡易デスクに座るコーチは、エイルの言葉に少し驚いたように目を開いた。

「そうか。少し意外だったな」

エイルの慎重な性格や前回の練習試合で見せたピンポイントな戦術を考えると、今回の決断は大胆に映ったのだろう。

「だが、積極的になるのは良いことだ。試合まではまだ少し時間はあるが、気合入れて準備しとけよ」

「はい」

コーチの励ましに短く答え、軽く頭を下げるとエイルは筋力トレーニングを行う部員達の元へ向かう。出るからには、少なくとも何か成果を出せる程度には仕上げておかねばならないだろう。

 

「エイル先輩!」

トレーニングスペースに入ると、ヴィトニルが明るい声でエイルを迎えた。彼はちょうど休憩中だったらしく、タオルで額の汗を拭っている。

「さっき聞いたんですけど、次の大会に出るんですよね? 一緒に行けるの、嬉しいです!」

屈託のない笑顔を向けられ、エイルは少し面食らう。

「あ、ああ。まあ、な」

少々ぶっきらぼうに答えると、ヴィトニルはさらに目を輝かせた。

「俺も頑張りますから!  先輩みたいに、最後まで諦めない戦いができるように!」

その言葉に、エイルは内心で苦笑する。自分はそんなに立派な戦い方をしてきた訳ではないのだが。

(この純粋さは本当に羨ましいな……。あまりネガティブになりすぎるのは良くないとわかってはいるんだが)

なぜこんなに慕われているのかわからない、という所も含めてエイルは少々この後輩が苦手である。しかしそれ以上にこの前向きな熱量が、自分を自然と前に進ませてくれるとも感じていた。

「……少しは応えられるようにならないとな」

小さく気合が入るのを感じながら、エイルも部員達に混ざってトレーニング器具を用いた筋トレを始めた。しかしいつも以上の気合といつもの考え事が重なった結果、気づかないうちに凄まじいペースでトレーニングを行っているのがアルカに発見され、コーチを交えて説教を食らったのは余談である。

 

やがてトレーニングも一段落し、部員たちが帰り支度を始めた頃。エイルがデバイスのメンテナンスをしていると、ジェスターが近づいてきた。

「やぁ、エイル先輩。大会出るって本当ですか?」

相変わらず飄々とした口調だが、その目はどこか探るような光を宿している。

「ああ。少し迷いはあったが……出るなら全力で臨むつもりだ」

短く答えると、ジェスターは笑みを深めた。

「いいですねぇ! 先輩の試合は参考になりますし……今回の大会は面白い選手も来そうだから楽しみですね」

(昨日会ったトーヤ選手もだが、面子がある程度のレベルになるという事は調整目的でトップ選手がやってくるってこともない訳じゃないだろうな)

エイルは無言で頷きながら、大会の内容に思いを馳せる。一度覚悟を決めてしまえば、不思議とこの機会をモノにしようと気合が入っている自分に彼は気づいた。

「楽しみ、か……そうだな」

自分で言っておいてその言葉に意外そうな顔をするエイルに、ジェスターは変わらぬ笑みで頷いた。

 

 

ミッドチルダ中央区第五地区、その中でも外縁に位置する古い住宅街は冷ややかな朝靄に包まれていた。その一角に佇む古風な剣術道場からは、早朝から清冽な剣戟の音が響いている。

「ふぅぅ……っ!」

アルト・ブレイザードは一歩踏み込み、木刀を振るう。鋭い呼気と共に振り抜かれた木刀は空気を切り裂き、打ち込み台に叩き込まれる。一撃では終わらず流れのままに二撃三撃と繰り出される斬撃は、素人目にはその軌跡を捉える事さえ困難な速度である。DSAA都市本戦で優勝を果たしたその技は、まだ完全には本調子ではないながらも鋭さを失ってはいなかった。

彼の義父でもある道場の師範は、静かに木刀を構えたまま息子の動きを見据えていた。白髪交じりの髪を後ろで結び、無骨な顔立ちには長年の鍛錬の痕跡が刻まれている。しかし、その瞳には衰え知らずの鋭さがあった。

「気になる事はあるか?」

静かな声だったが、その中には息子を案じる温もりが確かに含まれていた。昨年の公式戦で負った左腕の裂傷は既に癒えているが、アルト自身の感覚では未だにその部位が戦闘中に軋むような違和感がある。何の異常もないと医者から言われてはいるが、一種のトラウマになっているのだろうとアルトは考えていた。

「去年の怪我の事なら、大丈夫です」

短く答えるアルトの表情は平静を保っているが、その瞳の奥には僅かな迷いが揺れていた。師範は息子のわずかな心の揺らぎを見逃さなかった。

「焦る必要はない。ゆっくりと慣らしていけ」

言葉を受けてアルトは小さく頷いた。彼にとって義父は育ての親であり、我儘を受け入れてくれた恩人であり、未だに自分では到達できない高みにいる師匠でもある。彼の言葉に頷き、アルトは深く息を吐いた。そして小さく笑みを浮かべると、義父に向かって言う。

「では少しだけ、軽く手合わせお願いできますか?」

その言葉に、義父もまた表情を和らげた。

「良いだろう」

頷いた義父が道場の中央に向かうのに続き、アルトも中央で木刀を構え向かい合う。空気が張り詰め、互いに気合が満ちていく。

寸暇の間を置いて、再び道場内に木刀を打ち合う澄んだ音が響き渡った。

 

稽古が一段落し、二人は道場の縁側に腰を下ろした。季節は秋。早朝の涼やかな風が火照った体に心地よい。

「近々、近くで大会があるようだな」

義父の声に、アルトは視線を上げた。

「公式戦ではないが、そう小さい規模という訳でもない」

その言葉を聞いたアルトは、静かに目を閉じた。冷ややかな秋風が頬を撫でる中、彼は左腕に意識を集中させる。昨年の公式戦で負った傷は癒えたが、未だに感じる微かな違和感。それは単なる物理的な痛みではなく、精神的な傷痕のようにも思えた。世界戦に出られなかった悔しさと、義父の期待に応えきれなかった無力感。その全てが、この左腕に集約されているように感じられた。

(……焦る必要はない。ゆっくりと慣らしていけ)

義父の言葉を噛みしめながら、アルトは思考を巡らせた。公式戦ではない小規模大会。それは実戦の感覚を取り戻し、左腕の違和感を克服するには良い機会かもしれない。だが一方で、優勝経験者の自分が一般の小規模大会に出場して良いのかという迷いもあった。対戦相手に対して失礼ではないか。あるいは、単なる圧勝で終わるだけの凡戦になるのではないか。

その迷いを見透かしたかのように、彼の膝の上に小さな影がふわりと舞い降りた。黒髪のロングヘアーを風に揺らし、金色の瞳を細めてアルトを見上げるのは、ユニゾンデバイスのファフニール。今は待機状態の小さな身体は、アルトの膝の上が丁度良いサイズである。

「アルト。私は参加しても良いと思います」

ファフニールの声は普段と変わらず静かだが、その瞳には彼を労わるような柔らかさがある。彼女は今はネックレスの形を取っているアルトのデバイスと同期すると、空中に情報ウィンドウを投影させる。そこには大会の概要や主催団体の名前が表示されていた。

「ナカジマジム……?」

アルトが眉をひそめる。

「ええ。本戦出場者を多数輩出している強豪とあります」

その名は彼らの様な魔法戦技を志す競技選手にとっては、知らぬもののないものである。出身者には都市本戦出場者はおろか、世界戦で活躍したトップ選手さえ存在する。近場では最も名の知られたジムと言ってよい。

「それに」

ファフニールは続ける。

「現在の参加者リストを見る限り、選手たちのレベルもそれほど低くありません。アルトが思うような凡戦にはならないでしょう」

彼女は自身の予測データを表示する。参加予定選手の戦績や予選突破率、過去の試合映像からの分析結果などが簡潔にまとめられていた。確かに、一筋縄ではいかない選手が何人か含まれている。

「……調べたのか」

アルトが感心したように言うと、ファフニールはぷいと顔を背けた。

「当然です。あなたのパートナーとして、常に最善の選択肢を提示するのがボクの役目ですから」

ファフニールがそっとアルトの袖を引いた。

「まだ心配ですか? アルト」

アルトは深く息を吸い込んだ。冷たい秋の空気が肺を満たす。

「……そうだな。いつまでも悩んでいるよりは、行動してみる方が良いか」

片手で抱え上げたファフニールの頭を撫でながら、アルトはゆっくりと立ち上がった。そろそろ登校の準備をした方が良い時間である。

「参加は公式戦と同じく、私の道場の名義を使うと良い」

「ありがとうございます」

座ったままの義父に頭を下げ、アルトは自室へと向かった。

 








お話のディテールになる部分が、やっぱり苦手。
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