曇らせ絶対に許さない系神官の英雄譚with周囲を絶対曇らせる系女勇者   作:さらみパスタ

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聖歴0098 7月15日

 

 

 

 ヤムルさんにお願いされた『レーヘンを出撃させないでほしい』という要望は人類連合パルチザン組の総意ともいえた。

 

 彼らは勇者レーヘンのことを気遣い、穏やかな日々を過ごすことを心から願っているのである。

 

 まあ、四天王を三人倒し戦況は著しく安定している。ここは周囲の反対を押し切ってまで無理に戦地に赴く必要はない。

 

 というわけで、勇者パーティーは休暇を与えられていた。各々がやりたいことをやる。幼馴染くんは修行したり、魔法使いさんは研究したり、姫騎士は政治活動に勤しんだり。

 

 さて、そんな穏やかで自由な日々の中でーー俺は目を逸らしていた問題と直面させられていた。

 

 現状、俺には五つの課題がある。

 

 『一つ目は勇者レーヘン代償問題』

 

 これは他四つの課題を産み出したそもそもの元凶だ。勇者レーヘンは百年分の寿命と、味覚、そして妊娠能力を喪失したーーなんて悪質な勘違いは相当広く広まっていた。

 

 今回、長い休日が与えられた理由もこれ。

 人類連合の首脳陣だけでなく、頼れる仲間達もそんな勘違いをし、著しく精神状態を悪化させ、誤解に次ぐ誤解を産み出しているのだ。

 

 対応策としては代償補填に関する論文の作成である。

 俺が目下取り組んでいるわけなのだが……。

 まだまだ時間はかかりそうだった。

 

 

 二つ目は『魔法使いさん曇り過ぎ問題』

 

 自分が弟子に手心を加えてしまい、その尻拭いのためにレーヘンが代償を支払った。

 

 魔法使いさんはそう考えていた。

 復讐を果たすこともできず、娘のような存在に無理をさせた事実は彼のメンタルを著しく消耗させていた。

 

 もちろん魔法使いさんは、そんな本音を絶対に明かさないけどね。

 

 ……妻と子どもに向けた手紙にも『お父さん本当はお前達の仇のこと親しく思ってたんだ』なんて書けないから、そっちも色々誤魔化してるけど、あの顔を見ればわかる。

 

 で、そんな手心を入れたせいで娘のような存在であったレーヘンが身を削ったことはーー強い後悔と自己嫌悪を産んでしまったのだ。

 

 これは……時間をかけるしかない。

 大切な存在を失った痛みと、自分が殺すべきだったという責任感と、それで大切な存在を苦しめた誤解が混ざり合う苦悩をたった一言で解決できる言葉はない。

 

 彼のメンタルを一瞬で癒す方法なんて洗脳とかそういう夢物語のレベルの技術になるからね?

 

 現状、解決策なし!

 俺にできることは本当に何もなかった。

 

 勇者レーヘンの代償の補填についての論文をなんとか記すくらいだね、でもそれだけで解決しないのがこの問題の厄介なところだった。

 

 

ーーーーーー

 

 

 そして、三つ目が『姫騎士勘違い問題』である。

 

 

 それは勇者パーティーの定例の顔合わせの席での事だった。

 共に冒険することのない休暇中であるとはいえ、定期的に集まるべきであるーーなんてライフズくんが主導して、俺達は週に何度か顔を合わせる機会が設けられていた。

 

 ま、それ以外でも顔合わせはしてるんだろうけどね。俺もレーヘンやライフズくんとはかなりの頻度で交流しているし。

 

 そこで行われるのは取り止めのない会話だ。何か意味あるものではない、単なる雑談に過ぎない。大体レーヘンやライフズくんが、こんなことあったんだよーと報告する会である。

 

 俺達は数年パーティーを組んで戦ってきた。

 絆の一つや二つは芽生えてる。

 

 

「それでね、レーヘン、なんかサーカスが再開したらしくてね? 西部地区でやってるんだって。このあと行ってみない?」

 

「いいねいいね、せっかくだしみんなで行こうよ!」

 

 

 ライフズくんは、少なくともレーヘンの前でできる限り曇った顔を見せないようにしている。

 

 立派なことだと思う。

 もちろん完璧ではないし、ふとした拍子に苦悶に満ちた表情を浮かべているわけだけど。そうやって自分を律せるというのは中々出来ることではない。俺の好感度は上がった。

 

 その上、彼は勇者さまが楽しく過ごせるために、あれこれとイベントを企画してくれているのだ。本当にいい子だ。

 

 

「うん、みんなでね……」

 

 

 ちなみに彼は実はレーヘンのことが好きだ。

 

 元々みんなで過ごすつもりであったとはいえ、こうしてみんなで遊びに行くことが前提であるかのように振る舞われたらちょっと傷ついてしまうのは仕方ないのだろう。

 

 思わず微笑みたくなる青春のワンシーン。

 ここにルーテシアがいたらな、俺たちにもあんな時代があったなと微笑みあえたのかも知れない。

 

 俺はちょっとだけ遠い目をした。

 

 

「ライフズ、まー元気出せ。レーヘンのお嬢ちゃんはそういうとこがある」

 

「違いますって。そういう意味はなかったですから」

 

 

 ちなみに今回の企画の裏には復讐を果たしたというのに明らかに元気がない魔法使いさんを元気つけようという目論見もあるのだろう。

 

 ライフズくんは話題を切り出す前に、彼はレーヘンと、魔法使いさんをチラリと見ていたしね。

 

 今回も必要以上にショックを受けたーーみたいな大仰な演技をしている。そういう道化じみた振る舞いを仲間を元気つけるために行えるなんてなかなか出来ることではない。

 

 本当に気が利く男の子なのだ。

 

 そしてそういう相手を思いやる心は何より元気を与えてくれる。特にライフズくんは魔法使いさんと親しくしてるからね。

 

 

「あとやめてくださいよ、バックルさん。頭撫でるのはそれは子どもっぽいですから」

 

「お前はまだまだ子どもだよ、俺からすればね」

 

 

 けんもほろろに振られてしまった男の子の頭を、魔法使いさんはぐしぐしと撫でている。その表情は柔和そのものだ。

 

 空元気ではない。

 妻と子、そしてかつての教え子は死んだ。

 でも今、周囲には仲間がある。新たな絆が生まれていることに気がついて、少しだけ元気が出てきたのだろう。

 

 

「姫さまも遊びにいこーよー! 祖国奪還の役に立たないけどさ」

 

「もーレーヘン。わたくしだってここ最近はいつも一緒に遊びに行っているでしょう? 昔のことを持ち出すのはやめてほしいのですけれど」

 

「いや、そりゃ印象に残るよ、あんな氷のお姫さまムーブしてたらさ、一生揶揄うに決まってるじゃん」

 

 

 そして初めて会った時は『それが祖国復興のためになるので?』なんて言っていた姫さまもこうして出席の意向を示したわけだけどね。

 

 ……一瞬場の空気が凍りついた。

 レーヘンは本当に単なる冗談で『一生』という言葉を使った。年頃の女の子らしい過剰に盛った形容表現である。深い意味はない。

 

 しかし、彼女はーー寿命をすり減らしていると誤解されている。そんな女の子が自分の余命を示唆するような発言をしたら、そりゃ周囲の空気が凍てつくのは当たり前の話だった。

 

 ……しかし、レーヘンを責めることはできない。彼女は年頃の女の子だし、そもそも日常の発言内容全てに気を使える人間などいない。

 

 

「おいおい、俺の予定を聞いてくれる人は誰かいないのかい? さっきから待っているんだけど⁇」

 

 

 というわけで俺は直ぐにフォローした。嫌な沈黙に場が待たされる前に、なんてことないように会話を続ける。

 

 

「そ、そうだ、すみません、神官長は時間大丈夫ですか? 突然の連絡になってしまって申し訳ないんですけど」

 

「全然問題ないから安心してくれ……急患が来ない限りね」

 

「もー、しばらく暇なくせに何言ってるの、昨日だって暇してたくせにこの人はさぁー。自分の予定くらいきちんと把握しときなよ、まったくさー」

 

 

 ライフズくんは俺のフォローに気がついた。

 しかしレーヘンは気がつかなかったようで、馴れ馴れしく俺の胸をぺちぺちしてくるのであった。

 

 

「ほんと、ライフズくんと違って手がかかって大変なんだよねー、ボクがきちんと手を引いてあげないと迷子になっちゃう子どもかな?」

 

「あはは……それって僕への褒め言葉なのかな? 笑っていい?」

 

「うん。ライフズくんは昔からしっかりしてるからね。幼馴染としては大半心強いものだよ」

 

「……あ、ありがとう……」

 

 

 周囲の視点からすれば、彼女は明白な俺のフォローに全く気がつかないわけで、本当に子どもなのはどっちか、という話だが。

 

 まあそれはさておき。

 これが今の勇者パーティーの日常だった、

 

 勇者レーヘンは勇者パーティーの中核だけど、幼馴染ライフズくんもそれに負けず劣らずで全員と仲がいい。

 

 だからこそあの二人の淡い恋の行方というのは、魔族との戦争の最中でも場の空気を穏やかなものにしてくれる。

 

 勇者さまの些細な一言に心揺らし、なんとも初々しい反応を見せる幼馴染くんの姿は大変微笑ましいわけだが。

 

 

「にしてもレーヘンの嬢ちゃんはなんていうか、本当に鈍感なんだよなぁ……」

 

「………………」

 

「ん、姫さんどうしたのか?」

 

 

 そんな二人を姫騎士は沈痛そうに見つめているのだ。実はこの元気な女の子はメンタルボロボロで裏で他の男に身を委ねているーーなんて誤解をしてるからね。

 

 ちなみにその他の男とは俺のことだ。

 

 

「……いえ、なんでもありませんわ……」

 

 

 いうべきなのか、隠すべきなのか。

 そんな苦渋にいつの間にか抱くようになったライフズくんへの恋心まで混ざった複雑怪奇な苦悩に悩まされているのである。

 

 仲良さそうな幼馴染の交流、本来ならメンタルが回復するはずの安らぎの風景も今の姫騎士にとっては卸し金。

 

 メンタルをガリガリと削られているのは明らかだった。こんな状態では、更なる勘違いをしてしまうのは時間の問題。

 

 本当にどうしたものか。

 俺は思わず天を仰ぐ。

 

 姫騎士ワイスの勘違いを解消する方法ーーそれが全く頭に思い浮かばないのだ。もう本当にどうすればいいのか、お手上げ状態というか……というわけで俺はこの問題は棚上げしていた。

 

 とりあえずレーヘンの代償という根本的な誤解を解かない限りは解決しないからね。そしてそのためには、正確な論文の制作が必須となる。

 つまり現時点ではどうしようもないのだ。

 

 

ーーーーーー

 

 

 さて、そして四つ目め。

 姫騎士ワイスの勘違い、これから連鎖するのが『ライフズくんも俺とレーヘンがそういう仲になったと誤解するかもしれない問題』である。

 

 姫さまは勘違いした内容をライフズくんに吹き込む危険がある。

 

 幼馴染くんは、勇者メンバー全員と確かな絆を抱いている。そして彼は若い。人間は悪意を持って嘘を吐かずとも、勘違いしてデマを語ることはあるという、とても大切なことを理解していない。

 

 だから、姫騎士の語る言葉を信じたとして受け入れてしまう。

 

 そしたら勇者と幼馴染、二人の関係はギクシャクする。

 勇者パーティーの癒しであり、魔法使いさんのメンタルを回復させる幼馴染二人の仲睦まじい姿が見られなくなってしまう。

 

 と、他の問題に連鎖して悪影響を与える、早急な対処が必要な問題であった。

 

 そしてここに五つ目ーー『勇者レーヘン代償で味覚が無くなった説という市場に広まりつつある問題』への対応策まで絡んでくるのだ。

 

 この件の解決策は以前から用意していた。

 

 レーヘンの味覚がなくなった、みたいな噂が広まったのは、食事会に参加しないメンバーがいたからだけど。

 それは実はレーヘンじゃなくて他の三人だったんだよ、勇者さまは美味しくご飯を食べていたんだよーーと、週刊誌にリークを流すのだ。

 

 もちろんそれだけでは誰も飛びつかない。

 だからここに一つの要素を付け加える。

 それが神官長との恋仲説……である。

 

 つまり、あの二人は本当はデートしてて、それを誤魔化そうとした結果、変な噂が広まってしまったんだーなんて話を広めるのだ。

 

 丁度俺はレーヘンにご飯を奢っていた。

 だからこそ、そういう疑惑を広めることで誤解を解くことができるーーはずだったし。

 

 そういう、俺とレーヘンの噂を広める作戦なのだと、ライフズくんに予め伝えておけば、姫騎士に何言われても勘違いだと判断できる。

 

 一石二鳥と解決策だ。

 

 もちろん噂がある程度広まったら、誤解を解くーー実際はその時、他メンバーが負傷してただけで、それからはパーティー全員で食事してる、みたいな話をレーヘンにさせることで自然消滅させる。

 

 なんて後処理含めて考えたわけなんだが、流石に俺個人の独断でそんな噂を広めることはできない。

 

 

「……よし、やろう! ボクは全然気にしてないから安心してよね 所詮は週刊誌にあれこれ書かれるだけでしょ!」

 

 

 というわけで、俺はサーカス見に行った帰りにそのまま自宅に上がり込んできた勇者さまに相談をしていたのだが。

 彼女の答えは予想以上に肯定的だった。

 

 

「すっごくいい考えだと思う、絶対に実行するべきだと思う、なんならその、デートいっぱいして噂ばら撒いたらいいと思う!」

 

 

 レーヘンは異様に乗り気だった。

 椅子から立ち上がり、瞳を煌めかせ。

 全身を使って賛同を示すのだ。

 

 もしかしたら彼女の勘が囁いているのかもしれない。

 ……やはり今回の噂は魔族の暗躍の結果なのか。

 

 穏やかな時間の中で、こうして問題を整理していて勘付いたのだが……頼り甲斐がある仲間がここまで誤解するなんておかしすぎる。

 

 そんな疑惑は勇者さまの強い賛同を前に確信に変わっていた。

 

 

「ボクも世界のために頑張るんだから、神官長もしっかり協力してよね! ……あと、他の女と仲良くするの禁止だから、変な噂立ったら相手に迷惑かけるんだからね」

 

「あー、うん、わかった」

 

 

 魔法使いさんはともかく、姫騎士ワイスとライフズくんーー確かな絆を紡いだ二人が俺とレーヘンの本気の言葉を疑うなんてあり得ないのだ。

 

 どこぞのスパイが『実はレーヘンはボロボロなのでは?』とか、『あれは嘘をついてるのでは?』とか、妙に信憑性のあるデマを吹き込んだ可能性が高い。

 

 間違いない。

 

 勇者パーティーを心労で苦しませ。

 絆を引き裂き、不破を齎す。

 なるほど、上手い手だ。

 

 

「あと、神官長は一般的な感覚ないでしょ? ボクが一般的に何が浮気に当たるのかしっかり指摘してあげるから、ちゃーんと指示に従うこと、いいね」

 

 

 そしてそれは今市場に広がる噂の出所と同じではないか。人類連合中枢のメンバーもデマを信じた結果、レーヘンは前線に向かうことを止められていた。盤上から勇者さまを排除するために人の善意を利用した許し難き謀略。

 

 俺はその一端に触れていて。

 それを放置するのは愚手である。

 

 となるとやるべきだな。

 

 

ーー聖歴0098 7月16日ーーーー

 

 

「ということを計画してるんだ」

 

 

 なんて話を俺は翌日、ライフズくんに行った。

 何やら向こうも相談があるらしかったけど、まずは俺から話をさせていただいていた。

 

 情報というものは聞く順番が大切だ。

 変な噂や悪質なデマを吹き込まれる前に、仲間からしっかり説明をされれば勘違いすることはなくなる。

 

 これでもし敵が勇者パーティーの絆を引き裂かんとデマを吹き込んだとしても問題はないってわけ。

 

 俺は以前会談した喫茶店の個室の中。

 あの時と同じ紅茶を飲みつつ。

 俺は彼に語りかけた。

 

 もちろんお目目はいつものようにキラキラ煌めかせている。

 

 

「ほら、少し前にデマについてなんとかする宛があると言っただろう?」

 

「なるほど、そうなんですか」

 

「で、変な勘違いしないでほしいから先に話を通しに来たんだ」

 

 

 まあ、好きな女の子が他の男とできてるなんて噂を流されることに抵抗があるのはわかる。

 ライフズくんはなんとも言えない表情を一瞬浮かべたが……すぐにそれを飲み込んだ。

 

 

「すみません、お手数をおかけします」

 

「いや、これはおそらく……人類連合内に潜伏するスパイが広めたみたいだから気にしなくていいさ」

 

 

 彼の脳内にはもしかして、自分がその件を漏らしてしまったからーーみたいな考えがあるのかもしれない。

 

 というわけで俺は真実を口にした。

 ライフズくんの自尊心低下の芽は決して見逃せないし……仲間たちの説得のために俺とレーヘン以外の協力者は必要だ。

 

 

「……っ……」

 

「ああ、なぜわかったかについての説明はーー

 

 

 もちろん、詳細は語れないんだけどね。

 ライフズくんが代償について勘違いしてるから、なんて本人の前で言えるわけないんだし。

 

 人前で言える理由としては四天王について色々調べた結果、情報がないことがわかったから、だ。

 

 魔界最強ゼンネルシア

 名将ヴェルニカ

 空飛ぶ魔族ルッデバラン

 

 俺たちが倒してきた魔族は、一騎当千の猛者としてあらゆる戦場で無双してきている。

 しかし四人目に関しては全く、なんの情報もないのだ。

 

 つまり隠されている。

 内政、兵站か、暗殺、諜報か……表に出ない分野を得意とする存在であることは確かだろう。

 

 で、内政か兵站担当してるってならとくに問題ないので思考から除外する。

 

 厄介なのが平穏な日常を狙われる後者であった場合である。レーヘンの噂を広め、戦場に向かえなくし……穏やかな日常で過ごす彼女を仕留める。

 

 なんてことがあり得るわけ。

 

 いや、これで実は魔王でさえ制御不能な禁断の化け物の可能性とか。魔王を操る真の黒幕大魔王説とか、考え出したらきりがないんどけどね? 

 

 

「ーーて感じかな、他にもいくつかあるけどそちらの答弁は差し控えさせてほしい」

 

「僕も昨日ベストールさんに聞いた話、というかこれが相談したかった内容なんですけど……次の四天王は名前がないそうです」

 

「……名前がない?」

 

 

 俺は件の推定スパイへの信頼をあげていた。

空飛ぶ魔族が動くことも事実だったし……もしかして結構味方側の存在なのかもしれない。

 魔族の人の中には人類への情を持っている方もいる。ルッデバランがそうだったように。個人的な情から人類に情報を渡してるって可能性も高いというか。

 

 本物のスパイがあそこまで怪しい行動はしない。

 流石にこれは詳しすぎるからね。

 『妾は実は魔王軍関係者なのじゃ』と宣言してるに等しいわけだし。

 

 

「名も、顔も持たず、影に生きて、影に死ぬ、暗殺を得意とする魔族だそうです。その速度は魔界最速で人間の目では追えないとも……そして、人類連合の中に既に潜伏しているとも……」

 

「つまり、具体的に誰かはわからないってことだね?」

 

「はい、その通りです。最初は偽装情報かなんかかなと思ってたんですけど……神官長の考察のこと考えると信憑性は高いなって」

 

 

 もちろん、ライフズくんもわかってるようだ。

 敵組織から情報を得る機会と割り切って交流していて。そのリークに関して俺と相談したかったのだろう。

 

 そういえば、ルッデバランの動きはあまりに人類連合の動きを読んでいた。いつ、反転攻勢をするのかを理解した上で行われた猛攻。なるほど、情報を盗まれていたのは確実で。

 

 それは人類連合の上の方にあるのも確実。

 ここまではリーク通りである。

 

 

「これは誰にも言わないように言われたので、神官長も誰にも言わないでくださいね?」

 

「わかった、誰にも言わないようにするよ」

 

 

 俺じゃなくても察する人は察してると思うけどね。もちろん、ライフズくんからのお願いなので俺は誰にもいうつもりはないけど。

 

 

「ただ僕に何かあった場合は、ベストールさんは黒確定だと思います」

 

「危ないことはしないようにね、スパイ一人見つけて得られるものより、君の方がずっと価値ある存在なんだからさ」

 

 

 俺たちはこうしてこそこそと密会に勤しむのであった。

 

 

 

 

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