曇らせ絶対に許さない系神官の英雄譚with周囲を絶対曇らせる系女勇者   作:さらみパスタ

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聖歴0098 10月22日

 

 

 

 

 その日の朝は健やかな目覚めだった。

 ネッテルシー上陸作戦、一周年を祝うイベントの初日。その演説、他諸々の疲労感と達成感に身を包まれながら俺はぐいと身体を伸ばしていた。

 

 なんか、最愛の女性と死に別れた的な勘違いされたわけだが……この件は無理に誤解を解く必要もないしね。俺に新たに悲しい過去が追加されただけ。

 

 軽くメンタルがグラついたが、冷静に考えると被害は無いに等しい。俺は前向きにそう考えていた。

 

 

 今日は勇者レーヘンの晴れ舞台。

 前々から演説の練習に付き合っていたし、カンペもしっかり用意してある。心配が不要なことくらいわかる。だから演説する勇者さまを傍からのほほーんと見てるだけでいい。

 

 そんなことをぼさーっと考えていた時のことだった。

 俺の屋敷に客人が訪れたのは。

 

 

 「パルチザンリーダーとその側近たちが殺害されました、本日の典礼は中止ということになります」

 

 

 客人ーー姫騎士ワイスは、普段と違ってずいぶん明るい表情をしてたから、てっきり何かいい話なのかなとか色々考えていたんだけど、帰ってきたのはそんな訃報であった。

 

 

「そして主犯、連続殺人犯のレーヘンがこの近くに逃げ込んできてるそうですよ、神官長」

 

「お、おう? そうなんだ姫さま」

 

「彼女は魔族に人類を売った裏切り者です、見かけ次第即座に仕留めるようにという御触れが出ています」

 

 

 最初は同名のレーヘンさんがそんなことしてるんだとなんていうか軽く考えていたのだけど……。

 

 なんていうか、奇妙な違和感があった。

 だから俺はすぐに動いた。

 

 

「……レーヘンの顔写真とかってあるっけ」

 

「……はぁ、神官長はアホというか抜けているというか……この顔をしっかり覚えてもらえませんこと?」

 

 

 ここで見を行えたのは、俺の長年の勘違い生活のお陰だったと思う。余計なことを言ったら勘違いが連鎖する極限環境に適応した俺は余計なことを言わず探りを入れるという技術を高いレベルで習得していて。

 

 そうして見せつけられた手配書には、勇者さまのお顔がしっかりと描かれていたのだ。

 

 姫騎士ワイスは可愛がっていた妹分の存在を完全に忘却していたのだ。

 

 

「……随分と新しい手配書ですねぇ? 連続殺人犯であるというのに。まるで今日、昨日慌てて用意したような感じだ」

 

「……あれ? いや、それは……ぁ……んっ……」

 

 

 一応ね、俺も正気を取り戻さないかなって探りを入れたんだけどね。しばらく黙り込み、頭を手で押さえ唸り始めた姫さまはーー

 

 

「手配書なんて最新の顔写真にするに越してことはないでしょう? 何変なことを仰られるのです、神官長さま」

 

 

ーー突然にこやかな顔を浮かべそう返してきたのだ。

 

 思考を強引に捻じ曲げられたような、異様な態度だった。何かされているのは明らかだった。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 指名手配犯レーヘン。

 容疑は連続殺人。魔族に与し、パルチザンの大物を暗殺したーーとされていた。

 人類の英雄だった少女は、一日の間に人類の裏切り者になっていた。

 

 さてかつてレーへンに与えられていた屋敷。

 そこは勇者一行に与えられた屋敷であると認知されているらしい。

 

 屋敷にやってきた姫騎士に引っ張られ、俺はレーヘンの屋敷の中の一室に連れ込まれていた。その場には勇者パーティーメンバーが全員揃っている。

 

 ま、勇者さまはこんな広い屋敷での生活に早々に挫折し、庭に作った犬小屋ーーそう形容できるほどに小さな離れ(それでも庶民の狭い家くらいはある)で生活しているから年頃の女の子のプライバシーが侵害されることはないのだけど。

 

 俺はそんな犬小屋からささっと、レーヘンの私物ーー日記帳などの諸々をこっそり確保してから仲間達と顔合わせをしていたんだが。

 

 魔法使いさんも、ライフズくんも。

 残念ながら、ワイス姫と同様に勇者さまのことをすっかり忘れてしまってるようだった。

 

 

「何ですって? 聖剣を盗まれた⁈」

 

「あはは、はい、すみません……」

 

 

 さて勇者レーヘンという存在が忘れ去られたことで、勇者パーティーの人間関係も結構な変化が起きている。

 

 まず、レーヘンの代わりにライフズくんが勇者になったという扱いらしい。

 

 だからだろう、聖剣守としての役目を果たしていることで彼の自尊心は満たされていた。苦笑いを浮かべ、大失態について報告を入れる姿の中にも、確かな自負は消えていない。

 

 なんなら敵との戦闘で大功績を上げた時より、よっぽど自信があるようだからね? 大失態の報告の真っ最中なのにだ。

 

 

「……あなたは本当に間抜けなのですね、ライフズ。よりにもよって一番大切なものを盗られるなんて!」

 

「姫さま、本当にごめんなさい」

 

「まあまあ、姫さま落ち着いて? ここで騒いでいても事態は何も変わらないんだよ? ライフズくんも十分反省してるんだから」

 

 

 そして姫騎士ワイスは、かつてなら絶対に言わなかった毒を仲間に吐いている。とはいえその態度には馴れ馴れしさが存在している。絆が無くなったわけではなくーー彼女を苛む罪悪感が減衰していることが示唆されていた。

 

 というか明らかに以前より明るい。 

 こういうシリアスな空気の中にいるというのに……以前までの彼女の平常時よりずっと明るい。

 

 

「もー神官長、あなたはいつも勇者を甘やかしてばっかりで……割と本当にピンチですのに何その気の抜けた顔をしていらっしゃるので?」

 

「はい、すみません姫さま」

 

 

 と、そんなこと考えつつ、適当にペラを回していたからだろう、騎士の矛先は俺に向いた。氷のように冷たい眼差しでお説教がスタートしてしまったのだ。俺は即座に謝罪した。

 

 

「まあまあ、姫さん、落ち着いて。綺麗なお顔が台無しだぞ?」

 

 

 そんな姫騎士のお説教を静止したのは魔法使いさんだった。その立ち振る舞いにも明らかな余裕がある。

 

 

「全く……バックルさんもなんですの、その『無くなって清々した』みたいなお顔は?」

 

「だって清々するだろ? あんな危険な品を持ち歩いてるなんて考えるだけで身の毛がよだつ。この子が寿命を削ったらどうしようなんて考えてたら夜も眠れないしな」

 

 

 多分だが、勇者一行は今まで一度も聖剣を使っていないという認知なんだろう。だから勇者レーヘンの前では決して口にしない本音を彼は口にできていた。

 

 四天王討伐も聖剣抜きでどうにかしたという認知なんだろう。だから聖剣がないことに余裕があるって感じかな?

 

 俺は会話の中で仲間たちの認識を把握していく。

 

 

「ゾニ坊、お前も薄々そう思ってたんだろう? だから窃盗を良しとしたってわけだ」

 

「ほんっとに甘い方なんですから。慈悲深いと言えば聞こえは宜しいですけど、あなた一応王族なのですよ?」

 

「でも呪いの装備じゃん、聖剣ってさ」

 

 

 だから、俺も冷徹な合理主義者だと勘違いされてないんだろうなぁ。俺は仲間との会話である程度周囲の認知を把握して、その場合に口にするだろう言葉を発するのだった。

 

 

「はぁ……神官長は居残りでお説教ですわね? 残りの方は解散して構いませんわ」

 

 

ーーーーーー

 

 

 俺はお説教をされていた。

 やれ、王族たるもの辛い判断をせねばならないとか、気持ちはわかるけど、それだと後で後悔することになるとか。他にも勇者さまを甘やかしすぎ、などなど。

 

 それは一切の勘違いのない、素の俺を理解しきった言説は耳に痛い話も実に多かった。

 

 自慢だけど俺は小の犠牲を出さない、心優しい男だ。そういう自分が大好きだし改善しようとも思わないわけだが……それが為政者失格であるともわかっている。

 

 

「もー、その点を除けば完璧だと言うのに……全然懲りないし、反省もしないし、この男は本当に……わたくしがしっかりしないとダメなのですから」

 

 

 でもなるほど、代償絡みの勘違いがないとこんなにきちんと理解してもらえるのか……と感慨深くなってしまうのであった。

 

 そうしてお小言を一通り言い終えた姫さまは、深くため息を吐いて。

 

 

「それで、レーヘンの逃走経路の予測はついているのですか?」

 

 

 そんな言葉を口にしてきてた。以前までの彼女ならもう少しーー肌と肌が触れ合うくらいに密着して言葉を交わしてきたのだが……。

 でも、身体の距離は離れていても心の距離はかなり近く感じるのは、決して勘違いなどではないのだろう。

 

 

「外周区画は魔族との融和派の人たちが多いですからね、おそらくそちらに逃げ込んで逃走の準備をしてるかと」

 

「それくらいはわたくしも理解しています、もしかしてバカにしていらっしゃる? 腕力特化のゴリラ姫と仰られてるおつもり⁇」

 

 

 ワイス姫はムスッとした顔で、ファイティングポーズをとった。そういう態度も親しい相手への馴れ馴れしい態度であり、すごく心を開かれてる感じがあるのだ。

 

 

「今は状況の確認してるだけでしょ、何言ってるんですか姫さまは」

 

「はぁ? 神官長さまが紛らわしい真似をなさった責任があるでしょう? 少しおバカなことに、少しコンプレックスがあるわたくしの前でそんなこと言われたら誤解するのは当然でしょうに」

 

「すこし? おっと失礼」

 

 

 思わず口にした軽口に、拳が飛んできたものの、それもなんていうか……じゃれ合いの一環というか。普通に目で見て避けられるし、威力自体も全然大したものではない。

 

 以前までの姫騎士とはかけ離れた態度。

 もしかしてこれが素、なのかもしれない。

 

 

「……そもそも現状でわかることなんてこれくらいですよね? あとは最前線に近い東部の方にいるとか、逃げるために足を用意する必要があるとか、となると竜……は専門教育が必要ですから馬を狙うのかな、とか」

 

「ふむふむ、なるほど……つまり?」

 

「ま、突発的な犯行でもないでしょうから、逃走の用意は完璧でしょう、もう逃げている可能性も高い、まずは外周部で聞き込みを徹底しつつ、逃走経路を割り出すべきかと」

 

 

 レーヘンは馬にも竜にも乗れない。

 となるとこの近辺に潜伏していることになる。監視の目や兵士達は暫定首都中央から遠ざけるに越したことはない。

 

 俺はそれっぽい理屈を捻り出し、勇者さまの逃亡ルートを確保できるように尽力した。

 

 

「ではわたくしは何をすればいいので?」

 

「……それくらい自分で考えてみたらどうですか、姫さま」

 

 

 詐欺は、相手にもあれこれ考えさせた上で納得させることが重要だ。できれば彼女からの反論してもらったところを丸め込んだ方がいい。

 

 でも姫さまはがんがん質問をくり返してくるもんだから、俺もついそんな皮肉を口にしてしまったわけなのだが……。

 

 

「ふぅ、統治者について理解してないのね、神官長。教えて差し上げますわ、できないことはできる方に任せるのが貴人というものなのですわよ?」

 

 

 姫さまは得意げな顔でそう告げた。

 

 

「で、どうすればいいのですの? わたくしも見栄がありますの、社交の場でヤムル相手にキリッと答えるためのカンペ、用意しといてくださいね?」

 

 

 その瞳には絶対的な信頼の色があった。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「いや、ほんとすみませんね、神官長。姫さまのヘイトタンクまでしてくれるとは流石は勇者パーティーの回避盾!」

 

「しれっと逃げてたよね、ライフズくん」

 

「そりゃ姫さまのお説教は長いですし」

 

 

 さて、そんなお説教を終えた帰り。

 屋敷の前で俺を待っていたらしいライフズくんに声をかけられた。

 

 彼はかなり馴れ馴れしい態度を浮かべている。俺としてしてはこういう距離感の方が全然嬉しいんだけどね? 

 

 彼の浮かべた得意気な表情はーーレーヘンが普段浮かべるものによく似ている。イタズラが成功した悪ガキのように。お説教から上手く逃げたことを自慢するようだった。

 

 

「姫さまは僕には遠慮なんてしてくれないから、正座でガミガミ言われますからね? なんなら生活態度にも飛躍するし……」

 

「……あはは……」

 

 

 多分これは大きな挫折を経験しなかったライフズくんのイフの姿なのだろう。なんていうか……本来ならこんな元気に育つはずだった男の子が、あんな腰が低くなってしまっている事実に、俺は逆に曇らされていた。

 

 でも、今はレーヘンの捜索が最優先だ。

 取り敢えず。

 

 

「で、どういう感じで聖剣盗まれちゃったのかな?」

 

「朝起きたら手元になくて気がついたんですよ、あ、盗まれたって」

 

「ならなんで、盗んだのがレーヘンってわかったんだい?」

 

 

 彼の記憶が蘇るかなーと、俺は揺さぶりを敢行した。

 

 

「……え、あれ? ……それは、その……手配書に、聖剣を持っている写真が乗っていた……から?」

 

「その手配書、刷られたの今日の未明とかでしょ? じゃあいつ盗まれたんだい? いつこの写真は撮られたんだい⁇」

 

「ぁ、それは……レーヘンはだって……ぁ、ぁ……」

 

 

 ライフズくん自身、違和感は抱いていたようで彼は少し黙り込んだ。その様子は明らかに異常と言えた。心は真実を訴えかけようとしているのに、他の何かがそれの邪魔をしているように、頭を手で押さえ。

 

 

「なんででしょうね? 捕まえて話を聞いてみたいと思います」

 

 

 しかし、結局答えを出すことはできなかったようで。

 顔を上げた顔は、満点の笑みを浮かべ、そうしてこう口にするばかりだった。やっぱりこれ洗脳とかそういうやつだよね……、俺は察した。

 

 取り敢えず都合の悪いこと言われたら頭抱えて、えーとか、あーとか言えば誤魔化せる感じかな。そういうヒントを得られたことをまず喜ぼう。

 

 俺はこの事態の困難さに頭を抱えてえーとかあーとか言いたい気持ちをグッと堪えて。一人で孤独に苛まれているはずのレーヘンを探すことを決意するのであった。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 ま、その前に確保した日記諸々を俺の自室の研究室に隠そうとしたら、勇者さまと鉢合わせたんだけどね。

 

 俺の予想とは打って変わって、レーヘンには割と余裕があった。おそらく異変に勘づいて即座に俺の屋敷に逃げ込んでいたのだろう。

 ……もしかしたら姫騎士が来客した時点でこの屋敷の中に隠れていた可能性もある。

 

 

「朝起きてこうだからびっくりだよねー」

 

 

 目覚めると完全に世界が切り替わったと言われても納得してしまう。まるで悪夢の中にいるようだった。

 

 頼れる勇者パーティーの皆も洗脳されている。

 ……となると怪しいのは先日の祝賀である。

 そこで何かされた、となると怪しいのは映像か音声のどちらかということになる。

 

 だけどそれ以上は流石にわからないのだ。

 俺は魔法が専門ではないから解決法に見当がつかない。

 

 

「取り敢えず日記とか諸々は確保してきたぞ」

 

「あ、ありがと……その、中身は見た?」

 

 

 取り敢えず、俺はレーヘンに彼女の私物を渡すと。 

 その控えめな言葉とは裏腹に、かなり乱暴に、まるで奪い取るように日記他諸々が取られた。

 

 

「そんなの確認してる時間的余裕はないんだよなぁ」

 

「はぁー、よかった。ボクのプライバシーは守られた……ほ、ほんとに見てないんだよね?」

 

「見てない見てない、見てたら遠慮なく口にするから安心しろ」

 

 

 なんなら周囲が敵に回った話をしてた時よりよっぽど動揺してるというか……いや、これは上手く表情を取り繕ってただけなのかもしれない。突然こんなことになって……動揺しないわけがないのだ。

 

 

「でも、誰が犯人なのか……」

 

「多分、ヤムルさんだっけ。あの人で間違い無いと思う。あと四天王の一人だとも思う」

 

 

 今回の事件の犯人は誰なのか。

 大々的な捜査はできない。

 怪しまれたら、俺も周囲が敵に周りえる。

 

 勇者さまを忘れたふりをしながら、犯人が誰かを突き止め、洗脳の手段を解き明かさねばならない。

 

 そしてレーヘンは頼らない。

 彼女には安全地帯で過ごしてもらう。

 つまり俺のワンオペで探る必要がある。

 

 ……非常に荷が重い。手っ取り早く敵を倒せばいいわけじゃないからね。

 

 なんて思ってたんだけどね。

 勇者さまの勘は本当にすごかった。

 犯人は秒で特定されていた。

 

 

「……もう少し早く教えてほしかったな」

 

「ボクだって朝までわからなかったから仕方ないじゃん、文句あるならボクじゃなくて、ボクの勘に言ってほしいんだよね」

 

 

 勇者の勘を疑うつもりはない。

 もしかしたら攻撃されたから、犯人の目星がついたとか?

 

 不幸中の幸いか、敵はすぐに見定まった。

 取り敢えずあの人の前では怪しい真似は控えつつ、捜査をしていけばいいのだろう。

 

 

「じゃ、取り敢えずやりに行く? 背後から聖剣で消し飛ばせば一発だよ? 多分殺せば洗脳も解けると思うし」

 

「まてまて、落ち着けって」

 

 

 もちろんそれが最も簡単な解決法であることは認めるが……そんなの敵も理解してるはずなのだ。なのにこんな真似をしたからにはーー何かしらの理由が存在する。

 

 既にヤムルさんとは違う人に化けている。

 ヤムルさんは操り人形で黒幕がいる。

 勇者に独断で有力者を殺害させ、人類連合に不和の芽を植え付ける

 

 と、パッと思いつくだけでも複数の理由が思い至るわけだ。

 

 安易に殺すのではなく、彼が犯人だという証拠を用意した上で根回しなければ……魔王討伐後の遺恨になり得る。

 

 

「むぅ、でも早く解決しないとみんな、絶対曇るじゃん」

 

「それでも、俺はそれでお前に遺恨が残る方が嫌なんだな。悪いけど、今回は俺に黙って従うこと」

 

「……なんかかっこいいこと言ってるし、まあ、それはいいんだけどさ、解決したらちゃんと責任とってよねー?」

 

 

 ま、俺の最優先は勇者レーヘン。

 彼女の将来に暗い影を落とす事態は絶対に避ける。

 

 それに、多分ここで勇者に無理させて、遺恨を産み出す方がみんながより曇るのは確実だった。レーヘンを忘れていたのと、そのせいで彼女が無理をしたのでは後者の方がはるかにキツい。

 

 もうここまで来たら、仲間を曇らせないーーではなく、曇らせを最小限にするフェーズに入っている。

 

 レーヘンを忘れた時点でメンタルズタボロになるんだから……完全勝利して彼女の被害はみんなに忘れられたことだけにするしかないのだ。

 

 

「でも神官長色々調べてたよね? まとめた資料、いつものとこに隠してたみたいだけど」

 

「……あの資料はね、勇者を最前線に出させないために暗躍してたって証拠なんだ、お前が忘れられた以上は意味がないんだ……」

 

 

 しかもこれあったとしても、単純に善意の可能性だと思われるからね。俺も何も知らなかったら勇者に代償を払わせるなんて許せず、もしかしたら最前線に向かわずに済むよう暗躍したかもしれない。

 

 こんな資料を渡されたところで『それほどまでに勇者さまを慕っていた重鎮を殺した』みたいに思われる可能性もあるのだ。

 

 

「とりあえずみんなの様子を見たら、様子を探ってくるわ。ワンチャン記憶が戻らないかもっと色々試してくるわ。お前はこの部屋から出るなよ?」

 

「はーい、いってらっしゃーい。あ、お土産は甘いものでお願いねー」

 

 

 ま、取り敢えず今は仲間達を正気に返すためにあれこれとするのが優先されるかな。勇者パーティーの絆は四天王なんかに絶対負けないんだから! 俺は何となくそんな確信を抱いていた。

 

 愛とか絆は、謀略なんかに負けないーーそんな信頼があったから。レーヘンに語ったことなんて最悪の可能性に過ぎないのだから。

 

 

 

 

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