曇らせ絶対に許さない系神官の英雄譚with周囲を絶対曇らせる系女勇者   作:さらみパスタ

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聖歴0099 5月11日

 

 

 

 四天王ヤムル。

 人類連合中枢に潜伏していた恐るべき魔族。

 

 狡智な大魔は、もちろん自分が死んだ場合に大きな問題が産まれるように仕組んでいるーーなんて予測は正しかった。

 

 彼が死んだ後。人類連合の世論は一気に過激化したのだ。

 魔族撃つべし、徹底抗戦で戦い抜くべし。

 先日まで蔓延っていた融和論はなりを顰め、代わりに過激な意見が噴出している。

 

 融和がある程度進んでいたからこそ、その中枢に魔族の影があったことはあまりに大きな反発を生み出した。

 

 その本質は恐怖だ。

 

 穏健派が穏健であった理由は、この地域が勇者レーヘンのお膝元という安心感であった。魔の大群が攻めてこようと、四天王が攻撃しようと、この地の平穏は揺るがないという信仰があったからこそ、人々は安寧を求めた。

 

 今回の事件でそんな平和の屋台骨が揺いでいた。

 

 洗脳と呼ばれる恐るべき力を実感したことも相まって、反魔族感情の高まりはとどまるところを知らなかった。

 

 また似たような事件が起きたらどうなるのか、そんな恐怖は魔族の排斥という形で顕現したのだ。

 

 以前までなら融和的な価値観に染まっていたはずの外周地区の人達の中でも、魔族は生かしてならない、みたいな声が相当強まっている。

 

 それだけではなく、他にもスパイはいるのではないか? そんな疑念に突き動かされ、以前まで融和的な言説を取っていた人々への疑念まで持ち始めていた。

 

 それは、人類連合中枢の融和派メンバーを公然と非難する声もそれなりに広がりつつある。

 

 市民が、魔女狩りのような真似をし始めるのは時間の問題と言えた。

 

 過激派の暴走をどうにかするのは、四天王ヤムルを見事討ち取った主戦派リーダーの俺にしかできないことであった。

 

 恐怖から過激な方向に向きかける民衆を宥め、暴走なんてしないよう、彼らが抱えた恐怖を和らげなければならない。

 

 だから俺は、さらに整備が進んだ豪華絢爛な社交会場にていろんな人たちと積極的に交流をしている。

 

 

「本当に申し訳ない、ワイスさま、我らの短慮のせいで勇者パーティーの皆さまには大変ご迷惑をおかけして」

 

「気になされないでください。実はそこまで大変だったわけではありませんから……ほぼ全ては神官長さまの手腕なのですからね」

 

 

 そんな会場には姫騎士ワイスの姿もある。流石に俺一人では手が足りないので、政治的な諸々は姫騎士の力も借りているのだ。

 

 ワイス姫は穏健派の人々の庇護である。

 

 華美なドレスに袖を通し、確かな自信のある笑みを浮かべながら、人類連合の穏健派の方々とそんな話をしているお姫さま。

 

 周囲に侍る人達の顔にあるのは確かな敬意と安心感だ。

 

 勇者パーティーのメンバーであるワイス姫は、瞬く間に旧穏健派勢力を支配下に収めていた。彼女は過激派に追い詰められた人々が暴挙に出ないための重し役である。

 

 それは彼女の祖国復興の大きな手助けになるのだろう。

 

 

「ですが流石の姫さまですね、我々は忘れてしまったというのにあなたも覚えていたとは」

 

「ええ、わたくしも勇者パーティーの一員ですのよ? レーヘンのこと忘れるわけがないでしょう」

 

「強い絆があれば魔の関係なんて乗り越えられるわけ、ですか。心強い限りです」

 

 

 勇者パーティーは記憶など失っていないことになっていた。

 

 もちろん仲間からの反発はあった。

 

 勇者パーティーメンバーは自責的な人しかおらず、義務も責任も果たせなかったことを罰されたいと思っていて。

 

 記憶を失っていないなんてことにして、万民の前で英雄面なんてできるわけないと強く拒否されていた。姫さまだけでなく、ライフズくんにバックルさん、全員の総意だった。

 

 社交界の最中に浮かべた姫君の笑みには……若干の違和感が垣間見られている。相当神経を使って表情を作っているのだろう。

 

 今も姫さまは強烈な自責の念に苛まれている。

 本当に申し訳ないとも思う。

 

 でも、人類の希望である勇者パーティーメンバーが素直に『わたしたちも記憶なくしてましたー』とか言い始めたら、魔族への過激な思考の根幹にある恐怖は際限なく膨らんでしまう。

 

 それは非常に危険なことだった。

 

 そしてその場合、一番大きな被害を受けるのはーー唯一魔王に対抗できる勇者レーヘンに他ならない。

 

 だから彼女のために記憶は消えていないことにするべき、なんて言いくるめたんだが。

 

 

「……そう、わたくしは……」

 

「姫さま、大丈夫ですか?」

 

 

 さて、そんなにこやかな振る舞いをしていたはずの姫君は、会場から出て、物陰に入った途端に一瞬で苦悩に満ちた表情に変化させた。

 

 下唇を噛み締めて苦渋の表情を浮かべていた彼女は声をかけた俺のことをチラリと見上げ、そして力無く目線を逸らした。

 

 なぜこんな場所に姫君がやってきたのかといえばーー限界だったからだ。彼女のメンタルが限界値に至っている。

 俺たちは仲間だ、苦しい時は支え合う。

 

 

「ええ、レーヘンの苦しみと比べたらこんなもの……」

 

「俺を舐めないでくださいよ、姫さま。勇者レーヘンのケアは完璧に行っていますからね。あの子は苦しんでなどいません」

 

「……そうですわね……おっしゃる通りです。失言を撤回いたしますわ……」

 

 

 というわけで姫騎士が抱く勘違いはすぐに解いたわけなのだが……それでも彼女の苦悩はまるでこれっぽっちも消えていない。

 

 忘れていた後悔が彼女の身体を蝕んでいる、だけでない。

 

 彼女は先日俺が暗殺したヤムルさんと交際していた、そんな噂も立っていたし、それは事実っぽいからね。

 

 

「……わたくしが勝手に、一方的に、被害者気取りで苦しんでいるだけです……」

 

 

 でも記憶を失っていないことにしたために、彼女は非難の的になることはなくなっていた。融和派のパルチザンリーダーが非難の矛先を向けられる中でも、姫騎士だけは無事でいられており。

 

 融和派を庇護することに感謝されている現状にひどい罪悪感に苛まれ続けているのだ。

 

 

「レーヘンや、それにあなたには本当にご迷惑をおかけしました、申し訳ございません」

 

 

 レーヘンはともかく俺はそんなに苦労してないんだけどね。

 

 いや、苦労はしたけど……でも今のワイス姫の苦しみと比較したらましなんだ。

 俺はレーヘンの味方であったし、口ではあれこれ言うけど大切な仲間のための苦労なんて大した苦しみではない。

 

 大変だけど充足感に満ちていたし。

 

 

「……わたくしは……あの男にほんとに、多くの情報を渡してしまいました……」

 

「それはヤムルさんが上手かっただけですよ? 以前から軽度の洗脳を使われていたとも考えられる。気づけなかったのは俺も同じです」

 

 

 なんてあれこれ考えていたんだが……それだけではないなぁ、俺は察した。一応俺は姫騎士ともそれなりに絆を育んでいるから、言葉を交わせば割といろいろ察することができる。

 

 敵対したからと言って情は消えない。

 

 バックルさんが妻子を殺されてなお、かつての弟子に情を見せていたように。

 

 裏切られてなお、恋人への情を消せず。

 裏切られた怒りと悲しみ、騙されていた屈辱、そしてそんな存在が死んだことへの苦悩他諸々が入り混じって。

 

 

「…………」

 

「姫さまにも責任はありますが……あなただけが背負うものではないでしょう?」

 

 

 メンタルボロボロなのだろう。

 

 レーヘンに酷いことした敵を嫌いきれない、そんな自分を浅ましく感じて苦しんでしまう。うーん、高潔だ。そういうとこは俺としては美徳だと思うんだけどね。

 

 俺も、仮に実は仲間の誰かが全ての元凶とか聞かされても、みんなを嫌いになれないし。

 

 

「ま、俺も秘密をお教えします。そうしてみんなを苦しめた元凶であるとはいえ、俺は実はヤムルさんのことは嫌ってませんからね」

 

「……っ……」

 

 

 それは事実だった。

 俺はヤムルさんのこと今でも嫌いじゃないからね。

 

 いろんな人々を苦しめたし、今でも沢山の人を苦難に追いやってるし、何よりレーヘンを殺そうとした敵であるけど。

 いろいろお世話になっていたからね。意見が食い違った上で譲れぬもののために正々堂々決闘で殺したから別に後悔とかはないんだけど……。

 

 

「いろいろとお世話になりましたし、仲も良かったですから……みんなには内緒ですよ? こんなの聞かれたら怒られますからね」

 

「……そうなのですか……」

 

「そうなのです。別に敵対したからって無理に嫌う必要なんてないと思いますよ? 一番の被害者はきっとあなたなんですから」

 

 

 まあともかく、俺は姫騎士のフォローに勤しんでいた。そしてそれは結構上手くいったのだ。

 

 俺だって、魔法使いさんの件から色々学習するからね? 仲間の曇らせへの対応も少しずつ上手くなるってわけ。

 

 

「すみません、少しだけ胸を貸してください」

 

 

 姫さまはそっと俺にしがみついてきた。

 俺も、彼女の身体をそっと抱きしめる。

 そうしてしばらくメンタル絶不調の姫さまを元気つけるのであった。

 

 

 毎度の如く、壁の間からにゅっと顔を出した勇者さまに、懸命に今は静かにしていてくれとアピールして、ね。

 

 

ーーーーーー

 

 

 この時、俺はとある一つの懸案を失念していることに全く気がついていなかった。

 あとは仲間達のフォローをしつつ、世論の動きを誘導していけばいいーー完全にそう思っていたのである。

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「あのさぁ、神官長、ああいうのは良くないとボク思うんだよね」

 

 

 俺は割と完璧な対応をしたと自負していた。

 共感と理解を駆使して、姫騎士ワイスの傷ついた心に寄り添うーー我ながら完璧な対応で姫さまを元気つけて、そのまま彼女を屋敷まで送り届けて。その隣の自宅に帰ってきた俺の耳元で、ボソリとそんな声が響いた。

 

 勇者レーヘンだった。

 当たり前な顔をして、俺の部屋の中に上がり込んだ勇者さま。

 

 なのに、物陰からこっちをこっそり見ていた彼女は、姫騎士のメンタルが若干解決した場面を視認していたにもかかわらず、俺が行ったメンタルケアに強い不満を抱いているらしい。

 

 

「なんかよくないことが起きたらどうするのさ」

 

「よくないことってなんだよ。比喩が抽象的すぎる、もっとわかりやすく教えてくれないか? 俺なんかやらかした⁈」

 

 

 一応人が来ないことは確認してるからね?

 変な噂が広まることもないけど。

 

 もしかして勇者の勘案件なの⁈

 俺は軽く慄いていた。

 彼女の態度に不安がとめどなく立ち込め始める。

 

 

「……詳しくは言えないけど、ボクもなんか嫌な予感がしてる気がする……なんであんなことしたわけ?」

 

「ほら、一応俺もやらかしたわけじゃん? お前をみんなと会わせないようにしたけど……会ってたら記憶も取り戻せた可能性はあるわけだし。だからフォロー頑張らなきゃなって思ってさ」

 

 

 俺は万が一が起きないためにレーヘンを仲間と会わせなかった。

 もし顔を合わせていたなら記憶を取り戻せた可能性はある。絆を信じると口にしながら、俺は万が一のリスクを恐れたのだ。

 

 

「無理だったと思うよ? スパイの人とかもみんなの傍にいたわけだし」

 

 

 実際、いろんなリスクがあった。

 従者として紹介された推定スパイ。

 人間を操り人形にするような洗脳。

 

 

「あんな洗脳されてるとか見てたのに、顔合わせようとか、ボクが受け入れるわけないじゃん。絶対、みんなも危なくなるんだし」

 

「それは俺もそう思ってた。だけど……ちょっとみんなを疑う心があったのも事実なんだ。お前を攻撃するなんてリスクを排除したかったんだ」

 

 

 でもそれだけではなかった。

 俺の中には万が一でも……仲間達がレーヘンに危害を加えた場合のことが脳裏をよぎっていた。

 

 別に情報を抜かれるぐらいならーーまあ苦しむのは確実だけどね。

 

 間違えて攻撃したとなったら、今の比ではないくらいの自責の念に苛まれることになるのは明らかだった。

 

 もちろんレーヘンの身柄を案じたってのもあるけどね。

 

 俺にだってみんなへの情はある、苦しんでほしくない、曇ってほしくない。

 

 

「ふーん……まあボクとしては大切にされてるようで、その……嬉しかったけど、ね」

 

「されてるようで、じゃなくて大切にしてるんだよなぁ」

 

 

 俺はレーヘンの誤解を正した。

 

 この献身は正しく伝えるべきだからね? 俺は彼女のためにここまで労力を払った。

 

 そういう認識の差は後々曇らせを産みかねない。俺はレーヘンだけは曇らせない、あらゆる手段を使ってでも彼女の笑顔を守るつもりだ。

 

 

「……そ、そっか……」

 

「変な勘違いはするなよ? そういうのは他メンバーだけで十分なんだからさぁ」

 

 

 変に恥ずかしがる必要もないからね? 俺はみんなのことを大切に思ってる、それは嘘偽りのない真実なのだから。

 

 ま、今回の曇らせはキツイかもしれない。でも勇者さまに直接攻撃とかはしてないわけだし。

 なら、まあ、メンタルダメージは比較的マシで済んだのかな? 最悪の結末に至らなかっただけでもよしとしよう。

 

 そんな良かった探しを行って、俺の精神力を回復し。

 

 

「それで俺はどうすればいいと思う?」

 

「二人っきりで密会するの禁止ね? あとは抱き合うなんてもってのほかーーみたいな気がする、多分、おそらく」

 

 

 これから先、俺が取るべき行動をお伺いするのであった。

 

 

「あと二人であった時の会話の内容は全部ボクに報告するように、いいね?」

 

 

 

ーー聖歴0099 6月13日ーーーー

 

 

 ヤムルさん暗殺から大体二ヶ月。

 

 俺は雑誌やインタビューなんかにも多く出演し、かなり計画的にヤムルさんを暗殺したことを強く主張していた。

 

 ま、実際レーヘンによる強襲でざっくり殺せるように場は整えていたので、計画通りではあるのは事実だし。

 

 こういう情報を拡散できるようにあれこれ手は回してあるからね。

 

 民衆の過激化なんてのも予想通りの展開なので、前々から準備していた諸々はしっかり効果を発揮していた。

 

 おかげで敵対感情が一気に爆発し、過激な行動に出るーーなんてことはなく。暴徒が穏健主義の大物政治家を攻撃することもなく。

 

 ただ市民の中で魔族って何するかわからなくて怖いよねー、とか、なんとなくの敵対感情が芽生えるくらいで済んでいた。

 

 流石にこれで敵意を完全に消すなんてのはそれこそ洗脳でも使わないと無理だからね。自慢だけど俺にできる限りの完璧な対処ができたと自負している。

 

 それでも決して予断を許すわけではない。

 今は落ち着いている、ただ何かあればまた過激な思想に取り憑かれ暴挙に及ぶことは十分考えられた。

 

 勇者パーティーの目下の課題は民衆心理の暴走を抑えることにあった。政治的なあれこれは姫騎士に任せ、俺はスポークスマン紛いな真似に取り組んでいて。

 

 それはかなりの効果を齎していた。

 

 また、勇者レーヘンも時折手を貸してくれている。俺より勇者さまの方がやっぱり影響力が高いからね? 毎度のように俺がカンペを作った上で勇者さまが受け答えする。

 

 その中には何かしらの雑誌でのインタビューなんてものもあった。

 

 

ーーボクもこの半年、神官長の屋敷に匿われててさ〜、毎日美味しいご飯食べてたんだよね〜、あの人意外と料理上手でさ〜ーー

 

 

 そこで彼女はーー余裕アピールのためなのかは知らないが俺の屋敷内にて同居生活していた、ということを漏らしてしまったのである。

 

 もちろん俺は対処した。

 あれこれとそれっぽい言い訳を用意して、世間に広めた。俺はそういうことができる技術を持っていた。

 それだけならーー噂は容易く鎮静できるはずだった。

 

 そう、それだけなら問題はなかった。

 ただそれ以前に俺はとあるポカをしていた。

 

 俺は『勇者と神官長の怪しい噂』を流させていたことをすっかり忘れていたのだ。

 

 完全なるポカであった。

 でも、俺は人間なので多少のミスはしてしまうものなのだ。『勇者忘却事件』とかいうデカいイベントのせいで、失念してしまっていたのである。

 

 そしてそれら二つの噂は一気に絡み合い、まるで俺とレーヘンができている、みたいな話が語られ始めてしまったのだ。

 

 ま、それは今どうにかできる問題ではないから後回しにする。

 それで連鎖起爆しちゃったんだよね、姫騎士ワイスの地雷がさ……。

 

 

ーーーーーー

 

 

 俺は姫騎士ワイスの屋敷の中にいた。

 勇者さまの勘的に言えばあまりよくないのかもしれないけど、姫さまは今や勇者パーティーの政治担当の片割れで、穏健派の中心人物。

 

 ある程度情報共有やらをしておく必要があるから。こうして足繁く彼女の屋敷を訪れていた。

 

 ここ最近の姫さまはなんていうか……洗脳期間の心を開き切った態度が若干続いているところがあったし、俺の渾身のフォローのおかげで苦悩は随分と和らいでいるようで。

 

 俺としてもかなり安心して経過を見守っていたのだが。

 

 俺とレーヘンができている。

 

 その噂が改めて広まった直後の姫騎士は、なんていうか……非常に曇っていたのである。高く持ち上げられてから地面に叩きつけられたような顔で、隠しきれぬ苦悩が全身から滲み出ていた。

 

 

「……申し訳ございません神官長さま。…わたくしはあなたに甘えてばかりで、負担ばかりを押し付けて、それに気がつかずに浅ましく浮ついて……本当に申し訳ございません」

 

 

 彼女は以前からとある疑惑を信じていた。

 

『レーヘンはメンタルボロボロすぎるあまり人肌を求め、俺と肉体関係を持った説』である。

 

 そこに洗脳された時に聞かされた『神官長、かつて失った最愛の女性ルーテシアに操を立ててる説』まで絡み合って。

 

 俺は最愛の人がいるにも関わらず、勇者さまを癒すため身を削り続けた悲劇の王子的認知をさらに深めてしまったっぽいのである。

 

 そして、洗脳解除による混乱でそれをすっかり意識から外していた姫騎士ワイスは、俺の払った労力を完全に意識していなかったが故に。

 

 週刊誌報道を知ってから初めて気がついた認識の差(勘違い)のせいで酷くお曇りになられてしまったーーと思われた。

 

 いや違うかもしれないけど。

 レーヘンは確か俺の家に宿泊していたことは仲間内にしっかり報告してた気がするんだが……。

 

 

「弱く浅ましい女であるわたくしを、どうかお許しください」

 

 

 くそ、わからない。

 なんで彼女がここまで苦しんでいるのかさっぱりなので、俺にはどうすることもできないのだ。

 まあともかく姫騎士は本当に、地獄に叩き落とされたくらいに曇りに曇ってしまったのである。

 

 どうしてこーなった。

 俺は天を仰ぐしかなかった。

 

 

 

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