曇らせ絶対に許さない系神官の英雄譚with周囲を絶対曇らせる系女勇者   作:さらみパスタ

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聖歴0099 9月11日

 

 

 魔族四天王を全員討伐した人類連合であるが……勇者パーティーの武功はそれだけではなかったのかも知れない。斬首作戦で敵の指揮官や厄介な敵の討伐を繰り返した結果、魔王軍の実力者の数自体が激減していたのだ。

 

 だからこそ、人類の攻勢は止まることを知らなかった。

 快進撃を続ける人類連合。

 その歩みは一切滞ることはなかった。

 彼らには勇者パーティーの援護さえ不要な状態であり。だからこそ俺たちは魔王戦を見据えた準備に取り組むことができていた。

 

 状況をひっくり返せる最後の大駒ーー魔王は動くことはなかったのだ。北の国が奪還できた今度は西だと、と湧き上がる人類連合中枢は湧きに沸いていた。

 

 連戦連勝を重ねる人類連合を止められるものはどこにもおらず。

 俺も度々メディア露出して熱狂の機運を制御して、暴走した市民感情に足を引っ張られるなんてこともなく。

 

 確実に、着実に魔王との戦いの準備が続く中。

 俺の元にとある一報が届いた。

 人類連合は遂に皇国の奪還に成功したと。

 

 

 

 皇国は古くより続く大国であった。

 類い稀な怪力という素養を血で受け継ぎ続けた高貴な血筋は、伝統と権威を宿す貴種のなかの貴種。かつては大大陸の盟主的役割を果たしていたとされている。

 

 勇者が築いた聖王国と双璧をなす社会的影響力を有しておりーーだからこそ魔王に2番目に狙われた国家だった。

 

 そんな長らく魔の手に落ちていた領土は、侵略から数年の月日を経てようやく人の手に取り戻されたのである。

 

 

「おめでとうございます、姫さま」

 

「ええ、少しだけホッとしております。まさか本当にここまで来れたなんて……神官長さま、本当にありがとうございます」

 

 

 というわけで、報告を聞いてすぐに俺は動いていた。隣に住む姫さまにお祝いしにきたのである。

 

 ま、前々からそろそろ奪還できそうという話自体は聞こえていたからね。色々と準備はしていたからね。

 

 

「ボクもいるんだけどね、姫さまおめでとー!」

 

「まあっ、あなたもありがとうね、レーヘン」

 

 

 そして俺の背中に隠れていた勇者さまはにゅっと頭を出して自己主張をしていた。勇者レーヘンは姫騎士のことを姉のように慕っている。そりゃ一緒にお祝いするのは当然といえた。

 

 

「ふふーん、しっかりプレゼントも用意してるから、大事にしてよね」

 

「ええ、皇国の新たな家宝として代々受け継がねばなりませんね」

 

「……ちょっとそれは行き過ぎかな……」

 

 

 ただまあ、時々顔を滲ませる本物のお姫さまらしい感覚にはついぞ慣れることはなかったようだ。

 勇者さまの得意げな顔は、そのまま凍りついた。

 

 

「何をいうのですレーヘン。あなたは終生語り継がれることになるのは確実なのですわよ? そんなあなたにいただいた品は歴史的遺物、そうでしょう神官長さま?」

 

「うん、まあそうなるよね、間違いなく」

 

「ちょっと神官長、そこはボクの味方になってくれるとこじゃんかよー」

 

 

 ま、勇者さまは切り替えが早い。

 一瞬で元気を取り戻した彼女はグイグイと俺の服の袖を引っ張りながら、そんな文句を口にするのだった。

 

 ちなみにレーヘンが歴史に名を残すのは確実だ。

 単身で情勢をここまでひっくり返した偉業はとんでもないものだ。ま、魔王に負けて人類全滅したとしても、最大の難敵として名を残すだろうし……。

 

 

「ま、気を取り直して……いつもありがとうね、姫さま!」

 

 

 そうして彼女は、先日露店で購入した髪飾りを姫騎士に渡した。

 その姿は一切の気負いがなかった。

 

 

「実はそれはボクとお揃いなんだよー!」

 

「まあまあ、それはいいことを聞きました。大切にしなければなりませんね」

 

 

 別に粗悪品とか格安品とかではないが、皇国のお姫さまの傍にある品として考えればかなりの安物だが……そんな品物をプレゼントをすることに一切の躊躇いもない。

 

 流石は勇者さまの勘というか、お揃いのプレゼントならなんでも喜んでもらえることを正しく理解してるのだ。

 

 

「ま、ほどほどにね? 壊れちゃったらまた新しいのを一緒に選びに行こうねー」

 

「それは本当に楽しみです……ふふ」

 

 

 皇国の奪還は魔王戦が着実に近づいていることを意味している。

 なのにここまで気負わずいつも通りの姿を見せる。

 ま、そこがレーヘンらしいというのかな。

 

 俺と姫騎士は多分同じことを考えていて。

 だからつい顔を合わせて笑ってしまうのだ。

 本当に頼り甲斐のある勇者さまである。

 

 

「勇者さまは本当に元気いっぱいなのね、神官長さま?」

 

「ええ、全くです、姫さま」

 

「ちょっとー、ボクをネタにして通じあわないでくれないかなー、そこはボクと姫さまがわかりあうとこじゃんかよー」

 

 

 ちなみに俺はこの数ヶ月の間魔王やその親衛隊の情報をひたすら集めていたんだが……ろくな情報も入手できていない。

 

 多分だが彼らは前線に立ったことはないのだろうか? 或いは魔王が君臨している旧聖王国跡地なら話は違うのかもしれないが……。

 そこまで攻め込んだら最終決戦直前。

 あれこれ準備をしている時間はない。

 

 その強さはとんでもないものだ。

 魔王は四天王を暴力で屈服させた。

 それができる怪物ーーとはベストールさんからの情報提供である。

 

 つまり勇者一行はそんな怪物の情報をろくに獲得することはできない。

 こちらの情報を散々抜かれているのに、だ。

 魔王は千の技術を有しており、こちらの弱点を的確につくことができると思えば……その戦いは極めて厳しいものになる。

 

 みたいな話を先日ライフズくんにはしていた。千の技術を習得した彼はーー腕力のない魔王みたいなものだった。

 

 魔王役をやるのにこれ以上ない人材だ。

 なので彼には訓練に勤しんで貰っていたりする。もちろん言い方にはきちんと気をつけた。『無能だから仕事を取り上げられた』なんて勘違いしないように言葉は尽くしてるのでへんな誤解は抱かれていない。

 

 

「そう言えば姫さま、最近ライフズくんとよく一緒にいるよね。ボクこの前も一緒に歩いてるとこ見たけど、なにしてたの?」

 

「ああ、ライフズには訓練をつけてもらっていますからね。彼はまさしく魔王役として最適ですもの」

 

 

 ワイス姫は本当に嬉しそうに口元を緩めているけれど。その瞳には確かな覚悟の色が宿っている。こうしたふれあいの中で彼女が秘めた覚悟はますます強靭になっている。

 

 魔王の攻撃からみんなを護る。

 例え、自分が死んだとしても。

 

 姫さまは覚悟を決めていた。

 

 しかし、そのことを勇者さまに伝えることはなかった。変にあれこれ口にしたらレーヘンは必ず自己犠牲をする、と考えているからだ。

 

 『約束を果たせないかも知れません、一緒に髪飾りを買いに行けないかもしれません。次の戦いでわたくしは死ぬ可能性が高いですから』

 なんて言えるわけがない。

 

 

「勇者パーティーの盾として、わたくしも微力を尽くすつもりですもの。可能な限り攻撃を抑え込みますわ」

 

「姫さま、あんまり無理しないでねー」

 

「ええ、もちろん」

 

 

 ただおそらく、彼女が戦死した場合に姫騎士の妹が残した形見の品はーーレーヘンの元に渡ることになるのだろうなぁ。

 ふと、数年前にこの部屋の中で、このメンバーでした会話が脳裏をよぎっていた。

 

 

「……念の為に申しますけど、神官長さま、あなたが死んだら勇者パーティーは終わりですからね? 回復役は最後まで生きねばならないのですから」

 

「もちろん、わかっていますよ」

 

 

 姫騎士は結構、勘が鋭いんだなぁ。

 

 護らねば。

 俺は勇者さまと楽しげに語らう姫騎士の姿を見て覚悟を決めていたことを、姫騎士は察していたのだ。

 

 俺は甘ちゃんなのでそういう誰かを犠牲にする選択は取れない。

 

 しかし、俺の盾性能は姫さま以下だ。回避盾では、勇者レーヘンに迫る敵の攻撃を受け止めることはできないからね。

 

 となると、やはり敵とはまともに戦わさないってことが大事になる。本領を発揮させる前に潰す。しかし魔王だって馬鹿ではない、みすみす聖剣の前に立つことはない。

 

 そして魔王クラスの実力者は聖剣を見て避ける。

 

 となると……。

 

 

 

 姫騎士へのお祝いを終えた帰り道。

 俺は小さな勇者さまにいった。

 

 

「レーヘン、いざという時は頼むぞ」

 

「うん、任せて? ボクは手加減しないで本気で取りにいくから!」

 

 

 囮役は俺だ。

 無尽蔵に聖剣を振るうことができる外付けユニットーーそう思わせることで敵の隙を引き出す。

 

 俺は勇者さまが曇ることを勘定に入れた。親しい友人を斬り殺すーーそれは心優しい勇者さまにはきっと受け入れ難いことだろう。

 

 普段はあれこれ生意気なことを言ってるけれど、レーヘンはまだ幼い小娘にすぎない。

 

 本当に申し訳なく感じる。

 

 

「……本当に悪いな、レーヘン……」

 

「ううん、全然気にしなくていいよ。ボクも全然気にしてないから、別に苦しいとか悲しいとかはないからね!」

 

 

 まあ、と威勢のいいこと言う奴に限ってここぞという時に手が止まるものだからね。聖剣で消し飛ばすなんて軽い気持ちで行えるわけがない。

 

 確かにレーヘンは俺の腕を斬り落とすことに一切の躊躇いは見せなかったけど……それとこれとは話のレベルが違っていた。

 

 だから俺は魔王を少し足止めする必要がある。勇者さまが咄嗟に手を止めた時のために、文字通り命を賭けて……。

 

 

ーー聖歴0099 11月8日ーーーー

 

 

 それから一ヶ月が経過していた。

 俺とライフズくんとレーヘンは最前線近くの小さな集落跡を訪れていた。

 

 そこはかつて聖王国と呼ばれる国家が存在したーー今は魔王が支配している土地の端。

 

 焼き払われ人の気配はない滅びた集落。

 その一つの傍に佇んでいたライフズくんは、寂寥感に満ちた表情を浮かべている。

 

 

「このあたりが僕の生家だったんだ」

 

「ふーんそうだったんだ。そう言えばボク、あんまりライフズくんの昔の話聞いたことなかったかもね」

 

「ずっと修行してたからね、一族の者として勇者になるために」

 

 

 ここは聖剣守と呼ばれた一族の本拠地。

 かつて、聖剣が安置されていた土地だ。

 

 聖剣守の一族であるライフズくんは幼少期、親族のものに連れられて世界の端にあるソルト王国に移り住んできたけれど。それ以前はその土地で生まれ育っていたのだ。

 

 

「修行のためにここを離れてソルトに移り住んで……立派な勇者になるためにがんばるぞーって鍛えててさ……」

 

 

 

 

 それは聖剣守の一族の修行だった。

 或いは魔族の動きを掴んでいたのかもしれない。

 

 だから大切な聖剣と、一人の男の子を世界で一番辺鄙な王国に移り住ませたーーとかね。

 

 子どもの頃から親元から引き剥がされ、過酷な修行に明け暮れていた男の子は、しかしその努力を実らせることはできなかった。立派な勇者になって凱旋するという夢や目標を叶えることなく。

 

 自分の代わりに勇者になった幼馴染を、魔王軍の侵略により滅んだ故郷に連れてきた少年の瞳にはなんとも言えぬ感情が渦巻いて。

 

 勇者レーヘンはそんな男の子に優しく寄り添っていた。

 

 

「ここでさ、同世代の子達と遊んだ記憶も少ないし、お父さんとお母さんの思い出もあんまりなくてさ……」

 

「それでも寂しいんだ、故郷がこうなっちゃって」

 

「うん、そうなんだ……自分でもびっくりしてる。お父さんとお母さんも多分このあたりで……」

 

 

 ちなみに彼の両親は、魔王軍の聖王国侵略時に死去した。

 どこで戦死したのかもわからないそうだ。

 ほんの数日で攻め滅ぼされ、ろくな情報が出回ることはなかった。生き残りの数も他国と比べてぐんと低かったくらいなのだ。

 

 

「ま、立派ではあると思うよ? ライフズくんはさ」

 

 

 レーヘンはそんな男の子に語りかけた。

 

「昔から頑張ってたと思うし、まー、そりゃ一つを極めず、あれやこれやと手を出してるとこは飽きっぽいとは思ってたけど」

 

「……ま、まあレーヘンからするとそう見えるのかもね、うん」

 

 

 いや、たまにツッコミどころ満載なこと言うけどね。

 ライフズくんの培った技術群を極めてない扱いできるのは世界に数人くらいしかいないからね? ……ま、レーヘンはその一人なのは間違いないけれど。

 

 そんな勇者さまの天然ボケは、しかし場の空気を大きく切り替えた。ライフズくんの胸中に渦巻いていたマイナス思考は一旦リセットされている。

 

 

「まー、でもなんていうか……僕にとってはエーペラの街が故郷って感覚だからさ。みんな優しくしてくれてたし。今はあそこが僕の帰る場所だって思ってる」

 

「ボクも割と同じ街の幼馴染って感覚が強いからね。そう言えばライフズくんってこっちで産まれたんだっけってビックリしちゃったもん」

 

「子どもの頃からソルト育ちだからね、僕もさ」

 

 

 そして親と離れて異国に移り住んできた少年を憐れんで、やたらと親しくしていたのが勇者レーヘンのご両親であり、その縁で幼馴染として仲良くなったのが幼馴染二人の出会いだった。

 

 故郷は滅んだ。

 でも全ての居場所が消えたわけではない。

 それを改めて自覚したのだろう。

 ライフズくんの顔には確かな決意が滲んでいた。

 

 彼を苛んでいたいくつかの課題はこうして決着したのだろう。

 

 そうしてわいわいと殊更明るく言葉を交わし、思い出話に花咲かせる幼馴染二人。もしかしたらこの地に眠る家族に、自分は元気と報告したいのかもしれない。

 

 

「ねぇ、レーヘン。故郷に帰ったら言いたいことがあるんだ」

 

「え、うん。なんでも聞くけど? 何言いたいの?」

 

「魔王を倒して、故郷に凱旋したらいうよ」

 

 

 そんな最中に交わされた約束はーーライフズくんの『みんなで生きて帰る』という意思の現れなのかも知れないなぁ。

 

 胸キュンシーンを尻目に俺は情報収集に励んでいた。

 流石にあの雰囲気に余計な茶々入れにはいけないし、あの二人が生きて帰れる可能性を少しでも上げる必要があるのだ。

 

 

 勇者を温存しつつ、魔王軍との最後の戦いに取り組んでいる人類連合。

 最前線では抵抗を続ける魔族を数の暴力で倒して回っているらしい。

 

 その指揮官には魔王を出陣させ、勇者パーティーの負担を減らそうという狙いがあった。

 

 しかし、この情勢でも魔王が出陣することはない。敵もこちらの狙いがわかっているのだ。

 

 ここまで追い込まれてなお、勇者さえ倒せば情勢なんて幾らでもひっくり返すことはできる。

 

 だから表に出てこないのだ。

 

 だからこそ情報収集をする必要があり、丁度近くにライフズくんの故郷があったからね。

 里帰りを兼ねて、俺たち3人は最前線近くにまで足を運んでいた。

 

 でも流石はライフズくんだわ。

 既に亡くなられた方だったんだけどね? ライフズくんの友人ってことを話すとあれやこれやと情報を提供してくれたのである。

 

 ちなみに関係性は伯父らしい。

 

 で、あれこれ聞き出したんだが……この地を滅ぼしたのは四天王最初の一人『ヴェルニカ』だそうだ。なんならライフズくんのご両親の仇で、近隣の戦場で討ち死にしたとか。

 

 ま、この件は後で彼に報告するとして。

 

 つまり魔王はこの地でも直接戦闘には及んでいない。 

 データを集めることはできなった。

 

 代わりに得られたのは旧聖王城。今は魔王に支配された城砦の細かな内部資料。もちろんそれは魔王に改築される前のものであるんだけど。

 

 ここに隠し通路がある、とか。

 ここの井戸は外に繋がっている、とか。

 魔王も知らないそんな秘密の抜け道について、俺は教えてもらっていたのである。

 

 というわけでベストールさんがくれた地図の写しと、魔族の知らない秘密の通路の両方を用いた結果……俺たちは人知れず魔王の懐まで潜り込むことが可能になっていた。

 

 

ーー聖歴0099 12月24日ーーーー

 

 

 勇者一行はついにこの時を迎えていた。

 魔王との最終決戦の準備を終え、ついに最後の戦いに挑むその時が。

 

 人類連合は前進を続け、遂に聖王国の旧首都を包囲するに至っている。ここまで距離を詰めてもらえれば、あとは勇者パーティーでの斬首作戦が可能になる。

 

 魔王の手で滅ぼされた都市に存在する隠し通路を用いて、勇者一行はいきなり魔王の懐に潜り込んでいた。

 

 正確にいうと都市外から魔王城本丸の手前まで一気に抜けるラインである。電撃的な強襲だった。

 

 もちろん同時進行で人類連合の大群がこの都市を包囲し、都市攻撃を敢行している。戦闘の音は城下町の中、そして魔王城脇でも確かに聴こえるほどだった。

 

 ちなみに敵兵もこれが最後と言わんばかりの死兵揃いで防衛網の突破にはまだ時間がかかるらしい。

 

 

「流石は魔王だな、近衛達は大広間で待ち受けてるっぽい」

 

 

 魂の把握のちょっとした応用ってとこかな? 俺はなんとなく周囲のどこに敵がいるのかわかる。そこから頭に叩き込んだ城の間取りを勘案してーーどうやら敵は本丸の大広間で待ち受けているようだ。

 

 この状況で勇者一行が懐に潜り込んでくることを想定し、兵を展開させているのは相当優れていると言わざるを得ないだろう。

 

 兵の小出しはしないという魔王の意図は明らかだ。

 

 まあ、親衛隊が精鋭といえど少数で当たれば勇者パーティーには遠く及ばない。

 

 だからこそ数の暴力を使うのだ。親衛隊、魔王を守る最精鋭、集団としての実力は四天王級といえた。

 

 本来魔王の位置を把握できたなら、城ごと聖剣で吹き飛ばすという選択も取れたんだが……残念ながらそれはできないし。

 

 

 

「まずは近衛との戦い、ということになりますわね」

 

「四天王級はあるそうだから、まずは強襲してーー一気に優位に持ち込む、魔王が駆けつけるまで、ですよね、神官長」

 

「うん、でもそれよりもっといいやり方があるよ?」

 

 

 だからこそ、レーヘンは聖剣を使った。

 最後の打ち合わせという体で仲間達の意識を逸らし、邪魔されないように準備を整えた上で。

 

 彼らの目と鼻の先で聖剣で魔王城を切り裂いたのだ。

 

 大広間に集まる親衛隊は戦わずして一網打尽にするーーこれは俺と勇者だけが内々に決めていた作戦だった。

 

 唖然とする仲間達には本当に申し訳ない。

 代償について気に病ませるし、梯子を外された気持ちになるかも知れない。しかし、これはこの戦いでの被害を最小のものにするための必要な犠牲だった。

 

 

 

 

 

 

 

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