曇らせ絶対に許さない系神官の英雄譚with周囲を絶対曇らせる系女勇者   作:さらみパスタ

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聖歴0100 9月14日

 

 

 

 魔族の中で新しい王が生まれた。

 勇者パーティーメンバーの一人であった少年が、魔王となった。

 

 そんな話が人類連合上層部で語られ始めたのは、俺がライフズくんの決意表明を耳にしてから一月ほど後のことだった。

 

 俺が初めてその話を耳にしたのは、ちょうどとある法律が施行されたある日のことだった。

 

 『魔族入国禁止法』。

 

 ライフズくんのリーク、だけでなく。

 学園で起きた魔族によるテロは連合王国中枢を震撼させていた。

 

 次の狙いは連合王国王家か、勇者レーヘンの身内であると見做されていたのだ。

 

 特に俺の兄は都会で一人暮らししているし。

 俺の父も定期的に埠頭で釣りをしている。

 レーヘンのご両親もパン屋を営業中の一般庶民。

 

 狙ってくれと言わんばかりの無防備な姿を幾度となく目にしてきた連合王国中枢は、恐怖していたのだ。

 

 俺が大大陸で滞在してる間にも、法案の作成は急ピッチで進められ。

 まあ、今の情勢的にも俺が反対する意義もないんだけどね?

 

 『魔族入国禁止法』は施行された。

 

 これで枕を高くして寝れると安堵する官僚達の間を縫うように、元隣国国王で現在は外交官やってるお方が、最近こんな話が出回っている、と俺に教えてくれたのである。

 

 新たなる魔王が顕れた、と。

 

 彼は多くの魔族残党を呼び集めている。

 すでにかなりの数の生き残りが、魔王領土に帰還している。

 

 そしてその正体は勇者パーティーの一人。

 錬成士、ライフズであると。

 

 情報というものは広まるまでに時間がかかる。そう考えるとライフズくんの行動は相当早かった。

 

 ワイス姫と魔法使いさんに連絡をした後。

 即座に魔王として、全魔族に号令をかけたのだ。

 

 

ーー聖歴0100 9月21日ーーーー

 

 

 魔王の話を耳にした直後、連合王国は一人の使者を迎え入れていた。

 『人類連合会議』。

 各国首脳陣による会議を実施するという知らせであった。もちろん俺がこの国の代表として出席することになったのである。

 

 ま、やることは以前までと何も変わらない。

 ただ色々と格式ばった場が設けられただけ。

 

 と言うわけで俺はいつものように、暫定首都にある会議施設に足を運んだわけなんだけど。

 そこでとある人物と再会していた。

 

 

「あら、珍しいですね、バックルさんがこんな伏魔殿にどうされたんですか?」

 

「いやぁ、俺も一応魔法学園学園長だからな、こういう場には出席しなくちゃいけないのよ」

 

 

 そう、魔法使いさんである。

 彼は魔王との戦いの時は決して政治の世界に立ち入ることがなかった。

 だから社交会場やら会議室やらが存在する施設の中で見かけるのは初めてだった。

 

 彼は人類連合直轄の魔法学園の長。

 オブザーバーとして、国家首脳に匹敵する地位が与えられてるらしく。

 この会議に出席することになったらしい。

 

 

「授業の方はどうされたんです?」

 

「流石に今回はな、あの子達には悪いけど授業は延期させてもらってな」

 

 

 明らかに生気を取り戻し、以前よりも少し若く見える魔法使いさんは他の出席者ーー国家首脳陣にも劣らない覇気を宿していた。

 

 強い意志の光を放つ瞳、堂々とした態度。

 それは以前までの彼とはかけ離れている。

 

 

「……それで、聞きましたか?」

 

「ああ。ライフズのやつは本当にバカだ。信頼すべき人間を間違えてんじゃねぇよ」

 

 

 その理由こそ、魔王になったライフズくん一派の存在であった。

 

 

「どうせ魔族に吹き込まれたんだろ? 『私たちを助けるために魔王になってください』とかなんとかな……」

 

「あの子は本当に優しいですからね」

 

 

 正確にいえば、その周囲の魔族かな?

 

 仲間たちも誤解はしていない。

 ライフズくんは善良であり、しかし魔族に同情し彼らの力になることにしたーーなんて話はしっかり理解されている。

 

 勇者パーティーとして冒険してきたからこそ、俺たちは互いの理解度が高い。ライフズくんの性根を仲間たちは正しく理解している。

 

 

「俺がもっときつくいい含めとくべきだった。あいつの優しさを利用する存在がいることをな」

 

「穏健派とかと接触したんでしょうね。だから人類と大々的に敵対するってことはないと思いますけど」

 

 

 彼らの言葉を借りるなら、誑かされたということになるのだろう。

 

 魔族達があの子の性根に付け込み、利用している。

 

 魔法使いさんはそう考えていた。

 

 

「……穏健派ねぇ……」

 

「あら、お気に召しませんか?」

 

「ああ、そんな連中がいたとして、自分たちで過激派を押さえ込めねぇからって善意の第三者を利用するとか醜悪だろう」

 

 

 彼からすれば可愛い弟分ーーいや、もしかしたら息子のような存在だったかもしれない。

 未熟なところも至らぬところもあるけれど。 

それでも心優しい男の子が、自己保身に利用され、名誉も功績も使い潰されている。

 

 許せることではなかった。

 だからこそ、彼の中の憎悪は際限なく膨らんでいるのだ。

 

 特に戦後もコツコツと魔族への負の感情が積み重なり続けていたからね……。

 

 これは変に宥めたら逆効果。

 『ゾニ坊の善意まで利用している』と憎悪に炎に油を注ぐに等しい。

 だから俺は曖昧に誤魔化して聞き役に徹していたわけなのだけど。

 

 

 

「あら、少し見ない間に見違えましたわね、バックルさま」

 

「ああ、姫さんか……」

 

 

 そんなことをやっているまさにその時に、なんとワイス姫までやってきたのだ。

 もちろん皇国の姫であり、穏健派のリーダーでもある彼女はこの会議の出席資格を持つ。

 

 

「もしかして聞こえてたか?」

 

「ええ、しっかりと」

 

「……その、なんだ……」

 

「いきなり昔のバックルさまに戻らないでもらえません? ギャップが凄まじいですわよ?」

 

 

 ライフズくんは魔族を選んだ。

 そして、姫さまはもう彼と結ばれることはない。皇国の姫が人間の裏切り者と結婚したらーー臣民達の突き上げは凄まじいことになる。

 

 現時点で彼女とライフズくんと結ばれる可能性は消え去ったに等しい。 

 

 だからこそ、魔法使いさんは言葉を濁した。

 魔族が嫌いではあるとはいえ、仲間への情はしっかりあるからね。なんなら姫さまは魔族の一番の被害者と言えるのかもしれない。

 

 

「ライフズはああなってしまいましたけど……わたくしには皆様がいらっしゃられますもの」

 

「……いや、悪いのは魔族だからな?」

 

「……そうですわね、ライフズは優しい子ですから。助けてと縋りつかれたらきっと断りきれませんものね」

 

 

 そして姫さまも同じ考えを抱いていた。

 或いは最愛の男性を恨めないからこそ、彼を唆した周囲に敵意を募らせるのかもしれない。

 

 

「わたくしもここまで魔族を憎むことになるなんて、思ってもみませんでしたわね」

 

 

 とまあ、魔族に敵意を見せた二人なんだが、実はちょっと違うところがあるというか。

 過去の経験と今回の一環で『魔族が憎い!』ってなってるのが魔法使いさん。

 

 それに対してワイス姫は、自分ではなく他の女を選んだことへの嫉妬だ。

 或いは今もなおライフズくんと親しくしていることへの妬みが憎悪の根底にある。

 

 で、ここまでわかってるならご理解いただけるが……俺にできることはなかった。

 だって誤解してないんだもん。

 

 この二人は真実を理解した上で魔族を嫌ってるからね。

 

 だから俺は二人の会話の聞き役に徹するしかできず。そうして会議が始まるまでの間は仲間達と時間を過ごすのだった。

 

 

ーーーーーー

 

 

「今日の会議は君のことを話し合ったんだよ、ライフズくん」

 

「あはは、ご足労おかけしてます」

 

 

 基本的に俺が大大陸の連合首都に滞在する時は必ず一回はライフズくんがやってきている。

 それは今回の来訪もそうだった。

 人類連合での会議を終えた夕方。  

 社交から帰ってきた俺を待っていたのは昔馴染みの男の子であった。

 

 

 「にしても行動が早すぎだよ、ライフズくん。魔王として名乗るのあんなに早いとかある?」

 

「いや、早くするに越したことないですよ。放置してたら被害に遭う人が多く出てしまいますし……」

 

 

 

 と言うわけで俺は先ほどの会議の内容について、暴露していた。

 会議の意思は統一されていなかった。

 何せライフズくんは人類の英雄の一人だ。

 

 魔族に与したとして……かつての魔王の真似はしないだろうと見做しており。

 そんなことより自国の復興を優先したいグループ。

 

 魔族への忌避感やライフズくんへの警戒から、早期に新生魔王軍を攻撃することを望むグループ。

 

 今は様子見をしているグループの三つに分類されていた。

 

 さらに付け加えると。

 全ての国がそうではないんだけど、人類連合構成国の中には亡命組とパルチザン組が存在している国が存在する。

 

 戦時中は共同歩調を取っていたわけなんだけど、脅威が去ればまた分裂は始めてしまう。

 

 一つの国に二つの政府。

 

 時間があれば緩やかに一体化できた筈なんだが……魔王討伐から一年が経過していない現状でまた新たな事件が起きた。

 

 そしてその対策会議には一国一人の代表しか選出できないのだ。

 

 こう言う時にどちらが国の代表になるかってなるとね、対立が煽られてしまうし。

 強権的な手法で代表の座を奪われた組織とかはね、不満を相当溜め込んでいるようだった。

 

 

「はへー、それがどうしたんですか?」

 

「それを上手く使えば、魔王国と取引してくれる組織もあるかもしれないねって話さ。これが取りあえずでまとめた資料」

 

 

 まあ、利敵ではある。

 でも私情抜きにして、ライフズくんはあまりに人類に都合がいい魔王だ。

 

 人間への攻撃は決して許さず。

 いざとなれば人類を優先する魔王。

 

 そんな相手と全面的な戦いをするメリットなんて存在しない。

 ホットラインを維持し、最悪の事態が起きぬように備えることは統治者としての義務である。

 

 

「で、これが復興がうまく行ってないっぽい国家の一覧、魔族との交易で利益が出せるってなったら飛びつくからね」

 

「あの、大丈夫なんですか? こんな情報流出させるなんて!?」

 

「大した話じゃないから安心してくれ?」

 

 

 ライフズくんはワタワタしてるけど。

 別にこんなの少し調べればわかる話だ。

 行商人に扮して街中歩けば、簡単に手に入る程度の浅い話に過ぎない。

 

 

「本当にやばいのはこっちね、魔王誅伐を強く訴えてきた国一覧。魔族嫌悪が強くて絶対に交易出来ないし、近づいてきたら全部罠だと思って?」

 

「……はぇー、会議が終わってまだ数時間ですよね? なのにここまで読み切るって神官長ってやっぱりすごいなぁ」

 

 

 ライフズくんのキラキラした瞳は、俺の自尊心を大いにくすぐるものだった。

 ま、社交界でお話しして聞き出したってだけなんだけど……俺は見栄を張って。

 

 

「ふふ、簡単な推理さ」

 

 

 やたらと格好つけるのだった。

 

 

「ま、ともかく、どうしても物資が必要とかになったら、ここら辺の人なら融通してくれるんじゃないかなぁ」

 

「ありがとうございます、本当に助かります」

 

 

 というわけでまず緊急の情報を渡してから、本題についての話に入るわけ。

 具体的に言うと仲間達の態度である。

 

 

「姫さまも魔法使いさんもキレてたぞ、ライフズくんを誑かした魔族に」

 

「……やっぱそうなりましたか……僕を恨んでくれるのが一番楽だったんですけどねぇ……」

 

「そういうとこだよ、ライフズくん」

 

 

 俺は突っ込んだ。

 

 自分の名誉をまるでチップのように使うあたりが、自己犠牲が行き過ぎで無礼なまでになってるというか。

 ライフズくんは自分がそうなることで周囲がどれだけ曇るか無自覚なとこがある。

 

 

「いやでも悪いのはどう考えても僕でしょ? 男としての責任も取らずに捨てたわけですし、特にワイスの件は……」

 

「でも客観的に言うと善意に付け込まれて、魔族のために全てを捨てさせられたって言われたらそうじゃん?」

 

「違うんですけどねぇ、選んだのは僕ですし」

 

 

 ま、元々悪感情があった魔族と。

 仲間として絆を培った男の子。

 どちらにヘイトが向くかといえば前者だ。

 

 

「……それに自己犠牲なんて高尚なものじゃないです。僕が、変に隠そうとしないで最初からみんなを頼ってたら……未遂とはいえテロとかは起きなかったんですよ? 僕の失敗で魔族嫌悪に火がついた。なら、僕が責任取らないといけないでしょ」

 

「考えすぎ、仕事多くてもしかして寝てない? 少し部屋で休んでく?」

 

「もー、真面目な話してるんですけど」

 

 

 まー、色々思うところがあるのだろう。

 でも、そんな悩みを打ち明ける人がおらず胸の中に溜まってしまったのだろう。

 

 それをつい打ち明けてしまったのは、俺への好感度の高さが故。なんとも光栄な話である。

 

 でもこの子の場合は軽い調子で対応したほうがいいからね。

 

 俺はライフズくんの隣で、彼の悩みを聞きつつ、メンタルケアに勤しむのであった。

  

 さて、俺とライフズくんはかなり親しい。

 だから情報交換とか、やるべきことを終わった後でも普通に雑談タイムというか。

 友人として駄弁る時間が設けられることもある。

 

 

「今のところ新魔族四天王の二人が帰国していて帰還事業は順調です!」

 

「いや、その一人最初っからいたじゃん人類側じゃん」

 

「ぅぅ……まあそうなんですよね……ちなみに一番初期に一人と合流してるので別に新規では帰ってきてません……見栄張りました」

 

 

 俺も俺だが、彼も彼。

 利敵と言うなら、ライフズくんもすごい。魔王陣営の内情を片っ端から暴露してるのである。

 

 

「真剣な話になりますが、最悪二人は過激派に転んだと見る必要もあるかもしれません。エットゥロともう一人は魔王の信者だそうですから」

 

「……まあそうなるよね」

 

「その場合はその、僕が然るべき処断をくだすつもりですが、神官長のお手を借りるかもしれません」

 

 

 まあ、つまりは排除するってことだ。

 ……彼は魔族を守りたいと言ってはいたが、一線を越えた存在を許容するつもりはない。

 

 今のライフズくんには、指導者としての風格が宿り始めていた。少し目を離しただけだと言うのに、年頃の男の子の成長は早いなぁ。

 

 まあそう言うことなら頼るべき、か。

 

 

「つまり決着は年末の結婚式で……ってことになるのかな?」

 

「ぅぅ、あ、頭が……」

 

「ごめん、口が滑った」

 

 

 と一瞬思ったんだけどね。

 ライフズくんの魔王としての威厳は一瞬で粉々に崩れ去っていた。

 

 ライフズくんの心の傷は深い。

 俺とはこんなに和やかに会話できるのに、勇者さまの結婚の話題になった途端に頭を抱えて苦しんでしまうのだ。

 

 

「そういえばライフズくんは、その……恋愛事情とか聞いても大丈夫かな?」

 

「へへ、僕に恋人なんてできると思います? あれだけできた恋人を一方的に捨てたクズですよ? へへへ……ワイスも誰かと結婚するのかなぁ……やだなぁ……」

 

 

 その上……今の彼の周囲にはヒロイン候補はいないときている。

 

 NTRの心の傷を癒すのは、新ヒロインだ。

 新しい出会いで過去を上書きする。

 

 それに色々思い悩んでいるのも、全ては相談できる存在がいないからだ。

 

 なら用意すればいい。

 一途で清純で、でも夜は意外と大胆で尽くしてくれる理想の女の子を。

 

 それしかない。

 新しい女の子との甘酸っぱい幸せな日々を過ごすことで彼の心の傷を癒すしかないのだ。

 

 

「でも失恋を経験しない男はいないんだぜ? 誰だって一度は恋人を失うものさ。それでも新しい出会いを経て、新しい恋をするんだ」

 

「…………」

 

 

 俺にはそんな強い責任感を抱いていた。

 そもそもの発端は、俺がレーヘンを惚れさせてしまったことにある。

 だから玉突き事故のように悲劇が連鎖し、ライフズくんは魔王になってしまった。

 

 俺はイケメンムーブを連発しすぎたのだ。

 

 だからこそ俺には代わりの女の子を用意する義務がある。責任を取らねばならない。

 

 そうして産み出す女の子だが……ただレーヘンやワイスの代用物みたいな扱いは誰にとっても良くはない。

 

 キャラ被りは防ぐべきだな。

 

 そして彼は魔族に与したわけで。

 その隣にいる女性は魔族の方がいい。

 人間だと少し問題があるからね?

 

 ただ俺にも見栄があった。

 弟分にいきなり性癖について尋ねるなんてできるわけもない。

 

 ま、ライフズくんは心が通じ合った相手を好きになるタイプだ。つまり彼の理解者であるならヒロイン足り得る。

 

 逆説的に細部にこだわりはない。

 

 だから流用できる、俺の理想の女の子を。

 

 俺は脳内の理想の女の子のプロフィールに、実は魔族って設定を付け加えつつ。

 

 

「いや、神官長はその……色々と違うでしょ、僕とは。その……死に別れた恋人なんですし」

 

「少し話しすぎちゃったな、忘れてくれ。ライフズくんを見てると昔を思い出してね」

 

 

 俺は実際に出てきた時に受け入れやすいよう、こうして匂わせっぽい発言を繰り返すのだった。

 

 

ーー聖歴0100 9月22日ーーーー

 

 

 

「あのさぉ神官長さぁ、あなた、ボクの夫になるって自覚がないのかな?」

 

「違うんだよ、レーヘン。ちょっと他の研究に使えないかなって思っただけなんだ」

 

 

 そんな魔王さまとの交流を終えた翌日のことであった。当たり前のように俺の外遊に同行している婚約者、レーヘンなのだが。

 彼女は俺の部屋に入ってきた途端に、眉を顰め声音を荒げた。

 

 勇者レーヘンはオコだった。

 

 彼女の勘は尋常じゃなく鋭い。

 だからこそ彼女は、俺が封印したはずの禁忌の研究の資料をいじり始めてることを理解しているのだ。

 

 詳細な設定を練り直し、実は魔族とか、妹属性がある、とか設定を書き加えた数時間後のことなのに!

 

 ほらレーヘンは幼馴染で、ワイス姫も年上じゃん?

 で、ベストールさんももちろん年上。

 となると新ヒロインは歳下一択。

 

 と言うわけで今まで周囲にいなかったであろう妹属性を前提にキャラ設定を再構築したのだ。

 

 ちなみに設定上はルーテシアの妹だ。

 

 しかし、そんな理想の女の子を産み出す研究を再開したことはバレてしまっていたのだ。

 

 もちろん俺のお嫁さんにするつもりはない。

 完全にライフズくんの為のヒロインだ。

 

 でもね、言えないのよ。

 あの子のために理想の女の子用意してあげるんだとか発言したら、俺だけじゃなく、彼まで巻き込んで好感度ダウンする。

 

 だから俺は誤魔化したわけなんだけどね。

 

 

「……でもあの女のこと考えてるじゃん」

 

 

 勇者レーヘンはいい子だ。

 激情に晒されながらも言葉を選んでいる。

 人に聞かれたら俺の風聞終わることをわかっており、だから『結局、ルーテシアなんて存在を産み出すつもりじゃん!』と言いたいところをグッと堪え、婉曲的な表現を使っているのだ。

 

 

「浮気とかそういう話じゃないんだよ」

 

「それは信じてるよ? 神官長が浮気するとかは思ってないし。ただボクはあなたが大好きだから、昔の女思い出されるとムってなるの!」

 

「……まあ、それは仕方ないよね……」

 

 

 だから俺も誠意を示し己の罪を受け入れた。

 

 

「そうだよ、結婚前なんだからさぁ、むー、ボクは怒ったからね、しっかり埋め合わせしてくれないと許さないんだからね!」

 

「わかった、沢山デートしてやるから、な?」

 

 

 

 

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