曇らせ絶対に許さない系神官の英雄譚with周囲を絶対曇らせる系女勇者   作:さらみパスタ

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聖歴0100 10月3日

 

 

 

 ルクリス王国。

 かつては、武器生産の名地として知られた土地だ。魔法の魔法国に対し、技術のルクリスと謳われた金属加工の大家である。

 

 ライフズくんが好んで使う『錬成術』はこの国発祥とされてると言われたら、納得いただけるだろう。

 

 勇者の築いた聖王国。

 古代より続く由緒正しい皇国。

 魔法技術を牽引する魔法国。

 そして技術に優れたルクリス王国。

 

 これが前時代を牽引した四大国家だ。

 

 ちなみにソルト王国がかつて所属した連邦はそれなりに大きな国だったが四大国家には劣る程度でしかなかったりするし、なんなら特に名産とかはない。

 

 それはともかく。

 皇国の姫と婚約の話も出るほどの国家は、しかし、魔王軍から攻撃された時期は他国より特別早いわけではなかった。

 

 姫騎士ワイスが音頭を取った反魔族同盟。

 その一大決戦を終えた直後。

 四天王の一人に狙われ、首都を焼け野原にされたけどね。

 

 王城にも攻撃が繰り返され。

 王は片足を失い、姫も全身大火傷を負った。

 そして地獄の撤退戦を繰り広げ。

 僻地に逃げ延び……そして、わずかな希望をもとに暫定首都に流れ着いた。

 

 そんな王国は生き残りが他の大国と比べれば多いが、領土を取り戻せた時期も遅く、復興が進んでいるわけではない。

 

 何せ技術者が他国に散らばり、そこで根付いてしまったからだ。連合王国にもルクリスの技術者が多く流れ着いており。

 幾つかの工場や工房を建設し。

 武器や兵器を製造し。

 最前線へと輸送しているし。

 

 十傑と呼ばれる政府高官の中にもこの国出身者が所属してるくらいだしね。

 

 しかし戦後、技術者の返還みたいな話は全くされず、それどころか国民を保護してくれたことへの感謝の言葉や、技術の共同開発なんてことを提案されていたりする。

 

 だから、俺がそんな国に勇者さまの結婚指輪の話を持ちかけたのは……ちょっとした恩返しみたいなとこがあった。

 

 

「ゾーニッヒさま、此方が依頼されていた婚約指輪と結婚指輪でございます」

 

「ええ、確かに受け取りました」

 

 

 そんな王国を訪れた俺を歓待するのはもちろんルクリスのロイヤルファミリーだ。

 自慢だけど俺は世界的なVIP。

 連合王国という大国の王子であり、魔王討伐を果たした一員であり……勇者レーヘンの婚約者でもあるからね。

 

 この国の王さまとは、よく社交界で顔を合わせていたんだけど。

 戦争が終わり祖国を取り戻した国王陛下はめっきり老け込んだようで。傍には陛下を支えるようにお姫さまが付き添っている。

 

 本来の皇太子は戦場で亡くなられている。

 次の王位を継ぐのは、本来ならば政治とは程遠い世界にいたお姫さまとなる。だからこういう政治の場に顔を出させているのだろう。

 後継者の育成ってやつだ。

 

 

「ゾーニッヒ殿下、改めて感謝いたします。勇者夫婦の指輪を作る栄誉を与えてくださるなんて。余の足に娘の人生を救ってくださっただけでなく、これほどのご温情をかけてくださるとは……」

 

「いえいえ、指輪と言ったらルクリス。我が母もよくそう口にしていましたし、母の結婚指輪も此方の品ですからね」

 

 

 聖王国は、聖剣守のライフズくん。

 皇国は、姫騎士ワイス。

 魔法国はバックルさん。

 

 四大国家は、それぞれ一人、勇者パーティーに人材を送り出している。

 しかしルクリスはそんなことはない。

 

 聖王国は消滅し復興もされていないが。

 皇国も魔法国も、勇者パーティーの一員が中核となって復興が進んでいる。魔王討伐を成し遂げた英雄の一人という名声は非常に大きい。

 

 だからそういうものが何一つないルクリスは大変なのだろう。

 

 だからこそ今回の依頼は国王からすれば大変ありがたい話なのだ。

 

 勇者レーヘンの結婚指輪を作った、

 それは後世に残る大仕事。

 産業の復興にはこれ以上ない支援。

 

 陛下は俺の手を握り感謝の言葉を口にしている。

 

 ちなみに俺の母親の指輪もルクリス産なのは本当だ。  

 結婚するときにちょっと奮発して購入したそうで。

 指輪についてレーヘンにも強く勧めていた。

 

 ま、オーダーメイドの品ではなく、店売りの品なんだけどね。

 

 

「お、お久しぶりです、ゾーニッヒさま」

 

「スピカ姫もお元気そうで何よりです」

 

「は、はい、ゾーニッヒさまのおかげです」

 

 

 そんな会話の最中に口を挟んだお姫さまはどうやら少し緊張してるらしい。会話の合間にいきなりそんな挨拶を口にしていた。多分てんぱっちゃったのだろう。

 

 なんていうか……その気持ちはよくわかる。俺も社交デビューの時は本当に緊張したからね。そしてそんな社交に不慣れな俺に優しくしてくれた一人がルクリス国王である。

 

 だから恩返しというわけではないけれど。

 お姫さまが安心するように、俺は優しく微笑んで。

 できる限り優しい口調で語りかける。

 

 

「それで、その、わたしとご縁があったのですね! ……そういえばゾーニッヒさまのメイスは……」

 

「ええ、ルクリスの方が作った武器です」

 

 

 それは俺のメイスもそうだ。

 これも亡命してきた技術者が持ち込んだ数打ちの品。オーダーメイドではないものの頑丈で壊れにくく、魔王との戦いの中で常に手物にあった愛用品だ。

 

 

「ああ、やはりそうでしたか。この造りをみた覚えがありましたから」

 

「不思議なご縁があるものですねぇ? 戦いの中ではこのメイスにも幾度も命を救われてきたんですよ? そう考えると俺はルクリスの方に命を救われたのかもしれませんね」

 

 

 ルクルスは武器の大家でもある。

 有名な武人は大体この国の武器を使うものだ。人類連合にもそんな戦士は沢山いる。

 

 姫騎士の武器は皇国の品。

 魔法使いさんはこだわりはなく。

 ライフズくんは錬成魔法で自力で生み出し。

 勇者レーヘンは女神が授けた聖剣を用いる。

 

 俺が特別縁があるっていうより。

 勇者パーティー他四名が一切ご縁がないって感じなんだけどね、そういう余計なことをもちろん言わず。

 俺は愛想笑いで誤魔化すのであった。

 

 

ーー聖歴0100 10月21日ーーーー

 

 

 指輪を受け取った俺はすぐに帰国し。

 一ヶ月以上をソルトで過ごしていた。

 

 一つは国王としてのお仕事の引き継ぎだ。

 

 俺は年末で連合王国国王の座を受け継ぐ。

 そのための雑務に励んでいたのである。

 

 とはいえそこまで忙しいわけではない。

 むしろかなり暇といえた。

 

 俺は父が組み上げた政治体制をそのまま引き継ぐ。優秀な官僚に政務を全て丸投げするスタイルをそのままに。

 

 それに俺もその辺の知識はないから。

 内政については俺が口を出すことはほとんどない。ソルト王室はいわゆる君臨するだけの王様でありーーだから姫騎士のように仕事に追われるなんてことはなく。

 

 外交とか、折衝とか、魔族への対応策を考えるなんてのは俺がプライベートで勝手にやってることだからね。

 

 そしてそれらは、海を挟んでいるが故に情報伝達に時間がかかる連合王国の王宮ではほとんど何もできない。

 

 つまり俺は暇だった。

 

 情勢も安定してるしね。

 

 もちろん根本的な問題はなにも解決していない。魔族過激派はライフズくんを魔王と認めず、王は先代の魔王ただ一人とか主張しているそうだ。

 

 新四天王の二人は敵対したまま。 

 在野に潜伏し、人類への反攻を目論んでいる。

 

 しかし、彼らのテロはぱったりと止んでいた。狙いを勇者レーヘンの結婚式に絞ったらしく、大規模な動きはすっかり鳴りを潜めたとはライフズくんからのリーク情報である。

 

 だから気を緩めないでください。

 そう言われたんだけどね。

 

 ずっと緊張していたら気を病んでしまう。

 ということで、魔王討伐後にようやく訪れた平穏な日々。俺はその間はずっとレーヘンのご機嫌取りに勤しんでいた。

 

 ま、俺も楽しんでいたんだけどね。

 レーヘンとのデートは……俺がかつて思い描いていた理想の女の子と過ごす日々似ていて、心が満たされていたし。

 

 恋人がいるっていうのはいいものだ。

 特にレーヘンはしっかり俺のことを支えてくれる。

 理想の女の子には届かないが。

 それでも素晴らしい交際相手といえる。

 

 だから周囲にも幸せのお裾分けをしたいところなんだけど……ライフズくんの理想のヒロイン製造計画は凍結中だ。

 

 レーヘンが本当に嫌がったからだ。

 まあ、確かに結婚前に他の女を産み出すなんてことに勤しむのは良くなかった。

 

 ライフズくんには申し訳ないが……俺の最優先は勇者さまだ。

 彼にはもう少しだけ孤独な日々を耐えてもらうことにした。

 

 ま、ライフズくんも今は暗躍する過激派との戦いが続いているようだし、そんな問題が決着した後でなければヒロインと穏やかな日々を楽しむなんてできるわけない。

 

 さて、そんなことを考えながら勇者さまとデートを繰り返していたある日のことである。

 

 

「レーヘン、俺と結婚してくれないか?」

 

「はいっ、喜んで!」

 

 

 俺は勇者さまに結婚を申し込んだ。

 デートの帰り道で通ったーー初めて出会った山道で。

 

 ま、俺たちは婚約してるし。

 結婚式まで二ヶ月を切っている。

 

 ちょっと順番は逆転しちゃったし。

 レーヘンは……意外と図太いからあまり気にしないかもしれないけど。

 求婚は然るべき手順に則るべきだ。

 

 そしてあれやこれやと問題解決に駆け回る中で、時間の隙間を縫って指輪を渡すなんてロマンの欠片もない。

 

 と、いうわけで俺は穏やかな日々の中でしっかりデートを繰り返して。そして先延ばしにされていた求婚を俺は勇者さまに申し込んだ。

 

 デートの帰り道。

 初めて彼女と出会ったあの場所で。

 

 そして、あの頃よりずっと大きくなった女の子は太陽のような笑顔を浮かべながら俺の求婚を受け入れた。

 

 

「えへへ、わかっとるじゃん神官長〜、そーだよ、大好きな人に結婚を申し込まれるのは女の子の夢なんだよね〜」

 

「そんな夢があるのになぜ先に婚約せざるを得ない状況に追い込んだのか」

 

「横から掻っ攫われるのは許せないからだよ。ほどほどのところで妥協しないとダメじゃん? 指を咥えて見てるだけで勝利は訪れないんだからさ」

 

 

 そして、冗談めかしてそんな軽口を口走るのだ。

 赤らんだ頰を誤魔化すように。

 

 

 

ーー聖歴0100 11月12日ーーーー

 

 

 俺は久しぶりに大大陸を訪問していた。

 結婚式の準備が本格的に忙しくなる中、正式に勇者パーティーの仲間たちを招待するために。直筆の招待状を持参したのだ。

 

 賢者バックルも、姫騎士ワイスも。

 参加することを即答していた。

 

 勇者パーティーは互いに確かな絆を紡いでいるけど。

 特にレーヘンは人間関係の中核だ。

 全員と仲が良く、殊更大切に思われている。

 そんな女の子が結婚するのだ、お祝いに駆けつけるのはあらゆる用事より優先されるってわけ。

 

 それはライフズくんも同じだ。

 俺が暫定首都に宿泊したその日も、ライフズくんはこっそりと俺の部屋を訪れていた。

 

 

「ライフズくん、結婚式の詳細な予定が決まったよ」

 

「……っ……」

 

 

 だから俺は情報交換をしていた。

 間違いなく魔族過激派が攻撃してくる。

 防衛のためにも、敵を撃つためにも。

 しっかりとして予定を共有する必要がある。

 

 

「……ぅぅ、あたまが、くぅ……」

 

 

 ちなみにライフズくんがずっと好きだった幼馴染と結婚することについては謝罪はしない。

 

 そんなことをしたら彼の自己嫌悪は強まるからね。別に交際してもいなかった幼馴染が他の男とくっつくなんて誰が悪い話でもない。

 

 それなのに敬愛する兄貴分に謝罪をされたらーー一歩踏み出せなかった己の情けなさに身を焦がしてしまうのが、ライフズくんという男の子だった。

 

 

「というわけで式の日程は、近親者と友人のみで行う一回目が12月27日、公的な式である二回目が1月1日、そして大大陸で行われる最後の式が1月7日に、それぞれ行われることになっている」

 

「ぅぅ、くぅ、ぅぁ」

 

 

 だから俺は説明を続けたわけなんだけど。

 ライフズくんは苦悶の声をあげている。

 BSSの苦しみは相変わらず、一切癒えていないらしい。

 

 そんな男の子に苦しませるようなことを告げなければならないのは本当に申し訳ないんだけどね。流石にこの件についてはしっかり報告する必要があるし。

 

 

「それでその一回目に出席してほしいっていうのが、レーヘンの意思なんだろうけどね、ライフズくんはどうする?」

 

「ゆ、ゆるしてください、それだけは、何卒、何卒」

 

 

 魔王になったライフズくんだが。仲間たちは誰も彼が裏切ったとは思っていない。お忍びで行われる、知り合いだけが集まる祝賀には正式なお客として招待できる。

 

 花嫁の幼馴染兼親友として。

 まあ無理に、とは言わない。

 

 レーヘンも幼馴染であり親友である男の子が来てくれたら嬉しいな、と思ってる以上はしっかり招待する必要があるけど。無理やり引きずって連れていくなんて彼女は望んでないしね。

 

 

「すみません、レーヘンに会うのはもう少しだけ時間をください……」

 

「いや謝るような話じゃないよ」

 

 

 苦悶に悶えるライフズくんに……浅い慰めの言葉をかけるのは憚られた。俺はNTRなんて苦しみを味わったことはない。脳破壊がどれだけ苦しいのか知りもしないくせに偉そうなことは言えないのだ。

 

 

「……ま、もう少し待っていてくれ。君にも心の傷を埋めるものはできるよ。きっとすぐにね」

 

「……なに言ってるんですか、神官長?」

 

 

 その傷を癒してあげたくてならないのは俺がヒーラーだからなのかもしれない。

 

 先ほど述べたが、理想の女の子の製造は現在凍結中だ。

 しかし、いずれ、必ず。

 ライフズを幸せにする女の子はやってくる。

 隣で寄り添い、支えてくれるヒロインが。

 だからもう少しだけ、耐えてくれ。脳破壊という苦しみに苛まれる男の子を前にして、俺は心の底からそう思うのだった。

 

 

ーー聖歴0100 12月27日ーーーー

 

 

 俺とレーヘンの第一回目の結婚式は、静かな教会の中で行われた。

 出席しているのは俺とレーヘンの両親。

 そして、勇者パーティーの仲間たちだ。

 

 ごく少人数で行われた結婚式。

 神の前で永遠の愛を誓い。

 レーヘンは俺の妻になった。

 

 そんな結婚式を終えて。俺とレーヘンは仲間たちと二次会に及んでいた。

 

 

「おめでとうございます、レーヘン」

 

「えへへ、うん、ありがとう!」

 

 

 求婚からずーっと浮かれっぱなしの勇者さまは、一切の憂いがなくなったかのような態度で照れている。

 

 

「おいおい、レーヘンはしゃぎ過ぎるなって。あと2回式典があるんだぞ」

 

「……まあまあ、神官長さま。これが純粋にはしゃげる最後の時間かもしれませんから、ね?」

 

 

 ちなみに結婚式は後2回行われる。

 のだが。

 そのうち3回目の式典では確実に魔族による攻撃が想定されているし。

 

 

「……一応俺も警戒に当たってるし、怪しい動きは今のところはないみたいだけど、何があるかはわからないんだ。今日だけはお堅いことを言わないでいいんじゃねぇか?」

 

「警戒についてはありがとうございます、魔法使いさん」

 

「いいのいいの、こうして役に立ててるって、すごく嬉しいことなんだよ、ゾニ坊」

 

 

 もしかしたら……2回目の結婚式でも何かしらの事件が起こるのかもしれない。

 

 小大陸に渡ろうとする魔族の摘発は相次いでいた。もし何人かの魔族を見逃していた場合ーー事件は起きる。

 

 せっかくの結婚式が祝いの席では無くなってしまう可能性もある。だから先に小規模なものを執り行ったのだ。

 

 魔法使いさんと姫騎士ワイスも、俺がどうして何度も結婚式を行おうとしてるのかの理由は理解していて。

 

 だからこそ彼らの魔族嫌悪は強まった。

 

 

「そーだ、そーだ。……あ、あなた。ボクだって人前でここまで浮つかないからね? ボクにも外聞は一応はあるんだからさ〜」

 

「お熱いことですわね、ふふ、あの頃からは信じられませんわね、幸せな結婚を見守ることができるなんて……本当に夢見たいですわ」

 

「そーだねぇ……おじさん涙が出てきた……」

 

 

 レーヘンは、二人にとってかけがえのない存在なのだ。そんな我が身を犠牲に世界を救った女の子の祝いの席をーーくだらぬ復讐心で妨害しようとする輩への敵意はますます増してしまう。

 

 そしてそれは魔族過激派、という括りではなく。

 魔族全体まで向けられている。

 

 

「えへへ、二人ともありがとうね! ボクこの人と一緒に幸せになるから!」

 

「ええ、お幸せにね、レーヘン」

 

 

 ま、せっかくの祝いの席で憎悪は見せない。

 姫騎士も魔法使いさんも、憎悪や嫌悪を胸の奥に抑え、仲間の吉事を純粋に祝っていた。

 

 

「でもライフズくんもくればよかったのにね〜」

 

「あの子は本当に忙しいからね」

 

「…………」

 

「まあ、ライフズのやつは3回目の時にはくるだろうな」

 

 

 すっかり浮かれているからだろう。

 レーヘンは一切の躊躇いなくその名前を口にした。

 

 普段の彼女は意外と周囲を見てるため、こういうタイミングで余計なことを言わないのだが……結婚したことで高揚しきり、理性のブレーキが鈍くなっているのだ。

 

 特に姫騎士ワイスは最愛の彼とは立場上、結婚できない。

 思わず黙り込んだ姫騎士をフォローするように、魔法使いさんは話題を少し変える。

 

 

「……ライフズを救えるかもしれねぇ、絶好の好機だ」

 

「ええ、魔法使いさん、打ち合わせ通りに」

 

「えー? 何するつもりなんですか⁇」

 

 

 魔法使いさんも姫さまも、ライフズくんのことを理解している。

 

 テロ組織は間違いなく、結婚式を襲撃する。

 となると彼は必ず止めにくる。

 

 ちなみにもちろんそのことはライフズくんもわかっている。この場で自分を捕えるための監獄であることなんて。

 それでも彼は来る。

 魔王として、魔族の不始末は拭わなければならない、と。

 

 もちろん最優先は過激派だ。

 人命より優先されるものはない。

 勇者パーティーメンバーはもちろんそれを理解している。

 

 つまり過激派を仕留めた直後。

 ライフズくんをワイス姫が抑え。

 魔法使いさんが他の魔族全員を相手取る。

 

 二人はどうやら細かく作戦を打ち合わせているらしい。

 

 

「内緒ですわ? 結婚式の主役は神官長さまでもありますのよ? 余計なことを考えず式を満喫してくださいまし」

 

「そうそう、ゾニ坊はレーヘンの嬢ちゃんのことだけ考えててればいいんだよ。余計なことは俺たちに任せてくれ」

 

 

 ちなみに結婚式の主役である俺には細かな作戦は教えてもらっていないため、詳細な作戦をリークすることもできない。

 

 だから俺は祈ることしかできない。

 ライフズくんが魔族過激派を打ちのめした上で、結婚式会場から無事逃げ出すことを。

 

 10日後に迫ったXデー。

 

 

「ね、ねぇ、あ、あなた、あのね、あのね」

 

「んー、どうしたレーヘン?」

 

 

 ま、今最優先するべきなのは俺の隣でモジモジしてる勇者さまなのだろうけどね。正式に結婚し夫婦になった。

 今はそのことだけを考えるべきなのだから。

 

 

 

 

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