曇らせ絶対に許さない系神官の英雄譚with周囲を絶対曇らせる系女勇者   作:さらみパスタ

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聖歴0101 10月16日

 

 

 

 勇者パーティーは現在の世界では最強の存在ではあるが……魔王戦争当時では格上は存在していた。

 

 魔界四天王という強大な魔族が。

 

 亡霊に血肉を与える四天王エットゥロ。

 勇者への復讐心に燃える少女が、仇討ちのためにそんなかつての最強を復活させようとするのは当然のことだが。

 

 その可能性は低いと見られていた。

 まず第一に、そんなことできるならさっさと手駒にしていた。

 

 テロを起こす以前、自由に活動できた時期にかつての幹部を復活させなかった=そんなことできないと見るべきである。

  

 彼女の死霊術は亡霊を自由に操るのではなく、ただ肉の器を与えるだけだ。死の恐怖や憎悪で狂った亡霊達に器を与え、闘わせる。

 

 意思を歪めることはできない。

 

 で、四天王はどうなのかって話なんだが。

 

 勇者パーティーが最初に相手にした四天王ヴェルニカは、四天王で2番目に強いと見做され、魔界最強のライバルと称されていた。

 

 戦場では聖剣の一撃で仕留められたわけだが……おそらく目で見て聖剣を避けられる一人であり。

 

 半ば初見殺しに近い形で確殺できたのは幸運なことだった。

 

 さてそんな男には娘がいた。

 それこそあのレニヒさんである。

 

 彼らの間にはしっかり家族愛があったらしく、愛した我が子を保護するライフズくんと敵対することはないそうだ。

 

 つまり、その亡霊は敵にならない。

 

 また、魔界最強と謳われたゼンネルシアも満足死していた。勇者レーヘンを讃えながら死んだ魔界最強は蘇ったとして戦いを挑むことはない。

 

 ルッデバランは空中で死んだため亡霊の元に辿り着くのは困難。

 

 ヤムルさんは俺に一騎討ちで負けた()。

 

 となり、旧四天王は勇者への報復に使えるような存在はいないということになる。

 

 では、魔王ノートはどうなのか?

 死の間際に虚を突かれたあの魔王。

 末期の姿に憎悪はなかったが……その亡霊は?

 

 

「敵が、魔王を蘇らせることはあると思うかい?」

 

 

 今回の魔族と人間の対立を起こさせる、というのは実はブラフで、実際の狙いはライフズくんの目を旧魔王城から引き剥がすこと。

 

 或いは、戦いで消耗したところを横合いから諸共魔王に攻撃させるーー的なことを計画してた可能性がないわけではないんだけどね?

 

 魔王は最強の存在だが……勇者の手で討ち取られている。ここぞという時に使う切り札的として、隠していた。

 

 

ーーなんてことはあり得るとは思わないかい?

 

 

 ま、俺はないと思ってます。

 魔王を復活させられるなら、魔王に忠誠を誓っていた新四天王は必ずそうした筈だからね。

 

 

 

「……っ……」

 

「………………」

 

 

 そんなの単なる話しの種ってだけ。唐突に始まった修羅場を先送りにするための戯言なのだ。『え〜、考え過ぎではないのか?』とか『じゃ、見てみましょうよ』とか言って軽く調査をしてみつつ、『何もなかったじゃないですか〜、考え過ぎですよ〜』なんて話で幕を閉じ。

 

 そうして俺はフェードアウトする。

 

 もしかしたら窮地に追い詰められたことで新たな力に覚醒した可能性もあるけど。そんなこといちいち想定する必要はない。

 

 ま、話してて思ったんだか、そう言えばノートの亡霊もいる筈だし……ついでに成仏させてやろう、とか思いつつ周囲の様子を観察してたんだが。

 

 

「……っ、まさか、そんな……」

 

 

 なのだが。

 ライフズくんは無言で黙り込んでいた。

 なんならギスりかけていた女性陣も俺の言葉を無言で聞いている。

 

 

「……今から魔王城を見に行きます。一緒に来てもらえますよね?」

 

 

 俺は全てを察していた。

 なんていうか……俺って結構買い被られてる節があるのだ。自慢だけど政治力はある方だよ? ある程度の軍略だってある。

 

 でも未来を観るなんてできないし。

 魔王との戦いだって基本的には出たとこ勝負でなんとかしていただけ。

 

 しかし、なんていうか……俺は全てを見通していた、みたいに考えてる人は少なからずいるらしいし。全てとは言わずともある程度は読んでいたと誤解してる人はそれ以上にいる。

 

 ライフズくんはそんな誤解勢の一人。

 俺のぽっと思い浮かんだ発言が、まるで天啓のように信じ込んでしまっていた。

 

 つまりーー魔王は復活しようとしていると。

 

 いや、そんなことないと思うけどね?

 

 ま、仕方ない。

 今回の失敗で俺も普通に間違えることがあると、理解して貰おう。俺も可愛い弟分に立派に思われたいという欲はあるけど。身の丈に合わない過大評価なんてものは流石にね。

 

 というわけで俺達は四人で魔王城に向かったのだ。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 魔王城跡地は放棄されていた。

 穏健派の人々にとって魔王ノートは怨敵だ。

 

 人間と交易していた魔族はそれなりにいて、そんな人々からすれば折角の融和や平和を台無しにした憎い敵であり。

 そんな男の本拠地を復活させよう、みたいな話は中々されないそうだ。

 

 さて、そんな魔王戦後から放棄された魔王城に、俺たちは乗り込んでいた。もちろん放置なんてされておらず、定期的に監視はされていたそうだ。

 

 魔王復活の計画を掴んでいたとかいう話ではなく、魔王のシンパがこの地を聖地扱いして集まってくることを危惧していただけなんだが……。

 

 ちなみに魔都ライフルとは近くにあるため、監視自体は結構簡単に行えてるらしい。

 

 まあともかく。

 皇国軍の軍事侵攻で、警備の兵達も皇国への対応のために駆り出されてしまい、監視業務はしばらく中断されていた。

 

 時間にすれば数日から数週間程度。

 たったそれだけ目を離していただけなのに。

 

 旧魔王城の床には無数の魔法陣が描き連ねられていた。

 

 

「……まずいぞ、まさかそれが敵の狙いだったとは」

 

「気がついたところでどうしようもありませんでしたし……今の状況はベストに近いです。焦らないでください」

 

 

 つまり俺があり得ないと一笑に付した話は決して間違いではなかった。

 

 そして警戒しつつ進んだ先。

 魔王城の玉座の間。

 

 四天王、最後の一人エットゥロの傍には、一人の魔族の男が立っていた。

 

 ……それは肉の器を纏ったナニカだった。

 亡霊ではない。

 魔力かなんかで編み出された存在か?

 

 俺も魔法についてちょっと齧ってて、あれこれ説明できるんだが。

 

 エットゥロの使う魔法、降霊術。

 その本来の効果は、死ぬ程のショックを経験したら人格が歪むに違いない→だから故人が狂った場合の人格を再現する魔法らしい。それ故に禁呪指定されたそうだが。

 

 そうして生み出された人格に肉の器を与えられたのが、あそこの魔族なのだろう。つまり初期の初期に誕生し、十三歳の少女を誘導し続けた元凶なのだろう。

 

 彼の瞳には異常な憎悪があった。

 

 

「……皇国と魔王軍の戦いを、横合いから殴りつけるつもりでしたね?」

 

「ええ、残念です。作戦は失敗に終わってしまいました。だから次善の策を取ることにします。それと陣を壊そうとするのは止めませんが……無駄ですよ?」

 

 

 そんな会話の最中も。

 ライフズくんは床の魔法陣を破壊しようと動いていた。魔王城に入って魔法陣を発見した直後から、彼は床を剣で切り、回路を歪め、魔法の発動を阻止しようと動いていたのだが。

 

 もちろん敵はそんなことは想定済。

 

 

 

「エットゥロ、やりなさい」

 

「……はい、パパ」

 

 

 残念ながら妨害に意味はなく。

 

 そして,そんな存在に命じられるままに十三歳の女の子は魔法を行使した。それと同時に彼女の身体から急速に生命エネルギーが削り取られていく。

 

 代償魔法だ。

 自己の寿命を対価に、魔法の強度を増す禁忌の技。

 

 魔王城全体が僅かに軋み。

 

 そして、魔王城の中心にて。

 一人の男がゆっくりと立ち上がっていた。

 

 

「ライフズくんにベストールさんは敵を追いなさい」

 

 

 誰もが思わず動きを止めてしまうほどの覇気を撒き散らす一人の男。

 魔王ノートの影法師は形を成した。

 

 だが、そんな魔の王の動きに隠れるように、謎の魔族と四天王エットゥロはこの場から逃げ去ろうとしていたから。俺は身を強張らせたライフズくん一同に声をかける。

 

 

「……あなたは⁈」

 

「ここは俺に任せて先にいけ。魔王を倒すよりあの子を止める方が早いだろ?」

 

 

 ゆっくりと立ち上がった魔王は、ライフズくんとベストールさんを視界に入れ……興味もなさそうに目線を外し。

 俺を強く見据えていた。

 

 その間に背後にいた誰か二人の気配が一瞬で消えた。

 ベストールさんの転移だろう。

 

 

「……変な仮装をしたところで余の眼を欺けると思ったのか? ゾーニッヒ」

 

「いいや、これは他人の目を欺くためのものなんですよね、魔王ノート」

 

 

 もちろん魔王はそんなことを気にする素振りもなく。

 以前の無言の戦闘とは異なり、俺に話しかけてきた。

 

 もしかして?

 と一瞬期待したわけなんだが……亡霊である彼は、三途の川で話した記憶なんてものは有していない。その瞳にあるのは深い敵意だけ。

 

 そして。

 

 

「……勇者レーヘンはいないようだな。まあそれなら余が現れた直後を仕留めればいい……つまり隠れてもいないわけだ」

 

 

 自分を殺せ得る唯一の存在。

 聖剣に選ばれた勇者さまの存在を探っていたのだ。

 そして彼女がいないことを理解して。

 

 

「……では死ね、ゾーニッヒ」

 

 

 一気に距離を詰めてきた魔王は、また俺の頭を叩き割らんと拳を振り下ろしてきたのだ。

 

 その剛腕は明らかに劣化しており、ギリギリ目で追える速度。

 それでも世界最強の男の拳だ。

 

 リミッター解除で全身体能力を跳ね上げた上で受け流したわけなんだが、その威力は凄まじく、腕の皮膚が肉ごと削ぎ落とされていた。

 

 ま、以前より威力は低い。

 再現度八割ってとこかな?

 しかしそれでも、かつて世界最強であった存在は強大なる力を秘めている。

 

 まともにやり合っては勝てない。

 なら、まともにやり合わなければいい。

 つまり。

 

 

「あなたの妹の病は不治の病でした。でも俺なら治せたんですよ? ……あなたが余計なことさえしなければな、治せたんだ」

 

 

 俺はメンタル攻撃をした。

 もちろん魔王はこの間も攻撃し続けてくるわけなんだけどね? 俺はひたすらに自己回復しながら魔王の攻撃をやり過ごしつつ。

 

 魔王に真実を語り続ける。

 

 

「それにあなたの暴挙のせいで、あの子はずっと苦しみ続けた。泣き顔を見たことがなかったとは言わせませんよ、止めてと懇願されたこともあった筈だ。だから病の進行は早く進んだ」

 

 

 ぱっと見ボロボロだが、割となんとかなっている。

 だから俺は言葉を紡いでいた。

 本人相手には絶対に言えない、そんな秘密を俺は遠慮なしにぶちまけていく。

 

 

「ノート、あなたはなんで止まらなかったのですか? 妹のための復讐だったんでしょうに……なぜその妹を苦しめたんですか? なぜあの子の生きようとする気力を奪ったのです? 復讐というならば、あなたは自分の身を断ち切るべきでしょう」

 

 

 でも亡霊なんてものは本人ではない。

 死を経験して捻じ曲がった影法師。

 

 

「それがどうした! 余の復讐は何より優先されるに決まっている!」

 

「……哀れですね……昔のあなたならそんなこと絶対に言わなかったでしょうに」

 

 

 三途の川で話した魔王なら。

 

 本人ならば手が止まった。

 本人ならば顧みた。

 後悔し反省だってしていた。

 

 でも今目の前にいるのはそうではない。

 死ぬ瞬間に生じた故人の残滓。

 彼は一切悪びれることなく、そう言い切った。

 

 

「さて、おしゃべりは終わりでいいか、ゾーニッヒ。お前はもう死ね」

 

 

 表情ひとつ変えることなく、傲慢な態度を浮かべた魔王は、そして一気に肉薄してきた。

 使う技はーー以前と同じだ。

 幾度となく俺の身体を削り取ってきた拳には、俺の血がべっとりとこびりついていた。

 

 亡霊は生きた本人ではない。

 ただの残留思念に過ぎないのだ。

 

 

「すみません、言いたいことを吐き捨てました……もういいです」

 

「……ぐぁっ……」

 

 

 放たれた鉄拳は俺を貫くことはなく。

 逆に、俺のカウンターは最も容易く魔王の身体に着弾していた。

 

 

「……紛れ当たりか? 調子に乗るなよ!」

 

「…………」

 

 

 魔王相手ならこんなことできなかった。

 

 今の彼は、腕力はともかく、千の技術は消え失せているに等しい。いや、確かに磨き抜かれた技は使ってくるんだが……技の動きが同じなのだ。

 

 攻撃速度、タイミング。

 着弾部位に至るまでが、全く同じ。

 

 俺だって同じ攻撃を何度も何度も繰り返されたら覚えるのよ。

 一応メイスの腕前も世界屈指だし?

 

 ちなみに全盛期の魔王は、間合いを伸ばすとか、攻撃タイミングを一瞬ずらすなんてことを当たり前のように行なっていたし。

 

 そこに視認できぬ速度と一撃必殺の剛腕。

 さらに恐らくだが的確なカウンター返しの技術まで所持していた。

 

 だから俺はオモチャのようにボコボコにされてたわけで。

 

 そういうのがないなら幾らでも対応可能。

 

 

「……あなたの動きはすべて見切りました。もう苦しむだけでしょう、抵抗はやめてください」

 

「ほざけよ、人間風情が!」

 

 

 つまり、俺はボコボコにされつつ自己回復で耐え凌ぎつつ、魔王の攻撃の全てを見切っていた。

 

 だからもう当たらない。

 俺は敵の攻撃を尽くを回避しつつ、カウンターを叩き込み続ける。

 

 正拳突きを半身でかわし、敵の攻撃の勢いを活かすように、加速した魔王ーーその顎先の前にメイスの柄頭を置いて。

 

 鞭のようにしなるミドルキックを、いなしつつ前進し、無防備に晒された顔面をメイスで撃ち抜く。

 

 それはほとんど作業だった。

 リスクは取らない、リミッター解除なんてことはせず敵の力を活かす技で魔王にダメージを与えていき。

 

 そうして前半とは真逆。

 一方的な猛攻を前にして、ついに魔王は倒れた。

 

 その姿は煙のように消えていた。

 

 腕力の再現はよくできていたからね。

 だからこそカモにできたとも言える。

 

 

「……すごい……魔王を圧倒するなんて……これが聖王の本当の力……」

 

「本人はもっと強かったですよ」

 

 

 ちなみにこの場にはもう一人いたわけなんだけどね? 四天王の紅一点さんは……残念ながら弱体化した魔王の偽物相手でも足手纏いなので何もしないでもらっていたわけなんだが。

 

 ……というか、紅一点さんは俺の素顔に全く動じていないので、これは普通に正体バレてましたね……。

 

 

「でも怪我は大丈夫なの? 序盤は結構派手にやられてたみたいだけど……」

 

「ええ、治しましたからね」

 

 

 ……ま、余裕はそこそこあった。

 相性が良かったんだよね。

 

 魔王の腕力は常人なら当たっただけで死ぬ威力だ。そこを回復できる俺だからこそ、技を見切るまで耐え凌げたわけだし。

 

 

「……怖くないんですか?」

 

「何言ってんのよ、バカじゃないの? あんたはその気になればあたし達を殺して回れた。でもそうしなかった男の何が怖いのよ」

 

「……ライフズくんが絆された理由がわかりますよ、あなた達は心が綺麗なんですね」

 

 

 ともかく、確かに俺は魔王の亡霊を後半は一方的にボコボコにしていた。一応俺は自分の姿を客観的に見れるんだが……そんな姿は結構怖い。

 

 なのに、紅一点さんの顔に恐怖の色は僅かだって存在していない。今も怪我をした俺が心配で本当に大丈夫なのかなぁとか考えてるくらいだからね。

 

 

「…………」

 

「すみません、顔を隠すものを持ってませんか? 流石に変装しないといけませんから」

 

 

ーーーーーー

 

 

 というわけで俺と紅一点さんは、そのままライフズくん達の元に向かっていた。

 魔王戦はそれほど時間が必要だったわけではないんだけど……どうやら追いかけた先でも派手な戦いがあったらしい。

 

 

「……キサマは、まさか魔王は破れたのか⁈」

 

「ええ、また蘇らせるなら待ちましょうか? 何度やろうと結果は同じだと思いますけどね」

 

「エットゥロ、再び魔王を呼び出しなさい」

 

「え? で、でも、パパっ」

 

 

 今回の事件の首謀者。

 それは四天王エットゥロではなく。

 彼女が最初に蘇生させた義父である魔族ーーの再現人格だ。

 自分の復讐をさせるため、娘を利用していた。

 

 

「だから言ったじゃろう、其奴はお主の父君ではない、子どもの輝かしい未来を奪ってまで、復讐を願う親がいると思うのか⁈」

 

「……っ……」

 

 

 戦いの痕跡が残る部屋の中。

 

 ベストールさんは激昂したように叫んでいる。我が子のために己の身を捧げようとした母親にとって、敵の行動は絶対に許容できるものではないのだ。

 

 

「何をやっている、やりなさい、わたしの仇を取ると誓ったのでしょう」

 

「あやつの声でそんな戯言を抜かすな!」

 

「降霊術は本人を蘇らせる魔法じゃないんだよ、そこにいるのは魔導回路が再現した悪質な偽物なんだ」

 

 

 もしかしたら……ベストールさんの知り合いだったのかもしれない。娘想いの父親が、娘の人生を台無しにしてまで復讐を望むわけがないのに。

 そんな存在が、あり得ぬ戯言をほざいているのだ。

 知り合いだからこそ許せない。

 強い怒りが湧く気持ちを、俺もよくわかる。

 

 

「わたしの仇を取りなさい、勇者を殺しなさい、育てて貰った恩を忘れたのか?」

 

「でもパパっ、わたし、もう、こんなこと!」

 

 

 まして、本人はもうやめたがっていた。

 代償魔法の対価は治らないと思われているし。魔王の再現のために十三歳の女の子の寿命は相当すり減っているからね。

 

 とりあえずあの魔族をさっさと倒して治療してあげないとね。

 

 というわけで最終決戦、と呼ぶにはあまりに矮小な戦いはそうして始まり、そしてすぐ終わった。

 

 敵はそんなに強いわけではなかったから、割と秒殺で倒せた。ライフズくんの剣戟で普通に倒されたし。

 

 エットゥロちゃんも明らかに迷いがあった。

 パパはそんなこと言わないと、正しく理解してたのだろう。

 

 ろくに抵抗もせず。

 ただ静かに項垂れていたのだった。

 もしかしたら『代償』を払ったことが怖くなってしまったのかもしれない。まだ13歳の女の子だからね。

 というわけで俺はまず、寿命の補填を行い。

 彼女の恐怖を取り除くのであった。

 

 

 

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