今日も胸がいっぱい、や!   作:つヴぁるnet

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天使ィ!!!!!!

 

 

 

エデンの情報の通りなら、黒塗りのアリスは天使の精素が通じなかったと言う話。

 

これが最初の情報。

 

だから純粋な物理攻撃、または格闘戦を主軸とする必要がある、そう情報交換した。

 

そして天使特有の聖属性が効かない。

 

最初は何故そうなっていたのか最初は分からなかったが、黒塗りのアリスと戦闘になり、後に判明した情報として、黒塗りのアリスには全属性が効かないという初見殺しな内容を知った。

 

全属性無効化__それは神に寵愛されるか、もしくは己自身が神となるかで備わるこの世のアビリティ。

 

黒塗りのアリスは混沌の神から地肉を与えられた者として寵愛されていたため、全属性を無効化する能力があった。これによってしばらくエデンとルミエは苦戦を強いられた。

 

ではその全属性無効化をどう突破するか?

 

結論から言えば【混沌属性】を使う事で通常属性の枠組みを凌駕すれば、全属性無効化能力を突破してダメージを与えることが可能だとエデンから聞いた。

 

しかし混沌属性という力を扱える者は基本的に存在しないと言われている。何せ、混沌属性を操ると言うのは神の存在に喧嘩を売るような力であり、または神を超えることも可能だから。

 

だから封印職というのが存在する。

 

その封印職の中には混沌属性を操れる最上級職を超えた職業があり、それを考えた女神イリアスが神を超えさせまいとして封印した。

 

だから封印職という。

 

故に、封印された強さを扱う者は基本的にこの世を存在しない。

 

そう考えるのが普通だ。

 

 

でも、女神イリアスと並列するほどの力を持った者を俺は二人知っていた。

 

それは原初の天使姉妹。

名は、ミカエラとルシフィナ。

 

封印職とやらが作られる前から存在するこの世で最上位の生物であり、聖魔大戦時代を戦い抜いた太古の猛者だ。

 

この二人なら恐らくは扱えるだろういう信頼感が俺の中にあり、それは先ほど証明された。

 

ルシフィナが黒塗りのアリスのアビリティを突破していた。

 

 

___突破口はある。

 

そう状況を捉えていた。

 

そう、捉えていたのに____ああ、なぜ?

 

 

空で戦っている黒塗りのアリスにルシフィナの攻撃が効かないんだろうか???

 

 

 

「混沌だから、ですか…」

 

「エデン…!?か、体は…?」

 

「かなり、結構、辛いですね……今にも体が千切れそうな感覚です。これが精製された存在を否定されるって事でしょうか、ぐっ…」

 

 

天使は胎から産まれるのではなく、集めた聖素に血肉を与えられて誕生する。

 

そのため体内に構成されている聖素群が分解され、感覚的に千切れると言うのだろう。

 

なんとも惨い事か。

 

天使を象徴するエデンの羽が一枚ずつ爛れて地面に落ちている。もちろん他の天使も天使の羽がボロボロになって一枚ずつ落ちていた。

 

 

「黒塗りのアリスは神として昇格しました。しかも混沌の神です。まだ誕生したばかりの幼体ですが、しかし混沌の二文字を備えてる事実に変わりない。その外側は混沌の概念によって守られています…」

 

「だからルシフィナの攻撃が効かなくなってしまったのか!?寵愛された扱いでも無く、俺たちの感覚で思う普通の神でも無く、アレが混沌という概念だから!?」

 

「ええ、そうです。混沌属性という突破口を著しく奪われました。そのため残された手段としては純粋な物理戦闘のみ…ですが、それも否定されています…げっほ!」

 

「っ!まさか、エンジェルハイロゥか!!」

 

 

上空で黒塗りのアリスと戦っているミカエラさんとルシフィナに視線を移す。

 

そこには混沌属性の魔法や攻撃を加えて戦う姿が見られるが、しかし混沌の神として昇格した黒塗りのアリスに有効打を見出せていない。

 

だからエデンの言う通り純粋な肉弾戦に持ち込んでいる二人だが、しかしそれすらも有効打として叩き出せてない。

 

ミカエラさんとルシフィナは堕天した。

 

故に全盛期から遠く離れた。

 

しかしそれでも人間視点からすれば軽く200倍以上の強さを見せてくれるし、聖魔大戦時代を生き抜いた経験が生ままれて数年程度の黒塗りのアリスを凌駕する。

 

あのエデンやルミエが見劣りするレベルだ。

 

原初の天使の名は伊達じゃない。

 

なのでどう見ても二人は比較的互角に戦えていた。

 

ただ、攻撃がとことん通じていない。

 

純粋な()()()()()()()()()のに。

 

 

 

「黒塗りのアリスによって生み出されたエンジェルハイロゥ…天使の何もかもを否定する。ならば天使から与えれる攻撃も例外ではない。だからミカエラ姉さんとルシフィナ姉さんの攻撃も天使だから通じないとされている。もしあのシステムを突破するなら管理者権限を無視してエンジェルハイロゥを破壊するか、もしくはこの大陸から黒塗りのアリスを叩き出してエンジェルハイロゥの影響下から抜けるかをしなければ黒塗りのアリスに勝ち目はありません…」

 

「でも、その前に黒塗りのアリスを外に叩き出すための天使の力が通じないなら…」

 

「黒塗りのアリス本人を倒すしか方法がありません。そもそもエンジェルハイロゥは黒塗りのアリスを倒さなければ解除されない。神の意思によってシステムが切り替わる。だからアレは視覚化されただけ。私達は所存、外側の駒とでしか力を振るえないモノ…ごっほっ!!」

 

「っ!!」

 

 

 

 

どう、すれば???

 

どう、したら良い??

 

 

 

「ルミエ、どうしたら良いと思う??」

 

「エリーカ…」

 

「このままじゃ、天使達が…」

 

「それは…」

 

 

 

俺は何を言っているんだ。

 

熾天使のエデンがお手上げなのに、その下の智天使のルミエに聞いて分かるわけがない。

 

彼女はあくまで戦闘天使だ。

 

俺は、何を縋ってこんなことを言う??

 

 

 

 

「方法は、ある…」

 

 

「「!?」」

 

 

 

しかし、ルミエは言った。

 

だが、その言葉を出し辛そうにする。

 

 

 

「ルミエ、なにか、方法が…??」

 

「………っ」

 

 

エデンの言葉で更に顔を辛く顰める。

 

でもその反応が出来るというのなら、苦渋の先にあるのだろう、手段が。

 

 

「エリーカ、だ…」

 

「え?」

 

「エリーカは【人間】だ……ならば、そのシステムを突破できる、筈だ…」

 

「!!」

 

 

 

そうだ。

 

そう言えば。

 

俺だけは人間としてこの場にいる。

 

エリーカ・エコーズだけ天使じゃない。

 

 

「黒塗りのアリスを倒せなくても、打撃の一つを与えれるなら未熟な管理者はエンジェルハイロゥのシステムに障害を与えれる筈です。そうして僅かな隙が生まれれば…」

 

「その瞬間にミカエラ姉さんとルシフィナ姉さんから有効打を入れてもらい、黒塗りのアリスを叩き崩すなり、もしくはこの大陸から弾くなりしてエンジェルハイロゥを突破する、そう言う事ですね?」

 

「はい……ですが、エリーカにその役割は…」

 

 

 

「やるよ、ルミエ」

 

 

 

「「!!」」

 

 

 

背中からジャスティスカスタムをカチャリと揺らす事で意思表示する。

 

 

 

「それしかないなら、それをやるしかない」

 

「だがっ!!エリーカっ!!」

 

「人間如きが介入する天使の領域…ああ、言わずもがな危険は承知。もしかしたら死ぬかもしれない。わかっているさ」

 

「だ、だったら…!」

 

「でもミカエラさんとルシフィナを、それからここにいる天使達…あとルミエ。この瞬間をなんとか出来るのは恐らく俺しかいない」

 

「っ……」

 

「……なぁ、ルミエ」

 

 

俺はルミエの頭に手を置く。

顔を上げる彼女。

その眼には無力感が伺えている。

でも俺は彼女を無力だとは思わない。

ここまで紡げたのは彼女のお陰だから。

 

 

「今も、昔も、変わらない。命を賭けて天使のためにこの歩みを続けてきた。今回もそれが続いてるだけ」

 

「エリーカ…」

 

「俺はやるよ。この瞬間も天使を助けたい。だからルミエ、この俺を護ってくれ。天使を助けたいと言う俺の気持ちをルミエが護ってくれ」

 

「っ!!………ズル、ぞ……エリーカ…そんな風に求められたら、私はこの役割を偽られないじゃないかっ…!永久までに、エリーカの全てを護りたいと思う、ルミエの名を授かった私がエリーカの気持ちを…っ!」

 

「ああ。よく言われるよ。沢山の天使からエリーカはズルい、ってさ。だから今回も同じ。それがたまたま危険率が著しくバカ高い始末になっただけ。でも不安はないよ?エリーカとしてここまで織りなしてきた天使との追憶がやり切れると心を激らせる。だからルミエ」

 

「………ああ、分かった」

 

「……二人とも、話は決まったようですね」

 

 

そう言ったエデンはブリューナクを支えに体をガタガタと震わせながら立ち上がる。

 

 

「作戦を決めました。手順は至って簡単です。ルミエは私のブリューナクにエリーカを紐付けで移動魔法を付与しなさい。私はそのブリューナクを黒塗りのアリスの元に投擲します。そのブリューナクが黒塗りのアリスの喉元までたどり着いたらルミエはエリーカに移動魔法を使って瞬間移動させ、そして…」

 

「俺が一撃を加える、だな?」

 

「はい。ただし聖素は抜きに。聖属性とし扱われてしまいます。なので身体強化のみに抑えておきなさい。それからコレをどうぞ…」

 

「これは?」

 

「属性を抑えるための布です。先ほどブリューナクの先端に巻いて黒塗りのアリスを攻撃しましたが、私自身の聖素濃度が高すぎて効き目がありませんでした。ですがエリーカほどの聖素濃度ならば…」

 

「なら木刀に巻いてコレで打ち込もう。ジャスティスカスタムで だと他属性に極まりすぎているから、使うならエンリカで加工したコイツで…」

 

「……まさか、ただの木の枝が打開策の一つになるとは、このエデンの目を持ってしても…」

 

 

俺は木刀の刃の部部にエデンから受け取った布をグルグル巻きにし、僅かにあった筈の斬撃性を無くす。ただの棒切れだ。これを幼子相手に思いっきり叩きつけて怯ませる。普通ならやりたくないな。

 

 

 

「エリーカ、この作戦が通じるのは最初で最後でしょう。なのでチャンスは一度きり…覚悟は良いですね?」

 

「それなら心配無い。俺はフィサリス演劇団の団員だぞ?演劇団の公演は失敗ご遠慮な一度きりの勝負なんだ。その程度慣れっこだ!」

 

「ふふっ、頼もしいですね…ええ、私もこの体で実行するのはこの一度きりになりそうです。ならばお互いに失敗はできませんね」

 

「智天使と熾天使がバックアップだぞ。これほど頼もしい味方は無い。今この瞬間に不安なんかあるものか!」

 

 

 

もちろん、怖いさ。

 

少しタイミングを間違えば死ぬかもしれない。

 

でも俺が本当に怖いのは、俺が何もできなくて天使達が蹂躙されてしまうそんな結末。

 

ミカエラさんも、ルシフィナも、いつまでもあんな反則行為を抑えれてられない。

 

誰かが、反則行為に割り込むしか無い。

 

それが俺なだけ。

 

 

 

「___ハインリヒ、俺はやるからな」

 

 

 

声は返ってこない。

 

失意の中にいるのか、それともエンジェルハイロゥが悪さをして魂が届かなくなったのか。

 

でも彼から黒塗りのアリスを__ハインリヒの娘を討つ許可を貰う暇も、選択もない。

 

もう、ああなったのなら…

 

 

 

 

正直、諦めたくは無い。

 

まだ可能なら、父と子に戻したい。

 

そうして安らかに眠って欲しい。

 

エコーズとしてそう願わずにいられない。

 

 

でも手段が、無い。

 

だから、これしかない。

これを、やるしかない。

 

 

 

 

「二人に念話で伝えました。エリーカ」

 

「ああ!」

 

 

 

俺は布の巻かれた木刀を構える。

 

ブリューナクから紐付けされて移動魔法で投げ出されてもすぐに攻撃に移せるように…

 

 

「すぅぅぅ………ッッぅォォォォオ!!!」

 

 

全身から聖素を引き出す。

 

もちろん黒塗りのアリスに属性攻撃は通用しないのは充分承知だ。なので引き出した聖素は身体強化に回して渾身の一撃にする。けれど放つ一撃は憧れから始まったあのやり方でやる。

 

 

黒塗りのアリスを見据えようと空を見上げればミカエラさんは地上に俺たちに驚いてようは表情を見せ、同時に心配そうな目をしている。

 

けれど手段をこれしかないとしてミカエラさんは黒塗りのアリスに作戦を悟られないよう瞬時に戦闘に戻り、ルシフィナは変わらず黒塗りのアリスと攻防を続けている。

 

 

 

「いけ!ブリューナク!」

 

 

激闘にて額から流れる血と、エンジェルハイロゥによってボロボロになった体に鞭打ってエデンは渾身の投擲、ブリューナクは風を貫くように黒塗りのアリスの元まで突き進む。

 

 

「?」

 

 

それに対して黒塗りのアリスはブリューナクを一度だけ視線を移して、しかし天使の攻撃如きに傷など入らないとして無視をする。

 

そして、それはその通りになった。

 

黒塗りのアリスに当たる数センチのところでブリューナクは弾かれた。

 

 

 

「エリーカ!」

 

 

 

ルミエの声。

 

俺は意識を合わせる。

 

そして、移動魔法___背景が変わった。

 

俺は、黒塗りのアリスの真上にいた。

 

 

 

「ッ!!??」

 

 

ブリューナクの援護攻撃を弾いた黒塗りのアリスはミカエラさん達に視線を戻していたが、突如現れた俺の気配を感じた事で驚く。

 

 

しかし、既に遅し。

 

俺は渾身を込めて黒塗りのアリスに木刀を振り下ろした!!

 

 

 

天軍(あまくさ)(つるぎ)ィィィ!!

 

 

 

幼子に振り下ろす一撃と考えたら心が痛くて仕方ない。しかし混沌の神となった存在に対して人間の精一杯をミリとも逃さずに注ぎ込まなければ届かない。だから俺は全身全霊を賭けて死地に抗う。

 

 

 

「ガァァ!!?」

 

 

 

ガツン!!と黒塗りのアリスの背首に木刀を打ち込んだ。

 

 

 

「手応え有り…!!」

 

 

 

強度が足りずに砕けた木刀。

 

しかしそれほどの威力を込めた証明。

 

するとエンジェルハイロゥに乱れが生じる。

 

それを証拠に、輪になって駆けていた黒兎が何匹か粒子となって消えた。

 

やはり管理者を叩くことが正しい!!

 

 

 

「今よ!喰らいなさい!」

「うふふふふっ!」

 

 

ほんの数秒だけの隙。

 

それを逃さないとミカエラさんは騎士剣を黒塗りのアリスを叩き斬り、ルシフィナは回避先を奪うように弓矢を打ち込んで追加でダメージを与える。

 

 

 

「グァァァア!!!」

 

 

 

ミカエラさんの一撃で叩きつけられた黒塗りのアリスは地面に落下し、雪煙を舞った。

 

 

 

「って、そういや俺も落ちるのかぁ!?」

 

 

対して俺も飛行手段が無く、このまま落ちそうになるが、それをスポンっとお姫様抱っこで誰かに受け止められた。ルシフィナだ。

 

 

「うふふっ、中々やるわね、エリーカ」

 

「よくやったわね、エリーカ」

 

「はい!勇者として意地を見せました!」

 

 

ルシフィナが回避先に矢を置いて黒塗りのアリスを制限し、その間にミカエラさんが渾身の一撃を振り下ろした。かなりのダメージになっているはず。それを確かめるべくルシフィナはミカエラさんと合流しながら地上に降りる。

 

 

「ぐ、ガゥ、ぅゥあ…」

 

 

システムを超えてダメージを与えられた黒塗りのアリスは膝をついて震わせる。

 

ただの通常攻撃とは言え、隙だらけな場所に天軍長の渾身の一撃が入ったのだ。

 

いくら混沌の神でも無傷なものか。

 

 

 

「人間のエリーカから攻撃すれば後の天使でも効き目はあるみたいね。エリーカ、もう一度貴方から攻撃を打ち込んで。次は絶命させるわ」

 

 

ミカエラさんは騎士剣を光らせる。

 

有効手段は見出せた。

 

しかし…俺は一度、手で静止した。

 

 

 

「ミカエラさん。少し待って頂けませんか?まだ…」

 

「エリーカ…?」

 

「まだ…諦めて良いと思えないんです。まだあの子は父の娘として届く気がして…」

 

「!、エリーカ…」

 

 

 

俺は少しだけ上を見上げて、探る。

 

まだ居るだろう彼に意識を繋げる。

 

 

 

「ハインリヒ、聞こえるか?」

 

 

今日の俺は思った以上に諦めが悪い。

 

だから、もう一度だけ声を掛ける。

 

しかしこれで彼が何もできないなら、もう討つという選択しか、この場にない。

 

俺は俺として天使達を守りたい。

 

でも父が娘を守り、同時に俺が天使を守れる明日が来る、そんな欲張りが許されるなら、俺は強欲に極まった愚か者で構わない。

 

 

 

そして…

 

 

 

 

『聞こえて……いるよ………エリーカ』

 

 

 

勇者であることも忘れ、父親にもなれなかった青年の声は、失意の中に溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕達は____幸せだった。

 

 

 

 

 

『ハインリヒ、愛してますわ』

 

『僕もだよ、アリス。君を愛している』

 

 

 

 

この愛が禁忌であるならば、女神の祝福はとても窮屈だ。でも僕は女神から祝福を受けていない偽物勇者だ。なら一人の魔王を愛してしまった程度なんて事ない筈だ。

 

 

 

『アリス、出かけてくるよ』

 

『またですの?』

 

『招待されているからね。でもレミナに少し顔を出すだけだよ。すぐに戻ってくるさ』

 

『そうですか。ではお腹の子供と一緒に貴方の帰りを待っていますわ』

 

『分かったよ。では行って来る……え?お、お腹に、子供?』

 

『うふふふっ、ええ、聞き間違いではありませんわ、ハインリヒ。このお腹の中にいますわ。貴方と私との結晶が』

 

『っ!?…そ、そうなのかい!?ほ、本当かい!?本当の本当なのかい!?アリス!!』

 

『ふふふっ、そうなんどもおっしゃらなくても本当ですわよハインリヒ』

 

『そ、そうか!そうなんだね!こ、子供、なんだよね!?あ、あ、あははは!そうか!そうなんだ!僕とアリスの子供が!!』

 

『ええ。だから早めに戻ってきてください。このお腹の子の名前も考えなければなりませんから』

 

『あははは!うん、そうだけ!それなら早く戻って来ないとだね!行先で考えておくよ!僕達の子供の名前を!!』

 

 

 

 

勇者としての務めを果たしいてた旅の中でお世話になった人達がいる。だから招待状が届けば顔を出しに僕は良く街中に赴く。そして終われば帰る家がある。僕の愛する者とそのお腹の中にいる僕達の子供が待っているから___

 

 

 

 

 

 

 

 

ザァー、ザァー

 

ザァー、ザァー

 

 

 

 

 

 

 

 

『……………………』

 

 

 

 

 

待っていた、筈だった…

 

それでもザァー、ザァー、と耳障る。

 

降り付ける雨が夢じゃないぞ、と頬を叩く。

 

 

 

 

 

『ぁ……ぁぁ……ぁぁぁ…ァァァァ!

 

 

 

 

 

その骸は直視するに残酷過ぎて、とてつもない喪失感は心を蝕んで、これまで感じた事ない負の感情が腹の底で芽生えてくる。

 

 

 

 

 

そこから記憶は無かった。

 

ただ___憎しみのみが僕を動かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 子供が。

 

 

 

 

 僕の子供が。

 

 

 

 

 アリスとの子供が。

 

 

 

 

 生まれる事もなく死んでしまった。

 

 

 

 

 そこに名前を与えれることもなく終えた。

 

 

 

 

 500年も碑として隣にいたのに声も何も語りかけることは出来ない僕は父親失格だ。

 

 

 

 

 その産声も聞いたことないんだから。

 

 

 

 

 だから生まれる子供の何もかもを知らない。

 

 

 

 

 

ただ…

ただ…

 

 

 

 

 

___天使ィィィィ!!!

___殺す!殺殺スス殺ッッ!!

___殺シ尽くしてヤルゥゥ!!!

 

 

 

黒塗りのアリスとして誕生して____

 

そこに神座する者として____

 

悲しい殺戮者として___

 

そう姿を堕とした。

 

 

 

 

子供では、もう無くなったんだ…

 

子供では……

 

 

 

 

 

 

 

 

  いえ、あの子は私達の子供ですわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

声が聞こえた。

 

 

 

 

 

「ぇ…」

 

 

 

 

 

最初は聞き間違いかと、思った。

 

とても都合の良い夢が、苦しむ僕を逃がそうとしているのではと脳が否定してしまう。

 

 

でも、心はその声を鮮明に覚えている。

 

聞き間違いでは無い。

 

 

そう思い、立ち上がる…が、しかし、力の入ってない足腰が僕を後ろに倒れ込ませようとして。

 

 

__トンっ、と。

 

誰かと背中合わせになった。

 

 

 

 

___ハインリヒ

 

 

 

よろける僕を『彼女』が背中で支える。

 

 

 

 

「……君は、いつも、いつの間にか、だった」

 

 

 

 

500年前を思い出すように僕は言う。

 

そうすれば…

 

 

 

「__ええ、コスプレごっこは好きなので。忍者や狩人も少しは嗜みましたわ。だから不器用な貴方に変わっていつの間にかは私の特権。そうでしょ?ハインリヒ」

 

 

 

そしたら愉快そうにアリスは返す。

 

まるでこの瞬間も、大好きなお茶会で会話を楽しむように、彼女はコロコロと笑って返す。

 

 

 

「アリス、僕は…」

 

「ハインリヒ、顔を上げてください。過ぎたことは悔やんでも仕方ありませんわ。でも今はまだ貴方なら届くこともあります。それとも私と貴方の愛の結晶を他所からやって来た別の私のイタズラに屈して、娘を諦めてしまうのですか?」

 

「そんなことは…」

 

「なら意地でも、泥まみれでも、貴方は勇者だった事に偽りなくそうする。それが私の知っているハインリヒですわ」

 

「…まだ君は、こんな僕を勇者と言うんだね」

 

「ええ。だって貴方は私の愛する勇者。お茶会のお紅茶が数分で酸化しようとも、貴方が勇者であることは何百年経とうとも変わりない。それが偽物勇者だとしても、ハインリヒの跡地は勇気ある者として織り成した、私はそれをよく知ってますわ」

 

 

背中合わせのまま彼女に全てを預けたくなる。

 

疲れた時、いつもこうして彼女が僕を献身に支えてくれていた。

 

それが魔王として僕の前に現れる瞬間まで、彼女は勇者を支える魔法使いアリストロメリアとして僕の近くで偽りなかった。

 

 

 

「ハインリヒ、貴方の光を継ぐ勇者がそこで待っています。父と子が共にいる平和を望んでいるこの時代の勇者が願っているわ。だから先駆者ある貴方だって…」

 

 

 

ギュ…と、背中合わせからいつの間にか、彼女に後ろから抱きしめられていた。

 

彼女の可憐な腕だけが見える。

 

……僅かに、震えを感じて。

 

 

 

「……アリス」

 

 

 

僕はその手のひらに手を重ねて熱を感じる。

 

冷たかった僕の手に比べて、未だに熱く。

 

彼女は500年の想いを絶やすことなく。

 

 

 

「___君が望む、僕をしてくる」

 

「ええ」

 

 

 

いつまでも想ってくれる愛するべき女性を前に男廃れる訳にいかない。

 

だから僕は心にもう一度、光を灯す。

 

 

 

「___勇者として務め果たしてくる」

 

「ええ」

 

 

 

重ねた手が熱くなる。

 

重たい呼吸が軽くなる。

 

心臓が、求めて仕方なくなる。

 

 

 

「__父親としての意味を果たしてくるっ!」

 

「……ええ、っ!」

 

 

 

ギュと、抱かれた腕が強まる。

 

僅かな震えはもう感じられない。

 

足元から光が広がる。

 

僕の心に反映するかのように、白染まりに。

 

 

 

 

「ありがとう、僕のアリス」

 

「どういたしまして、私のハインリヒ」

 

 

 

 

 

 

 

 

___聞こえるか!ハインリヒ!

 

 

 

 

 

 

もう迷わない。

 

僕はやるべことを果たす。

 

 

 

 

『聞こえているよ』

 

 

 

「!」

 

 

 

 

待っている彼と意識を繋いで、また現れる。

 

 

 

 

『僕も、君のように欲張りたいんだ!』

 

「!」

 

 

勇者でもあり、父親でもありたい。

 

つぎはぎだらけだった僕はまだ欲しがる。

 

何もかもを諦めたくないから…!!

 

 

 

「やっと来たわねぇ、もう一人の勇者が」

 

『ルシフィナ…!っ、その…先ほどは本当に申し訳ない。せっかく身体を張ってくれて…』

 

「あの程度なんてことないわ。でも私が許せないのは愚か者として中途半端なことよ。ココにはエリーカもいるわ。なら勇者だった貴方として果たし尽くしなさい。ハインリヒ」

 

「ッ、もちろんだ…!僕は娘を諦めれない!アリスと育んだ禁忌は何処までも僕たちだけのモノなんだから!」

 

「ええ…ええ、それで良いわ。でなければあなたは天界に反旗を翻すことも無かった人間よ。なら何処までも愚か者でいなさい。そしてそれすらも素敵だと誇りなさい。そこにいる生意気エリーカのように」

 

「やかましいぞ、生意気ルシフィナ」

 

「うふふふっ」

 

 

原初の天使を相手に軽口で返すエリーカ。

 

そうか、これが彼にとっての普通。

 

なら魔王と共にいる僕程度、なんてことないじゃないか。ココにはそれ以上が居てくれる。

 

 

『エリーカ、もう一度だけ僕にチャンスを与えてほしい。娘を取り戻したい…!混沌の神として黒塗りで染まるのではなく、ただ僕の娘でいてほしいから!』

 

「ッ、ああ!それが聞きたかった!それを俺は聞きたかったぞハインリヒ!」

 

 

 

エリーカは自分のように喜んでくれる。

 

そうでなくては正しくないと。

 

そうでなければ愚か者として誇れないと。

 

 

 

「しかし声を届かせる。それは可能かしら?」

 

「大丈夫よ、できるわ姉さん。良くも悪くも今の黒塗りのアリスは殺戮衝動の中に理性が芽生えている状態よ。なら声は届くわ。それが父親の声なら尚更届かなくてはおかしいわ。それに…」

 

「?」

 

「貴方の愛弟子が望んでいるわ。その愛弟子の想いを守らなければエリーカを護ると約束した私達は嘘つきよ?」

 

「……そうね。エリーカは私達で護る。問題ないわ。なら今一度やってみましょう。でも本当にダメだとわかったら私達は黒塗りのアリスを討つわ。エリーカを守れなくなったらそれこそ私達は嘘つきよ」

 

「ええ、それはこれまで通り。あの子が混沌の神として終えるのなら私達は躊躇わない。でも今は…」

 

 

「父親にならんとする男が娘を諦めないと言ってるんだ!なら感動の再会を望まなくて何がフィサリス演劇団ってんだ!俺はハッピーエンドが良い!最後は拍手と歓声が起こる結末が良い!」

 

 

エリーカが、ミカエラが、ルシフィナが、父親を諦めきれない僕のために心強い味方として助けてくれる。

 

それが混沌の神となってしまった相手でもそれはハインリヒの娘だとまだ望んでくれている。

 

僕は、今とても恵まれている。

 

 

 

『エリーカ、身体を借りるよ…!』

 

「!」

 

 

 

覚悟を決めた僕はエリーカの肉体に触れる。

 

そして融合する。同じ勇者として。

 

 

 

『僕は大罪人として末路を得た愚か者。しかしそれすらもハインリヒなら、この体に刻まれた追憶はどちらも併せ持った勇者。ならば僕だって欲張ろう。それも勇者であるとこの世が訴えてくれる者がいるなら…!!』

 

「(な、なんだ、この力は!?)」

 

 

 

エリーカの中にある聖素が僕に反応する。

 

それはまるで500年前に僕が天使から浴びすぎた聖素によって変質し、人間を辞めてしまった時のように、ハインリヒは殺戮者だった存在として呼応させる。

 

 

しかし僕は過去に囚われない。

 

なぜなら、今こうして立っているのはアリスに願われているから。

 

顔を見えずとも、背中合わせに伝えてくれたアリスが僕を勇者と扱ってくれたから。

 

なら、応えずして何がハインリヒか!!

 

 

 

 

 

  「『うおおおおおお!!!!』」

 

 

 

 

エリーカと僕の聖素が入り混じる。

 

 

祝福に満ちた【聖属性】の聖素。

殺戮に溺れた【闇属性】の聖素。

 

 

それはエリーカの光と、ハインリヒの闇。

 

これらが融合することで新たに誕生する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は!!」

『僕は!!』

 

 

 

 

 

 

 

この世界が、この世に誕生した勇者を正しい存在として扱ってくれたお陰で、許された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【 混 沌 の 勇 者 】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  この瞬間、封印職が二人のみに解かれた。

 

 

 

 

 

「『混沌は僕が斬り払う!二人は…!』」

 

 

「ええ、分かったわぁ」

 

「任せなさい、二人とも!」

 

 

 

ミカエラとルシフィナの二人は黒塗りのアリスの気を逸らすために僕よりも先に接近し、左右から攻撃を加える。

 

もちろんエンジェルハイロゥの影響下故にダメージは入らないが、黒塗りのアリスの天使に対する殺戮衝動を刺激することで、接近する僕から意識が外れる。

 

そうして僕は天使の身体能力で劣る人間のこの足で接近する。しかし数歩が遠い。

 

でもエリーカの体は充分に鍛えられていたから重くなんかない。

 

むしろ演劇団として備わった柔らかさと頑丈さが勇者時代の僕以上であることを教えてくれる。

 

なるほど、これがエコーズの血筋。

 

そして、天使達に祝福されながら天軍長に鍛えられてきた人間の強さ…!!

 

 

 

「うふふ!こっちよ!」

 

「天使ィィ!!天使ィィィイイ!!」

 

 

「生まれたて故に戦いは下手ね」

 

「天使ィ!!殺ス殺す我は天使の命ヲ!」

 

 

 

理性を見え隠れさせながらも、しかし囚われた殺戮衝動の方が強いのか未だ力加減のわからない幼子のようにダモクレスを振り回す黒塗りのアリス、ミカエラとルシフィナは巧みに回避を行いながら攻撃を続けて意識を逸し、僕のために道を用意する。

 

 

 

「(マジでなんて力だよッッ!?こんなの人間で扱うモノなのか…!!?)」

 

 

 

急に背負わされた封印職の力にエリーカは食いしばって耐えていた。

 

これがもしエリーカ本人だけで開花した力なら問題なかったが、僕の闇の属性がエリーカの光の聖素を強く刺激している。あまり時間を掛けると最悪エリーカもあの時の僕のように変質化を進めてしまう。それは良くない。

 

 

 

「『エリーカっ!君の力を乗せてくれ!』」

 

「(!? …そうか! エコーズか!!)」

 

「『ああ!全てを届かせる!!声も!魂も!想いも!何もかもを乗せる!!』」

 

「(ああ!ならばありったけを乗せてやる!だから遠慮するな!何もかも欲張れ!それが勇者の特権だろハインリヒ!)」

 

 

全身の血が沸騰するかのように熱く滾る。

 

体内に込められた聖素が激しく揺れる。

 

そうして光と闇が【混沌】として混じり合う。

 

 

すると___握りしめているジャスティスカスタムが僕と彼の聖素に反応して、変化する。

 

 

 

「(なっ、剣がっ!?)」

 

「『こ、これは…!!』」

 

 

 

ジャスティスカスタムの性質が変化した。

 

エリーカにはわからないが、しかし僕には既視感があった。

 

500年前にルシフィナから渡された天使殺しのための武器だ。

 

最終的には天使を斬りすぎたことで乱雑に入り混じった聖素が固形化してしまい、剣と言うにはあまりにも異質な形状になっていた。

 

しかしコレはまだそうなる前の鋭さと輝きを残した『剱』に相応しい姿だ。

 

 

 

その名は__エンジェルハイロウ

 

 

 

この大陸の真上に浮かんでいる輪っか(システム)とは違い、武器の方に名付けられた本当のエンジェルハイロウだ。

 

 

 

「!?…ルシフィナ!もしかして貴方…!」

 

「たまたまの出来事よ、姉さん。でもエリーカは聖素を使いこなす人間よ?なら相応な武器は必要よ。だって姉さんの弟子だもの。ならエリーカの力をより引き立ててくれる武器を正しく与えるべきだわ」

 

 

「(あんの生意気ルシフィナ!だからヘルゴンド大陸に向かう前にあんなに武器を鍛えさせたのか!いやでもまさかカスタムソード系統がただの他属性武器ではなくエンジェルハイロウとしての性質を持っているなんて分かるわけないだろ!?なんだこの展開!?ああもう!やっぱりあの天使色々おかしいわ!)」

 

「『あははは!でも…だからこそ混沌を斬るに条件が整った他属性効果だ。そこに聖素を込めればエンジェルハイロウとして機能もする。やっぱり君は祝福されて生まれた勇者なんだよ!エリーカ!』」

 

「(とんでもねえマッチポンプなだけさ!あとはルシフィナがおかしいだけ!そもそも光の勇者になったのもあの天使がやった事だよ!)」

 

「『でもこの世界に君がいなければ間違いなく起こらなかった出来なかったんだ!それは紛れもない事実さ!僕は君がこの世に現れてくれてうれしい!』」

 

 

 

エンジェルハイロウと化した剱を両手で握りしめて黒塗りのアリスに踏み込む。

 

すると黒塗りのアリスは変質したエンジェルハイロウに勘付いたのか、ミカエラとルシフィナを無視してダモクレスを振り落とす。

 

 

「(ハインリヒ!少しだけ代われ!)」

 

「『エリーカ?』」

 

 

僕の魂が奥に押し込まれる。

 

すると半分だけ表に出てきたエリーカは片目を空色に変えると、黒塗りのアリスが振り下ろすダモクレスに対して左手を重ね合わせるとそれを握りしめて叫んだ。

 

 

 

 

 「あけのみょうじょう!!」

 

 

 

 

数メートル先にある攻撃を掴み取るとエリーカはそれを遠くに弾き飛ばし、混沌の神の象徴たるダモクレスを無力化させる。

 

 

 

「エリーカ…!!?」

 

「あら?あらあら?あらあらあらあら??」

 

 

 

ミカエラは非常に驚き、ルシフィナはそれ以上に驚きながらも愉快そうに笑みが深まる。

 

そうしてダモクレスを弾いたエリーカは役割を終えたように奥に引っ込み、僕の背中を押して表に出す。

 

 

 

「(もうこれで混沌の神は名乗らせない!!だから行け!ハインリヒ!!)」

 

 

 

ミカエラが、ルシフィナが、エリーカが、僕のために露払いを行い、一人迷子になっている娘に届かせよう尽力してくれた。

 

裏切れない!!

 

ここまで勇者たらしめてくれる者達に!!

 

 

 

 

 

「『うおおおォォオオオ!!』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___このお腹の子の 名前 も考えなければなりませんから。

 

___考えておくよ!僕達の子供の 名前 を!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、そうだね。

 

彼女は黒塗りのアリスなんかじゃない。

 

黒塗りのアリスと扱われたから、その幼い体で混沌の神として不自由な力に振り回された。

 

だからその力は僕が勇者として斬るよ。

 

 

そして、どうか届かせてくれ。

 

 

そんな借り物で黒塗られた名前では無く、僕とアリスが考えた君の素敵な名前で、どうか僕を父親として受け入れさせて欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『 アイリス 』

 

 

 

 

僕とアリスの愛するたった一人の娘。

 

 

 

 

 

 

 

 

__おとう、さん??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、やっと聞けた。

 

 

やっと君を迎えに来れた。

 

 

さぁ…僕の大事な娘、アイリス。

 

 

母さんの、アリスの元に行こう。

 

 

僕と一緒に、コレからは3人で…

 

 

 

 

 

 

 

__ええ、そうですわ。お茶が冷める前に戻ってきてください。ハインリヒ。そしてはじめましてアイリス。会えて嬉しいわ。

 

 

 

__お母さん!おとうさん!…うん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  もう、いいんだな?ハインリヒ。

 

 

 

 

 

 

 

__ああ、もう大丈夫だよ。エリーカ。

 

 

 

 

 

 

 

  そうか。

  どうか家族一緒に仲良くな?

 

 

 

 

 

 

 

__ありがとう。勇者エリーカ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を最後に2つの魂は天に昇った。

 

そしてエンジェルハイロゥが崩れていく。

 

システムが崩壊していく。

 

何故なら混沌の神がただの娘になったから。

 

だからこの世界は扱うのをやめた。

 

黒塗りのアリスは、もう存在しないとして。

 

 

 

「やっと……終わった」

 

 

 

 

「エリーカ!エリィィィカ!!」

 

「ん?…おお、ルミエ!っとぉ…急だなオイ」

 

「無事だ…!エリーカが、無事だ…!」

 

 

 

遠くから走ってきたルミエを受け止める。

 

最初は柔らかくて、それから暖かい。

 

智天使であることも忘れて彼女は泣き喚く。

 

 

 

「エリーカ、よくやったわぁ」

 

「ルシフィナ…そうだな。でも君が来てくれたからなんとかなったよ。助けてくれてありがとう」

 

「少し暴れただけよ。でもまぁ良かったんじゃない?幼子を葬らないで済んだのなら」

 

「そうだな。迷子の子供が父親を見つけた。それで済んだのなら良いんだ」

 

「うふふふふ…」

 

 

いつもは恐怖心を引き立てるような笑みを浮かべているルシフィナだけど、でも今の彼女はとても惹かれるような朗らかな笑みを浮かべる。

 

やっぱりこうしてみると綺麗で美しい人だなぁ……本当に。

 

 

 

「エリーカ」

 

「ミカエラさん!」

 

「…本当によく頑張ったわね」

 

「ぁ、わっぷ…」

 

 

横からだがミカエラさんに抱きしめられる。

マジで??ミカエラさんのいいんすかぁ!!?

 

 

あ、別にこれが初めてではないぞ?

 

片手で数える程度だが、幼い頃にミカエラさんから抱きしめられたことがある。

 

でもこうしてミカエラさんから抱擁を受けるのは10年以上ぶりだ。なんか感動しちまう。

 

あかん、ルミエ。

俺も泣いていいすか?だめ?

 

 

 

「ルシフィナ姉さん!ミカエラ姉さぁぁん!」

 

 

っと、俺よりも泣きそう…いや、既にぐしょぐしょな泣き顔で両手を広げて迫ってくるのは我らがエデン3。いやエデンさん。でもこの状態の時の彼女はエデン3で良いだろう。見てるとホッとする。

 

 

 

「…」

 

 

 

俺は再び空を見上げる。

 

もう黒兎の群衆は粒子となり消えた。

 

そうしてエンジェルハイロゥは無くなった。

 

代わりに晴天の空がこの大地を照らす。

 

ああ、本当に…言葉にするなら。

 

 

 

 

「胸がいっぱい、や」

 

 

 

 

 

ハッピーエンドに満たされたから。

 

 

 

 

 

つづく

 






天界だけに展開早いけど、まぁええやろ。
文句はルシフィナに言ってくれ。
なんだかんだであの存在がチート過ぎるんや。


【ハインリヒ】
光の勇気ではなく、実は闇の勇者だったハインリヒ。天使絶対殺すマンとしての最後だった故に、光のエリーカと融合した際に混沌勇者としてその力を解放した。その後は妻アリスと娘アイリスと共に3人の魂はエコーズによって天に昇り、安息地へと導かれて安らかに眠りついた。こうして500年の憎悪はこの世から無くなった。おやすみなさい。

【アリス】
この世界ではヒロインレベルが億単位ある元魔王様。ハインリヒのことが好き好き大好き過ぎて、失落の中にいた夫を励ましてその身に勇者を思い出させた。あとハインリヒが娘の名前を【愛とアリス】を合わせてアイリスにしたセンスに興奮し過ぎて紅茶ダバダバした。コイツ勇者のこと好き過ぎる。

【アイリス】
結局のところ、天使殺しの殺戮衝動に振り回されていただけの幼子。そこに混沌の神の血肉与えられて半端に神化したりとバランスが取れずに不安定だっただけ。中身はとてもお父さん好き。碑に封じられていたとはいえなんだかんだで父と500年間一緒にいたからね。

__もし何事もなく無事に産まれていたら父と母譲りの剣と刀の二刀流として最強の勇者になったいたし、アイリスがお人形さんみたいに可愛い過ぎるため9代目魔王にデレッデレに猫可愛がりされてたりと間違いなく平和だった。全部ドブ川が悪いよドブ川が。

【あけのみょうじょう】
天使に死ねほど祝福されまくったからこそ出来たエリーカの切り札。ただし人の身でやるにはあまりにも負担が重た過ぎるため混沌勇者になれた事で劣化版ながら扱うことができた。それはともかくルシフィナはエリーカが代名詞となる自身の技を使ってくれたので過去最大レベルにご満悦。



じゃぁな!
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