今日も胸がいっぱい、や!   作:つヴぁるnet

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や!!

 

 

 

 

  それはあまりにも唐突だった。

 

 

 

 

 

 

突如現れたソレは、神に等しいか、もしくは神を超えた、そんな超越者(アリス)に襲撃されてしまうと、天界にあるイリアス神殿をボロボロに破壊され、そして私たちはとうとう天界ごと地上に落ちてしまった。

 

 

もちろん私は智天使として戦った。

 

己は上級天使として、どの者よりも戦闘力の高い者として、上官であるエデン様と共に、闇と光を持ち合わせた襲撃者と戦った。しかし超越者相手に戦力は足りず、数年前に離反したミカエラ様の戦力喪失があまりにも痛いことを理解するも束の間、とうとう私達は敗れた。

 

そして、天界は地上に落ち、そんな私は敗北と土の味を噛み締めることになる堕天した智天使として、獣のように野を彷徨うことになる。

 

 

 

ああ、ここは何処だ?

 

私はまだ生きている。

 

だが天界から討たれ、そして離れ、何より存在意義を否定されてしまった欠陥者になった。

 

天使とは=として『役割』を課せられた存在だ。

 

それを否定されてしまえば、この身体に残された存在意義とは何か?

 

簡単にいえば、私は上位天使たる智天使としての役割を果たせなかった欠陥者である。

 

ボロボロの体を引きずり、半壊した杖を支えにして、痛みに耐える。

 

ああ、なんとも醜いか。

 

果たせぬ役割と存在意義を否定され、智天使だった己の意味を失い、地上に落ちて堕天した私は野を知り、土の汚れを知り、鮮明に湧き上がる痛覚が天使を否定する。

 

 

喉が渇く、空腹を感じる、眠りに惑わされる。

 

天使として覚えるはずもなかった苦痛達。

 

天界から見下ろしていた私は今や、空に見下ろされている獣と変わりない。

 

ああ…

 

どうやって…

 

どうやって、この大地を知る??

 

どのようにして、生きていくんだ??

 

知らない。

 

知らない…

 

何も知らない…

 

智天使としての強さだけが取り柄だった私は今や、強さだけでは覆せない未知にぶつかる。

 

生きるとは……こんなにも苦痛に塗れてるのか。

 

これを__この不自由を人間達は隣り合わせにしながら生きてきたんだ。

 

ああ、なんとも逞しい生き物だろうか。

 

愚か者の集まりだと思っていた。

 

しかし、今ならわかる。

 

この苦痛があるからこそ、愚かになる必要も出てきたんだ。

 

 

私は何を考えている??

 

どうしたら明日という概念を知ったこの弱い体で生きていける??

 

 

喉を潤す水は??

 

乾きを癒す薬は??

 

空腹を満たす食事は??

 

どこから?

 

何処からコレを、補えばいい??

 

 

 

 

 

助けて…

 

助けてください、イリアス様。

 

堕ちてしまったわたしは、助けてください。

 

どうかお願いします。

 

天から私を見離さないでください。

 

この苦しさを、どうか…

 

ああ…

 

どうか…

 

どうか……わたし、を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

哀れみはない。

 

だからわたしは憐れなんだ。

 

 

 

そしてコレは罰だ。

 

天界から見下ろし続けた愚か者の罰。

 

大地の苦痛と無関係と、地上の汚れとは無関係なんだと、他人事のように一瞥した。

 

別にそれは間違いではない。

 

私はイリアス様によって智天使としての役割を果たすための存在として創られたから。

 

天界から地上を見下ろすことは、そもそも役割なんだから………と、堕ちた心と身体が言い訳をしている。

 

 

 

「ぅ、ぅ、ぁ…」

 

 

行先も、帰る場所も分からず、消耗した身体をヨロヨロと引きずり、太陽は何度も顔を出す。

 

誰も恐れる智天使とは、土に汚れただけでこんなにも脆くて仕方ないのか。

 

神聖なる純白のローブは汚れた。時折襲いかかってくる獣やもんむす達によって抗争し、霞む意識と痛みの中でわたしは争う。堕ちたとはいえ智天使だった。苦戦することはない。しかし乾きも、空腹も、意識も、土の味を知ったことで地上の生物となんら変わりない存在として覚えたから、とうとう限界を迎える。

 

 

 

「わ、た、し、は……」

 

 

 

ああ……日が落ちる。

 

何処か凌ぐ場所を探さねば。

 

だが、もう、この身体で何が出来る?

 

意味も、役割も、土に汚れて失われたんだ。

 

もう、わたしという意味は無いのでは?

 

……ああ、そうだな。

 

元よりそのために創られただけ。

 

それが今果たせずに終わりを告げるだけ。

 

ただちょっと……辛いだけなんだ。

 

己を失う恐ろしさを知ってしまっただけだ。

 

天界にいた私ならなんとも思わずに「そうか」と受け入れていた。

 

何せ、そういう仕組みの元に生まれることになった天に使える者、言わば天使(やくわり)だから。

 

でも、今はこんなにも辛さを知る。

 

人のように、痛みと、悲しみを、覚える。

 

 

だから…

だから…

 

 

こんなにも、悲しいんだ…

 

 

 

「ぅ、ぅぅぁ、ぅぅ…」

 

 

絶望が小さな身体にのしかかる。

 

天界とは無縁だった余計な感情が蝕む。

 

不自由な生き物のように無力を噛み締める。

 

 

 

ああ、そうか。

 

これが、抑えられない時に溢れる。

 

涙という、生理現象なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、誰か倒れているのか??」

 

 

 

 

 

 

 

 

声が聞こえた。

 

私以外の、声が聞こえた。

 

 

 

 

「っ!その羽と光輪っ!あとこの神聖に満ちたような感覚!やはり天使か!」

 

 

 

その者は、天使の存在を疑わない。

 

普通なら生きてるうちに会う事はない筈。

 

だってそれほどに崇高な存在だから。

 

だから人間は天使を物語の生き物と思う。

 

けれどこの者は知識にあるパーツを照らし合わせた私を「天使」と言った。

 

 

 

「待ってろ、今助けるから!」

 

 

 

近づくにつれ声は鮮明に耳に届き、その者は成人したばかりの青年であることを理解した。

 

 

 

「やめ、ろ、ちかず、くなっ…!」

 

 

 

這いつくばっていた身体を、半壊した杖でガタガタと震わせながらその身体を立ち上がらせようとして、失敗する。

 

 

 

ポスン。

 

 

 

「うぉ、柔らかっ……じゃなくてっ…!とりあえず落ち着け。あまり無理するな。俺は君達天使の味方だ。君たち天使に祝福されて生まれてきた子供だから」

 

 

天界から見下ろしていた生物に、倒れてしまいそうになるこの身体を支えられて、優しく受け止められる。普通なら天使が弱き者のために受け止める筈なんだ。

 

でも今は、地上に囚われた者同士としてそんなのは関係ないらしく、むしろ私はこの青年にとって後者となってしまう存在なんだろう。

 

 

 

「待て、何かいる…!」

 

「っ!?」

 

 

 

彼の声にわたしは周りを意識する。

 

すると、一人のもんむすが現れた。

 

 

 

「おい人間、おとなしくそいつを寄越せ。さもなくはテメェごと前菜としてぐちゃぐちゃに嫐ってやっても構わないんだぞ??」

 

 

「こいつ…」

「ぁ…」

 

 

 

思わず、わたしは声をこぼす。

 

智天使として得ているはずの強さも忘れ、絶望感に任せた心が恐怖を優先させた。

 

けれどわたしはグッと杖を握る。

 

この者を……もんむすの餌食となるこの弱き者を護らねらば。

 

迷えし存在を導くして天の使いとして、せめて最後くらいは役割を果たさねば、土に汚れただけで容易く朽ちる偽りの天使として、許されないのだから!わたしが…!!

 

 

 

コレまでにないほどの「食いしばる」が私に力を与えようとする。大地を知った身体だからこそやってしまった下等生物としての手段、言わば譲れないとする根性、これが不思議と力を与えてくれる。間も無く壊れようとする杖を軋ませながら青年から離れようとして…

 

 

 

 

ぎゅう…!

と、小さな身体は抱きしめられた。

 

 

 

 

「悪いが師匠との約束あるんだ。大地に迷える天の使いを助けるという俺に課せられた修行が」

 

 

青年は私の体をその腕で抱きしめ、目の前にいる捕食者に渡さんと意思を示す。

 

 

 

「…なに?もしや人の身で私に抗うか??」

 

「かかってこい、相手になってやる」

 

「ッッ!! 人間風情が!!後悔させてやる!!」

 

「!」

 

 

人間の倍以上はあるもんむすが突貫してくる。

 

すると青年は私を抱き上げ、地上に落とさないように強く支え、木刀を腰から抜き…

 

 

 

 

 

「天軍の剣ィィィ!!!」

 

 

 

 

 

弱者として空っぽのはずの人間から感じられない筈の聖素が武器に纏い、それが聞き覚えのある究極の一撃として放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ」

 

「む、どうしたんだ?」

 

 

お茶会として淹れてもらった紅茶を片手に、数年前を思い出したように笑えば、隣にいた彼女がふわふわの羽と共に首を傾げる。

 

 

「なに、少しだけ思い出しただけだ」

 

「?」

 

 

覚えるはずのなかった道楽、あと経験。

 

けれど堕天したことで感じることができたため今は感謝の気持ちの方が強い。

 

紅茶と、スイーツが、美味しい。

 

 

「いやなに。ミカエラ様の真似をしたと思いきや聖属性を込められただけの一撃。しかも天軍の『(けん)』ではなく天軍の『(つるぎ)』と叫んでいたが、あれはわざとか?故に寸も遠く及ばない真似事だったから、つい思い出してしまってな…」

 

「それ、私も思いました。なのでその事を彼に尋ねましたが、どうやら『つるぎ』にした方が叫びやすくて好きだからという理由であのようになっているようです」

 

「なんじゃい、そのこだわりは…」

 

「まったくです。原初の天使様の究極奥義をオリジナルにしてしまうなどあの人は恐れ知らずでしょうか。しかし今となっては、遊びのつもりで込めた究極の一撃は……たしかに見事でした」

 

「ああ。あのミカエラ様を師匠として慕っているからこその奮起、また強者相手に奮うための生存能力。なにより良く練られた瞬発火力は良く訓練してきた証。伊達にミカエラ様の修行を受けておらぬな」

 

「本当に。人間とは不思議ですね。不自由極まりない地上に生きる弱者だからこそ放たれる底力とピンチ力、素晴らしい輝きでした。もしかしたら私達よりも強いのかも知れませんね」

 

「ふん、有り得ぬものか。このお茶会で一番弱いのは人間の彼だ。そ、そりゃ…あの時は初めてこの身に覚えた絶望感と無力感に心が蝕まれていたが、しかし堕天したとはいえこれでも智天使として役割得てきた力がある。無論、天界に住まわっていたあの頃の10%程度に陥ってしまったが、だからと言って地上の者に遅れを取らんな」

 

「堕ちても本質は上位天使ですよ。もちろんマスコット扱いな私も上位天使に偽りないです」

 

 

それでもマスコット扱いにやや不服そうな彼女は紅茶を飲み、次にスイーツを頬張り、そして美味しそうに微笑む。やれやれ。こんなんだから周りの者達に可愛がられてしまうんだワイティエル。まあ本人も可愛がられてしまうことに関しては満更では無さそうに見える。特に…

 

 

 

「ティル、こっちの別の紅茶もあるぞ。飲むか?」

 

「あ、はい…!いただきます!」

 

 

彼に__エリーカに呼ばれて嬉しそうに羽をパタパタとさせてティーカップを持ち運ぶワイティエルのティル。見た目完全にマスコットだ。可愛がられている。そういうところだぞ。本当に。

 

 

 

「……」

 

 

ほんの僅かに力を込めるだけで、指先一つで散りそうな生き物、エリーカ。

 

ミカエラ様の修行を通しているため周りの人間よりは何段も格上だが、それでも人間という種族の括りで考えれば、智天使の私からすると森のそこらに落ちているどんぐりのようなモノと変わりない。

 

なんだったら最近この里に移住してきたバトルファッカーを副業とするエルフの娘よりも下回る。

 

人間とはそういう神の作品だ。

 

 

けれど……

 

 

 

「よくもまぁ、人間如きがこの身体をギュと抱きしめ、智天使を護ろうとしたものだ。ほんとうに…まったく…」

 

 

種族的立ち位置としては私が先であり、また人間からすれば崇高に等しい扱い。

 

しかし、土の味を噛み締めたこの大地の先駆者として私よりも苦楽を知るエリーカ。そんな彼という存在に私はあの絶望から護られた。

 

 

 

「エリーカ、私にもお代わりを貰えないか?」

 

「お?ルミエも飲むか?いいぞ。飲め飲め」

 

「飲め飲めって、紅茶はガブガブと飲むモノではないはずだぞ?」

 

「でもあのプリンセスもどきを見ろよ?プロテインを流し込むように紅茶飲んでるぜ」

 

 

エリーカが目線で指差す。

 

そこには。

 

 

「パクパクですわー!毎日これですわー!ゴクゴク!ぷはぁー!!」

 

「うわぁ…」

 

「なんだコイツ、たまげたなぁ」

 

「………」

 

 

大口を開けてティーカップを流し込むプリンセススライム。筋トレ好きなのはともかくとして確かにゴクゴクと流し込んでいる。

 

そのため品性の品の字も無い勢いに、数名の天使兵とエンジェルコックは引いたような目で眺め、またメイジェルは酷く蔑んだような視線を送り、そしてトンベリ娘すらもこれまで以上のジト目で見ている。気持ちは理解する。プリンセスの冠名ある者としてアレはどうなんだ??

 

 

 

「まあ、俺は別に貴族でもなんでも無い、ただの演劇団の団員だし、好きなだけ好きにすれば良いさ」

 

「その割にはあまり演劇団の旅路に参加してないようだが?」

 

「天使の捜索場所が被る時はちゃんと参加してるぞ?前だって空中で天使仕込みの剣の舞で彫刻を掘っては、その出来栄えに観客は大喜びだったし。でも現在優先するべきは天使達の捜索。一応この3年間で他天使達と協力した結果70人くらいは見つけれた。でも多分まだいる。てかルミエの話が本当なら天界が地上に落ちたんだろ?ならまだどこかに天使達は居るはず。地上の生活に順応してるならそれに越したことないけど、でも組織力を重じた種族である以上、エンリカにミカエラさんが里長として腰を構えてるならそっちの方が安心だろ?」

 

「確かに……それは、その通りだ」

 

「なので修行を建前にまた探してくるさ」

 

「…」

 

 

それを、なんてことなく言う彼は、地上で迷える天使達を探しに向かうと、私たちを安心させる。

 

 

「なぜ……君はそこまでしてくれる?」

 

「んぁ?…おいおい。またその質問かいな」

 

「だとしてもだよ。君は本来、演劇団の団員として活動する者だ。この隠れ里で生まれたからといってそこまでやる義理はない筈。たとえ同胞を探してくれるにしても、旅路のついでという形で収めても皆はそれでありがたく思う。なのに君は建前を揃え、本腰を入れてそこまで…」

 

「……うーん、そうだなぁ…」

 

 

紅茶を皿の上に置くと、少し離れたところでお茶会を楽しむ仲間達を眺める。

 

その目はとても優しく映り、トンベリ娘のような上位種相手にも同じような眼差しを送り、そこに恐れを抱かない。

 

するとそのまま彼は応える。

 

 

 

「君たちを助けたいから。それだけかな」

 

「!」

 

 

考えていたようで、しかし深く考えるほどでもない短な言葉に私は驚いてしまう。打算も、見返りも秘めない、たったそれだけの感情が地上に迷えし天使達を助けようとする。簡単に壊れそうな人の身で。

 

 

そしてこれは前も同じように問いかけて、同じように返された。今回も前と変わらない答えだ。でも…

 

 

 

「それとも何か裏があった方が気持ち楽かい?」

 

「それは…」

 

 

そうかもしれない。

 

何か裏があれば、ここまでの無条件に警戒を抱かなくて済む。ああ。わたしはこんなにも不安を感じてしまうほど地上で弱っているんだ。

 

 

「じゃあ、ルミエ。こうしようか」

 

「?」

 

 

彼は私の隣にスッと腰掛ける。

 

そして、人差し指を立てる。

 

 

 

「もし俺が死んだらさ?天国に招いてよ」

 

「え?」

 

「死んで地獄なんて痛くて悲しい。だから今の内に良い事して、それで良い事したポイントが溜まったら、女神イリアス様に天国に迎えるべき人だってルミエが口添えしてよ」

 

 

そう、ケラケラとエリーカは笑う。

 

この場で即席で考えたような内容だが、しかし天国に行くことは死を迎えた者にとって安心できるゴール地点。

 

それが約束されるなら喜ばしい。

 

ならば今考えたようなお願いでも、それは大きな報酬なんだろう。

 

 

 

 

 

ああ、お安い御用だ。

 

そんな事で良いなら……

 

いや、違う。

 

それを君が望んでくれるのなら。

 

 

 

「わかった…必ず!必ずや、エリーカが天国に…いや、それ以上にエリーカや君の家族が、その演劇団の死後は天国に迎え入れれるように私がイリアス様にお口添えしよう。必ずだ」

 

「おおー!それはありがたい!!なら、多少なり無茶しても後が安心だな!!がははは!!」

 

 

彼は満足げに笑う。

 

人は死んだ後のことを一度は考える。

 

良いことを重ねれば、天国に。

悪いことを重ねれば、地獄に。

 

人生の終わり方など分からぬ。

 

保証などされず、死んでから物事が決まる。

 

でもそれを確約とし、死後に天国と楽園が約束されるのなら、彼は生きている内に一つの悩みが消えたと、地上で不自由に生きる者として大層喜んでくれる。

 

 

 

こんな…私で良いなら。

 

智天使として役割を果たせなかったこんな私で良ければ、彼を楽園を約束させたい。

 

 

 

「ありがとう、エリーカ…」

 

「!」

 

 

肩の荷が、降りた。

 

土と苦痛を知ってから味わう事になった、地上の者のように悩ましてしまうこの無力感は、それはどうしようもない心の痛みで、己の情けなさを噛み締める。今はただ過去に強いだけだった現在の弱者。

 

 

でも、今はそれが取り払われた。

 

この地で残酷に生きる者のように。

 

 

 

「ふふっ…」

 

「!」

 

 

わたしは隣に座った彼の肩に顔を置く。

 

彼の方が背丈は高い。

 

だから横目に見下ろされる形だ。

 

でも今は、それがとても心地よい。

 

地を這って生きる先駆者に、地を這っていた堕天使は安心を覚えてしまったんだから。

 

 

 

「む、ずるいですよ、ルミエ」

 

「……ティル、今ここは私の場所だ」

 

「ならわたしは隣に座ります。あっ、言っておきますが、決して隣に座って羨ましいという子供のやうな感情は無いですから、ね?」

 

「自白しているようなもんだぞ、それ」

 

「ぁ、ぁ、ちょ、ぁ、やわらけぇ……はふぅ…ふかふかする……」

 

 

そういえばワイティエルのティルも何かと彼に好意を抱いていたな。しかもほぼわたしと同じように危険なところを助けたと…いう。

 

 

やはりこの者は天使との出会いに寵愛された人間なんだろうか。

 

だからこんなにも天使を救えたのだろう。

 

今では隠れ里エンリカもそこそこ多く天使達が住んでいる。

 

皆が彼の尽力に感謝している。

 

 

「エリーカ、私も貴方を天国に導くことをお約束します。だから地を歩める人のその力、どうか我が同胞のために力を貸してください」

 

「ぅぇ?ぁ、うん、もちろ、ん、ぁ、ふわぁ…」

 

「名前にティル…胸と羽に揉まれてエリーカが恍惚気味だ。だから少し離れろ。後から来た君が離れろ。天使に触れている程度とはいえ人の身に天使の密度は過剰すぎる」

 

「む、ならルミエが離れれば良いです。それにわたしはエリーカ公認のマスコット。隣にちょこんと座る程度は日常のこと」

 

「なっ…!ふ、普段はマスコット扱いを嫌がる癖にエリーカの事になるとマスコット扱いを武器にするか!ずるいやつめ!」

 

「この場所は譲れません。してエリーカ?今晩どうですか?事後あなたの天国への道は確約されています。しかし貴方はまだ若く生ける盛者。寵愛という形で良ければこの地上で天国に導くことも、わたしはやぶさかではありません」

 

「待て待て待て、勝手に決めるな。この雰囲気だと今回は私がエリーカを寵愛する展開に決まっているだろ!横から抜け抜けと…おのれぇ!」

 

 

「む、む、む、胸が、いっぱい、やっ…」

 

 

天使の中でも特に柔らかな天使に挟まれて、半ば強制的に恍惚気味にされているエリーカ越しに、わたし達は寵愛の行方を言い争う。

 

 

 

 

 

 

エリーカ・エコーズ、不思議な男。

 

堕天したこんな私だが……だがそれでも、空からお主を見守るつもりでいる。居たい。

 

 

だから安心してくれ。

 

お主の願いは必ず、果たされるから。

 

 

 

 

 

 

 

天使に祝福されながら生まれた子は、地に迷えし天使を助け、そして約束される。

 

 

 

まさに胸いっぱいに満たされたストーリーテラーだから。

 

 

 






絵師さんが絵師さんだけあってとても可愛い。
そりゃイリアス様も(反省会で)この天使を欲しがるわ。


【ルミエ】
智天使のホルミエルとして役割を遂行してるところに、不幸にも黒塗りの高級車アリスに蹂躙されてエデンと共に天界から叩き出されてしまう。そのまま数日ほど大地を彷徨い、そして弱り果てるまで跡をつけていた獰猛なもんむすに襲い掛かれて死を覚悟したところにエリーカくぅんが参上ッッ!!天軍の剣(憧れ仕様)を放つヒロイックなお姿に、しかもクソザコ種族の人間の腕にギュ♡と抱かれて護られてしまうとかいう、ヒロイン属性爆増なシチュエーションに感情をぐちゃぐちゃにされてすっかり脳が焼かれた。彼に天国を約束した。名前はホルミエルを組み替えてルミエになった。


【ティル】
智天使のワイティエル。天界が倒壊後はルミエと同じように地上のどこかに投げ出されてしまう。空腹を感じ始めてからはしばらく野草や果実などで食い繋いでいたが、とうとう精神的に限界が訪れ、とても獰猛なもんむすに襲われたところに天軍の棒切れ(エコノミー仕様)がどーん!!しかし助けてくれたエリーカの事を最初はかなり警戒していたが、乾いた心に甘いチョコレートで元気つけられたりと半ば餌付けされる形で懐柔されてエンリカにGOした。原作同様にマスコット扱いを嫌がるが、マスコット扱いを利用する事でエリーカの膝の上を奪うなど、時と場合に分ける賢い子。彼に天国を約束したし、たまの夜も寵愛を建前に天国している。とてもやわらかい。名前はワイティから組み替えてティルになった。


【プリンセススライム】
筋トレ好き(某力の同盟仕様)であり、紅茶をプロテイン代わりにするちょっと頭がおかしい子。一年前にフィサリス演劇団の公演会を眺めていたところに天軍の短剣(演劇仕様)で華麗に技芸を披露するエリーカくぅんに惹かれて勝手についてきた。それからはエンリカに住まう美しい天使達を参考に筋トレ中心の生活を行って自分磨きしている。これはカフェインをキメてますわ。たまに夜の筋トレでがんばれ♡がんばれ♡している。名前はまだ決まってない。


【天国または、天国】
一般的に死後の世界の意味。そしてエロゲ特有のそう言う表現としてこの作品では扱われる。と、言っても実際のところは主人公くぅんのことを天使以外に目を向けさせたくないし、なんなら天使以外から寵愛を受けて欲しく無いといった、いわば彼女達の独占欲に近い状態でもある。つまり上位種族特有のクソデカ感情ってヤツですね。ぱら世界ならよくあるよくある。それを証拠にミカエラさんに指輪渡したことある?結構重いぞ。貴方も殺して私も死ぬをすると脅すから。終章プレイヤーは必見。



あと4話か5話くらいは続ける。

じゃぁな!
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