今日も胸がいっぱい、や!   作:つヴぁるnet

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今回は1万と2千文字らしい。…息抜きの作品とは?



や!!!!!!!!

 

 

 

ほぼ無損害と言える行商人の到着によっていつもよりも賑やかさが増したらしいレミナの昼の街は印象的で、それは夜になっても落ち着くことない。

 

何故なら今宵は、行商人達と共にヘルゴンド大陸にあるこのレミナ街に辿り着いた冒険者は勝利の美酒を片手に握り締めれば、酔いと気分と舌の周りも調子に乗ったことで語られるは此度の英雄譚であるため。そして話を聞こうとレミナの街に住まう住人達は夜の延長戦とばかりに酒場に集われ、騒がれる。

 

繁華街からその賑やかさが届いていた。

 

 

 

「ふぅ、良い夜ですね」

 

踏み入れたこの過酷な大陸にて、圧倒的な種族差から浴びせられる暴力と生存競争は無慈悲に試されて、それでも食いしばりながら前進した陽の下はもう既に半刻前の話であり、今は月の下で安堵を許されている。

 

 

しかし目を開ければ街にはもんむす。

 

人間を超えた人外種が闊歩している。

 

 

けれどそこに敵意や悪意などはまったく感じ取れず、むしろ人間の作り上げた街で共存と共生の二文字を抱きながら街を練り歩き、むしろ人間に仇なすような不届き者がこの街にいるならもんむすだろうと関係ない、そんな治安の良さが雰囲気から伺えた。

 

 

この大陸の北には【魔王】が居座っている。

 

人間なんかでは到底辿り着けない城。

 

しかしそこにいる現魔王は人間と争う気はさらさらなく、中立の立場で自然に任せる。

 

だから魔王の仕事はそれほどない。

 

仮にあるとすれば、人間を家畜として無惨に扱いたがるモンスター娘至上主義という、まさに世界の緊張感を高めてしまうような過激な派閥の取り締まりくらいか。そのくらいに今の世界は人間ともんむすの共生が良好である。

 

そしてそれを示すが如く、魔の大陸ヘルゴンドに鎮座するレミナの街だろうと人間ともんむすは平穏に暮らしていた。

 

 

さて___語り部の真似事はここまで。

 

 

 

「ご主人様、お疲れでしたね…」

 

 

こんばんは、私の名はメイル。

 

名前なんてのは最初は無かったんですよ?

 

そもそも天使に名前なんてなく、それぞれが与えられた名称に等しく役割を遂行する、そんな天の生き物でしたから。

 

しかし堕天したことで天界にいた頃の神力が薄れてしまい、人間のように苦楽を感じるようになると各々の持ち合わせる個性と欲求が明白になってしまった。そんな迷える羊になった私達にご主人様が地上で生きるための名前を落とし込んでくれたんです。

 

 

__君はメイル、これからそう名乗ろう。

 

__メイル……それが()の名前。

 

__ああ、()が名乗るべき証だ。

 

__メイル……メイル……メイル…!!

 

 

 

そうして私はあの人に救ってもらえた。

 

あの日からこの身体に意味が決まった。

 

 

 

だから。

 

ああ、だからご主人様。

 

 

貴方に与えてもらった、この名は。

貴方に落とし込まれた、この心は。

貴方に意味を刻まれた、この体は。

 

全てはご主人様のモノでございます。

 

 

だから、捧げます。

 

なんでもご主人様に捧げます。

 

メイルの全てを主人様に捧げましょう。

 

 

 

 

って、ことなので!

先ほどご主人様に天国を捧げました⭐︎

 

それはもう、いっぱいの、いっぱいに、されるがままに()がってくれましたね。

 

ピュッピュ、可愛かったですよご主人様⭐︎

たくさん出ましたね。

 

終始、好き勝手されて、本当に…うふふふ。

 

 

ま、好き勝手というよりは訳あって動けなかったというのが正しいですね。

 

最初から抵抗力も無くなすがまま。

 

お陰でマッサージなどが捗りました。

 

なにせご主人様はここまで本当に頑張りましたから。人間の身体でこの街まで。

 

 

この街に到着する数刻前___身体の魔力圧を切らす勢いで4回分の天軍の剱を放ち、意識は半分ほど飛びそうになっていた。

 

それでも目的地に到着するまでは気を緩めることなく、レミナから届いた援軍と共に行商人達の前を歩きながら剣を握り、ヘルゴンド大陸に住まうもんむす達と最後まで鍔迫り合う。

 

食いしばりながらも、闘争を緩ませないその姿はまさに勇者のようだったと周りの冒険者達はご主人様の姿を目に焼き付けていた。

 

だから酒場では天軍の剱で巨竜娘を一撃で倒したエリーカ・エコーズの英雄譚は酒の肴として盛り上がっているでしょう。ご主人様の凄さが伝わるなら良い事です。

 

 

ま、そんな当の本人はぐっすりお眠り中。

 

魔法圧を切らした反動と、サポートメインのはずの冒険家の職業にも関わらず率先して前衛職を務めた疲労、レミナの街に到着後は緊張が解けたのか膝から崩れ落ちそうになり、リセスが慌ててご主人様の身体をスライムのクッションで支えたりと勇敢な姿は事切れた。

 

しかし、それは仕方ないと行商人や冒険者達はご主人様に感謝を告げ、ご主人様もリセスに支えられながら今回共に踏破した仲間達に挨拶を交わし、そして解散と共にわたしはひと足先に宿屋に駆け込んで数泊分の部屋を取ってしまうとリセスを部屋奥に案内。

 

それからリセスはご主人様をもぐもぐと身体の中に飲み込むと衣類やら武器やらを解除させてしまい、そして下着姿でベッドに吐き出す。

 

ただリセスが美味しそうにもぐもぐしてたのはご主人様を味わっていたんでしょう。お陰で汗や纏わり付いていた聖素やらが身体から洗い落とされていたり、スライムの特技を感じられる。

 

あとほんのりとオレンジの香りもしました。

 

さりげなくマーキングするあたり抜け目ない筋トレバカでございますね。

 

後で拭き取ってやりましたが。

 

そんなご主人様はリセスのスライムボディにくちゃくちゃにされた圧迫感で半分ほど気絶してしまい、そのまま寝床に倒れると意識を落として寝息を立てました。

 

あとコルクとリセスも疲れてたのかそれぞれ寝床に転がり、空腹も忘れてぐっすり。

 

もちろん私も疲れていましたが、しかし前衛を務めていたご主人様ほどの疲労はなかったのでメイドとしてもう少し頑張ることにしました。

 

 

なーのーで、今回の冒険によって酷使されたご主人様の身体は後に筋肉痛で悩まされてしまうだろうと考えたので、私はご主人様の身体を揉みほぐそうとオイルなどを取り出して施術のために準備をする。

 

まずは疲労回復のためのマッサージ。

 

寝やすいように枕位置を調整したり、オイルを使って肌の滑りを良くしたり、目元にはあったかいタオルを用意したり、とある王宮に支えていた最強のメイドさんの本を参考に施術。

 

それから全身隈なくもみほぐし、全身がほぐれたらリンパを流し、それを下半身に溜め込ませることで下準備を行う。

 

 

下準備___それはとある理由がため。

 

 

ヘルゴンドの洞窟を踏破するためにご主人様はこれまで聖属性を幾度なく使用した。

 

実はあの聖属性は魔法属性ではなく、天使達が身体に秘めている【聖素】を攻撃エネルギーとして変換させた高濃度な属性物理攻撃。

 

それは天使に祝福されながら生まれた人間が天使の里で時を過ごした事で備わることになったアビリティと、ミカエラ様との修行により人間のできる限度で本格化させた聖属性の力。

 

結果として聖属性入りの閃光弾を、そして天軍の剱を人間の身で使用可能とさせてくれる。

 

しかし聖素を利用すればするほど身体にエネルギーを溜め込んでしまい、それは身体にあまり良くない。

 

いつだったか大罪人ハインリヒは天使を斬りすぎた結果、聖素を溜め込み過ぎたことで身体が変異化してしまい、人間ではなくなったという話がある。わたしが知らない頃ですね。

 

ただご主人様の場合はそれの1000分の1に満たないため変異化する恐れはミリもありませんが、しかしミカエラ様曰くミリ単位でも身体に聖素を溜め過ぎるのは良くないとされているため、聖属性の使用時に体内で活性化してしまった聖素を吐き出させる必要があるんです。

 

 

さて___吐き出させる。

 

 

それはどういう処置によって吐き出され。

 

 

そして、発散されるのか?

 

 

 

 

 

ふふっ。

 

察しの良い方なら分かりますね。

 

 

そうです。ご奉仕です。

 

ご主人様を天国に導いてあげるんです。

 

 

ふふっ、ご主人様はああ見えておっぱいに埋もれると結構幸せそうにするんですよ。

 

ご主人様本人は「たまたま俺の元にロリ巨乳が集っているだけだから!」と言ってましたが、それでもおっぱいでいっぱいにしてあげるとだらしなくなってしまうんです。

 

ふかふかで気持ちいいですからね。

 

 

普段は近所のお兄さんのような雰囲気で天使達に人間社会の楽しみを広め、地上の生活を安心させてくれる先駆者として慕われしお方。

 

けど必要とあらば地上で彷徨っている天使を助けようと世界を歩き、それで意味(なまえ)を落とし込んでくれたりと天使のために尽力してくれた私達の恩人さん。

 

天使にとってカッコよく映る救世主。

 

 

しかしそんなご主人様も人間の男の子です。

やはり性には素直です。

 

あ、別に軽蔑なんて全くしてませんよ?

 

男性はそれで正常なんですから。

何にもおかしくないですよ?

 

 

だから……ふふふ、良かったです。

 

そんなご主人様を満足させてあげれるおっぱいの大きなメイドで、わたしは幸運です。

 

 

なので___今宵は快がらせました。

 

ただほんのちょっと奥手な人ですから、マッサージを建前にそう致して、甘い雰囲気が引き金となったら、そのまま天国に導いてあげるのがご主人様に支えるメイドのエチケット⭐︎

 

そうして聖素の混じったありったけの情欲の証が柔らかな手に、ふかふかの胸に、この体に吐き出される。今日は特に多かったです。まあそれだけ聖素を使って戦っていましたから当然ですね。

 

だから頑張ったご褒美としてメイドの私はご主人様を労わる。する側もされる側も満足を満たせれる幸せなひととき、ふふっ。

 

 

結果、ご満足頂けたようです。

 

お陰で今はぐっすりですね。

 

全身から力が抜けてリラックスしています。

 

明日は元気に目を覚ませるでしょう。

 

素敵でしたよ、ご主人様⭐︎

 

 

あら?まだ腕に、拭き逃しが。

 

ぺろっ。

 

 

「はしたないのは分かっていますが、けれどご主人様の精は美味しいですね。やはり強いからでしょうか?強い人間の冒険者の精を欲するサキュバスの気持ちが少しわかる気がします」

 

 

聖素に関しては天使として馴染みがあり、それを堕天した事で発現した味覚がご主人様の味を喜んでいる。

 

 

皮膚からも吸収し、余さず飲み込んで…

 

ふむふむ、これはなかなかに……

 

 

「っと!あくまでこれはご奉仕。副産物に喜んでも目的を間違えてはいけません。ご主人様のために必要だからこの身体を捧げているのです。」

 

 

メイド服をパッパと払いながら宿屋に戻る。

 

 

さて、私も休むとしましょう。

 

明日からはヘルゴンド大陸にいる天使の捜索を始めなければならない。

 

そうなればより一層ご主人様のサポートに勤しまなければなりません。

 

メイドが万全でなくて何ができましょうか。

 

 

 

「ご主人様、おやすみなさい」

 

 

朝も昼も夜も、一日をやり切った冒険者。

 

そんなご主人様の寝顔を見送って私も寝床に潜り込んで眠る。

 

 

 

 

さ、明日もメイルがご主人様を支えましょう。

 

 

 

祝福の子、エリーカ・エコーズ。

 

そんな私達は貴方に捧げられる天使。

 

どうか永遠(とわ)に祝福があらんことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おはようございます、エリーカです。

 

朝から、めっちゃ元気。

 

魔法圧も戻り、身体もすこぶる調子良く、筋肉痛もそれほどないしで、体が軽い。

間違いなくメイルのお陰だろう。

 

寝ている間も体などがほぐされていた感覚もあったし、あと心地よかったし……

 

………ああ、そういうことか。

そういや4回全部使ったんだったな。

 

それで、か。

 

と、なると……木刀の補給が必要になるな。

 

いやでもエンリカで祝福された木材の木刀じゃないと天軍の剱が安定しないんだよなぁ。

 

一応、ジャスティスカスタムがあるから天軍の剱を使えないことは無いんだけど、まだ未熟故に刃こぼれとかで劣化させてしまったり、最悪壊してしまう恐れもあるし。

 

そうなるとこの剣を打ってくれたあの中華飯好きのパイパイとかいう天使に申し訳ないな。

 

 

やはり一度エンリカに戻るか。

 

ルシフィナとのエンカウントに気をつけて。

 

 

 

「ご主人様、おはようございます」

 

「おはようメイル。お陰で調子が良い」

 

「はい、ご満足頂けて幸いです⭐︎」

 

「……おう」

 

 

ニコニコと笑うメイル。

 

夜のこと思い出すとおもはゆくなってきた。

 

 

別にこれが初めてとかではないんだけど、ミカエラさんがエリーカの取り扱いに関してとかをエンリカの天使達に共有した故にエリーカ・エコーズの専用メイドとして誠心誠意尽くそうとするメイルがなぁ…

 

まあメイルじゃなくても他の天使達が俺の体内で活性化する聖素を感じ取るたびに寵愛を建前に()()()()()()を行おうと迫ってくるしで逃げ場無いんだけど。

 

まあ俺自身も聖素を溜め込んだりと放っておくべきにもいかないから聖素プロフェッショナルな天使達に任せるしかない夜があるという。

 

 

てか、聖素と言えば。

 

 

「ヘルゴンド大陸の東に墓場があるらしいな」

 

「墓場??」

 

「まあ墓場ってのは語弊で、正しくは封牢なんだけど、どうやら【大罪人ハインリヒ】がそこに封印されているらしい」

 

「え、ハインリヒ!?」

 

「ま!その名前聞いたことありますわ!話によれば勇者の中でも最強と言われた勇者ですの!スライムの界隈でも有名人ですわ!」

 

「なるほど。しかし何故ご主人様がその事を知っておられるのですか?」

 

「修行時代に知ったんだよ。俺が天軍の剱を使用するにあたって聖素の危険性を教えてくれるのと同時にミカエラさんが大罪人ハインリヒを教えてくれたんだ。聖素を取り込みすぎた人間の末路とやらを教わるためにね」

 

 

勇者ハインリヒ__幼少期に歴代勇者の本で読んだことあり、その時に名を知った。

 

そしてミカエラさんと修行中、人間の身で聖素を利用する際は気を付けておくべき点を学んだのだが、その際に大罪人ハインリヒの話から聖素を取り込みすぎた人間の末路を教わった。

 

てか、しれっと歴代最強の勇者とやらが大罪人かつ魔の大陸に封印されてしまったとかいう末路の方が驚いたわ。

 

事のついでに知る話では無いのでは?

 

天軍の剣レベルの衝撃だったわ。

 

ちなみにハインリヒは天界に反逆した事で女神イリアスに封印されたらしい。えぇ…

 

 

 

「まぁ最強知らしめた勇者だからこそ何かあったんやろ……でだ。ここから本題なんだが、この大陸にハインリヒが大罪人として封印されている封牢がこの大陸の目的地だ」

 

「封牢がですか?」

 

「ああ。何せその地を封牢として扱ったのは女神イリアスなんだ。その細工もおそらくは女神イリアスによるもの。そうなると天使達も女神イリアスが施したあの場所に聖素を感じて集っている可能性がある。確かめる価値があるだろ?」

 

「なるほどな。大罪人の封印地とはいえイリアス様の跡地が目印になるわけだな」

 

「てかそこが最終目的地だな」

 

「あら、魔王城まで里帰りはしませんの?」

 

「里帰りはオメーだけだろリセス。スライムを除いたらココには人間と天使と天使しかいねーよ」

 

「ご主人様、このスライムの脳には筋肉が詰まっています。あまり気にするべきではないかと」

 

「今日は朝からひどいですわね!?」

 

「当たり前です。昨晩皆が疲れている所を他所にご主人様をもぐもぐと味わってはお紅茶のオレンジペコの香りでマーキング。天使に寵愛されるべき方を勝手にされては困ります」

 

「あら、何を言いますの?エリーカはエンリカに住まう者達の共有財産ですわよ?」

 

「天使の共有財産です!」

 

 

 

「なぁコルク?俺ってオレンジの香りする?」

 

「料理人の鼻からすればバッチリとな」

 

「宿を出る前に湯水でも浴びるか。もぐもぐされたということは多分体に汚れないんだろうけど一応気分的にも浴びとくか」

 

「それが良いぞ、エリーカ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、朝湯と朝ごはんを済ませた俺たちは天使捜索の目的もあるが、初めて来たレミナの街を探索ついでに天使の情報も集めようと考えて今日一日は自由とした。

 

なので街を巡れるように3人にお金を渡して一度解散を伝えるとコルクは屋台巡り、リセスは筋トレ用の道具を探しにそれぞれ街を探索しようと駆け出し、メイルも気になる雑貨屋があったのかお暇を貰いますと一言告げて宿を出る。

 

 

「さて、俺は何処に向かうか……城とか?」

 

 

レミナには立派なお城があり、あと誰でも入れるように解放的なため、レミナまでたどり着いた冒険者はレミナ王家に挨拶しようとお城を訪問するらしい。

 

 

俺も挨拶はしておこうか。

 

昨日は挨拶もなく気絶してたし。

 

 

あと天使探索のためにしばらくレミナを拠点とするからこの領主に顔くらい出しておく必要があるだろう。

 

そう考えてしばらく歩くと…

 

 

 

「科学技術の発展を許すな!」

「イリアス様に天罰が下るぞ!」

「信仰を軽んじた行いをやめろ!」

「だからお声が聞けなくなったんだ!」

「怒りに触れた元凶を我らは許さないぞ!」

「出て来い!信仰の反逆者ども!」

「神の摂理に反する研究をやめろー!」

「ちくわ大明神」

 

 

 

誰だ今の?

 

あ、いや、違うか。

 

でも誰?ってのは変わりない。

 

なんだこのデモ活動は?

 

 

 

「人間って思ったより暇なのね」

 

「ランキュバスか。昨日ぶりだな」

 

「ご機嫌ようエコーズ。昨日はほんとうに大活躍だったわね。あまりにも素敵だったから労りも込めて夜襲ってやろうかと思ったわ」

 

「んなこと言って、昨晩はお好みの冒険者を見つけて宿にでも連れ出したんだろ?」

 

「あら、よく分かっているわね。なので昨晩は良さげな冒険者を引っ掛けて朝まで可愛がってあげたわ。ふふふっ。あの洞窟を抜けるほどに屈強な人間は本当に美味ね。貴方にお願いして良かったわ」

 

「そうかい。夜な夜な連れ込むのは勝手だけどレミナで行き過ぎた事はよしておけよ?」

 

「わかっているわ。それよりも…この集まりはなかなか鬱陶しいわね。別に私自身イリアスに対して思入れも何もなければ、もんむすとしては女神なんてのは敵なんだけど、しかしこれはこれで喧しいわね」

 

「話を聞く限りだと魔道科学技術の発展によって人の信仰心が滅んでしまうからこの状況を許したくないらしい。にしては支離滅裂なデモ活動だな。信仰という言葉を武器として扱ってしまっているし、なんだったら掲げているはずの摂理や定義も何処か外れてるし。何というか盲信者の厄介さが現れているなこのデモ。それとも本当に何かがあって危険を叫んでいるかのどれかだな」

 

 

つーか信仰先となる女神イリアスの住まいたる天界が2年前に落ちてんだけどね。

 

だがそんな事実を知らないイリアス教徒はここ数年間で一度も女神イリアスと交信できずに大変焦っている状況。

 

その不安が募り、いつしか攻撃性に変わってしまい、それがレミナの場合だと魔道科学技術の発展があるから女神イリアスに対して信仰が届かなくなったとか難癖付けて、それでこうして標的にされてるとか。よく見たら火炎瓶持っている人もいる。こえーなオイ。

 

 

「あとは純粋に科学発展が信仰の関心を奪ってしまうから無くすべきだとかでデモに加担してるケースだなコレは。そう言った意味では暇なんだろうな」

 

 

かと言って天界が落ちた事などを告げても仕方ないため、俺は触る祟りにの思考でデモ活動を通り過ぎて城まで足を進める。

 

ちなみレンキュバスはいつの間にか何処かに去っていた。サキュバスらしい自由奔放さでむしろ頼もしい限りだ。

 

ちなみに相方のリーキュバスは美味しそうな冒険者を見つけてこの時間も宿屋でお楽しみ中らしい。前日は結構大変だったのに元気だな。いや人間の精を吸ってるから元気になってあるんだろうか?やっぱ淫魔系って人間の何もかも上位互換だよな。これぞ上位種族。

 

 

 

「ようこそ、レミナ城へ」

 

「こんにちは兵士さん。ちょいと会見のために失礼しますね」

 

「ええ!どうか王様に出会ってください。ここまで辿り着いた冒険者の顔を見るのが大変楽しみでございます」

 

「分かりました」

 

 

サン・イリアとかグランドノアとかに比べてそこまで大きな建物では無いどころか、それの5分の1サイズしかない小さなお城だ。

 

でもこう見えて800年近くはこのお城のままレミナの歴史を築いてるらしい。魔の大陸にある街なのに長い歴史だな。すごいや。

 

 

 

「おお、もしやここまでたどり着いた新たな冒険者か!よくぞこの大陸まで参った」

 

「はじめまして王様。エリーカと申します」

 

「うむ、エリーカか。話は聞いておるぞ?どうやらレミナ貿易部隊のために尽力してくれたようだな。しかもこの数年間で一番被害なくヘルゴンド大陸まで辿り着いたと聞いておる。さぞかし腕の立つ冒険者なのだろう!」

 

「ありがとうございます。そう言って頂けるとここまで鍛えてくださった師匠に良き知らせとして持ち帰れます」

 

「うむ、そうしてくれ。さて…お主はこのヘルゴンド大陸まで来て何か目的でもあるのかな?もしや魔王城にでも向かうつもりか?」

 

「里帰りしたがる仲間はいますが魔王城は目的ではないですよ。ちょいとこの辺で人探しをしていまして。そのためにヘルゴンド大陸までやってきたまでです」

 

「ふむ、人探しか。この大陸にはレミナしか人間の住まう街は存在せぬ。もしそれ以外を探すならばそれこそ魔王城にいるかどうか。しかし現在の魔王が温厚な者とはいえ、それでも人外が集う魔王城だ。あまりこうは言いたくないが生死不明であるが故に希望を抱きすぎない方が良いだろう」

 

 

まあそれが普通の反応だろう。

 

レミナの外に足を踏み入れるなんて自殺行為に等しい。

 

だからここまで己の腕一本でやって来る冒険者はそれだけで英雄だし、そう扱われるに等しいレベルでこの大陸の外に希望は抱けない。

 

 

それから一言、二言は交わし、王様との会見を終えて階段を降りようとしたところに…

 

 

 

「待て!お主…っ、まさかハルトマンか!?」

 

「へ?」

 

 

 

一人の兵士が駆け寄ってきた。

 

 

「いや、待て…違うな。そもそもハルトマンは20年前にレミナを出た。こんな若いはずは…」

 

「ハルトマン…?ええと、父が何ですか?」

 

「な、なぬ!?ち、父……だと!?」

 

 

そういや父さんってレミナ出身だったな。

 

ただ自分が竜騎士だった以外あまり語らない人で、俺がヘルゴンド大陸まで向かう事を告げたら少しだけ神妙な顔してたっけか。

 

まあ俺がヘルゴンド大陸に行くこと自体止めることは一切しなかったし、なんならフィサリス演劇団の一員として責任を果たしてこいと背中叩かれたくらいだ。

 

 

「もしや、あんたは【エコーズ】の家名を持った子供であるの…か??」

 

「え?……ええ、まぁ…」

 

「そうか!つまり生き残りなのか!」

 

「あの?生き残りとは??」

 

「ああ、すまない。勝手に盛り上がって。しかしなるほど。その反応だと君はどうやら知らないようだな。改めて確認したいのだが君はエコーズの名を持った子供で間違いないのだな?そしてハルトマンという男の子供で合っているんだな??」

 

「はい、そうですよ。俺の名前はエリーカ・エコーズです。生まれはヘルゴンド大陸の外になりますが……その、父がレミナで何か?」

 

 

父さんの事に関しては謎だ。

 

人間の腕一本で竜騎士という上級職を最大練度まで登り詰めた冒険者という人間。

 

母さんが良くそうやって当時の父さんのことを自慢していた。

 

けれどそれ以外は知らず、レミナ出身であること以外を告げず、フィサリス演劇団はレミナに向かうこともなかった。

 

まあヘルゴンド大陸に関しては、行く自体が命と等価交換を強いてくる高難易度な道のりなのでフィサリス演劇団がその地に足をつける事はないが。

 

それでも父さんの初出は謎である。

 

 

 

「なに、君の父ハルトマンはレミナの竜騎士であり、レミナを出る直前までは部隊の副団長を勤めていた。ヘルゴンド大陸は高い山に囲まれた大陸だからな。人並み以上の脚力で山岳戦などお手のものでワイバーン娘などの飛行種を良く相手にしていたな。ともかくレミナの騎士としては腕の立つ人間だった」

 

 

ワイバーン娘を相手にしてた人間か。

 

そりゃ練度も最大まで行くわけだ。

 

そうなると親父って竜騎士として本当に強かったんだな。すげーわ。

 

 

「だがそれはハルトマン本人の話。その家名エコーズは貴族の名だ。何百年か前までエコーズには役割があった」

 

「役割?」

 

「ああ。エコーズは墓守の一族として鎮魂(レクイエム)を捧げながら死者を弔っていた。また命が天に無事に届くように空まで見送る天の高き一族でもあったな。高い山まで登り、時には天高く跳び、祈りと鎮魂を捧げ、この魔の大陸に縛られぬよう見送る。そんな一族。しばらくしてエコーズ家は貴族になったが、ある日を境に鎮魂を捧げるのをやめ、役割を放棄した」

 

「何故ですか?」

 

「ある、勇者を哀れみ……(いか)ったから」

 

「え?」

 

「すまない。ここではそれ以上は言えぬ。もし気になるならこの城にある記録室、その奥にある古書にレミナに存在した歴史書が何処かに保管されている。普段は誰も入れぬが、お主がエコーズ家の血を引いているのなら許可されるだろう。ただレミナを出たハルトマンはルーツに縛られることを止めた故に、息子にもそういうつもりはない。だがそれでもエコーズの記録が気になるのならそのルーツを明かすと良い」

 

 

 

そう言ってその兵士は去ろうとして…

 

 

 

「あの、最後になんですが…」

 

 

 

エコーズが役割を背負っていた一族なのは分かった。気になりもする。

 

だがそれ以上に気になることがある。

 

 

 

「何故?父は……ハルトマン・エコーズはレミナを出たんですか?」

 

 

「………理由、か」

 

 

 

その兵士は立ち止まり。

 

 

 

「ハルトマンは冒険者になりたかった」

 

「!」

 

「没落した貴族は騎士や商人となり、武勲や実績で名を売り、復権を望む。だがヘルゴンド大陸で上げる名など無い。ここでは争う相手がモンスターばかりだからな。ならば大昔に役割放棄した墓守も、鎮魂も、意味も失われた一族に明日など存在しないと言ってハルトマンは外を見ていた。そうして副団長の座を返上した後にレミナから姿を消した」

 

「…」

 

「しかし今でもハルトマンはエコーズを名乗っているようだな。そして生まれた子供にもその家名を刻んでいる。ならば何か意味があってまだ名乗っておるのだな?」

 

「……父さんは演劇団の団長をやっています。多分エコーズはそこに意味があるかと…」

 

「そうか……エコーズ、それは過去を思い返させる意味を持つ。死んだ者は過去の存在であっても人の営みで忘れんとさせるための反響音、それが【エコーズ】という意味だ」

 

 

フィサリス演劇団はあらゆる人達で集われた。

 

そこには元冒険者や、それこそ没落した貴族などが、またもう一度と世界を歩き回る。

 

その過程で演劇を行い、外を知った先駆者としての旅路を客人たちに記憶を乗せる。

 

 

それがフィサリス演劇団。

 

弾けんとする『鬼灯』の集い。

 

 

そして__エコーズ、または反響音。

 

父はその名を多分まだ愛している。

 

 

ただ……レミナが窮屈なだけだった。

 

竜騎士として跳ぶにはもっと広いところが良いと求めて、ハルトマンという男は人間にとって過酷な世界でも構わんと、巡る。

 

そこにエコーズの役割は無い。

 

ただ、ハルトマン本人が外を見ていた。

 

 

 

なんだ、やはり俺も父親の子じゃないか。

 

だって俺も、エンリカで収まらない人間として天使たちを探しに世界を旅立ち、巡る。

 

外を見ていたんだ。

 

人間にとって過酷なこの世界を。

 

 

 

 

「我が友が、息災で何よりだ……」

 

 

「え?」

 

 

 

そう言ってその兵士は俺の前から去った。

 

軍靴を鳴らし、その老体を背に見せて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___天に返すとは?

 

誇りはあった、その意味に。

 

 

しかし、何故こんなにも痛ましくなる??

 

 

ただ二人は愛してただけなんだ。

 

なのに何故、許されなかった??

 

 

人も、もんむすも、関係ない。

 

惹かれていた、それだけの慈しみ。

 

 

だが、天は許されなかった。

 

いや違う、■■が許さなかった。

 

ああ、許されなかったんだ、彼は。

 

 

そこにある強欲と醜さを知った。

 

天から見下ろす独裁者の真意を見た。

 

 

ならば墓守などに意味はない。

 

鎮魂に意味を齎せる事も叶わない。

 

 

であるなら、もう終わらすべきだろう。

 

 

ああ、現在の魔王9世よ。

 

姉を憎みながらも、寄せていた妹君よ。

 

憎悪と悲恋を知った我らは捧げれない。

 

この者を送るのは、もう叶わない。

 

叶わないのだから。

 

 

 

 

大罪人と被せられた、勇者ハインリヒ。

 

たった一人の魔王(アリス)を愛した、架け橋よ。

 

だがそれは許されなかった。

 

だから我らは天の存在、女神の存在を疑う。

 

もうこの役割に意味を齎せれぬ。

 

 

だから…

だから…

 

 

ああ、だから……

 

 

 

 

エコーズは何もかもをこの日に棄てよう。

 

墓守も、鎮魂も、橋渡しも、何もかも。

 

そこに意味を覚えれないのだから。

 

天は__いずれ砕け、堕ちるだろう。

 

それを地の底で願っていよう、我らは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「イ…………リ………ア……ス……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なぜ?なぜ?ナゼ?

 

 

 ぼく、の、あいする、つま、を?

 

 

 そ、して、ぼく、の…

 

 

 むすめ、を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  コロし、た???

 

  女神____よ。

 

  何故、だ ? ? ? ?

  

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、ハインリヒって一人だよな?」

 

「ええ……逸話などを、聞く限りでは…」

 

 

 

 

大罪人ハインリヒについてはあまり多くは語らなかったミカエラさんだったが、でもその勇者とやらは彼一人だ。しかし…

 

 

 

「それなら、なぜ()()あるんだ??」

 

「わ、わからないですわ…」

 

 

 

 

何故か【二つ】の(いしぶみ)が立てられている。

 

 

二つ??

 

俺の記憶が間違っているのか?

 

 

……いや、そんなはずない。

 

あんな天軍の剣レベルな話を急にぶち込まれて記憶に刻まれているんだ。

 

 

ハインリヒとは一人だけだ。

 

二人も存在しない。

 

だから俺の記憶は疑えない。

 

 

 

でも…

 

しかし…

 

 

 

 

 

「何故、()()()()()()()()んだ???」

 

 

 

 

 

女神の力で封印されているはずだ。

 

そう簡単に解かれないはずだ。

 

しかし目の前の光景を疑う。

 

だって、これは明らかに…

 

 

 

「解かれてないか?___この、封印」

 

「…」

「…」

「…」

 

 

 

その声に誰も反応しない。

 

この封牢に俺たち以外が居ないから。

 

 

 

 

 

なにか…

 

何か、が…

 

ここを最初として、始まっている。

 

 

 

 

 

「急いで、この場から離れるぞ…」

 

 

 

 

 

いつこうなったのかはわからない。

 

だが、多分遠くない過去の出来事だ。

 

そう予感してたまらない。

 

その場から引き返そうとして___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   『 待 っ て く れ 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

___ 勇者 の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

つづく

 







お前、あの祠を壊したんか! な、件について。



【エコーズ家】
語られた通りに昔存在した墓守の一族。ヘルゴンド大陸で亡くなられた死者が魔の大陸に縛られぬよう鎮魂を捧げ、天まで魂が届くように見送る役割を背負っていた。貴族となってからも役割を果たしたが、ある日を境にその役割を放棄した。それでも墓守としての立ち位置を守りながら貴族としてレミナの墓をしばらく管理していたが、いつしかただ見守るだけの墓守役も貴族である必要が無くなると徐々に没落していき、前代の死を引き金にハルトマンはエコーズ家を放棄することにした。

ヘルゴンド大陸から始まった一族なので血筋はかなり優秀な部類で、竜騎士のような身体能力を存分に使った職業を主流としていたため生まれ持つ肉体はそこらの人間より優秀。その逸話では天に昇る魂を守り見届けるために龍と空を駆けていたとも言われている。

そんな血筋なのでエリーカはミカエラさんの修行(天使兵基準)にも耐えれたし、天軍の剣(手加減)にも耐えれたし、ルシフィナさんの明けの明星(手加減)にも耐えれたんですね。やっぱり普通じゃなかったなこの主人公。まあ人間の身で天軍の剱を使ってる時点で普通じゃないんですけど。はい。



じゃぁな!
またな!
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