転生して花屋になりましたが、せっかくなので世界を救おうと思います。 作:ジンの兄貴
翌日、ライモンシティ。
「んー、、、ゲームだとダッシュすれば30秒くらいで回れたのに」
ニヤァァ、、、
この世界に来て感動したのが街が広い、とにかく広いってこと。
ダッシュしても5時間はないと一周できないし、そもそも道分かんないし。特に遊園地なんてマジで舞浜方面のあそことどっこいどっこいな程にアトラクションも豊富だった。
隣を歩くレパルダスは「こんなの慣れっこ」と言わんばかりに大きなあくびをぶちかましている。あれ?これって僕だけ田舎者みたいな感じですか?
とまあ、今日ここに来たのは遊園地で遊ぶわけでも観光しに来たわけでもない。目線を少し上に上げ、街中にでかでかと設置されたモニターを注視した。
感覚としてはニューヨークのタイムズスクエアに近いが、ブランド品の宣伝やイベントの告知が次から次へと目まぐるしく移り変わっている。
『さぁ!本日はパイモンシティのジムリーダーでありながら、モデルとしても大活躍中のカミツレさんにお越しいただきました!』
『よろしくお願いします』
モニターの中には黒髪が美しくなびき、イエローのダッフルコートのようなものを着たカミツレさんがいた。ゲームでも美人とは思っていたけども現実で見るとなかなかエグいな、、、綺麗すぎる。
カミツレさんの麗しい黒髪、そして何よりジョインアベニューがあるということ、よってここは2年後のbw2の世界ってことになるのかな。
「、、、まてよ?」
だったらなんでプラズマ団の情報が一つもないんだ?周りの誰に聞いても、図書館のパソコンで調べても、プラズマ団というワードは一つも出てこなかった。
もしかしてゲームとは違う感じで物語が進んでいるのか、あるいは僕というイレギュラーが起きたことで、、、いや僕まだ何もしてないからありえないか。はは。
「やっぱカミツレちゃん綺麗だなぁ!」
「わたち、かみつれさんみたいなる!」
「カミツレさんとレインちゃんのどっちを取れば、、、悩むっ!」
「ねぇ、どこに問い合わせたらカミツレさんと結婚できるかな?」
僕の周りにはカミツレさんが映ったことによって、あっという間に聴衆の団体が生まれてしまった。恐るべき集客力である。
僕はカミツレさんが写っているモニターに背を向け、名残惜しくもその場を離れていく。どうせ今から会いにいくから。
「今のメンバーだったらカミツレさんにも勝てるだろうし、ジムリーダー1人を味方につけたらリーグ申請も通るだろ」
ということで、とりあえずポケモンリーグ挑戦をしようと思い立ったのでジムに行きます。まだ公式に手続きをしたわけではないが、ジムリーダーに勝てばそれをすっ飛ばしていけると思ったので。
そしてなぜライモンジムなのかといえばここのジムリーダー、カミツレさんがいるから。何を隠そう僕のBW内推し美女TOP5に入る人だから!!
「そんじゃ、いっちょカチコミと行きますか」
ニャッ!
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ライモンジム内
「あぁぁぉぁぉぉぉああぁっっ!!!」
ニャァァァァァーーッッ‼︎
ポケモンジムの中に響きわたる僕とレパルダスの超音波、戦うことしか考えてなくてこのジムがジェットコースター式に設計されてたの忘れてた、、、
僕は前世でも群を抜いてジェットコースターが苦手です。レパルダスはこういうのも好きなようですっごい笑顔で楽しんでるかわいいああああぁぁぁっっ!!
「はぁっ゛、、、あぁぁぁ、、、、、、」
ニャァ?
ようやく最後の1本を乗り終え、久しぶりの地面に両手両足をつけて深呼吸をする。余裕そうなレパルダスは嬉しそうに僕の周りをトコトコ歩き回り、もう一回と言わんばかりに服の裾を加えて引っ張ってくる。やめてくれ、マジで。
「あなた、大丈夫?」
「ちょっ、、、まっでくだざ、、、、、、い、、、」
誰かが僕に声をかけてくれたけれど、今の僕に答える余裕なんてみっっっじんもない。死ぬ5秒前くらいのテンションで息を整えます。
そうして息を整えること約7分、ちょっと引き気味のカミツレさんに水を渡されながら話し始めた、、、、、、カミツレさん?
「随分と私のジムを楽しんでくれたみたいね」
エモッ!
先ほどまでモニターの中で楽しく談笑していた彼女はいつの間にか目の前で微笑んでいる。女神かな?
肩にはエモンガを乗せ、僕を小馬鹿にするようにニヤニヤと笑っている。あとでこいつは絶対にぶっ飛ばす。
「えぇっ!かわいっ、、、!」
「ふふっ、お世辞として受け取っておくわ」
「対応も大人すぎて完璧すぎません?」
「いいえ、それでは君の要件を聞こうかな」
「はい、、、カミツレさん!バトルお願いします!」
「えぇ、もちろん。ここまでお疲れ様ね」
お疲れ様という言葉を発するカミツレさんの表情に若干の半笑い感が否めない。推しの前で醜態を晒してしまったが、バトルで挽回すればいい話や。
「それじゃあトレーナーカードを見せてもらってもいい?」
きた。この質問。前に僕がポケモンリーグへの挑戦申し込みをしようとポケモンセンターに行った時と同じ質問だ。
この世界でいうトレーナーカードは前世でいうところの免許証とか住民票とか、身分証明書にあたるものだ。
もちろん今の僕にそんなものはねぇ。発行の仕方がわからないから。
ここで「家に忘れました!」とか言ってもどうせ門前払いされるだろう。そこで頭の悪い僕が思いついた唯一の策があります。
それは、、、、、、!
「ありませんっ!」
「え?」
「トレーナーカードはありませんっ!」
そうです。正直に言う。学校でも親からも「正直に生きなさい」と教えられていたのでこうするしかないんです。
まあこの後のカミツレさんの出方ではある程度は予想できるからなんとかなる、、、はず。
「、、、あのね、トレーナーカードがないとリーグ挑戦はできないの」
「えぇ、それが何か」
「何かって、、、申し訳ないけれどチャレンジは受けられないわ」
だろうと思ったわ。なんとかなるわけにはいかなかったかー。
まあでも、こっからが僕の立てた作戦ですよ。
「カミツレさんってポケモンバトルがお強いんですよね?」
「ジムリーダーとして恥じない程度の力はあると自負しているけど」
「じゃあ僕に負けたらジムリーダー交代してもらっていいですか?」
「、、、自分で何を言ってるか分かってるのかしら。」
「もちろん」
「なら、あなたが負けたら何をしてくれるのかしら」
初対面かつ明らかに年下、こんな若造にここまで言われて引き下がるようなカミツレさんはいない。それに加えてカミツレさんは他のジムリーダー以上にポケモンバトルに熱い人だ。
アニメだと馬鹿みたいなのに成り下がっていたが、こちらのカミツレさんはゲーム版のようでとても助かる。
「2度とリーグ挑戦はしないし、あなたに喧嘩を打ってボコボコにされたアホということでSNSにあげていただいて結構です」
「ふふっ、面白い子、、、いいわ。3対3の勝ち抜きバトルにしましょう」
よし、カミツレさんはクールかつ人一倍にバトルへの情熱があるという設定通りだ。ここまでコケにされて黙っているわけにはいかないだろう。
さぁ、本気のカミツレさんはどれほどのものか、、、
ギシギシギシ、、、
「ん?この音はなんですか?」
「最近は特に挑戦者が多かったから無理をさせすぎちゃったみたいね。この前メンテナンスに来てもらったばかりなんだけど」
「まあバトルに支障がなければなんでもいいですが」
「えぇ、ライモンジムも新しく増設してるの。あと数週間もすれば完成するし、ここでジムバトルするのも残りわずかってところね」
「、、、なるほど」
ここでカミツレさんが言っているのはBW2のランウェイ型ジムのことだろう。つまりここはBWからBW2にかけたどこかしら、さしづめBWから1年ちょっと辺り経った頃だろうな。
「それでは始めましょうか。あなたは審判をお願いできるかしら」
側に控えていたモデルさんにカミツレさんが指示を出した。待ってこの子も可愛いんだけど。あとでうちの花屋を宣伝しておこう。
「それではお二人とも、初めのポケモンをお願いします!」
彼女が用意の合図を出す。お互いにトレーナーの位置へ立ち、ベルトにつけたモンスターボールを一つ手に取った。
ニャァ!
ううん、君の出番はまだなの。レパルダスちゃんはもうちょーーっとまっててね。
「それではお願いします!」
「えぇ、愛しのポケモンたちであなたのことクラクラさせちゃうから」
「待ってください録音したいのでもう一回お願いしていいですか?」
「、、、、、、ゼブライカ!スポットライトの中へ!」
一瞬だけ目の中からハイライトが消えた気がしたのだが、カミツレさんが天井に向けてモンスターボールを放った。投げるのも綺麗だなぁ!
しかもゲームでもアニメでもみたゼブライカ!本当の馬みたいに筋肉すごいし、立髪に電気が走っているのもめちゃくちゃかっこいい!ゲットしたい、、、
「さ、あなたも早くポケモンを出しなさい」
「あの、、、録音は、、、、、あとゼブライカの写真も」
「早く」
「はい、すみません」
若干の残念な気持ちを噛み締めつつ、僕も弱々しくボールを投げた。推しに怒られるのなんて恥ずかし、、、いや悪くないか。
僕は後ろを向き、ジム内に響き渡るように叫んだ。
「よっしゃ!ちゃんと見ててくださいよー!頼むぞランクルス!」
クルゥッ!
緑色のぶよぶよした愛おしすぎるパートナーが元気よく飛び出してきた。なんかザキ〇マみたいな鳴き声してたなこいつ。
僕のランクルスは出てきて早々にゼブライカに睨みを効かせ、短い手でシャドーボクシングを繰り出した。おかしいな、君って物理技覚えてないはずなんだけどな。
「先行はどちらかしら」
「差し上げますよ」
「あら、優しいのね」
ランクルスとゼブライカだと素早さ的に考えて技が避けられる可能性が高い。この世界のポケモンバトルはアニメのように「避けろ!」やサトシのようなトリッキー回避がそこそこあるんでまずは慎重に。
「ゼブライカ、ニトロチャージ!」
一瞬にして轟々と燃えたぎる炎を身に纏い、鍛え上げられた4本の脚でフィールドを蹴り上げた。技の指示を受けてから実行に移すまで、流石の速さだ。
ゼブライカはどこから攻撃を仕掛けようか見極めているようで、ランクルスの周りを忙しなく動き回っている。
「、、、、、、、、」
「あら、指示をしないなんて薄情なトレーナーね」
「薄情ですか、心外ですね」
前々から思ってたことがある。どうしてどのトレーナーも"わざわざポケモンに指示を出す"のだろうって。なので僕が考えた最強の戦術があります。
「ゼブライカ!今よ!」
カミツレさんの指示を数コンマの間に汲み取り、ゼブライカはランクルスの背中に向けて走り出す。辺りを駆け回り、炎の弾丸となったゼブライカがランクルスにぶつかった。
と思うよね。
クルゥッ!
「なっ、どういうこと?!」
「いーよ!それじゃあプラン通りに行こうか!」
ランクルスはゼブライカのニトロチャージが当たる寸前、得意のサイコパワーで宙に急浮上した。そしてそのすぐ後にはサイコキネシスでゼブライカを持ち上げ、壁に向かって投げつけた。この一連、この世界でのバトルならばよくあることだ。
トレーナーの指示が何ひとつなかったという点を除けば。
「ゼッ、ゼブライカ!」
「焦ってるのが見え見えですよー。ランクルスー、そのままいっちゃおうか」
ランクルスは僕の言葉が終わる前にサイコキネシスでゼブライカをもう一度持ち上げる。すでにかなりのダメージを負ってしまったらしいゼブライカは長い首が少しぐったりとしている。
そしてそのまま、今度はバトルフィールドにゼブライカを叩きつけた。ゼブライカの目見ればアニメのようなグルグル目ではなく、熱い闘志を含んだ目でこちらを睨みつけていた。
「ゼブライカ、、、!」
「ランクルス、とどめの準備しようか」
「とどめとは舐められたものね!私のゼブライカはまだやれるわよ!」
どうやらここのカミツレさんは自分のゼブライカをまた信じているようだ。本来ならば愛する推しに花を持たせてあげたいところだけど、僕も早くポケモンリーグ挑戦、そして旅に出たい。
申し訳ないけれどランクルスで3タテの方向性で行かせてもらおう。
「ゼブライカ!ニトロチャージよ!」
「それは悪手じゃろ」
クルルルゥゥ!
またゼブライカがこちらに向かってぶっ飛んでこようとしたのと同時に、ランクルスが声を上げてある技を使った。紫色の半透明な正方形がいくつもおり重なり、規則的に並んでいく。そしてそれが立方体となり、バトルフィールドを丸々飲み込んでしまった。
そして、先ほどまで目がまわるような速さで駆け回っていたゼブライカが突如として欠伸が出てしまいそうなスピードになってしまった。
「これは、、、!」
「ご存知の通り、トリックルームです」
「これも作戦通りって?」
「はい、うちのぷよぷよボディはかなり遅めなので。あとこれで僕の勝ちです」
「、、、馬鹿にしないでっ!!」
カミツレさんのことを馬鹿になどしていない、むしろ馬鹿にされたいくらいだ。まあそんなことは置いておいて、僕が勝ったというのも結構本気の発言である。
ゼブライカがゆっくりと近付いてくる間にランクルスは目を瞑って何度も何度もなにかを呟いている。現実世界のゲームでも幾度となくお世話になってきた「めいそう」の動きだ。
「チッ、、、めいそうね!」
「待ってください後でもう一回舌打ちしてもらっても」
「ゼブライカ!ワイルドボルト!」
「無視かぁ」
どうやらカミツレさんはランクルス撃破を次のポケモンに託すようだ。まあゼブライカもさっきのサイコキネシスでそこそこのダメージを負っているし、次に繋がる動きをするのもセオリーといえばそうなる。
まぁ、それも無駄だろうけど。
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「、、、しょっ、勝者!チャレンジャー!」
それからのバトル展開はあっという間と言っても過言ではない。めいそうをゴリゴリに積みまくったランクルスはトリックルームのおかげで強力なサイコパワーと俊敏なスピードを兼ね備えた最高戦力のぷよぷよとなった。
ゼブライカはあのままワイルドボルトを当てることなく沈み、のちに出てきたエモンガ、シビルドンも同様にランクルスの前に瀕死状態となってしまった。
「そんな、、、、」
「お疲れ様でした」
膝をフィールドにつけ、呆然という言葉がピッタリと当てはまる顔をしているカミツレさん。今ではトリックルームもすっかりと効力を失い、いつも通りのゆっくりとした姿になったランクルスもどこか自慢気だ。まあこれで僕の目的は果たせたようなもの。
「約束は忘れていませんよね?」
「、、、、、、えぇ」
「まあ別にジムリーダーなんてやりたくないので良いですけど」
「えっ?」
「実はカミツレさんには僕のポケモンリーグ挑戦を後押しして欲しいんです。まあ鬼滅でいうところの継子みたいなもの、、、いや分からんか」
良い感じの例えが全く浮かばないので会話の雰囲気が若干、気まずくなってしまった。誰かもう1人くらい転生者いたら話が通じるのになぁ。こういう時に玲がいてくれたらなぁ。
「、、、あなたの実力は痛いほど分かったわ。私があなたのリーグ挑戦を支援しましょう」
「まじっすか!」
「異例な事だけど、今回のバトルレコーダーを協会に見せればすぐにOKが出ると思う」
「よかったぁ〜、、、!ランクルスありがとなー!」
クルルゥッ‼︎
「ふふっ、変な所もあるけど本当にポケモンが好きなのね」
「、、、ほんとにカミツレさんって可愛いですね」
「まったく、そういうことは女の子に何度も言う事じゃないわ」
「えっ!自分のこと女の子っていう人ですか!いやーギャップですねー!」
カミツレさんが少しだけ顔を赤らめていたところをシャッターに収めようと、ポケットからカメラを取り出そうとした時だった。
ギギギギギィィ、、、ガンッッッ‼︎!
「え?」
「なんすか?」
僕らが天井を見上げた瞬間、ジェットコースターのレールが降ってきていた。へぇ〜都会は降ってくるものもすごいなーと一瞬だけ考えたが、次の瞬間にはランクルスへの指示が反射的に口から出ていた。
「ランクルス!サイコキネシスッ!!」
ランクルスも僕の糸を先に読んでくれていたようで、すぐさま両腕を天井に向けてサイコパワーを放つ。あと数秒遅ければ、僕は2度目の死を迎えていただろう。
先ほどまでのバトルで使っためいそうの効果が残っていたようで、そんなランクルスはいつも以上に頼もしい。
「ゆっくり下ろしてね」
「はぁ、、、はぁ、、、、、!」
「カミツレさん?」
「いっ、いえ、、、、、はぁ、、、」
息が絶え絶えとなり、自分の肩を抱くように両手を回している。どうやらかなりの恐怖を感じたらしい。まあこうなってしまうのも無理もない。
「大丈夫ですよ、大丈夫」
「ありがとう、、、」
雰囲気で抱きしめようとも思ったけど、変なボディタッチは嫌われるというSNSの情報を信じてやめておいた。
ランクルスがレールを静かに置き、褒めて褒めてと言わんばかりに僕に向かって飛びついてきた。かわいいやつめ。
「それじゃあ早く出ましょうか、まだレールが落ちてくるかもしれないので」
「だけどレールが、、、」
「あぁ、じゃあランクルスに運んでもらいましょう。お願いできる?」
そう言って目配せすると『まかせろ』と力こぶを作るような仕草を見せたランクルス。ほんとにかわいいやつめ。
「カミツレさん、それでは行きましょう」
「えっ、えぇ、、、」
「、、、?」
カミツレさんが膝を地面につけたまま立ち上がらない。彼女はなんともない様子を装おうと頑張っているが、おそらく腰が抜けてしまったのだろう。
「どうぞ」
「、、、ごめんなさい」
「いえいえ、せーのっ」
僕は彼女に手を差し出し、掛け声をつけて立ち上がらせた。しかし勢い余って彼女が僕の胸に手をつく形となってしまった。
「きゃっ、、、」
「あっ!ごめんなさい!」
「ううん、大丈夫」
カミツレさんの国宝級美形顔を間近で見ることになった。しかも「きゃっ」という可愛すぎる声、そして「ううん」という普段なら言わない女の子らしい言葉遣い。やばい、浴びる尊さが致死量で死ぬって。
「ごめんね、ランクルス。それじゃあ入り口まで頼むよ」
カミツレさんと僕は心地いい浮遊感を得ながら入り口に向かった。その間、彼女は僕に抱きついたままであった。うん、来てよかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ライモンジム 入り口
「今日はごめんなさいバトルでも不甲斐ない姿を見せてしまったわ。それに危険な目にも合わせてしまって」
カミツレさんは僕に向かって深々と頭を下げ、心からの謝罪を僕にくれた。こういう誠実な所もめちゃくちゃ良いポイントだわ。
「いえ、僕としてはいい経験ができました。ジェットコースターも一生分楽しみました」
「ふふっ、そうね」
それから彼女は僕のポケモンリーグ挑戦を斡旋する申し出をしてくれること、準備ができたら連絡をくれること、そしてそのためにカミツレさんの電話番号をくれた。
そして何よりのビッグイベントが次ですよ。
「あぁ、、、その、これからのことも話したいし、今日のお詫びを兼ねて食事でもいかがかしら」
「え?」
「もちろん何か予定でもあるのなら無理にとは」
「行きます、どこまでも」
「はぁ、、、そう言ってくると思ったわ」
呆れたように、それでも少し嬉しそうな表情に見えたのは僕の思い上がりだろうか。まあ僕が喜びを隠しきれず、思いっきりガッツポーズをしながら話しているので笑われているのだろう。
「それじゃあ行きましょうか、私がよく行くところで申し訳ないけれど」
「なおさら行く理由ができました」
僕らは夕暮れの中、ジムを背中にカミツレさんの行きつけのお店へと向かった。これから彼女と食事というビッグイベントを前に高鳴る気持ちを抑えることができず、ちょっとだけスキップ気味に歩いていたのはここだけの話。
と、そんなバカなことは置いておいて。今回のことは奇妙な点がいくつかある。
まずはレールの崩落についてだ。カミツレさんは「メンテナンスをしたばかり」と言っていた。そんな中でレールの崩壊ということが起こり得るだろうか、いささか疑問ですねぇ。
あともう一つ、僕らがバトルをしているのを見ていた奴がいる。僕は昔から陰キャ街道まっしぐらであったから人一倍、人の視線に敏感である。なので背中からでも誰か見ているという視線はわかっていた。後ろを向いて叫んだのをきっかけに視線は無くなったから、やっぱりあれは関係者のものではないだろう。
恐らく、このレール崩落は誰かに仕組まれたものである。しかもカミツレさんを狙った命に関わることを。
「、、、はぁ」
「どうかした?」
「いえ、トマト出てきたら食べられないなぁと」
「トマト嫌いなのね」
「ドレッシングじゃぶじゃぶにすれば」
「私は好きよ、トマト」
「じゃあ僕も好きです」
「なによそれ、、、ふふっ」
カミツレさんの笑顔を見ると考えたことがどうでも良くなってしまいそうになる、、、が。そんなわけにもいかない。
とりあえず食事を思いっきり楽しんだ後に考えよう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
???
「そうか、失敗ですか」
「申し訳ないです」
「まあチャレンジャーが私たちの想像の上をいってしまった。それだけのことです」
また大人たちが僕にはわからない話をしている。一体なんのことだろうか。
「ジムリーダーが痛い目を見れば、世間の目が変わる契機となる」
「次はどこのジムにいたしましょうか」
「そうですね、、、そういえばヒオウギに新しいジムができるそうですね」
「えぇ、まだ10代の若者です」
僕と同じ世代かぁ。トモダチはいっぱいいるのかな。森にいた僕のトモダチはみんな元気にしているのかな。
「それではタチワキのジムリーダーとともに」
「えぇ」
僕は会話の輪に含まれているようで含まれていない。それぞれが正八角形の各頂点に座っているのだが、僕はその一つの角をなしていない。
「それではN様、我々は次の作戦に参ります」
「うん、分かったよ」
また一つ、僕の知らないところで世界が動いた。