厄ネタ×二乗は一周回って厄ネタではない(白目) 作:ハゲチャビン
そこに孤独の寒さも無く、全てが共に有るのだ。
故に、屍山は嗤う。
「Dr.ロマニ! どういうつもりですか!?」
管制室を満たす様な怒声が響き渡った。
声を荒げた人物――カルデアのスタッフの前にはジャンヌ・ダルクをと共にラ・シャリテから退却する藤丸達の姿と、『Connection Lost』の文字のみが映っているモニターがある。
「文目さんの要望とは言え映像も――音声すらも遮断するなんて何を考えているんですか!?」
この場に責任者であるロマニに非難を続ける彼以外にも、似た思いを抱く者はいるようで、無言を貫きながらも視線を向ける者は多い。
一方、避難の矛先であるロマニ・アーキマンは依然として沈黙を続けている。
「ロマニさん!!」
「そこまでだよエリオット君」
その様子に耐え切れずに立ち上がり詰め寄ろうとする彼を、レオナルド・ダ・ヴィンチは静止した。
「君が、いや君たちに思うところはあると思うけども、今は藤丸君のサポートと二人のバイタルチェックに集中して。特にバイタルチェックは文目君の状況もあるんだから」
「しかしっ――」
「エリオット君」
二度目の静止。それで彼――モニターを担当していたスタッフは感情を飲み込みながら再び席に着いた。
それを確認するとダ・ヴィンチもまた、自分の業務を再開する。
それを眺める獣が一頭。
毒々しい程に豪奢な玉座に座り、薄ら寒い微笑を浮かべながらグラスを傾けている。
「旦那はん。大丈夫か心配やわぁ。ドラコーはんもそうやろ?」
待機中の酒呑童子が口を開く。その内容は自身の主を心配し、不安に思うように思える。
しかし、ドラコーはそれを鼻で笑うと一言で切って捨てた。
「心にもない事を」
「あら、気付きました?」
言葉とは裏腹にその表情は笑顔であるからだ。指摘された当の本人は悪びれもせずクスリと笑う。
まともな人間ならばスタッフたち同様に彼の安否を案ずるだろうが彼女達にはその様子が無い。
何故か。その理由は単純である。
「あの異界の獣共の手綱を握っている者がアレで死ぬわけが無かろう」
召喚陣が起動した時に感じた気配に惹かれ、本来の縁を喰い潰し、陣を侵食し顕現した時に一目見て震えたものだ。
あれほどの醜悪な獣達が存在するとは。あれらがいた世界はさぞ碌でも無いものだろう。
「しかし……彼奴の様子が見れないのはつまらん」
「あら、まだ面白そうな坊がおるのに?」
ドラコーは再び鼻を鳴らす。しかし、そこに込められた感情は先ほどとは対照的だ。
「興味が無いわ」
確かに面白いとは思う。或いは別の世界線ならば、自分の手綱を握る騎手にもなっていたかもしれない。
しかし、彼女はそれ以上に興味をそそられる対象を見つけてしまったのだ。
異界の獣を従え、それでいて尚まだ見ぬ獣達との縁を持つ自身の主――文目扶朗を。
「しかし。この状況は些かつまらぬ」
彼が自分でカルデアとの通信を閉ざすように要請し、それが通ってしまった以上その劇を見ることができない。彼女は今暇を持て余している。
これ以上見れない以上、自分の部屋に戻るか――そう思案したが、やはり演劇の続きを見れないのは心残りだ。
「ならば仕方がない」
そう呟くとドラコーは指を鳴らすと、彼女の前に魔力で編まれた鏡が出現した。
そこには、文目扶朗とその周辺の様子が映し出される。
自身の権能――単独顕現と、自身と彼のサーヴァントとしての縁を利用し周辺に映像を送受信できる鏡を出現させたのだ。
「これだけの手間を掛けさせたのだ。その苦労に見合わぬ演技をしようものなら、我の労力の対価を支払ってもらおうか」
「面白いことしはりますわ。ウチも相伴にあずかってもええ?」
「好きにしろ」
二人は再び各々の器に酒を注ぎ、観劇を続けるのだった。
竜の魔女と呼ばれ、畏れられている黒きジャンヌ・ダルクは今日も己の復讐心の儘に一つの街を地獄に変え、次の標的に向かって進軍を開始して暫く。先程壊滅させた街にサーヴァントの反応を検知したために戻っていた。
戻ってはいた……しかし。何かがおかしい。ラ・シャリテが近づくにつれ胸の内に湧き上がる不穏な予感を拭いきれずにいた。
ファヴニールを始め数多の竜種を従え、更には狂化したサーヴァントも配下に収めた。質も量も兼ね備えた自身の戦力を以てしても、振り払えぬ正体不明の不安は黒きジャンヌの胸の内に不快感を齎し、そのせいか彼女の精神は乱されていた。
「大丈夫よ。どうせ大したことのないサーヴァントでしょうし、さっさと片付けて次の――」
そんな自身の精神を落ち着けるために呟いた言葉はしかし、近づくにつれ露わになったラ・シャリテの状況を目の当たりにして止まった。
煙が上がっていない。
ワイバーンの炎で燃やし、逃げ惑う住民を骸に変えたばかりの筈。こんな短時間で煙が消えるとは考えられない。
何かが起きている。得体の知れない不安は黒きジャンヌの胸の内で無視できない存在感を放ち始めた。
更に街に近づき詳細が判明する様になると、その不安は胸中を支配した。
今度は屍が無い。いや、屍どころか残って死肉を貪っていた筈のワイバーンの姿も無い。
異常な状況に彼女の脳内は思考を走らせた。
察知した反応の内、3つは自分達が反転し此処に向かう途中で反対方向に進んでいる。恐らく近づいたことに気が付いて逃走を図っているのだろう。
しかし、残った一つの反応。恐らく殿を務めるために残ったのだろう。
となれば、犯人は言うまでも無くその人物。
屍が無い辺り、死体を加工し魔術に使う死霊術師だろうか。
そうなればワイバーンが居ない理由も生ける屍を支配して死肉に変え、同じように加工しているだろう。
「厄介ね……」
故に、この場に居るサーヴァント全員で街に入ることにした。
ワイバーンで街の上空に侵入すると、やはり屍も残したワイバーンの姿も見当たらない。本当に何一つ、骨肉の一遍も残っていない。あるのは炭化した家の残骸と、飛び散った血しぶきだけだ。
件の下手人は―――あっさり見つかった。街の広場、そこで一人佇んでいる。
長い髪を風に遊ばせ、黒い上下の衣服を真っ白な長いコートの様な羽織で包み、ポケットに手を入れ、瞼を閉じて立っている。
この凄惨な現場において、恐ろしい程に穏やかで、まるでその場だけ何気ない日常を送っているような場違いな佇まい。
黒きジャンヌの心中がざわついた。余裕綽々に見えるその態度も、たった一人で殿を務めるその心も。
「こんにちは。死霊術士さん。いい天気ね」
お前が死ぬにはもったいないくらいだと。そんな内心を隠しもせず、皮肉たっぷりに口を開いた。
しかし――しかし、相手はそれでも穏やかな表情を崩さずに瞼を開けた。黄金色の瞳が日の光に反射して光った。
「ええ、こんにちは。いい天気です。ともすれば、争う必要を感じない程に」
どこまでも穏やかで、何処までも静かなその口調で放たれた返事に、聞いた者の精神はますます乱れていく。
「――そう。私達の足止めはその余裕な態度を崩すまでも無いってことね?」
眉根が痙攣するのを感じながら尚冷静を保っていた。
そうだ。まだ自分達の陰で隠れて動いている者がいる。そちらにもリソースを割かなければならない今、此処で全力を出すわけにはいかない。
「いや――こう見えてもいっぱいいっぱいでね。此処は一つ、お互い何事も無かった。という事で手を引いてくれないか?」
だが。尚も崩れない彼の余裕でその激動は―――鎮静化した。
あれだけかき乱し、胸中を燃やし続けて来た怒りの炎は呆気ない程に一瞬で鎮火した。
「そうね。確かに私たちにも
彼と同じように穏やかな表情で、静かに語るその様子に彼女の普段を知っているサーヴァントは各々の反応を示した。
しかし、気付いた。近くにいるから気付いてしまった。自身の得物を握りしめる拳から上がる軋みの音を。
「良いでしょう。此処は貴方の提案通り、引いて差し上げます――――」
そう、鎮火したのではない。
「―――貴方を全力で轢き潰した後で!!」
爆発したのだ。
黒きジャンヌの号令ともとれる怒声でワイバーンたちが一斉に襲い掛かる。
牙が、爪が、或いは炎が一人の元に殺到した。どんな策を弄しようともたかが一人、それも短い時間でできることなど限られている。
どうあがいても絶望しかない。そう思った―――
絶望しか無かったのは自分達だとも気付かずに。
むき出しの殺意が形となって襲いつつあるというのに、その騒音に紛れてやけにはっきりとため息が漏れる音が聞こえた。その続きの言葉も。
「交渉失敗かぁ―――
―――ま、期待してなかったけど」
手が、上がった。まるで演奏を始める指揮者のように、或いは突撃を命じる前の指揮官のように。
瞬間、影が広がる。
「じゃあ、戦うしかないね」
悍ましきもの達が陰から這い出た。
片方は死体でできた巨大なムカデの様なナニカ。その死体の顔はどれも笑顔で、満ち足りたような表情をしているように見える。
ムカデの様なナニカはその巨躯をうねらせ、ワイバーンの群れを蹴散らし、巨躯のあちこちにある無数の腕と口が蹴散らした獲物を掴み、貪り、その度に顔が一つ増えた。
もう片方は―――規制済み―――規制済みが規制済みを規制済みで規制済みして規制済み規制済み規制済み規制済み―――
規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制規制■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■―――
黒きジャンヌの意識はそこで途切れた。再び意識が戻ったのは、既に日も沈み月が昇った頃。
サーヴァント、バーサーカー・ライダーの犠牲によってラ・シャリテから撤退し拠点に到着した後だった。
勢いで書いたまま投稿……したけどおっかしいな。これじゃあまるで主人公がラスボスみたいじゃあないか。
主人公の姿容姿は気にする必要はありません。
ところでLORでやっすい義体化手術のせいで感じない筈の欲求を思い出したり不要なメンテナンスをする羽目になった連中居るじゃないですか。作者は彼等結構好きなんですよ。
切り捨てた欲求に苦しめられる様ってとても素敵だと思いませんか?
今後の展開次第ですが、その時が来たら主人公にE.G.Oを付けていいか否か。
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『武装』主人公も戦力を付けるべき
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『非武装』そのままの方がおもしr、輝く