厄ネタ×二乗は一周回って厄ネタではない(白目) 作:ハゲチャビン
ぬかったわ。
調子こいて『笑う死体の山』と『規制済み』を暴れさせたはいいんだけどさ、まさか一瞬で相手方のうち二人、いや後から戻ったやつも含めて3人か。正気を保っていたのは読めなかったよね。
杖持ったネーチャンが貴公子っぽい人ぶん殴って正気に戻して、しっぶいオジサマとその貴公子二人で全員を抱えて撤退。
そっから残ったネーチャンが殿としてでっかいドラゴンを召喚して暴れた結果、『規制済み』の3分の1と『死体の山』が少し削られるとは思わなかったよね。
思った以上に粘られて逃げようにも逃げられなくてさ、ずるずると戦いが長引いた結果夕陽が沈むころに漸く倒れてくれたから取り込ませようかと思ったけど光の塵になって消えちゃったからそれも出来ないし、踏んだり蹴ったりで今無人の街で辛うじて使える家で一休みしてるんだよね。
あーあ。隙間風が寒いにゃあ。
翌日。
カチカチの床をベッドにしていた俺は案の定痛む体を労わりながら行動を再開した。
「と、言ってもだ」
このまま素直に藤丸達の逃げた方向を歩いても合流できる保証もナシ。かといってあちこち歩きまわるのも労力の無駄……いや、他の街で藤丸達の情報を集め、うん無理! 土地勘も無いのにどうやって他の都市に辿り着けっていうんだ。
う―――――ん…………。
「んお?」
遠くから何か聞こえてくる……。
ガラガラ音と……蹄の音? この時代だと馬車の音っぽいな。軍隊が来たのか?
いや、国がしっちゃかめっちゃかになっているのに軍隊を派遣できる余裕が無い筈だし音が一つだけ。軍隊について詳しいわけじゃないけど、それにしたって馬車一つの軍隊なんて無いだろう。
じゃあ誰が此処に来た? 破落戸か、難民か?
取り敢えず、様子だけ見て害が無かったらリヨンか、その近くまで乗っけて貰えるか或いは情報を貰えないか交渉しよう。
結論から言うと、馬車らしき音の正体はなんというか……その、ガラスで作られた馬と馬車でした。
ついでにその中に藤丸達と、後2人新しく協力者? が居ました。
多分、魔術師……はこの時代にはいなかったろうし、サーヴァントなんだろうけど、トンチキすぎてどんな名前なのか判らん。
「文目! 無事だったの!?」
「何とかした」
仲間だとわかったので様子を見る必要も無し。というか、何故か俺の居場所が協力者? のうちの1人にバレたっぽくてこっちを指さされた。
で、そこにおわす音楽家っぽい人と、貴婦人みたいな人IS誰?
「はい、彼女たちは―――」
「待って、マシュ。自己紹介は自分でやりたいの」
紹介をしようとしたマシュを遮って、貴婦人のかたが一歩前に出て挨拶をする。その所作は優雅で華やかさを感じる。
「ごきげんよう。わたしの名前はマリー・アントワネット! どうか、ただのマリーと呼んで?」
マリー・アントワネット。
マリー・アントワネット!?
「貴方のお名前は聞いているけれど、あなた自身からも聞きたいわ! 是非、聞かせて下さらない?」
ものすごくキラキラした眼でマリー・アントワネットが俺に近づいてくる。止めて顔がいい心臓が破裂する良い匂いする。
あーやっばい。やんごとなきお方ってだけでも緊張するのに顔がいいわ明るくてかわいいわ良い匂いするわで身体が言う事を聞きません。これで失礼な事したら俺は墓穴を掘って桜を咲かせる。
と、普通の高校生ならばなっていただろう!! しかし、俺は社会人になり上司の飲みに付き合いながら表面上は笑顔で接しつつ、心の内で罵倒するという特技を身に着けたのだ!
つまり、心理的動揺による自己紹介の失敗は無い! 内心と身体の動きを別々に動かすことができるのだ!!
勝ったッ! 第三部、完!!!
「え、ええと。お……私の名前は文目扶朗です。あの、藤丸とキリエライトとは、えー、同じカルデアに所属して、任務を共にする仲間、です。宜しくお願いします」
誰かスコップと桜の苗木をくれ。俺の屍の上で綺麗な桜を咲かせるから。
俺の失敗だらけの自己紹介を彼女は眉一つも動かすことなく、寧ろほほえましいものを見るような笑みで聞いてくれた。ついでに視界の端で温かい目で見ている藤丸とキリエライトも確認。後で覚えてろよ。
「はい。素敵な自己紹介をありがとう。ほら、言ったでしょうアマデウス? 彼は悪い人ではないわ。だからそんな顔しないで貴方も自己紹介をして?」
彼女が振り返りもう一人の音楽家っぽい人に語り掛ける。その表情はなんというか『不愉快』の3文字をいかんなく表すようなむすっとした顔だ。
そんな彼――アマデウスと呼ばれた彼はマリー・アントワネットとは対照的に、その場から動くことなく端的に名を名乗る。
「初めまして。僕の名前はアマデウス。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトだ」
一応よろしくと言ってそのままそっぽを向かれた。俺、なんかしたかなぁ?
……ん? モーツァルト?
え? モーツァルト? あの音楽室とかで白いカツラでふくよかな姿で飾られている? この人が? うそでしょ?
「マジ?」
「英霊は基本的には全盛期の姿で召喚されることが多いので、良く知っている姿とは違うことが多いかもしれません」
はえ~とキリエライトからの豆知識により何となく納得する。
「まあ! 可愛らしい魔女ね!」
「魔女じゃないわ! 私達は魔法少女! 愛と正義の名の下にどんな敵も倒しちゃうんだから☆」
視界の端でキャッキャウフフと百合の花を作り上げている『憎しみの女王』とマリー・アントワネットをしり目に、藤丸達の端末からお願いしてカルデアとの通信を再開した。
『文目君、何ともないかい?』
「何とかしました。奇跡的に無傷です」
『今回は何とかなったけど、今後こう言う事はしないように』
「……善処します」
こういう事態が起きない限りは。
『笑う死体の山』は兎も角、『規制済み』がなぁ……ネックなんだよなぁ。
頼らないようにするためには戦力を増やすしかないんだけど、サーヴァントは特異点で召喚するには霊脈ポイントを探さないといけないからアブノーマリティを増やすしかない。んだけど……どっちを取るにしても面倒臭いなぁ。
取り敢えず、藤丸達と情報交換とするべきことの相談をしつつ霊脈ポイントに向かうことに。
というかこんなでこぼこ道なのにこの馬車揺れが少なくて快適なんだが。
「私達はこれから霊脈ポイントに向かい、物資とサーヴァントの召還を行います。その後情報収集の為に各地を回ることになります」
「それで、次に向かうポイントなんですが―――」
ジャンヌ・ダルクが地図を広げて次に向かう地点を指定するのを止める。
と、言うのも次の宛があるからだ。
「ジャンヌさん。それなんだが、一つ情報がある」
先日の殿戦であのネーチャンを倒した際に一つ助言をもらったのだ。
『本当に不服だけど、アンタに一つ助言を。あのジャンヌ・ダルクを止めたいのならコイツ等じゃあ足りないわ。リヨンに向かいなさい。そこに彼女の切り札への対抗策――ドラゴンキラーがいるわ』
これが罠である可能性は無くは無いが……行ってみる価値はあるだろう。
「てことでリヨンに向かいたいんだが、どうだろう?」
「なら、リヨンに向かいつつその周辺の町々でリヨンの情報を集めましょう」
うし。じゃあ、ポイントに着いたら準備をして向かおう。
そういえばサーヴァントを召喚するから酒呑童子が来るのかぁ……憂鬱だわ。
マリー・アントワネット…魔法少女4人(主に一人)と百合の花を咲かせているが、内面の危なっかしさに気が付いている。
アマデウス…文目から聞こえる不協和音に辟易している。原因は言うまでも無く文目の影に居る『何もない』『規制済み』『笑う死体の山』のせい。ぎちぎちぎゃあぎゃあと騒ぐせいでアマデウスの気分はダダ下がり
ツタンカーメン君お迎えできました。この世の全てを手に入れた気分です。
今後の展開次第ですが、その時が来たら主人公にE.G.Oを付けていいか否か。
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『武装』主人公も戦力を付けるべき
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『非武装』そのままの方がおもしr、輝く