狛治外伝 ~誰が為に振るわれる拳~   作:科学大好き人間

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恋雪ちゃん視点です。11話の視点変更版です。恋雪ちゃんの心の内を描写しようと思います。


12話 愛しい人

「お父さん。相談したいことがあるの。実は・・・」

 

 

狛治さんがこの道場に来て二年以上経った。狛治さんの献身的な看病のおかげで私の体調はみるみるうちに改善し、今では病床で上体を起こしている時間の方が長いくらいになった。

 

以前の私ならきっと諦めていたことだろう。けど、今なら、今の私なら大丈夫ではないかとそう思うようになり、この日お父さんにある相談をしたのだった。

 

 

「ほー、狛治と一緒に花火をねぇ。いいぞ、俺の方からあいつには伝えておこう。お前が行きたがってると伝えれば必ず話に乗ってくるはずだ。」

 

 

お父さんは心底嬉しそうにそう答えてくれた。しかし一方で、私の狛治さんへの想いがお父さんに筒抜けになっている事実を改めて認識し、私は顔が赤くなるのを感じていた。

 

 

「しかしだな、恋雪。お前から伝えた方が狛治も乗り気になるだろう。なぜ俺を巻き込もうと思ったんだ?」

 

「・・・だって・・・恥ずかしいから・・・///」

 

 

私は率直な考えをお父さんに返す。どうせもうバレているのなら変に隠し立てする必要もない。ここは包み隠さず私の想いを話して、お父さんに協力してもらう他ない。

 

 

「ハハハッ!! 恋雪も年頃の娘らしくなったなあ。お父さんは嬉しいぞ? よし、なら任せておけ。必ずや狛治を説得して見せよう。」

 

 

そうして花火大会の当日、お父さんは見事狛治さんを説得し、一緒に見に行くことが決まった。

 

 

「さて、折角人生初めての花火なんだ。どうせ見るなら二人っきりで見たいだろう。お父さんは適当に理由をつけてどこかに行ってくるから楽しんでくるんだぞ?」

 

「あ・・・ありがとう・・・///」

 

 

そう言って、お父さんは食事を済ませた後どこかへ行ってしまった。

 

やがて狛治さんが私を外行の格好に着付けしてくれて、出発する時刻と相成った。

 

 

「あれ? そう言えば師範は?」

 

「え、えっと・・・急なお仕事が入ったみたいでこれなくなったみたいです・・・ハハハ・・・」

 

 

狛治さんは疑問に思っているようだったけど、私は適当に誤魔化した。狛治さんもそれ以上追及してくることはなく、私を背負って最寄りの橋の傍まで移動する。

 

なんだかんだ言って、私はこうして狛治さんに背負ってもらう時間が好きだった。狛治さんに密着してられるし、狛治さんの体温が心地よくて、私の一番のお気に入りの場所だった。

 

私達は取り留めもない会話をしながら目的地へ向かう。やがて橋の上で立ち止まり、狛治さんと一緒に花火を見る。

 

 

「わあぁああ!! 凄いですよ狛治さん!! 空にお花が咲いてるみたいです!!」

 

「まあそうですね。花火というくらいなので。」

 

 

私が大はしゃぎしてる中、狛治さんは冷静にそう返す。言われてみればその通りなので、私は少し赤面してしまう。

 

そうこうしてる内に花火の打ち上がる頻度も上がり、空を覆い尽くす程の花火が目の前で輝き始める。

 

 

「わわっ!! 凄いですよ狛治さん!!! まるでお花畑みたいです!!」

 

「・・・お花畑?」

 

 

狛治さんが疑問の声を上げた気がするが、私は目の前の光景に興奮を隠せず、ただひたすらにはしゃいでいた。

 

ふと狛治さんを見ればうっすらと笑みを浮かべていた。こうして二人の思い出を作れることが只々嬉しくて、私は吐息を熱くしながら狛治さんの耳元でささやいた。

 

 

「ねえ、狛治さん。」

 

「・・・なんでしょう?」

 

「また一緒に花火見に来ましょうね? 私も一日でも早く病気を治して狛治さんの負担にならないようにしますから・・・」

 

「ええ、是非ともまた見に来ましょう。しかし別に負担になんて思っていませんよ? 寧ろ恋雪の看病を通じて俺は・・・」

 

 

そこまで言いかけて狛治さんは口を噤んだ。狛治さんは一体何を言いかけたのだろう。もしかして・・・もしかしてだけど・・・狛治さんも少しぐらいは私のこと意識してくれているのかな?

 

そんな想像を浮かべた途端、私は悪い女の笑みを浮かべていたように思う。ついつい意地悪して見たくなってしまったのだ。

 

 

「今何か言い掛けましたよね? 狛治さん、一体なんて言おうとしたんですか~?」

 

「・・・別に何も。」

 

「え~? 絶対何か言い掛けましたよね? 内緒にしないでください、私気になります。」

 

 

私は調子に乗って狛治さんを追求する。これは千載一遇の好機。ここはどさくさに紛れて狛治さんの気持ちを確認しておきたい。なので私は必要以上に食い下がった。

 

 

「はあ・・・そろそろ帰りますか。」

 

「あ、ちょっと待って! まだ花火上がってるのに!! 待って狛治さん! 謝ります! 謝りますから!!」

 

 

しまった。やりすぎてしまったようだ。うう、折角狛治さんの気持ちを確認するまたとない好機だったのに。私は残念に思うも気持ちを切り替えて必死に弁明する。

 

せめて今夜だけは、花火の打ち上げが終わるまで、二人っきりでこうしてたい。人生初めての体験を、愛しい人と一緒に分かち合いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを思いながら、私たちは笑い合い談笑を続けていたように思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




因みに恋雪ちゃんは今回の件で味を占めて、今後はお父さん経由で狛治に大事な話をするようになりました。原作の「この道場を~」の告白劇も例に漏れないのでしょう。
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