狛治外伝 ~誰が為に振るわれる拳~   作:科学大好き人間

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狛治視点です。夜が来ました。狛治救済ルートが崩壊するので無惨襲来はさせません(断固)。無惨の行動原理は筆者成りの独自考察(偏見)で後書きに記載してるので気になる人は読んでみてください。尚異論は認めますが、規約違反となるようなコメントだけはお控えください。


17話 鬼

「馬鹿な・・・首の骨を確実にへし折ったはず・・・なぜ生きているんだ正十郎・・・!」

 

「ははっ! その顔!! いいねえ、俺はずっとお前のそういう面が見たかったんだよ!! 今夜はたっぷりいたぶって、生まれてきたことを後悔させてから喰い殺してやるぜ!!!」

 

 

俺の目の前には、頭部より角を生やし、紅梅色の瞳に肉食獣のような瞳孔と牙を持つ正十郎が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少しだけ遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は夜間、薬師寺さんの屋敷の庭を借りて鍛錬に励んでいた。恋雪を生涯かけて守り通すと誓ったのだ。今の自分の実力に満足して歩みを止める暇など俺にはないとそう思っていた。

 

しかし、ふいに背後から殺気を感じ取り俺は振り返る。一陣の風が通り過ぎ、間一髪で俺はそれを躱した。命の危険を感じ、冷や汗が一気に噴き出す。

 

 

「ちっ! 躱したか。勘のいいやつだな。まあいい。」

 

「その声・・・正十郎なのか・・・!?」

 

 

奴は真剣を振り切っていた。つまり闇討ちをしかけてきたのだ。あの臆病者の正十郎がまさかこのような手段を取るとは。

 

そもそもどうやって俺たちの居場所を特定した? 他にも連れて来た門下生はいるのか? 恋雪は今無事なのか? あらゆる疑問が浮かぶが俺は意識を切り替える。

 

たった一日の間に何が起こった? 先日の正十郎と気配が違いすぎる。まるで人ならざるものを相手にしているみたいだ。

 

体中の細胞が産毛に至るまで今すぐこいつを殺せと言っている。こいつには何らかの変化が起きた。危険だ・・・!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー素流体術 鈴割りー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は無意識に裏拳を放っていた。俺の拳が正十郎の頸にぶち当たり、骨の砕ける音が闇夜に響き渡る。

 

俺は突如冷静になり血の気が引く。しまった。殺してしまった。これでは俺は奉行所で刑罰を受けねばならない。下手すると二度と娑婆には出れず死罪になるやもしれぬ。俺は焦った。

 

しかしその瞬間驚くべき光景を目の当たりにした。なんと正十郎の頸がゴキゴキと音を立てて治ったのだ。俺は驚愕し、背後へと跳躍し距離を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして今に至る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何者なんだ・・・お前は・・・」

 

「ああ? 俺はお前が良く知る正十郎だよ。忘れるとは心外だな?」

 

「違う。名を聞いてるんじゃない。今のお前は一体何者なんだ? 本当に人間なのか? 頸の骨を砕かれて死なないなど人間のそれとは思えん。一体何があった?」

 

「はははっ!! いいぜ!! 今の俺は気分が高揚してるからな!! 冥途の土産に教えてやるよ!! 昨晩お前にぶちのめされてあの後何があったかをな!!」

 

 

そうして正十郎は獰猛な笑みを浮かべたまま、昨夜の出来事をつらつらと話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鬼を配置した覚えのない場所で、鬼が出たとの大騒ぎ、態々出向いて来てみれば・・・」

 

「っ!!?? 誰だお前!!!」

 

 

気が付けば俺の前には上等な着物を着た黒髪の男が立っていた。気が付かなかった。一体俺はどれほどの時間放心していたんだ?

 

 

「様子を見るに全員叩き伏せられているようだ。食われた様子もない。まさかただの人間の仕業とは。何ともつまらぬ。」

 

 

男は薄ら笑いを浮かべていた。不気味過ぎて俺は震えあがる。先刻の狛治とは別の意味で恐れを抱かせる男だった。

 

 

「く、来るな!! さっさと出ていけ!!」

 

 

俺は反射的に真剣を抜く。腕が震える。目の前の男は一切怯む様子を見せない。どうしようもないほどの恐怖が俺を包んでいく。

 

 

「まあいい。お前なら下手人に心当たりがあるのだろう? 試しにけしかけてやってもいいかもしれんな? 特別に私の血を分けてやる。」

 

「な、何を意味の分からないことを・・・」

 

 

俺の意識はそこで一度途絶えた。次に目を覚ました時には周囲一帯に同門の大勢の血まみれの死体が転がっていた。どれも熊や野犬に食い散らかされたかのような悲惨な状態となり果てていた。

 

 

(まさかその場の人間全てを一息に喰らってしまうとは。お前は存外見込みがあるやもしれんな。面白い。)

 

 

脳内に先ほどの着物の男の声が響き渡る。俺は震えあがる。一体奴は俺に何をした!?

 

 

(少々混乱しているようだから特別に教えてやろう。お前は私が鬼にした。鬼は人間と違い並外れた身体能力に再生能力を併せ持つ。より多くの人を喰らえば血鬼術をも発現するだろう。

 対価に日の下を歩けなくなってしまうが、今の貴様なら雪辱を果たすことができるのではないか?

 道場に乗り込んできた男に会いに行け。もし返り討ちに遭わず殺すことができたなら、特別に私の血をより多く分けてやろう。)

 

 

そこで声は途切れた。何がなんだかわからない。だが全身から力があふれ出す感覚に俺は思わず酔いしれる。

 

これ程の力があれば、狛治を殺すことも容易だ。

 

今すぐにでも奴を殺し、今まで味わわされた辛酸を奴にも舐めさせてやる!!

 

俺はそう決意し道場を出ようとするが夜明けが来るのを察し本能的に悟ってしまった。あれに少しでも晒されれば塵も残さず消え去るのだと。

 

俺は歯がゆく思いながらもその日は道場の門扉を締め、籠城を決め込んだ。

 

そう言えばあの男は人をより多く喰らえば血鬼術を発現すると言っていたな。日中の間外に出ることもできないし、喰いかけの同門の死体を綺麗にたいらげておくとするか。

 

加えて発現したら使いこなす訓練もした方がよさそうだ。そうすれば狛治をより確実に殺す勝算に繋がる。俺は笑みを浮かべた。

 

そうしながら、俺は日が落ちるのを気長に待ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鬼・・・だと・・・」

 

「はははっ!!! 信じられねぇって面だな!? 今のお前は本当に滑稽だぜ!! もっと見せてくれよ!! お前の無様な醜態をっ!!!」

 

 

俺は正十郎の話を聞いて驚愕に目を見開いた。到底正気だとは思えない話だった。しかし、奴の頸が一瞬で再生したのも事実。信じる他ないのだろう。

 

以前の正十郎だと思ってこのまま戦えば確実に殺される。俺は素流の構えを取り、精神を統一する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

負けられない。死ぬわけにはいかない。俺は誰よりも強くなって一生恋雪を守ると誓ったんだ。約束を果たさなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




この時点で正十郎は同門67人を喰っているので血鬼術を発現している状態です。運命が変わり、結果鬼になった者も変わりました。以上が原作改変要素です。狛治の運命や如何に。

それと無惨が姿を現した理由ですが、自分の支配の及ばない鬼の出現を危惧して血相を変えて駆け付けたのだろうと筆者は考えております。正直、あの『命大事に』の精神で生きてる無惨様が身の危険冒してまで強い鬼作りに来るとはどうしても思えないんですよね。原作で狛治を鬼にしたのも一安心した後上機嫌になっただけだと個人的に思っています。十二鬼月の構想も似たようなきっかけだと思ってます。もし出向いた先に縁壱みたいなのがいたら無惨様トラウマ再発しちゃうので(笑)。勿論これは筆者の独自解釈です。正解はわかりません。この作品はそう言うスタンスなんだなと大らかな気持ちで楽しんでくれると有難いです。
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