狛治外伝 ~誰が為に振るわれる拳~   作:科学大好き人間

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狛治視点です。道場の跡取り息子とは今回で決着が着きます。


19話 守る拳

「ハハハッ!! 疲れの色が見えるな!? そろそろ限界か!?」

 

「・・・黙れ。」

 

 

 

師範が正十郎に深手を負わされ一刻以上経った。俺は奴を一歩も近づけないつもりで拳を振るい続けた。

 

幸いにも騒ぎに気付いた薬師寺さんが飛び起きて駆け付けてくれたおかげで、師範は一命をとりとめることが出来そうだ。

 

しかし、戦えるのは既に俺一人。俺が倒れる訳にはいかない。二人を守る。そう誓ったんだ。約束を守らなければ。

 

 

「しかし本当に人間なのか疑わしいぜ。お前のしぶとさには驚嘆するよ。先日も同門の門下生67人を叩き伏せた際、息を切らすだけで終ぞ一撃も喰らわなかったんだからな?

 俺んとこの女中もお前を鬼だと勘違いしてたぜ? まあ結果的に俺が本物の鬼になっちまったがな!! アハハッ!!」

 

 

腕が鉛のように重い。肺は張り裂けそうに痛む。徐々に踏ん張りが利かなくなる。俺の身体が限界を迎え始めているのは明らかだった。

 

だからと言って諦めるものか。手足が捥げても喰らいついてやる。俺の命に代えても二人は守る。約束を果たさなければ。

 

しかし奴の毒刀を危うく喰らいそうになり俺は奴との距離を空ける。一気に血の気が引いてしまう。まずい。集中。集中しろっ!!

 

 

「ハハハッ!! もうヘロヘロじゃねぇか!? この分なら毒を喰らうのも時間の問題だろうなぁ・・・だがそれだけじゃつまらねぇ!! 最期にお前の目の前で大事な大事なお師匠さんと婚約者を惨たらしく殺して食い散らかしてやる!!

 ああ、その時のお前の面想像するだけで気分が高揚してくるぜ!!! アハハハハハハッ!!!!!」

 

「黙れっ!!!」

 

 

俺は怒号を上げるが必死に堪える。奴の挑発に乗っては駄目だ。こちらは一撃でも喰らえば終わり。対して奴を殺すには夜明けまでの持久戦しかないのだ。俺は拳を握り辛抱する。

 

 

「いや、待てよ? ただ喰い殺すだけじゃつまらねぇよなあ。どうせなら徹底的にお前の心を折ってやりたい・・・そうだ! 毒刀でお前を動けなくした後、恋雪を犯し尽くしてから喉笛を掻き切ってやるのも一興かもなぁ! その方が狛治の歪んだ面が見れるかも知れねぇし・・・そうだそうだそれがいい!! そうしよう!! 我ながら名案だ!! 考えただけで滾るぜぇええ!! ハハハハハハハハハッ!!!!!」

 

「っ!!?? 殺すっ!!!!!」

 

 

奴の言葉を聞いて俺の理性は崩壊した。冗談じゃない。恋雪には指一本たりとも触れさせるものか。毒がなんだ。知ったことか。俺の人並み外れた身体なら耐えられる。夜明けまで半刻? それがなんだ。俺の身体なら三日三晩戦い続けたって耐えられる。

もういい。目の前のこの男だけは是が非でも殺す。やがてそれ以外の思考は俺の脳内から消え去り、俺は怒り狂った狂犬へと変貌する。

 

 

「ウォオオオオオオ!!!!!」

 

「はっ! 馬鹿が! 動きが単調になりやがった。お望み通り毒で動けなくしてやるよ!!!」

 

 

奴は袈裟斬りに刀を振るう。鈴割りで迎撃していい場面だった。だがそれでは俺の気が済まない。奴の攻撃に合わせ更に接近し、俺は縦拳を放ち奴の柄を握る両の指を柄ごと粉砕する。

 

 

「がっ!! テメェ・・・ゴハッ!!??」

 

 

続けざまに奴の鳩尾に全力で拳打を振るう。その威力に奴の胴体に風穴が空き、血肉が飛び散る。

 

 

「テメェ・・・調子に乗ん・・・」

 

 

 

 

 

 

ー素流体術 脚式 冠先割ー

 

 

 

 

 

 

腕を引き抜くと同時に上体を下げ、その反動で蹴り上げる。奴の顎を完全に破壊する。

 

俺は雄たけびを上げながら拳を振るい続ける。

 

 

 

 

 

 

 

ー素流体術 鬼芯八重芯ー

 

 

 

 

 

 

 

 

左右交互の突きで奴を殴り飛ばす。奴はたたらを踏んで後ろに倒れ込む。

 

 

 

 

 

 

 

ー素流体術 砕式 万葉閃柳ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追撃の手を緩めることなく俺は頭上から全力で正十郎の頭蓋を殴り潰す。その衝撃に地面に罅が入る。

 

奴は頭部の無い状態で俺を掴もうと手を力なく伸ばすが、俺はそれを振り払い、横たわる正十郎に拳を振るい続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー素流体術 乱式ー

 

 

 

 

 

 

 

今頭に浮かんだ思い付きの技。師範から教わった綺麗な型とは似ても似つかない。ただひたすら暴力で眼前の男を肉塊に変えるべく、乱れるように拳を振るう。奴の四肢は砕け散り、胴はへしゃげ、俺が跨るそれは血の海へと変わった。

 

俺は跨ったまま、肩で息をする。血煙が喉の内側に張り付く。気持ちが悪い。

 

本体の血にも毒が入っているのだろうか。そう思い嫌な汗がにじみ出てくるが、俺は目の前の光景を見てそれすらも忘れ去る。

 

徐々に頭部を再生させようと血肉が盛り上がる。俺は型も何もなく、ひたすらその盛り上がる頭部を何度も何度も殴って破壊する。拳で砕き続ける。

 

生き物の肉と骨を潰し砕く感触は地獄のようだった。この気色悪さを俺は一生忘れることはできないだろう。しかし俺は殴るのを辞めない。俺は、何としても恋雪だけは守らねばと思い殴り続けた。そうして夜が明けるまで、鬼の頭を殴り潰し続けた。

 

毒が回ったせいか、それとも拳を振るい過ぎて疲れ果てたせいか、俺は白目を剥いたまま微動だにせず朝日の光を浴び、戦いは終わったのだと安堵していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャリリン・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

「鬼が出たと聞いてすぐさま参上したが、まさか其方のような者に出会うとは・・・」

 

 

気が付けば俺の傍に巨躯の男が歩み寄っていた。黒傘を被り、黒い羽織に黒い着物の全身黒ずくめ。獲物に鎖鎌を携えて。得たいが知れない上に直感的に感じられる凄まじい闘気。俺はか細い声を絞り出す。

 

 

「あ・・・貴方・・・は・・・」

 

 

俺が辛うじて動く口を使ってそう問いを投げかける。すると大男は俺を見下ろし低く落ち着いた声で返答する。

 

 

「私は鬼殺隊 岩柱 草壁源重郎と申す者。見るからに今の貴殿は鬼の毒が回っているようだ。花柱が煎じた藤の花の粉の薬湯を飲むが良い。さあ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狛治が介抱されるのと同時刻、薬師寺邸から離れたとある一室にて、紅梅色の瞳に病人のような青白い肌の男が薄ら笑いを浮かべていた。

 

「面白い。機会があれば、黒死牟を差し向けてみるか。なにせ鬼が出たと騒ぎになるほどの男なのだ。さもすれば呼吸を使う剣士以上の手駒になるやもしれぬ。」

 

 

 

続く

 

 




無惨の呟きの内容については、兄上と対決するまで伏線回収しないので気長に待って頂けると有難いです。
それと筆者はずっと思ってました。狛治が呼吸を身に着けるなら絶対岩の呼吸がいいなと(打撃系のため)。加えて歴代岩柱はどの時代でも鬼殺隊最強がいいなと(縁壱除く)。
最終的には狛治VS兄上を書く予定なので、今話にて鬼殺隊最強であろう岩柱と縁を持つ展開とさせて頂きました。ご容赦願います。
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