狛治外伝 ~誰が為に振るわれる拳~   作:科学大好き人間

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狛治視点です。氷の呼吸の技名は以前筆者が書いてた鬼滅小説から流用したものになります。


29話 氷の呼吸

ー血鬼術 千本針・魚殺ー

 

ー氷の呼吸 弐ノ型 氷輪回しー

 

ー岩の呼吸 参ノ型 岩軀の膚ー

 

 

 

 

 

 

 

 

上弦の鬼玉壺が放ってくる毒針を、凍三郎殿は自身を独楽のように回転して切り払い、俺は鎖を旋回させる防御の型で全て打ち落とす。

 

 

 

 

 

 

 

ー氷の呼吸 参ノ型 氷瀑・砕氷落としー

 

 

 

 

 

 

 

予備動作無しで接敵し、頭上から打ち下ろす連撃。

 

対して玉壺は新たな壺を出現させ、凍三郎殿を迎撃しようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー血鬼術 蛸壺地獄ー

 

 

 

 

 

 

 

一瞬で視界に巨大な蛸のような足が広がり、玉壺を守る。

 

凍三郎殿はそれらに無数の縦の斬り込みを入れるが、足が多すぎて玉壺本体まで刃が届かないようだった。

 

俺も追撃しようと足を前に進めようと思った矢先、凍三郎殿が吹雪の音を彷彿させるような呼吸音を発する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー氷の呼吸 肆ノ型 氷塊・雪(ゆきつぶて)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び予備動作無しで凄まじい速度の横薙ぎの斬撃が左右交互を行き交う。縦と横に斬り込みを入れられた蛸足はサイコロのように次々とバラバラになり、玉壺までの道が拓ける。奴は一瞬慌てふためいたが、次の壺を用意して、新たな術を発動させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー血鬼術 一万滑空粘魚ー

 

 

 

 

 

 

 

 

壺から本当に一万匹放たれたんじゃないかと錯覚するくらい血鬼術で作られた魚が飛び出す。あの数、刀では捌ききれない。今度こそ俺が凍三郎殿の前に出て地面を踏みしめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー素流体術 奥義 終式 青銀乱残光ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は師範より教わった素流の奥義、終式の型を全て前方に向けて放つ。本来は無数の敵に囲まれた際、周囲全てを一手で迎撃する為の技だが、俺はそれを全て前方へと集約させる。

 

魚は悉く俺の前ではじき落とされ、危険な気配がする怪しい体液をまき散らしながらバラバラになっていく。

 

 

「全て撃ち落としただと!? しかし無駄だ!! その粘魚の体液は経皮毒!! 飛沫を浴びて死ぬが良・・・」

 

「じゃあ急いで交代。下がって。」

 

 

突如俺は後ろへと投げ飛ばされる。そのおかげで俺は玉壺が言う毒を浴びずに済んだが、代わりに凍三郎殿が犠牲になってしまう。

 

しかしそれは杞憂に終わった。凍三郎殿は既に日輪刀を地面に突き刺し迎撃の構えを取っていた。柄を握り、体を捻って半身だけ前に出すと、一拍の間地面で固定されて力が掛かった刀身が瞬時に解放される。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー氷の呼吸 伍ノ型 大氷活断・御神渡りー

 

 

 

 

 

 

 

 

刀身が下段から凄まじい剣圧で振り切られる。突風とも言うべき斬撃で、凍三郎殿から玉壺までの間の空気が一気に裂かれ、魚の体液が一瞬で吹き飛び霧散する。

 

 

「何ィィィ!!?? 剣圧で毒を全て弾き飛ばすだと!!??」

 

 

玉壺が驚き声を上げるうちに凍三郎殿は一瞬で間合いを詰め頸を一閃する。

 

しかし壺から壺への移動が厄介で、それは躱されてしまう。

 

それでも凍三郎殿は追撃の手を緩めない。俺も負けじとそれに続く。玉壺は対処に追われ、みるみるうちに余裕をなくす。

 

 

「つ、強い! 速い! 私が以前上弦昇格時に殺した霞の柱とは比べものにならん!! 貴様らは一体・・・!!」

 

「へー、上弦昇格条件に柱殺しが義務付けられてるんだ。道理で殺された柱の人達の日輪刀が持ち去られてた訳だね。『悪鬼滅殺』が刻めるのって柱にしか許されていないから。」

 

「壺から壺への移動は早くて厄介だが、それ以外はそうでもないな。血鬼術も最初は面食らったが、発動前に一度壺を生み出す必要があるから一拍ほど隙ができる。慣れれば苦戦しないな。凍三郎殿。」

 

「うぉおおおおおお!? 己ッ! 己ッ!! 己ェエエエエ!!!!!」

 

 

危惧してたほど上弦の鬼との戦闘は熾烈なものにはならなかった。というのも、凍三郎殿が強すぎる。

 

流石上弦の鬼相手に一度は逃げ切った男。やはりこの少年こそが現鬼殺隊最強なのでは?

 

凄まじい反応速度、無駄を削ぎ落した鋭い剣技、判断の早さ、全てにおいて破格。

 

俺はこのまま勝てるのではと思った。正直俺は援護に回ってるだけでまだ余裕があるし、凍三郎殿も全力を出している感じがしない。

 

しかし、俺が僅かに気をゆるめた途端、玉壺は木の上に逃げて俺達から距離を取った。

 

 

「あれ? 逃げるんだ。上弦の鬼って言っても大したことないね。こんな奴らにどうして源重郎さんは負けちゃったんだろう。何か卑怯な手でも使われたのかな?」

 

「黙れ!! もう私は怒ったぞ!! 今から真の姿を見せてやるっ!!」

 

「負け惜しみ?」

 

「違う!! いい加減黙れ!! 若造が!!!」

 

 

すると玉壺は本当に姿を変えた。全身鱗で覆われた魚のような肉体へと。正直見てて気持ちが悪かった。

 

 

「この完全なる美しき姿に平伏するがいい。」

 

「・・・・・・」

 

 

俺も凍三郎殿も閉口する。美しい? これが? 気持ち悪いの間違いでは?

 

 

「何とか言ったらどうなんだこの若造二人がっ!!!」

 

「いや、今さっき黙れって言ったじゃん。あ、もしかしてこいつ頭悪・・・」

 

 

凍三郎殿が真っ当な指摘をするや否や、玉壺は拳を打ち振るう。俺はその速度に目を見開き退避に回る。

 

加えて玉壺が殴りつけた地面はなぜか鮮魚で溢れかえり、生臭い臭気が辺り一帯を包む。

 

 

「どうだね私のこの神の手の威力。拳で触れたものは全て愛くるしい鮮魚となる。そしてこの速さ。」

 

「確かに変則的な動きだね。さっきより見切りづらい。しかも触れたら御終いって。嫌な血鬼術だなぁ。」

 

「思い知ったか! さあ私の華麗なる本気を見るが・・・」

 

「良し。狛治さん。撤収。次は柱三人で戦おう。そうすればすぐ殺せると思うから。」

 

「え・・・?」

 

 

そう言うや否や、凍三郎殿は走って逃げだす。俺は一瞬驚くも一拍遅れて追走した。

 

 

「ま、待たんか貴様らぁあああ!!! いきなり逃げを打つなど恥ずかしくはないのかぁあああ!?」

 

「いや、負ける戦いを続けるなんて馬鹿のすることだよ。まあここが市街地だったら市井の人に迷惑かかるから何とかして食い下がったとは思うけど・・・」

 

「待てい!! 逃がすかぁあああ!!!」

 

「凍三郎殿!? これは何かの作戦なのか!?」

 

「え? いや普通に逃げてるだけ。もう少しで夜明けだし、今日はもう終わりでいいかなって。」

 

「な、なかなか思い切りがいいのだな。凍三郎殿は・・・」

 

「まあ俺は貧乏御家人の生まれだから、他の武士みたいに誇りがどうこうとかないかな。食えれば良し、稼げれば良しの精神だから。」

 

「そ、それほどの武芸を修めておいて、それは中々に拍子抜けする答えだな・・・まあ生き残るのが最優先なのは俺も同感だが・・・」

 

「でしょ? 俺も鬼に殺されずに済んだたった一人の妹がいるからさ、死にたくないわけよ。狛治さんだって奥さんいるんでしょ? だったら命を粗末にしちゃ駄目だよ。一応そういう気遣いもしたつもりなんだけどね。」

 

「そ、そうだったのか・・・うむ、かたじけない。」

 

「逃げるな卑怯者!! 逃げるなぁあああ!!!」

 

 

後ろから玉壺が猛追してくる気配がするが、やがて夜明けの光に怖気づき追ってこなくなった。俺たちは一息つきその場で立ち止まる。

 

 

「じゃあ解散で。俺あいつの血鬼術の詳細お館様に報告してくるから、狛治さんはもう上がっちゃっていいよ?」

 

「何から何までかたじけない。」

 

 

そうして俺は凍三郎殿と別れ、帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、緊急柱合裁判が開かれた。罪人は氷柱である白峰凍三郎。罪状の詳細は『鬼となった妹を匿っていた』とのこと。俺にとっては青天の霹靂とも言える知らせだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




氷柱の結末は以前筆者が書いてた鬼滅小説の設定と関連したものになる予定です。ご容赦願います。
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