狛治外伝 ~誰が為に振るわれる拳~   作:科学大好き人間

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前半白峰凍三郎、後半狛治視点です。今回猗窩座の代役を出します。つまりオリジナル上弦です。これについては意見をもらいたいと思っているのでアンケートを出させて頂きます。よろしければご回答ください。


30話 阿修羅

妹が処刑されたその日の晩、俺は屋敷の縁側で一人月を見上げていた。

 

もう何もかもがどうでも良くなった。両親と兄が死んだ時ですらこんなに自暴自棄になることはなかった。俺の最後の肉親。雪菜を失った。

 

今後の処遇は俺が決めていいとお館様はそう仰っていたが、正直もう剣を取れる気がしない。

 

俺が力なく夜空を見上げていると、突如血生臭い悪臭が辺りに立ち込める。

 

 

「カカカッ!! 随分湿気た面だなァ? 箱入り娘宜しく大事に大事に守ってきた妹が死んで落ち込んでんのかァ? いい気味だぜェ・・・カカカッ!!!」

 

「っ!! お前は・・・上弦の・・・!!!」

 

 

庭には以前俺が命辛々逃げ出した時の相手、上弦の参が立ち尽くしていた。

 

肩口までしかない薄着とゆったりとした履物をしており、何よりも三対の両腕と三方向を向いた三つの顔が目を引く。

 

全身薄黒く硬質さを感じさせる肌はまるで仏像のようだ。その姿はかの有名な阿修羅像のよう。

 

 

「ああ、俺は上弦の参、阿修羅鬼(あしゅらき)だ。お前の無様な面を眺めに来たぜェ? カカカッ!!!」

 

 

俺は傍の日輪刀を掴み抜刀する。

 

 

「お前・・・なんで俺の妹が死んだことを知っている・・・」

 

「アア!? 決まってんじゃねぇか!!! それは俺が鬼にしたからだよ!! あの御方の承認を頂いてなァ!? 柱の監視及び動向を探らせてくれって我儘言ったら通ったのさ!!

 まあ、本当は取り逃がしたお前の家を特定してすぐ殺しに行くつもりだったんだが、あの日はお前の妹しかいなくてよォ、折角だと思って鬼にしたっつう訳だァ。まあお前が埃臭ぇ地下室に監禁なんかするせいで大した情報も得られなかったがなァ。あの御方は大層ご立腹だったが俺は最高に楽しめたぜェ!!!

 毎日毎日お前の妹の視界を通じて、今にも泣きだしそうなお前の無様な面見ることができてよォ!! いい気味だったぜ!! カカカカカッ!!!!!」

 

 

さっきまで腑抜けていた俺の腕に信じられないくらいの握力が宿る。日輪刀の柄がミシリと音を立てる。

 

 

「お前のせいだったのか・・・!! お前がっ!!!!! お前さえ居なければっ!!! 絶対に殺してやるっ!!!!!」

 

「ああ! そうさ!! じゃあ早速始めるとしようぜェ!! 俺があの日の汚名を返上するか、お前が妹の無念を晴らすか、二つに一つだ!!! とことん殺し合おうぜェ!!!!!」

 

 

俺の命などいくらでもくれてやる。だがお前だけは絶対に許さない。頸だけじゃない。その無駄に多い腕も全部まとめて切り刻んでやると俺は決意し奴に斬りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「伝令!! 伝令!! カアアアアア!! 氷柱邸ニ上弦ノ参襲来ィイイ!!! 至急応援求ムゥウウウ!!! カアアアアア!!」

 

「っ!! 凍三郎殿のところに上弦が!? 急いで向かう!!!」

 

 

俺は巡回任務を中断し、氷柱邸へと引き返す。夜明けまであと四半刻もない時刻に漸く到着すると、氷柱邸の庭の中心で二つの影が火花を散らし激しく打ち合っていた。

 

 

「カカカッ!! どうした!? お前の全力はこんなものかっ!?」

 

「五月蠅いっ!! 黙れっ!! 絶対に殺すっ!!!」

 

「カカカッ! さっきからそればかりだな!? いいぞ! 殺せるものなら殺してみろ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー氷の呼吸 肆ノ型 氷塊・雪礫(ゆきつぶて)

 

 

 

 

 

 

 

凍三郎殿の目に留まらぬ速度の左右行き交う斬撃を、上弦の参は六つの拳で打ち払う。

 

 

「カカカッ! 流石に速いな! 危うく喰らうところだった! だがその程度の威力で俺の拳は砕けんぞ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー氷の呼吸 参ノ型 氷瀑・砕氷落としー

 

 

 

 

 

 

 

 

続いて瞬時五連撃の打ち下ろし。上弦の参は四つの腕で受ける。腕は輪切りになるが、もう二つの拳で奴は凍三郎殿を殴り飛ばす。

 

 

「がはっ!!」

 

「カカカッ! 威力は上がったが、その分技の後の硬直時間が長くなったな!? 今のであばら骨は砕いたぞ!! そろそろ終いか!?」

 

「やめろっ!!!」

 

 

俺は上弦の参が追撃をしようとしたので、一気に距離を詰める。

 

 

「おお!? 新しい柱か!! しかし俺は今雪辱を果たしている最中なのだ!! 邪魔はさせん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー血鬼術 阿修羅分身ー

 

 

 

 

 

 

 

 

上弦の参が俺に向き直ると、奴の身体から二体の分身が枝分かれし俺に突進してくる。

 

 

 

「カカカッ! そいつらは血鬼術を使わない俺と同等の強さで戦うことができるぞ!? まあ頭一つに腕一対ずつしかないから少々劣るかもしれんがな!! カカカッ!!」

 

 

血鬼術の詳細を聞かされ俺は血の気が引く。上弦並みの分身二体だと。生半可な技では迎撃できぬ。ならばっ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー素流体術 乱式ー

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は全力で拳を暴力の限りに乱れ振るう。二体の分身は俺の拳打を受けのけ反るが、そのあまりの硬度に俺は度肝を抜かれる。

 

 

「この手応え・・・鋼か何かか!?」

 

「カカカッ! 分身とは言え鋼鉄並みに硬いそやつらを拳で打ち払うとは凄まじいなだ!! 面白い!! あっちの(わっぱ)を殺したらすぐにお前の相手をしてやろう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー氷の呼吸 壱ノ型 薄氷斬りー

 

 

 

 

 

 

 

「がはっ!?」

 

「誰が誰を殺すって?」

 

 

俺が分身に手間取っている合間に、凍三郎殿が上弦の参に斬りかかる。その一閃で奴は頸から血飛沫をあげていた。

 

 

「さっきよりも斬撃が鋭い!! まさか鋼よりも硬い俺の頸を切り裂くとは・・・!!」

 

「次は胴体と泣き別れにしてやる!!!」

 

「カカカッ! いいぞ! やってみろ! できるものならな!?」

 

 

俺が分身に足止めを喰らっている間に、凍三郎殿は少しずつだが有効打を受けてしまう。顔面を殴られ左目が潰される。蹴りを受け吐血する。終いには左腕を折られてしまう。

 

 

「凍三郎殿っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー素流体術 奥義 終式 青銀乱残光ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は瞬時百発の乱れ打ちを放ち分身二体を滅多打ちにし、動きが止まったところを砕式で頭部破壊する。

 

分身は再生能力を持たないようで、頭蓋を殴り潰すと同時に塵へと還った。

 

 

「ほうっ!! まさか拳だけで俺の分身を倒すとは!!」

 

「もう間もなく夜明けだ!! 貴様はこの場に縫い留めて焼き殺す!!!」

 

「そうかもうそんな時間か!! つい熱くなり忘れていた!! 貴様らには不要かと思っていたが折角だ!! 俺も披露するとしよう!!」

 

 

俺が接近し、凍三郎殿も刀を掲げて突進するが、奴は不敵な笑みを浮かべる。突如、奴の背中から十数本の腕が生える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー血鬼術 百式観音ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬時に周囲一帯が更地になるほどの複数の拳打が打ち振るわれる。威力だけなら俺の終式を凌駕するほどだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー岩の呼吸 参ノ型 岩軀の膚ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は可能な限り岩の呼吸の迎撃技で相殺し、打ち漏らしを更に素流の技で捌く。それでも全ては防ぐことができず、数発喰らい俺は吹き飛んだ。

 

 

「カカカッ!! 生きているとは流石だな!? 致命傷だけは防いだか!! 以前殺した炎の柱は今ので肉塊へとなり果てたがな!! カカカッ!!」

 

 

奴は地に臥している凍三郎殿を一瞥し、そのまま俺へと歩み寄る。俺は何とかして瓦礫より這い出て素流の構えを取ろうとするが、その瞬間信じられないものを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー氷の呼吸 壱ノ型 薄氷斬りー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐはっ!? なっ、なぜ生きている!? 完全に息絶えたはずの気配だったのに!!!」

 

「糞・・・やっぱり片手じゃ力不足か・・・なら次は回転を加えるまで・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー氷の呼吸 弐ノ型 氷輪回しー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぅうおおお!!??」

 

 

一切の殺気も闘気も感じさせないまま、予備動作無しで凍三郎殿は斬りかかる。上弦の参は酷く慌てふためいていた。

 

 

「ば、馬鹿な!? 俺の血鬼術を受けてなぜそれ程までに動ける!!?? 人の形を保っているだけでも驚きだと言うのに!!!!」

 

「え? いや全部躱したからだよ。最後転んじゃったけど。なぜか動きがゆっくりに見えたんだ。あとお前が透き通って見える。おかげで動きが読みやすいよ。さっさと死ね。」

 

 

口調こそは殺意剥き出しなのに、今の凍三郎殿には微塵も殺気が感じられない。俺はその様子に驚愕する。

 

やがて上弦の参は分身を放ってその間に一目散に逃げだす。

 

 

「待て!! 逃げるな卑怯者!! 逃げるなぁあああ!!!」

 

「何を言っているんだ馬鹿二人が!! 俺はお前らから逃げているのではない!! 太陽から逃げているのだ!! 次会った時はその脳髄をぶちまけてやる!!!」

 

 

そうして上弦の参は大慌てで地の果てまで逃げていった。最後日に炙られていたので偉く苦しそうに走っていたが。

 

 

「と、凍三郎殿・・・大丈夫か? 怪我は・・・」

 

 

その瞬間凍三郎殿は地面を思いっきり叩きつける。悔し涙を流し、嗚咽を漏らしながら。

 

 

「糞・・・畜生・・・仇を討てなかった・・・あいつのせいで雪菜が・・・俺の妹が・・・うっ・・・うっ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はかける言葉が見つからず、その場に立ち尽くす他なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




正直オリジナル上弦の扱いは悩んでいます。原作上弦の株を落としたくないので強さの設定が難しいです。でも弱いと狛治と白峰にやられるし・・・難しい展開でした。
皆様の回答次第でオリジナル上弦が再登場するかは決めさせて頂きます。まあもし再登場したとしても、狛治にボコボコにしてもらう予定ですが。下衆野郎はいくらボコボコにしても良心が痛まないのでいいですね(え)。

追記:阿修羅鬼の血鬼術は筆者が少年期にハマったNARUTO及びHUNTER×HUNTERから着想を得ています。技名とかまんまです。仏像っぽい容姿にしたのは千手柱間の木像やネテロ会長の念能力を意識してるためです。

オリジナル上弦の登場についてどう思いますか?

  • 入れ替わりの血戦のやられ役なら有
  • 狛治がボコすなら有
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