追記:話数増えて来たので章で管理します。読みやすくなれば幸いです。
31話 扇
鬼殺隊に在籍する柱の隊士は遂に三人となってしまった。凍三郎殿がまだ在籍していた頃は二人一組で巡回していたが、今はそうもいかない。
今日は俺があぶれたようで、現在一人で巡回中だ。柱の人数も減り、一夜で10体以上の討伐任務が入ることも珍しくない。
広大な範囲を走り回って居れば、その分任務外の鬼とも遭遇する率も上がる。今日もその例に漏れなかった。
「あれえ? 君ってもしかして鬼狩りじゃない? ねえねえ、ここで会ったのも何かの縁、お話だけでもしようよ?」
夜の街中を駆けている途中、突如追走してきた人物に声を掛けられる。
明らかに鬼の気配だった。俺は問答無用で鎖分銅を放ち瞬殺しようとした。
しかし、その鬼はどこから取り出したかわからない金色に装飾された対の扇を打ち振るい、俺の鎖分銅の一撃をはじき返した。俺は一気に警戒心を強め距離を取る。
「わあ、酷いじゃないか。折角こっちが話しかけているというのに・・・」
「生憎暇じゃないんだ。鬼なら一見必殺。さっさと殺して次の任務場所に行かねばならん。」
「えー・・・つれないなぁ。折角お喋りできると思ったのに・・・」
目の前の男は、頭から血を被ったような出で立ちに、屈託なく笑ういけ好かない鬼だった。
こいつ・・・俺の一撃をモノともしなかった。つまりは上弦の鬼か?
俺も凍三郎殿がいた頃に比べ、格段に腕を上げた。彼は俺の目から見て鬼殺隊最強の剣士だった。そんな彼が柱を辞めた後、俺は彼の代わりとなるべく自身を限界まで鍛え上げた。その結果、俺の今の実力はかつての源重郎殿にもう少しで届くのでは思う程に成長した。少なくとも左近次殿はそう評価してくれていた。
ところがどうだ。目の前の鬼はあっさり俺の攻撃を受け流した。尋常ではない相手だ。加えて扇を掲げる姿に俺は心当たりがあり、思わず声を上げる。
「まさかお前・・・花柱の咲殿を殺した鬼か? 鎹烏の報告で上がった特徴とも一致する。つまりは上弦で確定か。」
「ん? 花柱? ああ、三ヶ月前にお喋りした子のことかい? 彼女とても綺麗な顔立ちをしてたなぁ。ただ死んだ旦那さんのことでずっと胸を痛めてたみたいだから俺が救ってあげたんだ。今思い出したよ。」
「救ってあげた・・・だと?」
俺は思わず反応してしまう。こいつ。今救うと言ったのか? 咲殿はこいつが殺したのではないのか?
「ああ、自己紹介がまだだったね。俺は童磨。いい夜だねぇ。」
「・・・俺は狛治。岩柱、狛治だ。お前は上弦の鬼で間違いないか?」
「わあ! 狛治殿って言うんだね!? かっこいい名前だなあ。」
「五月蠅い。黙って俺の質問に答えろ。」
「むー、つれないなあ。でも自己紹介し合った俺と狛治殿の仲だし特別に教えてあげるね?
俺は三ヶ月前にさっき話してた花柱の子を殺して下弦の陸から上弦の陸に上がったばかりの新米鬼さ。鬼になったのも1年経ってないから本当に新米の新米だね。」
「い、一年で上弦の鬼だと・・・!?」
俺は驚愕する。目の前の鬼は他の鬼よりもずっと若い鬼だった。その一方で、咲殿を殺せる実力を有しており、今現在は上弦の鬼まで昇り詰めているというのだから。
よく見れば虹色の瞳に『上弦』『陸』と刻まれていた。俺は一層警戒心を強める。
「実は俺、とある宗教の教祖なんだ。名前は一応伏せさせてもらうね? 狛治殿は他の柱よりも強そうだし、万が一取り逃がして情報共有されると困るからさ、念のためね?」
「で? その教祖とやらは鬼の分際で務まる仕事なのか? 職を変えた方がいいんじゃないか?」
俺は不本意ながら時間稼ぎをする。最悪、夜明けまで持久戦をせねばならないからだ。恋雪と約束をしている以上、命は最優先にしたい。
「大丈夫! 皆を幸せに導くのが俺の役目。生きることは辛く苦しいことばかりで、誰もが死を怖がるから、だから俺が救ってあげてるんだ。それこそが教祖のお務めだからね?」
「・・・救うって具体的にどう救うんだ?」
俺は嫌な予感がしながらも、つい聞き返してしまった。後でどうしようもなく後悔した。
「うん。だからね、俺が皆を食べてあげてるんだ。皆俺と共に生きていく。永遠の時を。俺は信者たちの想いを、血を、肉を、しっかり受け止めて救済し高みへと導いている。だから花の呼吸の彼女も同じなんだ。死んだ旦那さんのことをずっと引きずってるなんて可哀そうだよね? だから俺が食べて救ってあげたんだ。あの子はもう苦しくもないし、辛くもない。悲しむ必要もないんだ。俺の身体の一部になって穏やかに永遠の時を過ごせる。きっと彼女は俺に対して感謝してると思うよ?」
俺は絶句する。目の前の鬼は、頭に脳味噌が詰まってるかどうかも怪しい思考の持ち主だった。端的に言って異常者。こいつは間違いなく存在してはいけない生き物だ。
「あと彼女の場合は女の子で且つ柱だったから逃がしたくなかったって言うのもあるかな? なにせ女の子はお腹で赤ん坊を育てられるくらい栄養分があるからさ、積極的に食べると普通に男の人を食べるよりも早く強くなれるんだ。俺が一年で上弦の仲間入りを果たせたのもその成果の賜物だね。だから彼女は会った瞬間救ってあげようって思ったんだ。俺にも得があるし、彼女も苦しみから解放される。一石二鳥だと思わないかい? 狛治殿。」
全身が総毛だつ。おぞましい程の不快感が襲う。俺は堪えられないとばかりに言い返す。
「正気とは思えない。貴様は頭が可笑しいのか? 思わず吐き気を催す考え方だ。虫唾が走る。反吐が出る。」
「えー・・・初対面なのになんでそんなに刺々しいの? あ、わかった! 何か辛いことがあったんだね? 聞いてあげよう、話してごらん?」
「そうだな。俺にとって辛いこと、それは・・・お前のような鬼が存在し続けている事そのものがだ!! もし俺のいない間に恋雪の前にお前のような悪鬼が現れたらと思うと俺は辛い! 耐えられない!!」
「ん? 恋雪ちゃんって誰? 狛治殿の好きな人? 恋人? もしかして奥さんかな? 折角だから今度紹介し・・・」
ー岩の呼吸 壱ノ型 蛇紋岩・双極ー
冗談じゃない。こんな奴を恋雪に近づけさせてなるものか。俺は衝動的に両の鎖分銅を童磨の顔面へと打ち放つ。螺旋を切ったそれは流石の上弦の鬼と言えどもはじき返すことができなかったようで、寸でのところで回避に移っていた。
「今のは失言だった。忘れろ。というより今すぐ死ね。」
「酷いじゃないか狛治殿。君の大好きな女の子の話をもっと聞かせておくれよ。俄然その恋雪ちゃんって子に興味が湧いてきたなあ。」
「黙れ童磨。やはりお前は不快だ。それに貴様の様な異常者はこの場で殺してやる方が世のためだ。今日この場で確実に殺す!!」
夜明けまで一刻を切った。一対一で上弦の末席に今の俺の実力がどこまで通じるかわからないが、体中の細胞が産毛に至るまで今すぐこいつを殺せと言っている。
たった一年足らずで上弦まで昇り詰める鬼なのだ。ここで取り逃がせば、将来手が付けられなくなることは想像に難くない。
こいつを殺すことは俺の使命なのだと、俺はこの時自覚した。
続く
やはり童磨とは相入れない狛治さん。当然と言えば当然ですね。だって恋雪ちゃん狙われたらたまったもんじゃないですからね。その結果、使命感と私情のシナジーで、過去一殺る気MAXとなっております。ある意味兄上戦よりもモチベ高くなってるかも。
オリジナル上弦の登場についてどう思いますか?
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有
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無
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入れ替わりの血戦のやられ役なら有
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狛治がボコすなら有