「ねえねえ、狛治殿、恋雪ちゃんってだあれ?」
ー岩の呼吸 伍ノ型 瓦輪刑部ー
「狛治殿の恋人? それとも奥さんかな?」
ー岩の呼吸 肆ノ型 流紋岩・速征ー
「うん、ここまで烈火のごとく怒ってるんだ。きっと奥さんに違いない。いや~、狛治殿は愛妻家だねえ。」
ー岩の呼吸 壱ノ型 蛇紋岩・双極ー
「キャーハクジサンモウヤメテー!(裏声)」
ー岩の呼吸 弐ノ型 天面砕きー
「わわっ!! 今のは危なかった!! そんなに怖い顔しないでよ、狛治殿。」
「殺すっ!!!!!」
ー岩の呼吸 壱ノ型 蛇紋岩・双極ー
俺は青筋を浮かべる。ギリギリ理性を失わない程度には怒り狂っていた。過去一癇に障る鬼だ。容赦はしない。
体勢を崩した童磨に俺は螺旋を切る鎖分銅を打ち込もうとするが、奴は信じられない反応速度で躱し、身を翻して俺へと一気に距離を詰める。
「その技、もう何度目? それに打ち放った後隙が大きいよねえ。懐に飛び込んだら鎖も使いにくいんじゃない?」
そう言い、奴は扇で俺を袈裟斬りにしようと斬り込んでくるが・・・
ー素流体術 鬼芯八重芯ー
「ぐぇええええっ!!??」
「生憎接近戦の方が得意なのでな。近づいて来てくれたのは有難い。」
俺は左右交互の八発の拳で童磨を連打しこれでもかと滅多打ちにする。奴は血反吐を吐いて地面に転がる。
一気に隙が出来たので、俺は横たわる童磨の頭蓋を粉砕しようと拳を振り落とす。
ー素流体術 砕式 万葉閃柳ー
凄まじい轟音と共に地面が蜘蛛の巣のように割れ、土煙が舞うが、ギリギリのところで童磨は転がりながら退避し逃げていく。
「ゴフッ!! はあ・・・危ない危ない。その手甲、鎖と同じ素材でできてるんだね? 殴られた場所が内側から焼かれるみたいに痛むよ。まさか日輪刀で殴られるとは思わなかったから、打撃の痛みに悶絶して危うく攻撃を喰らうところだった。面白いね!」
「チィ!!」
流石は腐っても上弦の鬼。回避速度が尋常ではない。しかし先ほど近づいてきたところを見ると奴も近接戦闘主体なのか?
俺は素流の構えを取り、迎撃の姿勢で奴の様子を伺う。
「うん。狛治殿の方が接近戦は強そうだ。血鬼術主体で攻めよう。」
「・・・」
俺は警戒する。どんな血鬼術を使うのか予想がつかないので、むやみに突進するようなことはしない。
やがて童磨は扇を構える。するとみるみるうちに奴から異常なまでの冷気が溢れ出す。
ー血鬼術 蓮葉氷ー
奴が扇を一閃すると、蓮の花のような氷と共に、辺り一帯に氷の粒子がまき散らされる。
体中の細胞が産毛に至るまでこの氷から今すぐ離れろと言っている。この血鬼術は見た目以上に危険だと俺の本能が訴えかけてくる。俺は全力で距離を取り、いつでも迎撃できるよう対の鎖分銅を旋回させる。
「あれ~? 突っ込んでこないの? そしたら楽に闘えたのになあ。中々勘が鋭いね、狛治殿は。」
「やはりその氷、触れるだけで厄介な代物か・・・」
「う~ん・・・まあそうだね・・・一応呼吸を使う剣士用に開発した血鬼術なんだけどね。狛治殿は引っかかってくれなかったかあ、残念だなあ。」
詳細は不明だが、呼吸を使う剣士を相手に童磨が開発したということは、あの氷は呼吸を封じる効果を持つ血鬼術の可能性が高い。
加えてあの冷気、全集中の呼吸の要領で大量に吸い込めばそれだけで人体に相当の悪影響がありそうだ。最悪の場合、身体の内側が凍り付いたり、体温を維持できず動けなくなる可能性が高い。
「近づくのは難しいということか・・・」
「ん? いや、近づいてくれるなら俺としては有難いんだけど・・・」
「なら岩の呼吸の型主体で戦うまで!!」
俺は再び鎖分銅を打ち振るい、童磨に攻撃を放っていく。童磨は回避したり受け流したりと俺の攻撃をものともしない。しばし膠着状態が続く。
「うーん。その鎖を使う攻撃はさっき色々と見せてもらったからねえ。もう喰らうことはないかな?」
「チィ・・・」
これでは千日手。一向に勝負がつかない。だからと言って、こちらから近づけば冷気を浴びてしまう。正直打つ手がなかった。
「よし。狛治殿には色々見せてもらったし、特別に俺の開発した新しい血鬼術沢山見せてあげるよ。じゃあ行くよー?」
「は?」
突如童磨はそう笑い、扇を構え直す。
ー血鬼術 蔓蓮華ー
突如、氷でできた植物の蔓のようなものが生まれ、それらが俺へと伸びてくる。俺は鎖分銅を旋回し、それらを捌いて行く。
「お、これは平気なんだね? じゃあこれは?」
ー血鬼術 冬ざれ氷柱ー
童磨が扇を上に掲げると、俺の頭上に小屋の支柱程の太さの氷柱が多数出現する。
「くっ!!」
質量が質量だけに、俺は弾き続けるのは無理だと判断し、素流の体捌きで何とか躱し回避していく。
「わあ! 凄い! 華麗だねえ! じゃあこれは?」
ー血鬼術 寒烈の白姫ー
突如童磨の正面に女神像のようなものが出現し、吐息を思わせるような形でおぞましい量の冷気の奔流が放たれる。
あれに巻き込まれれば全身凍り付くことは必至。全速力でその場を退避する。凄まじい広さの範囲攻撃に俺は冷や汗を流す。
「アハハ! 逃げてばっかりだねえ! じゃあこれは?」
ー血鬼術 散り蓮華ー
紙吹雪を彷彿とさせるような氷の破片が多数俺に押し寄せる。これ以上距離を離せば反撃どころではなくなる。俺は鎖分銅を旋回させ、迎撃の構えを取った。
ー岩の呼吸 参ノ型 岩軀の膚ー
「うぉおおおおおお!!!」
「アハハ! 頑張るねぇ。いつまで弾き続けられるかな?」
俺は必死に鎖分銅を周囲に振り回し、氷の破片を砕いて行く。凄まじい数だ。全てを打ち落とすことができず、俺は僅かながら手傷を負ってしまう。
攻撃が止み、俺は振り回した片方の分銅をもう片方の分銅で地面に打ち付けるようにして回転を止め、肩で息をする。
「流石だねえ。狛治殿。今の血鬼術の数々は来たるべき入れ替わりの血戦に備えて俺が頑張って開発したものなんだ。それを悉く凌いじゃうなんて。俺感動したよ!」
「ゼェ・・・ゼェ・・・己・・・」
俺は回避と防御だけで手一杯となり、僅かに呼吸が乱れる。加えて奴を仕留める為のいい打開策が思い浮かばず俺は焦る。
この時、地面に打ち付けた鎖分銅が赫赫と発光し始めたことに俺はまだ気づいていなかった。
続く
狛治に岩の呼吸を習得させた理由の一つが童磨戦です。徒手空拳だけで童磨を相手にするのは鬼の体であっても無謀なので、人の身体なら尚更です。なので狛治には近中距離戦どちらもイケるようになってもらいました。加えて赫刀(刀か?)の発現により戦況の行方は果たしてどうなるでしょうか。次回に続く。
オリジナル上弦の登場についてどう思いますか?
-
有
-
無
-
入れ替わりの血戦のやられ役なら有
-
狛治がボコすなら有