36話 天狗
長寿郎が炎柱に就任してから三ヶ月。月日が経つのは本当に早い。めでたく柱の人数が四人となったため、巡回任務は二人一組で行うようになった。
暫くは長寿郎に柱の任務に慣れてもらう為、他三人の柱の先輩と順番に組んでもらうようにしている。識哉様のお考えでそうなった。
最終的には俺と固定で組ませるそうだ。理由はいくつかあるが、左近次殿と慈悟郎殿の連携は柱の中でも随一なのが一番の理由だ。
それに俺は既に上弦との戦闘を三度経験しているということで、新米柱の長寿郎は俺と組ませたいという意図も少なからずあるようだ。
彼はまだ若く大事に育てなければならない。うっかり上弦と戦闘になり成す術なく殺されるなどあってはならない。即ち長寿郎を死なせずに守り通すことこそが識哉様より賜りし俺の役割となるのだろう。
「しかし狛治殿。この三ヶ月の間、とんと上弦の鬼に遭遇しなくなったな。お主はこの現況をどう思う?」
現在俺と同伴しているのは左近次殿。今日はたまたまこの組み合わせだ。左近次殿は水の呼吸の使い手なので、誰と組ませても強い。と言うより上手いのだ。安心感が尋常ではない。
寧ろ、慈悟郎殿と長寿郎の方は大丈夫だろうか? 慈悟郎殿は面倒見はいいのだが、時々冷静さに欠ける時がある。鉄砲玉のように突っ込むことがあるから長寿郎を置いてけぼりにしてないか心配だ。
「狛治殿?」
いかん。考え事をしてる場合ではなかった。俺は我に返り左近次殿の問いに返答する。
「そうですね。長寿郎を慣らす期間はずっとこうあって欲しいものです。」
「いや、そうではなく・・・奴らの意図は読み取れるか? 私は正直きな臭いと思っている。」
「・・・と言うと?」
俺の楽観とは別に、左近次殿は少々問題視しているようだった。俺は尋ねる。
「うむ・・・奴らは去年の今頃、血眼で柱を探し出し積極的に戦いを挑んでくるような印象を受けたのだ・・・しかし今ではそれがとんと無い。奇妙だとは思わぬか?」
「確かに・・・もしかすると・・・上弦が末席まで埋まったからかもしれませんね。」
「埋まる? と言うと?」
「はい。以前俺が戦った童磨は咲殿を殺し上弦の陸になったと言ってました。そしてそれより前に戦った上弦の伍である玉壺も以前霞の柱を殺したと言ってました。左近次殿。霞の柱が殺されたのは順番的には咲殿の一つ前なんじゃないですか? 柱を殺した順に上弦の席が埋まっていってるのかもしれません。」
「そうか・・・確かに前任の霞柱殿は咲殿の一つ前に殉職している。そして咲殿が殺されその童磨という鬼が上弦の末席に着いたことで柱殺しが終わったと。確かに、狛治殿の推理は概ね当たっているやもしれぬな。」
「であれば、奴らが積極的に俺たちに戦いを挑んでこないのも頷ける。加えて以前童磨は『入れ替わりの血戦』という珍妙な言葉を使っていました。詳細はわかりませんが、まるで上弦同士が争うような意味合いで言ってたので、現在は柱殺しの順番ではなく、上弦同士の力比べで序列を決めているのでは?」
「成る程・・・面白い予想だ。道理で最近上弦どころか十二鬼月の下弦すら目にしなくなった訳だな。しかしそうなると今後どうしたものか。また柱の単独任務が始まるのだろうか。」
「いえ、流石に俺の予想一つで単独任務に戻すのは危険だと思います。安心しきったところで上弦鬼と単独で鉢合わせしたら生き残れる可能性は限りなく低いでしょうから。識哉様もこれ以上柱の人数が減るのは避けたいはずでしょうし・・・ん?」
俺と左近次殿で語り合いながら山中を進む中、山道の途中で上等な着物を着たご老人が泣きべそをかいて歩いていた。
心なしか『ヒィィィ・・・恐ろしい恐ろしい・・・』と呟いているように聞こえる。どんな理由であろうと、こんな真夜中ご老人が山奥を一人で歩くなど危険極まりない。
俺は助け舟を出そうと駆け寄るが、途端、左近次殿に首根っこを掴まれ停止する。
「さ、左近次殿!? 一体何を・・・」
「鬼だ!! しかもこの匂い・・・!! 上弦で間違いない!!!」
「なっ・・・!! あのような老人の姿をした者がですか!?」
「見かけで人を判断するな。足元をすくわれるぞ。気を引き締めろ・・・!!」
俺は鎖分銅を、左近次殿は刀を抜き構える。すると俺がか弱い老人だと思っていた者はこちらに振り返り、充血した目と対の角、大きなこぶに鋭利な両の手の爪を見せて語り掛けてくる。
「ヒィィィ・・・柱が二人も・・・恐ろしい恐ろしい・・・しかし二人分の柱の肉を喰えば入れ替わりの血戦で殺されずに済むかもしれぬ・・・ここは踏ん張り時じゃあ・・・」
続く
半天狗のギミックを考えると、鱗滝さんじゃないと勝負にすらならないだろうなと思って、このような対戦カードとなりました。義勇さんの下位互換なんて言われないよう頑張って描写して行こうと思います。
童磨の再登場についてどう思いますか?
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有
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無
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狛治がしっかり倒すのなら有
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原作通り生き残らせてほしい