「済まない! 狛治殿!! 本体が突如こちらに戻って来てるはずなのだが・・・っ!!??」
「左近次殿。分裂体が融合して集合体になりました。左近次殿の鼻であればあれがどの程度の強さかわかるのでは?」
「信じられん・・・これほどの恐れを抱かせる匂いは初めてだ・・・喉が痛む・・・」
「そうですか・・・厄介なことになりましたね。」
左近次殿が舞い戻り、俺の後ろで息を飲む気配がする。俺は左近次殿に眼前の鬼がどれ程の脅威かを確認する。
本来であれば、俺は武芸を積んだ敵でなくば相手がどれ程強いかわからないのだが、それでも目の前の鬼は今まで出会った鬼の中でも群を抜いていたように思える。
案の定、左近次殿は警鐘を鳴らす。俺は一層気を引き締める。
「恐らく本体を叩かなければ倒せないというのは同じでしょう。引き続き俺が足止めするので左近次殿は奴の攻撃の間を縫って本体の頸を刎ねることに集中してください。」
「ま、待て! 狛治殿・・・恐らく柱単独で凌げる相手ではない・・・ここは継戦の構えを取るべきだ・・・!」
「・・・」
俺は悩む。この鬼相手に日の出まで粘るのと、本体を仕留めるのとどちらが生存の可能性が上がるのか。
上弦の鬼を前にした以上、本来は逃げを選ぶべきだが、折角柱が二人もいるのだから可能な限り戦って情報を持ち帰りたいというのもある。
しかし深追いをして死んでしまっては元の木阿弥。恋雪には必ず生きて帰ると約束している手前、命を粗末にはできない。
俺はため息を付き、迎撃の構えを取る。
「わかりました。守り主体で戦いましょう。夜明けまで一刻。俺と左近次殿なら粘り切れるはずです。」
俺の後ろで安堵する気配がする。左近次殿は俺が無謀にも差し違えるような戦いをすると思っていたのかもしれない。
俺は確かに好戦的ではあるが、それでも命優先の考えだ。恋雪を残して殉職するなど、死んでも死にきれない。
すると突如、上弦の肆の集合体が太鼓を叩く。
みるみるうちに奴の隣で樹木が丸まるように集まり、老人の姿をした小人の本体を覆ってしまった。
「逃がすと思うか? 極悪人共めら。貴様らは手のひらに乗る様な小さき弱気者を斬ろうとした。なんという極悪非道。鬼畜の所業極まりない。私が貴様らの罪を裁いてくれる。罪人共めら。」
俺はふいに自身の手首の入れ墨を意識する。俺は余りの可笑しさに腹の底から笑い声が漏れる。
「ハハッ、ハハハ! 鬼の癖に笑わせる! お奉行にでもなったつもりか!? 裁けるものなら裁いてみろ!!
例え両手首斬り落とされたとしても足がある! いざとなったら足で逃げ切ってやるよ!! どの道傀儡を操るだけの卑怯者なんぞに捕まりはしないさ!!」
且つて奉行所で掏りの刑罰を受けた時を思い出し俺は獰猛な笑みを浮かべる。なあに。あの時と何ら変わらない。ましてや自分のことを棚に上げるお奉行気取りに殺されてたまるか。
俺と左近次殿は目配せしたのちすぐさまその場を離脱する。
まずは逃走。しかし相手は腐っても上弦。必ず追撃してくるだろう。案の定、太鼓の音が聞こえ、周囲に巨大な龍の頭を模った樹木が俺たちに襲い掛かってきた。
「左近次殿!!」
「わかっている!!」
ー素流体術 脚式 冠先割ー
ー水の呼吸 弐ノ型 水車ー
俺が地を割る踏み込みと共に木龍を蹴り上げ、間髪入れず左近次殿が伸びきった木龍の首元を切断する。その後も数匹の木龍が押し寄せてくるが、俺たちはひたすら迎撃の構えを取る。
ー水の呼吸 捌ノ型 滝壺ー
ー素流体術 砕式 万葉閃柳ー
今度は左近次殿が木龍の頸を地にたたきつけ、俺がその頭蓋を粉々に粉砕する。
上弦の肆も埒が明かないとおもったのか、今度は四方八方から木龍が大挙して押し寄せる。
ー素流体術 奥義 終式 青銀乱残光ー
ー水の呼吸 拾ノ型 生生流転ー
俺は地面を踏みしめ、素流の奥義を打ち振るう。周囲へほぼ同時に百発の乱れ打ち。
本来であれば味方も巻き込んでしまう危険な技なのだが、左近次殿は俺の拳打を匂いで見切っているのか全て回避しながら高速で回転速度を上げ、同時に打撃を受けて怯んだ木龍を次々に斬り落としていく。
その技はまさに流麗。練り上げられた剣技。加えて嗅覚による敵味方の動作を完璧に読んだ最適化された動き。そんな達人と肩を並べて戦える事実に俺は思わず身震いする。
しかしすぐさま太鼓の音と共に左近次殿が注意を呼び掛ける。
「血鬼術が来る!! 迎撃か回避で身を守れ!!」
ー血鬼術 狂鳴雷殺ー
左近次殿が斬り損ねた木龍二匹が口を開け、片や雷、片や音響を放ってくる。
ー岩の呼吸 参ノ型 岩軀の膚ー
俺は赫赫と発光する鎖を旋回し身を護る。赫刀と化した分銅は鬼の細胞を焼くらしく、血を媒介とした血鬼術にも有効らしい。
俺の鎖の防御で雷や音の攻撃を見事相殺することができた。
「己っ・・・!!」
やや離れたところで木龍たちを足場にした上弦の肆の集合体が悪態をつく。俺はそちらに目線をやると奴は凄まじい速度で太鼓を打ち鳴らす。
ー血鬼術 無間業樹ー
奴の足場から凄まじい数の木龍が現れ俺へと襲い掛かる。俺は再び素流の奥義で迎撃しようとするが・・・
「木龍共!! 私が相手だ!!」
すると左近次殿が木龍の群れの前に躍り出る。木龍たちは標的を変えて左近次殿に一斉に分裂体鬼が放っていた四種の血鬼術で飽和攻撃を仕掛ける。
ー水の呼吸 玖ノ型 水流飛沫・乱ー
左近次殿は術の発動を全て察知しそれらを回避して飛び回る。結果、木龍たちは同士討ちでそれぞれに術をぶつけ砕け散る。
「っ!! ちょこまかと・・・!!」
ー水の呼吸 壱ノ型 水面斬りー
一瞬の隙を突き、急接近した左近次殿が上弦の肆の集合体の頸を刎ねた。本来であれば決着が着くのだが俺たちの戦いは終わらない。夜明けまで残り半刻を切った。
続く
鱗滝さんは仮にも五体満足で柱を引退した傑物だと思っているので、義勇さんの下位互換にする気はありませんでした。結果、炭治郎以上の嗅覚による動作予知スキルを持ち合わせる達人として描写しております。如何だったでしょうか。鱗滝さんファンの方は是非ご感想下さい。
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無
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狛治がしっかり倒すのなら有
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原作通り生き残らせてほしい